2018.12.7
ビートメイクは、今や信じられないほど手軽になりました。Type Beat(タイプビート)の普及でイメージに近いビートを一瞬で見つけることが可能になり(試しにYouTubeで「(好きなアーティスト名) type beat」で検索してみてください)、ビートのリースはいうまでもなく、アプリのみを駆使したトラック作りを特徴とするラッパーも多くあらわれています。クリエイターやミュージシャンは自分のスタイル、スタンスに応じた方法で日々曲をうみだしています。
このような状況においてグローバルで存在感を増しているのが、音楽制作プラットフォームサービスSpliceです。
DTMソフトやサンプル音源集の海賊版が出回っている現実に対し、Spliceは明確なアンサー「(有料) but (圧倒的な便利さ) >>> (無料)but (違法) + (手間)」を提示し、サービスを成長させています。
これはSpotifyが、はびこるパイレーツ音楽サービスを圧倒的な利便性で駆逐してきたように、Spliceもまた同様に、タダだけど違法なものをちまちま使うのがバカらしくなるほど利便性の高いサービスやコンテンツを提供し、クリエイターをバックアップしています。
本記事では、ビートメイクの際のひとつの方法として、世界で支持を得ているそのSpliceが提供するSplice Soundsで、サンプルオーディオを活用したビートメイキングのチュートリアルをお送りします。
記事内では、はじめての方も読めばすぐに曲が作れるよう、説明の画像をできるだけGIF動画にし、プロセスごとに比較できるようMP3音源を配置しました。すでにSplice Soundsを活用されている方も多くいらっしゃると思いますが、まだ使ったことがないという方は、この記事の説明をもとに、ぜひ一度グローバルスタンダードなビートメイクにチャレンジしてみてください。
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Splice Sounds とは?
「上位40パーセントの曲が私たちのプラットフォームで作られていたと知ってびっくりしました」とSpliceの共同創設者Steve Martocciが話すように、グローバルのトレンドとして楽曲制作の効率化が図られています。
Spliceが提供するサービスの一つである、Sprice Soundsでは、月7ドル99セントで100サンプルまでの著作権フリーの音源がダウンロードでき、それを自身の楽曲制作に自由に使用できます。もちろんロイヤルティーフリーなので、商用利用も可能です。
今回はSpliceの目玉コンテンツであるSplice Soundsを実際に使ってビートを作ってみようと思います。
どなたでも再現できるように、DAWはFL Studioを、音源ソフトは使わずにエフェクト類もサードパーティ製の物は使わずにFL Studio内で完結できるチュートリアルになってます。
10サンプルくらいで作ったので、DAWを買ったばかりの方でも再現していただけるかなと思います。
ちなみに完成するとこんな感じ。
では早速作っていきましょう。
さっそくサンプル音源を入手する
まずは Splice Sounds にアクセスします。
Recent Releases の欄に良さそうなサウンドパックを発見。
「Chilled Rnb & Soul」というサウンドパックをクリックすると、内容を詳しく確認できるようになりました。
ループ素材の波形がたくさんでてくるので、良さそうなサンプルオーディオをチェックしていくと…
この Rhodes のコードサンプル「Chord:LSCRS_Awesome_Rhodes_90BPM_Bmin.wav」が気に入ったのでダウンロードしてみます。
DAWソフト内に入れる
ダウンロードしたサンプルは、そのままDAWソフト内にドラッグ&ドロップできます。シーケンサーではこんな感じに。
さて、コード進行はサンプルによって完成しました!
ビートを組む
次はドラムを組んでいきましょう。
Spliceに戻ります。先程は Recent Releases の欄からサンプルパックにアクセスしましたが、サンプル別に、検索バーからソートしてサンプルを絞り込むこともできます。
早速検索バーに“kick”と入力してお気に入りのキックを探してみましょう!
お気に入りのキックを二つ「Kick1:OS_VTS_Kick_17.wav」「Kick2:LF_kick_06_v2」見つけました。これをレイヤーして使いたいと思います。
続いては同じ要領でスネアを探してダウンロードしましょう。
こちらも2つ「Snare1:JUST_snare_hard.wav」「snare2:JUST_snare_onion.wav」レイヤーします。
集めたキックとスネアをDAW内に並べてみます。こんな感じ。(Track 2 ~ Track 5)
ここまで出来上がった音を、いちど聴いてみましょう。
レイヤーしたスネアが少し浮いているので、ピッチを少し上げてなじませてみます。
するとこんな感じに。
ドラムとスネアとコードのみだと少し物足りませんね。グルーブが欲しいのでパーカッションを足したいと思います。
Spliceに戻り、検索欄に“Percussion loop”と入力
キック・スネアと同じように2つのお気に入りのサンプルを手に入れました。
「percussion1:KRS_percussion_loop_03_69.wav」
「percussion2:SCVNGR_percussion_loop_sticks.wav」
まずはじめに1つ目のサンプルを入れます。
プロジェクトのBPMの設定が最初のコードサンプルのBPMと同じ90になっているので、BPM90に合わせます。(FL Studioに付いている Fit to tempo タブでBPMを簡単に調整できます)
聴いてみましょう。
すでにお気付きの方もいらっしゃるかもしれませんが、Splice soundsではループ素材などにあらかじめキーやBPMといったメタデータが入力されているものが多いです。これが非常に使いやすいです。
例外もあります。この二つ目パーカッションのループです。
BPMはわかりませんが、チョップして無理やり使ってみます。これを合わせる方法もありますが、今回はズレ感を狙って編集していきます。
聴いてみるとこんな感じ。だんだんそれっぽくなってきましたね!
