【Who’s NXT】Capote |「知性ゆえの野蛮さ」をコンセプトにしたサウンドを表現するクリエイターユニット

2020.2.1


Capote インタビュー

Capote(カポテ)

2019年、KoとAyakoにより東京都世田谷に建つ築31年のマンションの一室にて結成。

遊んでいる野生のサルたちを見て「知性と遊び」には相関関係があると気づき、「知性ゆえの野蛮さ」をコンセプトにしたサウンドを制作している。

エレクトリックな無機性と、声や物音などの有機性が、あざやかに共存する楽曲は、アンバランスで新しい感覚を提示する。(音楽の永遠性⇔食事や動植物の生命力)

2020年、1st EP『Capote Green』をリリース。


Capote インタビュー |「知性ゆえの野蛮さ」をコンセプトにしたサウンドを提示するクリエイターユニット【Who's NXT】

Who’s NXT : A series of interviews with featured artists


——最初にKoさんとAyakoさん、それぞれ音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

Ko : 週末になると両親がリビングで、ビートルズ、ユーミン、グレン・グールドなど、彼らの思い出のレコードをかけていました。子供ながらに再生の音量が小さいなと思っていました。集合住宅だったからかもしれません。

Ayako : 幼少期、父が運転する車のカーステレオから流れるJUDY AND MARYだったり、あとは電気屋さんでピアノ試奏会を見かけたことがきっかけで即はじめたピアノです!ピアノ曲だと特にメンデルスゾーン。

 
——Capoteとして音楽制作、音楽活動をやることになった経緯は?

Ko & Ayako : 2019年6月に引っ越した新居の壁がとても厚く、騒音による迷惑を気にする必要がなくなったので、音楽制作がスタートしました。


Capote インタビュー

 
——この度1st EP 『Capote Green』をリリースされましたが、改めてご紹介いただけますか。

Ko : EPに収録されている6曲すべてこの半年間でつくった曲になります。半年というのは短い期間なのでしょうが、『Capote Green』をつくっていくCapoteにとっては長い半年でした。このEPには、半年間のあいだCapoteの生活空間を通り抜けた一切の出来事・変化がたっぷりと染み渡っています。そんな楽曲たちを聴いた方がどのように感じるのか、楽しみに思います。

Ayako : 各楽曲の紹介は私が行いますね。

まず1曲目の「鳥」はPOPなメロディにCapoteらしいサウンド。「冬をこえて/ささやき声/無電柱の街/花がにおう」っていう冒頭の歌詞が我ながら大好き!6曲の中で唯一しっかりとした歌詞があり、このEPへの導入の役割も果たす曲。後半のボーカルを逆再生したエスニックなビートまでで1曲です。

次の「観阿弥 / 世阿弥」は、もともとは「Fennel」という曲名で、小動物やハーブをイメージした細やかでミニマムなサウンドでした。今回のEP収録のためにバージョンアップしたところ、人間の運動による色気を感じさせるようなダイナミックな出来になり、曲名もがらっと変えました。

続く「Drift (feat.Chihiro System)』は、ダブテクノミュージシャンChihiro Systemとの共作です。Capote初めてのコラボ作品となっていて、Chihiroくんのセクシーで温度を感じるビートに、Koのエッジーさや潔さがハマった一曲だと思います。

4曲目の「ウィンター・ライト (feat.Kaoru Kubota)」は、クリスマス直前につくったサウンドに歌をのせ、国道246号線を歩きながら録音した話し声をコラージュした作品です。イントロ(ガスコンロの着火音)と、それに続くコード進行が気に入っています。最後に、海の匂いのする4ピースバンド・ナツノムジナの窪田君にベースを弾いてもらい、温かみと厚みを足しました。

「愛するものをできるだけ多く表象しようと努める 第3部, 定理33, 証明」は、一転して抽象的なサウンドです。Koらしいダークで前衛的な作品。「レイヤードされた愛」がテーマかなと思います。編集していく中でまろやかな優しさが感じられるようになってきました。タイトルは思想家スピノザの著作より引用。

そして最後の「Roland Barthes (feat.NUL)」は友人でもあるNULとの共作です。NULのつくる思わずループしたくなる音響的素材は奥行きがあるので大きめの広場ができて、Koの音楽的運動神経も発揮できてるかと思います。この曲を作っている時は、NULくんがうちに遊びに来て制作したりして楽しかったな~。


Capote インタビュー

『Capote Green』 各配信ストア : https://linkco.re/cF0uGfFh

 
——楽曲の制作はどのような環境やプロセスで行っていますか?

Ayako : Koが家のブースで制作しています。私は歌や物音の録音で参加したり、流れてくるサウンドの感想やアドバイスを言ったり、環境整備(お茶をいれる、植物の手入れをする)したり。実際の制作はしないので、コンセプトや歌詞はつくってます。音楽制作以外のもろもろもやってますよ。

Ko : 焦るとうまくいかないので、制作が落ち着いて進むように気をつけています。まとまった時間を確保できず睡眠時間を削ることもありますが、経済的にリターンが得られない事(音楽制作など)に時間をかけることは、心の健康に必要だと思います。

作曲の発端は常にちょっとしたアイデアで、毎曲違うきっかけから始まります。例えば「このキーボードのプリセット23番の音が面白いから弾いてみよう」とか「Tychoのこの部分を切り出して延々とリピートしたらどうなるの?」とか「今日は悲しい気分に沈んでいるから、この心境でピアノを弾いて録音しておこう」とか「次は歌詞を入れてみよう」とか。アイデアを楽曲へと発展させていく作業は、難航するときもあればすいすい進むときもあります。「低音部に最低2つは楽器を入れなきゃ」とルールに縛られたり、「もっといい作品をつくろう」と気負うと難しくなっちゃいます。


Capote インタビュー |「知性ゆえの野蛮さ」をコンセプトにしたサウンドを提示するクリエイターユニット【Who’s NXT】

 
——まだCapoteについて知らない人に、その特徴を伝えるとするなら?

