Linobu インタビュー | Newアルバム『Episode.0』リリース、広島発・アグレッシブにリリースを続ける新鋭ヒップホップアーティスト【Who’s NXT】

2021.12.20


Linobu インタビュー

Linobu(リノブ)
広島出身、2000年生まれのヒップホップ・アーティスト。2019年からキャリアをスタートさせる。わずか2年ながら、これまでに6枚のアルバムをリリース。最新アルバム『Episode.0』には、Ry-lax、T-STONE、Lisa lil vinci、S9UALLなど、全国各地のラッパーが参加している。

Who’s NXT : A series of interviews with featured artists
 


 
——まず、Linobuさんが音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

僕が音楽に興味を持ったきっかけは両親がHip HopやR&Bがめっちゃ好きだったからですね。小さい頃から家や車では常に海外のHip Hopが流れてました。小さい頃はそれがHip Hopだとは分からないので「この英語分かるの?」と聞くと「リズムがいいんよ」って母親に言われたのを今でも覚えてます。記憶にあるものだと、カセットテープ?みたいなのが車にたくさんあって、今では分かるんですが、Nellyの「Dilemma ft. Kelly Rowland」はめっちゃ車で流れてて僕も好きだったし、そのせいか今も毎日聞いてます(笑)。あと、父親がバンドのドラムやボーカルをやってたり、叔母が歌手だったりとその辺も影響を受けてますね。

 
——それから自分でも音楽をやるようになった経緯というのは?

自ら音楽をやるきっかけになったのはやっぱり両親の死です。父親は僕が小学1年生の頃に亡くなったんですが、そっからは母親に育ててもらってました。4人兄弟全員男なので相当苦労をかけたと思います。その母親も僕が中学1年生で亡くなったので、そっからは祖母の家で暮らしてました。そんな中でなんかやるせないというか、人生についてネガティブに考えるようになっていって。その13歳の時にHip Hop問わず音楽の文化自体に対する気持ちの冷めが起きてて音楽も聞かなくなりました。「結局人が作った音」というように、人間関係にも冷めていた時期なのでそう感じていたのかもしれません(笑)。その時期はYouTubeで焚き火の動画や雨の音とかを聞きながら寝る生活を過ごしてました。

でも、15歳の冬に今でも理由は謎なんですが、ふと急に曲を作りたいって欲に駆られて色々やってみました。最初は仲間なんていなかったので、出会い系サイトに「曲作ろうぜ」みたいなのをダメ元で書いて投稿したりして。そしたらMC屯田兵って人が反応してきて、フリースタイルダンジョンやおすすめのラッパーとかを教えてもらいました。今考えるとアホですよねこの話(笑)。で、その時たまたま見たフリースタイルダンジョンの放送でSALUさんが「Lily」って曲をライブしてて、日本語の使い方や雰囲気、言葉にできない社会性みたいなのにかなりくらって、そこから日本語ラップを徐々に聞き始めました。市内のサイファーやバトルに参加したり、自分で地元にサイファーを開いたりもしてました。同時進行でひたすら曲も作っていて、そういう日々を続けていたら、それが今に繋がった感じです。直接関わってないんですが、さっき言った両親の死がかなり原動力になってて。この音楽で今の生活をどうにかしたい、って気持ちが強くて、これまで無意識に動いてきました。ですが、アルバムや楽曲の制作をしていくうちに自分の考えていることや、本当はこうなりたい、こうしたいって気持ちに改めて気付かされました。そういった意味では、音楽を始めたきっかけは両親の死にあると今では強く感じています。

Linobu インタビュー

 
——Linobuさんは広島のご出身ということですが、今も広島で活動されているんでしょうか?

はい、今も主に広島県で活動しています。


Linobu

Linobu インタビュー

 
——先日、21曲収録の大作とも言えるニューアルバムをリリースされましたね。どんな作品になっていますか?

12月11日にアルバム『Episode.0』をリリースしました。かなり激しめの曲からメロウな曲まであって、その温度差やあえてそうしてるってのを感じて欲しいですね。このアルバムは今までの自分を振り返って、一旦白紙に戻したいってニュアンスで作りました。そのため1年前の曲から締め切りギリギリまで作ってた曲もあります。ここ1年で考え方や見た目から生活まで大きく変わりました。昔はお金に困って食べれない時もあったけど、1年前から少しずつですが、音楽だけで生活できるようになってきました。その急な周りの変化や新しく出来ていく人間関係、離れていく人たちに対して僕は上手く対応できてなかったんです。人から求められてるものや、本当にしたいことが明確にならずに、自分を押し殺して自分を見失っていた時期がありました。でも、その押し殺してた中で作った曲も入ってるし、仲間やこの街が自分を変えてくれたって未来像を書いた曲も入ってます。そういった気持ちの変化や、俺はこういう奴だっていう、強い自己主張をこの作品で表現できたと感じています。


『Episode.0』
『Episode.0』

https://linkco.re/CzT21hUN

 
——そうすると『Episode.0』はかなり思い入れのある作品に仕上がったのではないでしょうか?