ベースを入れる
ビートはいちど置いておいて、次はベースを追加してみたいと思います。
Spliceに戻り、“BASS one shot”と検索
One shotと調べると単音一発のサンプルファイルがたくさんでてきます。
「Bass:RT_Firelights_Bass_Short_6_Bass_Bryan_Percivall_121_G_Major_one_shot.wav」
いい感じのベースのサンプルをFL Studioに追加し、ADSRをいじってサンプルのキーを基本のC5からサンプルのメタデータであるGに合わせます。
こんな感じ。
ではピアノロールを使って打ち込んでみましょう。
こんな感じになりました。
音はこんな感じ。
ここまでざっと足してみるといまこんな感じです。
少しローが物足りない気がするので、808のサンプルをサブベース代わりにして
ベースのループに足してみましょう。
ここからの流れも前回と同じで、Spliceに戻り“808sub”で検索するだけ。
今回はアタック感が欲しかったので808のサンプル「808:ZAY_808_05_E.wav」を使いたいと思います。
FL Studioに足して、ベースと同じくADSRとキーの設定。midiはそのままコピーしました。
FL Studio付属のEQ(なかなか優秀)で元々のEQとのかぶってる帯域をローパスモードでバッサリ切っていきます。
キックと帯域の住み分けができ、かつアタック感が殺しあわないように、キックをトリガーにベース二種類にサイドチェインをかけていきます。
最終的なパラメータはこんな感じ。
サウンドに個性を出す
コードとドラム、ベースでサクッとですが形になりました。でもまだ寂しいです。
このままだと非常にシンプルかつ外しがない普通のビートなので、このビートに何を足すかというインスピレーションが次に大事になってくると思います。
Spliceに戻りましょう。
Splice Soundsではアーティストとコラボしたサウンドパックのリリースも定期的に行っています。
僕の大好きなQrion氏のサウンドパックがリリースされていたのでインスピレーションを求めてチェックしてみましょう。
とてもいいループを見つけました。現状のトラックとは少しニュアンスが違いますが、もし違和感なく交われば、そのコンプレックスが面白くなる気がします。
Lead1:QRION_synth_loop_plucks_03_120_E.wav
キーとBPMを合わせて早速プロジェクトに貼っていきます。
とてもいいムードが漂いだしました!!!
もっとおもしろくできるかも!とリバースして並びかえることにしました。
こんな感じ。
聴いてみるとこんな感じ。とっても良くなったと思います。
しかし、まだ何か足せる気がします。
Qrion氏のサンプルパックのおかげでめちゃくちゃミステリアスな雰囲気が漂いだし、インスピレーションが湧いてきました。このようにアーティストのサウンドを落とし込めるのもSplice Soundsの面白いところだと思います。
Spliceに戻り【Vocal】と検索、SpliceではVocalのサンプルも配布しています。
見つけたボーカルサンプルを刻んで作ったVocal chopを足してよりアンニュイなサウンドを追求していこうと思います。
Vocal sample:KARRA_vocal_hook_wet_all_i_want_mix_113_C#m.wav
プロジェクトにドロップしてキーを合わせて少しチョップしてエディットします。
こんな感じ。
音で聴いてみるとこんな感じ
少しブツブツ切れているので
fruity comp・frutiy chorus・frutiy delay3・fruity reverbで加工していきます。
コンプのパラメータはこんな感じ。
それ以外のプラグインはパラメータをいじらずdry/wetのみで調整しました。
聴いてみましょう。いい感じだと思います。
パーツが出揃ったのでこれを足し引きして展開をつくってみました。
新たにtomのフィルインのサンプルとクラッシュシンバルのサンプルも探して足しました。
Fill:DECAP_percussion_wake_up_tom_fill.wav
crashcymbal:SONNY_D_percussion_13.wav
※fillのサンプルは半分に切って使っています
こんな感じ。コピーペーストして所々ひいていった感じです。
こんな感じで一旦完成としたいと思います。
完成はこちら。
どうでしょうか。あんまり難しくなかったなと思っていただけたら嬉しいです。
Splice Sounds のメリット
200万以上のサンプルオーディオ、ループ、FX、アーティストサンプルパックを月額$7.99より入手可能です。紹介で使用しているDAW「FL Studio」は1.5万円ほどで購入できます。これだけでビートメイクは簡単に始められます。
膨大なサンプルカタログから欲しい音を探し出して取り入れていくことが、こんなにも簡単にできちゃう時代になったのは素晴らしいですね。Splice Sounds は使いこなせたらかなりいいサービスだと思うので、もし興味があったらぜひ使ってみてください。