Coming Freshers 2021 ― THE MAGAZINEキュレーターが選ぶ2021年注目アーティスト

2021.1.1

インディペンデントアーティストの活躍が鮮明になった昨今、新しい価値観がもたらされ音楽の世界でも大きな変化が進行しています。そんな中、力強いスタンスで活動するインディペンデントアーティストをメインに日々最新・最先端の要注目アーティストをいちはやくキャッチアップ&発信しているミュージックスクワッド・Coming Freshers。THE MAGAZINEのApple Muiscオフィシャルキュレーターページでプレイリスト「イツマデモフレッシュ」を毎週更新している彼らは、単なる数字や話題にとらわれることなくひたすらストイックに楽曲と向き合い、そのフラットかつ鋭いキュレーションから、「最初『イツマデモフレッシュ』に選曲された時は無名だったアーティストが、その後注目されるようになる」といったことも珍しくなくなりました。

今回、そんな高感度&確かなセンスを持つComing Freshersとそのキュレーター(HC、dezao、Cyne PL、リク、hzm)が2021年に活躍が期待される注目のアーティストをコメント付きでそれぞれ紹介、年のはじめに是非チェックしてみてください!


Coming Freshers 2021 ― THE MAGAZINEキュレーターが選ぶ2021年の注目アップカミングアーティスト

 
【curator : HC

フレッシュな勢いで突き進む5MCのヒップホップクルー
Sound’s Deli

今沢山のクルーが出てきている日本のヒップホップのシーンの中で、一際輝きを放っている若手のクルーがいます。それが今回紹介させて頂くSound’s Deliです。
 
彼らは22歳と23歳のメンバーで構成されている5MCのヒップホップクルーで東京、下北沢を拠点に活動。彼らは2019年の夏にクルーを結成。
 
そしてここからの経歴に僕は驚きました。2019年の12月にアトランタのトラックメイカーCash Fargoのプロデュースで、一作品目のEP『¥ellow Ca$h』でデビュー。Cash Fargoと言えば、Curren$y、Larry June、Fendi PなどJetLifeとその周辺のアーティストに関わっているプロデューサー。そんなプロデューサーが携わってのデビューなんて中々日本ではないと思うのでかなり驚きましたね。そして2020年の5月にリリースしたシングル「Platinum Chain」は、あのGRADIS NICEがプロデュースでもう驚きの連続です。フレッシュな勢いで異才を放ちながら突き進んでいるSound’s Deliですが、そんな彼らの楽曲もまた惹き付けられるものがあります。
 
今USのヒップホップシーンでの流行りは、Trapや、メロディーが強いフロウ、オートチューン、ドリルなど、沢山のジャンルがあります。日本のラッパーたちも同じくその流行りに合わせて曲を出していますが、Sound’s Deliはそれとは異なる立ち位置にいるアーティストだと思います。他のアーティストと同じくTrap要素もあるかと思いきや、90’sのBoomBap要素もあったりと、今風の良さと昔ながらのヒップホップの良さが混ざった様な印象で、他のアーティストにはない良さが曲に詰まっていますね。そしてプロデューサーによって変わるトラックにも柔軟に対応をしていて本当に若いのに多才。あと一人一人のラップのスキルの高さと、全員声質がすごく良いですし、その上で耳に残るフロウが聴いていて心地良いです。
 
そして2020年の7月にリリースしたEP『RUMBLE』は、上記で説明した内容が全て詰まったEPになっていると思います。「Sound’s Deliのオススメの曲は?」と聴かれると全ての曲が良いので正直選ぶのが難しいのですが、まずはこのEP『RUMBLE』を聴いて頂ければ絶対に彼らのファンになると思います!
 
今回ヒップホップシーンでフレッシュな勢いのまま突き進んでいるSound’s Deliを「2021年活躍しそうなアーティスト」に今回選ばせて頂きました!更に今後の活動に期待をしています。このテキストを読んで頂いた方は、是非Sound’s Deliを要チェックでお願いします!!
 
ありがとうございました。
(HC)

 
 
【curator : dezao

DRC所属、幅広いスタイルを行き来する新鋭ラッパー
homare lanka

𝙝𝙤𝙢𝙖𝙧𝙚𝙡𝙖𝙣𝙠𝙖 · 皆寂 minasami

2020年8月にリリースされた「LAID BACK feat. 田我流」が記憶に新しいビートメイカー・Ryo Kobayakawa、12月にリリースされたアルバム『NEYOND』が好事家の間で話題となったラッパー・NEIなどを擁する名古屋市南区のヒップホップクルー・DRCに所属する22歳のラッパー・homare lanka。
 
英詞を織り交ぜながら時にクールに、時にメロディアスに、時に荒々しくスピットする幅広いスタイルを行き来しながら、リリックに散りばめられた強烈なパンチラインには決して順風満帆ではなかったであろう彼の人生が垣間見える。
 
作品はまだ少ないが、とりわけ2019年にRyo Kobayakawa & homare lankaとしてリリースされたEP『19X8』の収録曲「CUBICLE」、同じく2019年リリースのRyo Kobayakawa「Jackie high (feat. COVAN & homare lanka)」、そして2020年3月にSoundCloudにアップロードされた「皆寂」には前述した彼の持ち味が遺憾なく発揮されている。
 
