Shurkn Papインタビュー ”Trap City HIMEJI” 姫路の注目クルーMaisonDeから、貪欲に音楽を愛する新星ラッパー
先日リリースされた新鋭レーベルAOTLのコンピレーションEP『X-FACTOR』にも参加、客演の数も増している若手注目ラッパーShurkn Pap。兵庫・姫路のクルーMaisonDeに所属、今年6月に公開された1stEP『Various』からの「Road Trip」のMVは、関係者をはじめ耳の早いリスナーから急速に注目を集めました。幅広くサウンドを吸収しながら活動をさらに加速させているShurkn Papに、現状やこれからの展望についてききました。
「Road Trip」へのリアクション
——今年の6月に公開された「Road Trip」でさらに注目されるようになったと思うのですが、それに関してどのように感じていますか?
やっぱ嬉しいですね。自分のことを知ってくれる人が一人でも増えるっていうのは。色んな方からご連絡もいただくようにもなって。
——地元の姫路でも声をかけられるようになりましたか?
いえいえ、まだ全然そんなことないんですけど、ちょっと面白かったのが、いつも行ってる地元のラーメン屋の店長さんに「あれ、自分Shurkn Papやんな?」って急に話しかけられて(笑)。「あ、そうです」って答えたら、「めっちゃ聴いてるで!」って言ってもらえたのは嬉しかった。そういうことは、ちょっとは増えてるかもしれないです。
——全国的にも認知が広まっているようですね。
最近はライブでも色んなところに呼んでいただくことも増えて、本当にありがたいです。
—— 今年は既にEPを2つリリースされていますが、やはりShurkn Papさんの音楽的なバックグラウンドの幅広さから、『Various』、『Various2』というタイトルになっているんでしょうか?
その通りですね。”様々な”っていうタイトルにしたのも、色々なジャンルを集めた”Various Artists”っていうカタチがありますけど、ああいうのを一回一人で作ってみるのも面白いなと思って。自分も、サウンドとしては流行りのヒップホップばっかり追ってるわけじゃないですし。
楽曲制作について
——作品のプロデュースはどのようにされているんでしょうか?
MaisonDe(※Shurkn Papも所属する兵庫・姫路の幼なじみ8人組のクルー)の作品も含め、自分たちだけでやっています。
——ビートやトラックは、自分でYouTubeからとお聞きしましたが。
そうですね、YouTubeで探して、リースするっていうのが今は多いですね。
——いつもレコーディングするスタジオがあるそうですが。
“HLGB”で、”ハローグッバイ”って読むんですけど、 HLGB STUDIOっていうところがあって。そこのエンジニアのDa.I(ダイ)くんが、音楽制作の技術的なところはやってくれてます。こっちからエディットの要望を伝えたり、Da.Iくんからも、”ここはこうした方がいいんちゃう?”みたいなアドバイスもくれたり、そういうやりとりをしながら録ってます。
——HLGB STUDIOのDa.IさんとMaluMeloさんは、KNOTTとしても活動されていますが、お二人から楽曲の提供はあったりするんでしょうか?
KNOTTさんとは「The WEEKEND」っていう曲を一緒にやらせてもらいました。その時は「こんなビート出来たんやけど、どう?」っていう感じでお話をいただいて。
——HLGB STUDIOを使いはじめたきっかけというのは?
MaisonDeの太陽と、滋賀のラッパーのSWILLOWの二人で三年ぐらい前にフリーEPをHLGB STUDIOで作ってて。その時に一緒についていってたんです。その頃はまだDJやってたんですけど(※Shurkn Papは2013年頃からDJ Koodyとしての活動も)、二人の動きをみたり、そういうスタジオを知ったのをきっかけに、ちょっと自分でもやろうかなって。それで、YouTubeサーフィンしてたらType Beatを見つけて。これはええなと思って、Type Beatを使って一人でばーっと作って、それから自分でDa.Iくんに連絡とってレコーディングしはじめたっていうのが始まりですね。
——では、今までの音源はHLGB STUDIOで録ってるんですか?