そうですね、新作はイチオシの作品になったと思います。僕は今21歳で、2021年。これは21曲しかないと思って、締め切りギリギリまでスタジオで籠って制作しました。 Travis Scottのドキュメンタリーに影響受けたりして、いけるところまではやろうぜってエンジニアのSatoCobainと話しました。締め切り最後の日に元あった曲をボツにして新しく4曲作ったりして、次の日2人ともぶっ倒れてたの覚えてます(笑)。

 
——Linobuさんはコンスタントに曲をリリースし続けていますが、楽曲の制作はどのような環境やプロセスでされていますか?

今は自分のレーベルでスタジオでもある「Memoreal Park」で制作しています。昔から何か作ることが大好きなので、制作は毎日しています。そのスタジオでは周りのラッパーと遊んだり、映画を見たりプレステをしたりと息抜きの場所にもなってます。基本的には自分や仲間の曲は自分が編集してるのですが、とにかく制作に集中したい時はエンジニアについてもらってます。最近だったら、『Episode.0』の全曲にエンジニアにとしてSatoCobainに携わってもらいました。彼は僕の3つ下のラッパーなんですが、センスとか才能がすごくて(笑)。色々意見を交換したりして、このアルバムができました。普段は僕も周りも作りたい時に自由に曲を制作してます。音楽を始めた時から自分のスタジオやレーベルを持つのが夢だったので、まだ規模は小さいですがこれからが楽しみです。

 
——Linobuさんはご自身の音楽的な特徴をどう捉えていますか?

楽曲の幅の広さですかね。今回の『Episode.0』でもそうですが、「Rap Game」みたいに調子良さそうな激し目の曲から、「Drug (feat. Lisa lil vinci)」のような落ち着いた曲もあります。歌詞の側面から見れば、Thouwidとの「RACE」ではファンタジーな世界や思考を乗り物で表現したり、「freestyle」のように最近の目の前にあるものだけをフリースタイルで歌った曲もあります。ちなみに、この「freestyle」は海辺で彼女の車の中で海を見ながらレコーディングしました(笑)。

 
——そんな楽曲の幅広さのあるLinobuさんですが、どんなアーティストに影響を受けましたか?

僕が影響を受けたアーティストはやっぱりSALUさんですね。最初にも話しましたが、15歳の時にSALUさんの「Lily」のライブを見てその雰囲気に引き込まれました。正確には覚えてはいないですが、金髪にフードを被っていて目がギラギラしていてやばいなって。この人の言ってることは難しくてわからないけどすごく何かを訴えてるっていうのが伝わってきました。その時、無感情だった自分の心に久しぶりに何かに対してカッコいいという感情が生まれて。「Lily」に「カーテンの隙間から見える庭を傍観してたらたまたま目があってしまった秋」、「守るものが出来ていつまでも蕾じゃいられなくて」って歌詞があるんですが、理解はできてないけどすごくくらって。その後すぐiTunesでその「Lily」が入ってるアルバム『Good Morning』を聞いて完璧に自分の固定概念を崩されましたね(笑)。「Lily」で持ったSALUさんへのイメージが「In my Face」で変わって、「Nipponia Nippon」では社会性が強い曲なのに何か救われた気分になりました。

 
——音楽的な部分だけでなく、存在としても大きな影響を受けたんですね。

そうですね。その時期からリリースされる楽曲は全部チェックして考察したりして、今でも毎日聴くくらいSALUさんの曲は大好きです。12月4日に広島のCLUB GでSALUさんのライブがあったんですが、前座でショットライブをさせてもらいました。SALUさんのライブでは「時代は優しさだ」って言っていてめちゃくちゃくらいました。僕自身、家族のことや昔のことはまだ曲にしてないんです。そこを売りにしたり、量産はしたくないと思ってて。でも、いつかSALUさんと家族についての曲を作ることが僕のひとつの夢です。

 
——SALUさん以外では、他にどなたかいますか?

他にもたくさんいるんですが、海外のアーティストでいえばJuice Wrldですね。ネガティブな感情だったり弱い自分に対して、ありのままであっていいんだって教えてくれました。ネガティブな自分に対してポジティブになれよ、とか、そんな難しく考えるな、ってみんな言う。でもその弱さやネガティブって心は、まずその弱さを知った人間にしか分からないんです。僕が18歳の時に家族がとある事件に巻き込まれて亡くなりました。そっからはまた完全に心を失って無感情だったんですが、Juiceの曲を聴くとそれを忘れられて違う世界にいけたし、他の人の曲では感じれない、あの優しい声が心に響くんです。ネガティブはネガティブが寄り添ってくれるって、ありのままでいいんだって、そうJuice Wrldの楽曲には勇気付けられました。なので、今ではそれらを全部含めてポジティブな人間になれたので彼を知れてよかったです。

 
——楽曲でいうと、どういう曲に影響されましたか?

次の4曲とかですね。

 
——Linobuさんは音楽活動をする上で、なにか特に意識していることはあったりしますか?