2020年は目立った活動が少なかったものの、名古屋を中心としたライブに加え、「皆寂」のバイラルヒット、ラップスタア誕生のオーディション動画で大きなインパクトを与えるなど、一部のヘッズやプレイヤーからの注目度は確実に高まってきている。彼の名が日本中に轟く日はそう遠くない。
(dezao)

 
 
【curator : Cyne PL

圧倒的なプロデュース能力と幅広いトラックメイクの実力
Homunculu$

GREEN ICEレペゼン、和歌山を拠点とし活動するプロデューサー、トラックメイカーHomunculu$。ヒップホップでは、プロデューサーと言われる人達も単純にトラックメイカーを指す場合も少なくないが、彼はトラックメイクもこなすプロデューサーである(他にもジャケットアートワーク、PV、リリックを書く場合もあるとか)。
 
2020年はGREEN ICEでデビューからプロデュースしてるTOFUの活躍や、Young Zetton 、Bigsos、Jin DoggというDirty関西勢のシングル「奇襲」へビート提供し話題となったが(2020年12月末現在PV再生回数は約9.3k)、筆者が1番くらったのがYoung Zettonの2020年12月にリリースされたEP『Delicate』である。Homunculu$トータルプロデュースで、いわばYoung Zetton x Homunculu$名義のような作品であるのだが、Young Zettonのラップの特徴に合わせてトラックをTrapからGarageのリズム作り直すなどし、結果新しいサンウドを作り出し、Young Zettonの魅力も今まで以上に引き出した素晴らしいEPであった。
 
現在24歳と若手と言われる世代の中で光る、圧倒的なプロデュース能力と幅広いトラックメイクの実力を武器に、色々なアーティストと化学反応を起こし2021年も駆け抜けてほしい。
(Cyne PL)

 
 
【curator : リク

R&Bをルーツに進化を続けるヒップホップ・ユニット
MIRRROR

2018年に東京で結成、翌2019年には2月に1st EP『what it was』をリリース、Spotifyの急上昇チャートにランクインするなど俄にリスナーからの注目を集め、同年FUJI ROCK FESTIVAL’19にも出演を果たした注目のヒップホップ・ユニットMIRRROR。
 
カリフォルニア州ベイエリアで育った2人が始めて出会ったのは、意外にも渋谷にあるナイトクラブVisionだったとのこと。そこからすぐに意気投合しユニットを結成。確かなスキルに流れるようなフロウのTakumiと、艶っぽいウィスパーボイスのMei。2人の音楽の原点はR&Bであり、ヒップホップのリズムとR&Bの艶っぽさが絡み合う実に心地よいサウンド。
 
2020年2月には2nd EP『POLARIZE」をリリース。また、あわせて制作されたEP全曲を合わせた1つのショートフィルムでは、前半部分を東京、後半部分はLAを舞台にして撮影され、楽曲がストーリーとして表現されている。映像のディレクションでは、東京のシーンでは映像作家・山田健人氏が、LAのシーンではInterscope Recordsなどの映像を数々手がけているKenny Okagaki氏が担当。
 
2020年12月にYENTOWNのkZmとコラボした「back n forth」を発表。ハウスのトラックに2人の東京らしさを乗せたサウンドは聴き心地が良く、今後の更なる活躍を予感させる作品に仕上がっている。
(リク)

 
 
【curator : hzm

所属するそれぞれのアーティストから目が離せないクルー
BSTA

KillaのメンバーでもあるBLAISE、S TILL I DIE、須田修矢(ex. Sad Weekend)、$AINT STØNE(ex. Jay Ice)、他にも複数人のクリエイターなどから結成された東京のクルー。
 
これまでに配信シングルでNo Flowerプロデュースの「KAMINARI」、OVER KILL(FUJI TRILL & KNUX)との共作である「BSTA SMOKING DOPE」、SoundCloud上にEPの『BRAT TAPE1』、『BRAT EP』などをリリースしている。なお、InstagramのBSTA公式アカウントを見たところではBLAISEとS TILL I DIEは現在クルーを離脱しているようであるが、ラッパー/シンガーの4人それぞれが優れたアーティストであり、それぞれの作品への客演などの関係は継続しているため、ここではあえて1つの枠組みとして取り上げさせてもらう。
 
BLAISEは2020年にKillaのYDIZZYとのEP、自身のソロEPを2作、guca owlとの共作EPなど様々な作品を発表した。一聴でインパクトを残す超低音の声を武器に、タイトなラップから歌に寄せたメロウな楽曲まで音楽性を広げている。とくにguca owlとの作品は両者の個性がうまくマッチした独自性もクオリティも高い作品となっている。また、現在視聴できなくなっているが、Pop Smokeの「Dior」のビートジャックは声質も相まって「日本のラッパーがやるならBLAISEしかない」というハマり具合であり、ドリル系の楽曲への適正も垣間見させた。
 