はい、基本的にはそうです。
——ヒップホップだとプロデューサーさんのスタジオがあって、シーンのつながりとかで紹介も多かったりすると思うんですけど、そうではないんですね。
そうですね。Da.Iくんも自分と聴いてる音楽が似てるところがあって、ヒップホップだけじゃなくて、例えばオルタナとかもめちゃ好きみたいな。だから、色んな意見交換しながらやってる感じです。
「スウィングや歌謡も面白い」
——聴いてる音楽の幅広さって、具体的にどれくらいレンジがあるんでしょうか?
ジャズから、アシッドジャズ、ファンク、ジャズファンク、ソウル、R&B、オルタナ、ハウス、トロピカル、EDM、ヒップホップ、レゲエ、ロックやパンクまで、洋楽邦楽問わずで、あとアニソンもぜんぜん聴きますよ。
——本当に多岐に及びますね!
適当にネットをサーフィンして、自分の好みにひっかかったものがあったら全部かじりにいくくらいの勢いで。
——音楽を聴く環境はストリーミングを使ってますか?
ストリーミングですね。あと、父親のレコードとかCDを適当に引っぱりだして聴いたりもします。
——「Road Trip」に続くMusic Video「Bout Music」も拝見しましたが、冒頭でEarth, Wind & Fireのヴァイナルのジャケが映し出されたり。
あの辺も大好きで、最近はディスコミュージックが僕の中でアツいんです。小学生の時はわけわからんなって感じやったんですけど、色々な音楽を通過した上でもう一回聴きなおしたら、これは好きなやつやって再認識しました。
——ちなみに、あのMVのロケーションも姫路なんですか?
姫路の手柄山っていうところです。家の近所にはあんな感じのロケーションがたくさんあって。なんてことない山なんですけど、小さい頃からずっと遊んでるところで、今でも週2〜3ぐらい行くかも(笑)。夜景がめちゃ綺麗なんで、chillスポットになってたり。
——昔からたむろっていた場所なんですか?
たむろするっていう感じでもないんですけど、普通に「手柄山行こうや!」みたいなノリで集まるみたいな(笑)。
——MVのディレクションはKosk was hereさんが手がけられていますが、どういったつながりなんですか?
神戸にNo name’sっていう同い年のラッパーがいるんですけど、彼らのMVの質感とかがめちゃ好きで。それを手がけてるのがKosk was hereさんだってことを知って、自分もやってもらいたくて紹介してもらいました。
——ビデオのイメージはShurkn Papさんから?
いや、野外に仮想の部屋を作ろうっていうアイデアはKosk was hereさんからで、後はロケ地でノリで撮ってみようかっていう感じでした。
——音源の話に戻りますが、作品を作るときにコンセプトやテーマを考えるほうですか?
『Various』では自分自身のスタイルに迷ってて、さっきも言ったみたいに作っていくうちに色んな要素の曲ができちゃったんですけど、このまま色々な楽曲があるっていうスタイルって誰もしてなさそうやし、あえて面白いかなって。寄せ集めやし”Various”でいいわと思って。作りたいと思った感情そのまま、って感じです。
——MaisonDeの8人での活動と、ソロでの活動で意識の違いはありますか?
MaisonDeではMaisonDeとしての色をだして、各人のソロは自分の好きなことを表現してる感じですね。みんながそれぞれの路線でやることで、クルーとしての幅も出てくると思うし、MaisonDe自体を知ってもらえる機会も多くなると思うんで。それこそ自分の場合は、音楽の好みや特性をソロ活動でどんどん出していきたいですね。
——幅広い音楽性の中でも、さらに今後チャレンジしてみたいジャンルやサウンドはありますか?