僕は生きていて音楽をできていることに感謝して動いています。当たり前のことだけど、曲を聞いてくれる人たちや家族、仲間、何かしらで僕を支えてくれる人たち全てに。どっかの記事で見たんですが、人は脳みそに「死」について考えるリミッターが働く機能があって、このリミッターは「死」と触れ合うことで外れていくらしいんです。その記事を見てからは色々腑に落ちて、理解できなかったことも理解できたし、自分の目的だけに走ることの意味を知りました。僕は常にこの音楽で今の生活を変えたい、成り上がりたい、って考えて動いてます。でも、この考えはずっと同じではないし、このインタビューの内容もそうです。何ヶ月後には何かをきっかけに考え方が変わってるかもしれない。『Episode.0』でもそういったことを歌ってます。とりあえず今は生まれ育った広島の街や仲間をあげていきながら、自分周りの生活を潤わせたいですね。後は、常に脳裏にお世話になってるおばあちゃんの腕にロレックスを巻きたいって考えてますね(笑)。そんくらい成功して、色々してあげたいってことです。


Linobu インタビュー

Linobu

 
——そういった意識の中で、リスペクト、あるいは共感するアーティストはいますか?

リスペクトしているアーティストはめちゃくちゃ沢山いて難しいんですが、ひとりは今回の『Episode.0』でも客演で入っていただいた、Lisa lil vinci君です。日本語の使い方とビートアプローチや世界観は唯一無二だと感じています。歳も近くて、自分と大人とかそういった葛藤?をあんなに上手に表現できてあのビートのハメ方。センスやばいですよね!なんかめちゃくちゃフィールするというか(笑)。今後、日本を代表するアーティストになるって思ってますね。勝手に考察してるだけだけど、かなり共感してます!Lisa lil vinci君が12月4日にリリースしたアルバム『0ky0mu0』に僕も「What u doing?」という曲で参加してるので聞いてみてください。

 
——現在の音楽シーンについて何か感じることはありますか?

とにかくイケてる作品を作ってる人たち全員が食べていけるようなシーンになるのが理想です。ここ何年かで前向きに大きく変わってきてるんじゃないですかね。まだスポットライトは当たってないけどヤバい人たちはたくさんいるし、僕の周りもそう。才能あるアーティストが続けられるようなシーンになればと強く思っています。


Linobu

 
——今後の活動の予定や展望を教えてください。

『Episode.0』の中の僕の大好きな楽曲、「Sunset (feat. T-STONE)」のMVがDexFilmzから先日公開されました!T-STONE君のことは17歳の頃からリスペクトしていて、その時からいつか楽曲制作をしたいと思ってました。20歳の時にこの楽曲が完成して、今1番アツイDexFilmzさんからMVを出せたことに感謝です。僕が育った、広島の街や海辺、そういったところをMVを通して感じてくれたら嬉しいです。


Linobu

Linobu

 
また、2022年、1月1日には同じく『Episode.0』からDJ Bahn君(※)と「もっと上」のEPバージョンがリリースされます。それと同時にMVも、O-ty君のチャンネルBloom Houseから公開されます!Bahn君のビートはめちゃくちゃ高級感があって聞いた時に鳥肌が立ちました。ビートが送られてきてすぐレコーディングして、1日も経たず完成して、それを送り返したら気に入ってもらえて。この曲のシングルは今年の5月にリリースされてたんですが、個人的に気に入ってる曲なのでBahn君に頼んでEPを完成させるに至りました。僕は実写がアニメを超えることは無い的な感じで、音楽でもそう感じています。必ずしもMVにしないとクラッシック作品になり得ない、訳ではない。って感じです。ですが曲を聞いてくれたO-ty君から直接「この曲を撮らせて欲しい」って連絡がきて。O-ty君ならこの曲を映像で表現できる、そう思いました。僕の上に行きたい気持ちや葛藤を短くシンプルな言葉で表した曲。アルバムでも唯一日本語のタイトルにしてます。MVでは色んな演出でそういった内容を表現してもらってます。飾ってない僕を見て欲しいですね!

(※)DJ Bahn
広島出身。10代でスクラッチにハマり、2010年代はターンテーブリストとして活動。DMC 、RedBull 3style、IDA等のDJバトルでは地方代表としてジャパンファイナルへ進出。IDA 2016年 2017年はワールドファイナル進出。2019年からトラックメイクを始める。Redbull 3Style JAPAN 2012 Finalist、DMC JAPAN 2014・2016 Finalist、IDA WORLD 2016・2017 Finalist。


Linobu

 
——来年も引き続き活発な動きになりそうですね。

あと、まだ少し先にはなりますが、3月に広島のラッパーThouwidとのEPがリリースされます。もうすでにリリースされている、彼とのシングル「RACE」や「Teen Dream」はSpotifyの「+81 Connect 」、「JUICE」にプレイリストインしました。Thouwidは僕の2つ下のラッパーで、めちゃくちゃ天然でバカだけどラップはかっこいいし、めっちゃ元気を貰えます(笑)。彼の両親もプレイリストのことをかなり喜んでくれてたり、若い子達が僕や彼を見て頑張ろうって思ってくれてるのが伝わったり。そういうのがあると嬉しいし、もっともっと走ろうって思いますね!

Linobu

3月に出るEPでは、客演も誘いつつかなり手の込んだ内容になるように制作中です。お楽しみに!

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