S TILL I DIEは、低音の声とフローのオリジナリティを持ち味とする。ソロとしては2020年後半に1st EP『TILL I DIE』とシングル「Same」を立て続けにリリースした。EPは客演にここで取り上げた他の3人も参加したスキルフルなラップを聴かせる一作に、シングルはギターのループするビートと声質の相性が抜群のエモーショナルな一曲に仕上がっている。
 
須田修矢はラップと歌を分け隔てなく行き来するリズム感、リスナーの感情に染み入る歌声とリリックが魅力的なシンガーだ。昨年末リリースされた1st EP『YOU』はunderratedな傑作となっており、聴いていない方には是非チェックすることをお勧めする。12月25日にはBLAISEも参加した新作EPの『ME:』をリリース。YouTubeで先行公開された「Light house」は4つ打ちのビートに歌が絡まる新しい路線の楽曲となっており、音楽性を広げてさらに進化した作品を届けてくれている。
 
$AINT STØNEは、巧みなフロウによる耳通りの良い英詞のラップを武器としており、BSTAの作品においてその存在感は際立っている。ソロ活動では先日1stソロシングル「STAR DUST」をリリースしたばかりで、浮遊感のあるビートとラップが絶妙にマッチした一曲となっている。2021年はさらなる作品のリリースを楽しみにしたい。
 
BSTAというクルー自体の活動が今後見られるかはわからないが、属していたそれぞれのアーティストが関わり合いつつソロ活動でのレベルを上げており、一つのまとまりとして要チェックであることに疑いはない。彼らの2021年の動きには大いに期待したい。
(hzm)

 
 
【curator : Coming Freshersの中の人

ビートメイクもこなすBRIZAのメンバー
KENSEI

静岡出身の23歳、現在はFUJI TAITO率いるBRIZAのメンバー。
 
自分が2020年Apple MusicでBRIZAを1番聴いていたので、BRIZAの中からKENSEIを選ばせていただきました。はじめてKENSEIを見たのは3〜4年前、昨年無くなってしまったクラブ池袋bedで開催していたイベントblockで、会場に着いた時「なんかめっちゃイケてる奴がライブしてるわー!」と思ったらそれがKENSEIでした。その後BRIZAに加わり、尖ったイメージとはまた違う大人なサウンドの作品も増えたと感じます。知らない方もいるかもしれませんが、KENSEIはビートメイクもでき、FUJI TAITOとのMVも話題を呼んだ「Revenge」はKENSEIのオリジナルビートですし、最近の作品だと「Fast Lane」もKENSEIがプロデュースしています。
 
本人曰く、2021年は今までにない楽曲にチャレンジしたり、ソロをはじめ作品もたくさん出すようなので楽しみです。
(Coming Freshers)

 
 
【curator : Coming Freshersの中の人

言葉にできない“何か”を感じさせるNewシンガー
Mei

千葉出身の25歳、2020年5月に「最初で最後のラブソング feat Mei」を初リリース、11月には自身の名義で1stソロシングル「My Heart Cries」をリリースしています。
 
もともと女性シンガーを探していて、めちゃくちゃディグってた時に友人のインスタからMeiちゃんを知りました。彼女の1stシングルはどこか平成の懐かしさを感じさせる楽曲で、ビジュアル含めビビっとくるものがありました。それで、すぐにコンタクトして、その日の夜には電話もし、週末には千葉まで会いに行きました。そうせずにはいられないほど、何か言葉にできないものを強く感じさせてくれるシンガーです。彼女は写真家でもあり、こだわりを持ちながら妥協することなく自分のイメージを追求していて、久しぶりにこういったテイストの楽曲を歌える女性シンガーに出会いました。2021年にリリース予定のEPを現在制作しているそうで、KENSEIと同じく楽曲をもっと聴きたいし、何より現場でMeiちゃんのライブを沢山観たいと思ったので選ばせていただきました。
 
ちなみにMeiちゃんとComing Freshersで一緒にあるものを2021年早々に出すのでお楽しみに!
(Coming Freshers)

 
 
【curator : Coming Freshers

All Independent Artists

今回Coming Freshers、そしてComing Freshersキュレーターから数組のアーティストをピックアップさせていただきましたが、Coming Freshersは全てのアーティストに輝いてもらいたいと思っています。
 
2020年も沢山の楽曲をDMで送ってくださったアーティストのみなさま、本当にありがとうございました。送ってくれるたびに、作品がパワーアップしているアーティストも沢山いたので、今回数組だけピックアップしなければならなかったのは、正直心苦しかったです。
 
TwitterInstagramにも書いていますが、リリースする時でも個人的にオススメの曲でもMVが公開された時でもなんでもかまいません、全てに目を通していますので、お気軽にDMからご連絡ください。
 
また、Coming Freshersとして2021年は新たな企画をスタートさせますので楽しみにしていてください。
 
Coming Freshersを通して、私たち自身が2020年も沢山の素敵な作品に出会うことができました。2021年も引き続きComing Freshersをよろしくお願いいたします!
(Coming Freshers)

 

この記事の執筆者

THE MAGAZINE

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