Ayako : 「エンドレスにいつでも聴ける、環境に溶け込むサウンド」です!展示やカフェやサロンなどのBGMにもなるような、心地よさを持っていたいですね

Ko : 音楽は「音響の連続」という物理現象に過ぎず、落雷・発芽・結露などの自然現象を超えるものではありません。しかし、音を出す人間の意志によって意味を持ち、自然とは違うフィールドに存在しようとしますよね。Capoteのサウンドは、結局は自然でしかないもの(=音)を用いつつもなんとか自然とは別のものを出現させてやろうという、ラディカルで絶望的な動機に基づいて制作されています。


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——その特徴的なサウンドを生み出すCapoteのお二人は、どんなアーティストに影響を受けてきましたか?

Ayako : フィッシュマンズとDavid Bowie、Arlo Parksです。

フィッシュマンズは、学生の時から何百回と聴いてきました。トランスしちゃうような、エバーグリーンなサウンドなのに歌詞や世界観はありきたりな毎日の生活や小さな変化をうたっていて、すぐ隣で同じ空間で話を聞いているような気分になります。後期にかけての30〜45分に1曲を引き延ばす試みも、日々の永遠を願っているようで切実です。

そしてDavid Bowie。ボウイはピエロでありスター。いつ聴いてもすっごく体になじむんですよね、過剰な感じはなくて。徹底したアクトやコンセプトにも惚れ惚れします。「ロックスター」として人生全部を舞台にしていて、表現や歌声はしっとりと命を削っている。「スタイル・ファッションとしての音楽」の最高峰ですよね。

Arlo Parksはとにかくかっこいい!ビターでセクシーでラブリーな楽曲たち、情熱的なハートとドライな達観。自分たちより下の世代のアーティストがクールな作品を更新いくことは、活動の活力にもなってます。

Ko : 自分は、Keith Jarrett、Jamie XX、Flying Lotusです。

Keith Jarrettは透き通った抒情性に影響を受けました。Frank Oceanなど、キース・ジャレットより新しい抒情をもったアーティストもいますが、キース・ジャレットおよび彼に影響を受けた多くのピアニストたち(Tord Gustavsen等)は、昔から聴いているぶん影響の度合いが大きいです。

Jamie XXの作品は、音楽をつくることの楽しさで溢れている感じで、もうそれだけで何もかもオールライトと思います。

Flying Lotusについては、ビートの気持ち良さというものを、彼のEPや『Los Angels』で知りました。「クールでさえあれば何だっていいよ、細かいことは関係ない」とでもいうようなモチベーションをなかなか失わない彼の姿勢も込みで影響を受けてます。勝手なイメージかもしれないんですが、Flying Lotusって、普段はキッチリしており、知的で、面倒見がよさそうですよね。そんな彼が音楽に対しては真逆な態度で臨んでいるというのは示唆的だと思います。

 
——音楽活動に関して、お二人が普段特に意識していることはありますか?

Ayako : お茶とお酒のストックおよび室内の植物を絶やさないこと。つまり根詰めず、息を抜く。Koはストイックすぎるところがあるので、楽しくやることを忘れない。

Ko : 重たいものを運ばないようにする。


Capote インタビュー

Capote インタビュー

 
——Capoteは今後どんな活動を予定されていますか?

Ayako : Capoteを始めてから新しく知り合った人との交流が増えて嬉しいです。二人とも学生時代は哲学を学んでいたり、文章を書くのが好きだったり、もちろん食事や手仕事が好きだったり…興味が多岐にわたるので、新しいことにもたくさんチャレンジしたいですね!

Ko : 自分を癒してくれる音を穏やかにつくっていきたいです。並行して、ライブをしたいです。自宅で制作するだけでは、聴いてくれるひととの直接の交流が起きずに寂しいので。また、他ジャンルのクリエイターとの共作の機会も探しています。このEPの制作を通じて、共作をするなかで受ける刺激の面白さに気がついてきたんです。共作における野心はふたつあり、1つ目は映像作品にサウンドトラックをつけること。2つ目は、ファッション系のクリエイターがコンセプトや価値観を提示する際にCapoteが音響面から関わることです。

 
——最後に何かメッセージなどあればお願いします。

Ayako : 先日アフリカにいきました。帰国後、39度以上の熱が出ました。専門病院で検査した結果、マラリアではなさそうですが、流行地域に行かれる際は蚊にご注意を。

Ko : 「Ko」はボツワナの小さな空港で、自分の名前がツワナ語?で「戸をノックする」を意味すると教わりました。ひとつ勉強になりました。


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