スウィングはやりたいです。でも、ただそのままやるんじゃなくて自分のスタイルに落とし込んだカタチにしたいっていうのはあります。他は80年代ポップス、ホール&オーツの感じとかを、独特のエフェクトを使って今っぽくしたり、敢えて逆に一曲くらいはそのまま再現したりとかも考えてて。あと日本の歌謡や演歌も、コブシをまわす感じも今すごく面白いと思ってます。竹内まりやさんの「プラスティック・ラブ」の盛り上がりも興味深いなって。
——あまりシーンのトレンドは意識しないほうですか?
そうですね。繰り返しですけど、自分の色を出していけたらいいなと思ってて。もしかしたら、ある程度まわりを見た方がいいのかもしれないんですけど、そこにとらわれ過ぎたくないし、自分なりにいきたいなと。
——曲を作るときにインスピレーションを受けることは?
基本的には自分が興味のあること、好きなことを題材にして書くことが多いです。例えば「In My Room」だと自分の部屋に関することだし、「Road Trip」も運転が好きだっていうそのままで。「John Wick」も映画ですし。
——ちなみに直近で興味があることってなんですか?
読書ですね。それこそちょうど最近、本を改めて読んでみようかと思って。今毎日少しづつですけどコツコツ読んでます。本、面白いですね。
——ちなみに、何の本を読んでるんですか?
今読んでるのはマーケティングの本です。やっぱりそういうところも知っておいて損はないと思うんで。
——次の作品では、プロモーションなどでそういった知識が活きそうですね。
そうできたらいいなとは思うんですけど、いきなりエキスパートになるのは絶対無理なんで、一つ一つその時の課題を自分なりに分析してやれたらなと。
時代を意識したリリーススタイル
——そういった意味でMVや音源をデジタルでリリースするタイミングなどは、どうお考えですか?
これからは長いスパンで見つつ、目標から逆算してリリースタイミングや情報の公開をしたくて。そういうことも意識できるよう考え方をシフトして行こうと、今はもがいていますね。
——1st EP『Various』はミックステープサイトで公開されていましたよね。(※その後、Apple Musicをはじめとする配信ストアでも配信)
そうですね、Datpiffで。YouTubeでも公開しました。
——『Various 2』は、普通にApple Musicをはじめ配信ストアでリリースされていましたが、1stと2ndで、その違いは何か理由があったんですか?
今ってみんなどうやって一番音楽を聞いてるんやろって考えたときに、やっぱスマホやなと思って。1stはDatpiffとかで出したんですけど、ヒップホップが好きならそういうサービスや、それこそSoundCloudとか使うと思うんですけど、もっとライトな音楽好きな人だったら、やっぱりApple Musicとかが今は多いなと思って。それは、地元の音楽には関係ない普通の友達に意見を聞いてもそうだったし。だから、みんなの日常にスッと入り込むよう音楽を届けるならストリーミングで出した方がいいなと改めて思ったんで、この間のリリースからストリーミングにしました。
——盤でのリリースとかは考えなかったんですか?
これから絶対ストリーミングの時代だと思っているんで、盤はぜんぜん考えてないです。まぁ、できた曲の演出というか、例えば80’Sっぽい曲ができて、その雰囲気を出すためにヴァイナルを切るっていうのは面白いかもしれないんですけど、基本はストリーミングでいこうと思ってます。
地元・姫路への想い
——今の活動スタンスはインディペンデントですよね。レーベルに所属するご予定とかは?
今のところはないです。当分は自分たちでやっていこうかなと。頑張ります(笑)。
——ライブの本数も増えてきていると思いますが、地元とその他の地方、東京のお客さんの違いとかありますか?
お客さんは違ったりはするんですけど、僕はまだ場所がどうこうよりも、ライブ毎に出てくる課題を一つ一つクリアしていくっていう段階なんで、今はひたすらレベルアップに専念するだけですね。
——地元の姫路は、かなりカオスだと伺ったんですが、どのような意味でカオスなんですか?
