【Who’s NXT】壱タカシ |「常に勉強を怠らないこと」深みのある歌声と多面的なサウンドで聴くものを魅了する新星SSW

2019.11.25


壱タカシ インタビュー

東京を拠点に活動するシンガーソングライター・壱タカシ(いち たかし)。ラップのスキルも持ち、専門的な音楽知識をベースにしたクオリティの高いトラックに、いつまでも聴いていたいと思わせてくれるような深みのある歌声を展開する要注目アーティストだ。今秋にシングル三部作を連続リリースし、異なる側面を持つそれぞれの楽曲からは、その音楽的な懐の深さと幅広さが感じられ、今後の活躍に期待が高まる。

Who’s NXT : A series of interviews with featured artists


壱タカシ

東京在住のシンガーソングライター。

洗足学園音楽大学を卒業後、一般企業にDAWを使った業務で携わる傍、つづき、JYAGA等のアーティストにラッパーとして客演で参加。2019年にシンガーソングライターとして活動を開始。自らを「壱タカシ」と命名し、作詞作曲からミックスまでほぼ全てのプロダクションを一人で行う。

 
——まず最初に、音楽に興味を持ったきっかけを教えてください?

小学校低学年の時に、地元の児童合唱団に入ったのが最初の音楽体験なのですが、その時の伴奏の先生にすごくカッコよくピアノを弾く先生がいて、その人に憧れたのが自発的に音楽を始める最初のきっかけでしょうか。休み時間に教室のオルガンを弾いたり、家にあったおもちゃのキーボードを弾いたりしていました。ピアノはずっと習っていなかったのですが、小学校5年生の時に、当時流行っていたポケモンの曲を耳コピするまでになって、さすがに親が「ちゃんとピアノやりたいの?」って聞いてきて。ようやくそこからきちんとした訓練を受けるようになりました。

 
——どのような経緯でミュージシャンとして本格的に音楽活動をするようになったんでしょうか?

大学で音楽を学んでいたのですが、在学中から実力のある同級生はどんどんアウトプットして、仕事をもらって、どんどん有名になっていって、そういうのを横目で見ながら、自分はあまりガツガツといけなくて。コツコツ勉強するのは好きだったので、ありがたいことにそのスキルをそのまんま活かせるところに就職出来て、順調に仕事をしていたつもりでした。でもやっぱり自分より若い才能がとんでもない曲を作っているのを見ると、いてもたっても居られなくなって、最近になって衝動的にアウトプット活動を開始しました。


壱タカシ インタビュー

 
——最新作とその聴きどころをご紹介ください。

2019年の秋に三部作という形で「はなむけ」、「気体」、「対岸」というシングルを3ヶ月連続でリリースしました。

「はなむけ」はピアノ弾き語りで一発録りしたものをそのまま形にしたのですが、レコーディング時は弾き語りという行為自体にまだ慣れていない時期でした(笑)。それでも、今までに培った打ち込みの技術とかを全部取っ払った、丸裸の自分の音楽を第一作目として記録したくて、お世話になっている先輩のスタジオに押しかけて、すごく状態のいいスタインウェイをお借りして録らせていただきました。本当に衝動的でしたね。あとで聴いた時、自分が下手くそすぎて編集しながら一回本気で泣きました(笑)。

それに対して「気体」と「対岸」は存分にDAWの力を発揮して作りました。トラックメイク上でのこだわりは、クオンタイズ(リアルタイムで打ち込みをする際にタイミングを修正する機能)を一切使用してないことです。全て自分の体から出てくるリズムを、修正なしでそのまま活かしました。何テイクも録りましたが…

でも今はどちらかというと作曲、編曲という行為に自分のアイデンティティがあって、どんなチープな音源で鳴らしてもカッコよく聴こえるようなものを目指して作っています。なのでコーラスとか聴いて欲しいですね。


壱タカシ インタビュー

「はなむけ」 各配信ストア : https://linkco.re/aqg33VsU


壱タカシ インタビュー

「気体」 各配信ストア : https://linkco.re/N5PSfZRq


壱タカシ インタビュー

「対岸」 各配信ストア : https://linkco.re/C1aT1q4G

 
——楽曲の制作はどのようにされていますか?