空気感が違うのかな、自由というか。自分もよく分かんないですけど、なんかすごいんです(笑)。イベントにもよるんですけど、とにかく年齢層もバラバラだし、いろんな人がいて。若い人はもちろんですけど、地元のおっちゃんとかも多いし、外国人の方とかも増えてて、本当にいろんな人がいるんです。音楽の趣味も、ヒップホップだけ聴いてるって感じの人ばっかりでもなくて、むしろ興味なさそうな人もいてるし、逆にその辺が面白いのかなって。
——そういった姫路の多様性が、Shurkn Papさんの音楽の多様性に反映されているのかもしれないですね。姫路のローカル性は意識してますか?
やっぱり地元は、生まれ育った大好きな場所なんで、大切にしないといけないなと思ってます。姫路に帰ってくると落ち着くんですよね。本当に好きです。
——関西のシーンはいかがですか?
DJをやってたってこともあって、関西全体で仲いい人や遊んだりする人はけっこういてます。
——客演も増えているようですが、そのきっかけも交友関係からですか?
そうですね。それでノリでその場で作ったり。「こんなビートあるんやけど一緒にやらへん?曲作ろうや!」みたいな感じでやらせていただいてます。
——“関西”ってひとくくりに考えてしまいがちで恐縮なんですが、きっと、例えば大阪と姫路をとっても、二つは全然違うシーンだったりするんですよね?
全然違いますね。距離的に遠いっていうのもあるし、カルチャーもぜんぜん違うし。”関西”ってひとことで言っても、それぞれの土地で色んな面があるんで。
音楽は救いでもあるし、心の底から好き
——また、ファッションがお好きだということで、Shurkn Papさん的にファッションやデザイナーでのスターっていますか?
全然いないです。かっこいいなっていうのはありますけど、ファッションに関しては自己満足というか、自分が好きなものだったらなんでもいいなと思ってるんで。目指してる人とかもいなくて。だから、例えば出かける前に、ちょっと服で気になるところがあったら、すぐ縫ったりしますし。”ズボン細くしたろ、安全ピンで留めてまえ” みたいな(笑)。
——ファッションでのこだわりは?
それも本当にその日の気分、気持ちですね。あるとすれば、自分で何か手を加えたものをワンポイント入れたりするっていうのは無意識にやってるかもしれないです。オレンジ色が好きなんで、ライブ用の衣装とかにオレンジ色のパッチワークを入れたりとか。
——音楽やファッション以外で昔から好きだったことってありますか?
スケボーかな。あと、外で遊ぶこと(笑)。絵を描くのも好きでした。あと習字六段なんですよ。これは自慢なんです(笑)。まぁとにかく、楽しそうなことは手当たり次第にやってた気がします。ダンスもやってたし。
——好きな世界観とかは?
お笑いとかコメディーは好きかな。あとちょっとズレますけど、自然が好きで。草原とか。季節でいうと、冬がめっちゃ好きなんです。やっぱり空気が澄んでて、景色が綺麗だし。
——ウィンターボーイなんですね(笑)。
冬服も好きやし、タバコもコーヒーも美味しいし。冬が近づくにつれて冬っぽい曲もできたりするんですよね。
——感情や気持ちと結びつくのはいい音楽のあり方ですよね。
なんていうか、その歌を聴いたら思い出や場所の匂いが蘇るとか、そういうふとした瞬間がすごいいいなと思ってて。そういうことができる楽曲が、一番いい音楽の形なんかなって思ってます。人の価値観にすっとインプットできる音楽って素敵やなと思いますし、単純にテンションがあがる音楽とかもあるじゃないですか。そういう音楽を作りたいなと思ってます。
——ご自身にとって音楽ってどういう存在ですか?また、音楽をやるモチベーションというのは?
音楽は救いでもあるし、やっぱり心の底から好きなんで。とにかくそれだけですね。イヤフォンなかったら生きていけへんなって思うほどなんで(笑)。だからもう音楽が好きすぎて聴いてるだけじゃとどまらなくて、今音楽をやる側にいるというか。ある種、変態かもしれない、音楽に対しては(笑)。
Shurkn Pap
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2018.12.1更新