自分は机に座らないとアイデアが出てこないタイプの人間で、作曲はピアノの前に座って、適当に弾くところから始めます。他のことをしている時に降りてくるものはあまり信用しないです。なんとなくかっこいい、とか、ぼんやりとしたアイデアは採用しないことが多く、例えばコード進行一つとっても、どうしてこの進行にしたかったのか、自分で納得するまで考えてから採用しています。今秋にリリースした三曲はどれも コード進行 → メロディー → 歌詞 の順で骨格を作りました。今はアレンジ、ミックスまで自宅で行っていて、ボーカルのレコーディングはお世話になっている先輩のスタジオをお借りしています。

 
——まだ壱タカシさんを知らない人に、その特徴を伝えるなら?

全然上手くないけど、味のある歌声。あと、ヒゲが長い。

 
——これまでどういったアーティストに影響を受けましたか?

数えきれないほどいますが、壱タカシに影響を与えた、という視点で選ばせていただくなら細野晴臣さん、冨田恵一さん、mabanuaさんです。

細野さんは全ての面で憧れです。どのジャンルの、どの時代の作品を聴いてもいつも新鮮な驚きがあります。一生音楽を作り続けていたいなと思わせてくれた偉大な音楽家です。冨田さんの曲を分析した影響はかなり出ていると思います。グルーヴを追求するようになったのはmabanuaさんの影響が大きいです。

 
——音楽活動において、何か特に意識していることはありますか?

いかに今の本業と両立するか、でしょうか。音楽作品の発表自体がイージーになってきて、楽しみながら、仕事もしながら、クオリティも自分次第でどんどん向上していけるのが今の時代のいいところなので、その辺のバランスは常に考えていきたいです。あとは、常に勉強を怠らないこと。


壱タカシ インタビュー

 
——そういった意識の中で、リスペクト、あるいは共感するアーティストはいますか?

今はとにかく若いアーティストに刺激を受けています。崎山蒼志さん、長谷川白紙さん、君島大空さん、浦上想起さん…皆さん音楽にとことん真面目で、大好きです。自分と同じくらいか、少し上の世代の方だと七尾旅人さん、国府達矢さん、butajiさん。他にも沢山います。

 
——現在の音楽をとりまく状況についてはどのように感じていますか?

本当に面白いです。自分の知らないところでとんでもないシーンが出来上がってたりするので気が抜けないです。

 
——今後の活動の展望や予定は?

自分が「面白い!」と感じている人たちに少しでもアクセスできれば… 「ねえねえ、よかったら僕も混ぜてよ!」って感じです。そのための名刺としての作品をどんどん作っていきたいです。

 
——最後にメッセージや告知などがあれば。

最新作の「対岸」ですが、長崎に住んでいるシンガーでプロデューサーのJYAGAくんにリミックスを作ってもらいました。私のトラックに対する彼なりの返答は、少し暖かくて、ほんのり色づいた桜の花のようで、とても上質なスピンオフ作品を作ってもらった気持ちです。近日中にリリース予定なのでお楽しみに!


壱タカシ インタビュー |「常に勉強を怠らないこと」深みのある歌声と多面的なサウンドで聴くものを魅了する新星SSW【Who's NXT】

対岸 – JYAGA Remix(近日リリース予定)

 
直近のライブ告知ですが、壱タカシとしてのライブを11月30日(土)に新宿二丁目のbar EIGHTで開催されるDUBPOPNITE10というイベントの中で行います。DUBPOPNITEはその名の通りダブポップが好きな人たちが始めた、主に邦楽のダブポップ、オルタナポップ、シティポップなどをこよなく愛する人のためのラウンジパーティです。自分もこれまでにDJをしたり、ラップでショータイムに出演したりしていたのですが、今回は壱タカシとして初めてピアノの弾き語りをします。性別、セクシャリティ問わないどなたでもウェルカムなパーティなので是非お越しください。ゲストライブアクトとして、GOING UNDER GROUNDの松本素生さんがいらっしゃいます。


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