2021.5.21
目次
About「プレイリストジャーニー」
「プレイリストジャーニー」
インディペンデントアーティストのためのプレイリストガイド「プレイリストジャーニー」へようこそ!
この新連載「プレイリストジャーニー」では、サブスク/ストリーミング時代の新しい音楽体験である“プレイリスト”にフォーカスしていきます。
新しい音楽と出会う場所であるプレイリストはインデペンデントアーティストとしても大きなプロモーションの起点の一つになっています。プレイリストには本当に色々な種類があり、ジャンルやランキング、オフィシャルなもの、トレンド、シーン別など、ありとあらゆる要素から作成、選曲、更新されています。
アーティスト自身もプレイリストの知見を
アーティストにとってプレイリストにピックアップされることは、再生数が増える可能性をはじめ、アルゴリズムへの影響、レコメンドの精度向上などのメリットがあります。そして昨今、アーティストが自らプレイリストやキュレーターに取り上げてもらえるようアプローチできるサービスとして、Spotify for ArtistsやTuneCore JapanのSubmit機能をはじめ、SubmitHub、Playlist Push、Groover、Musosoup、Mysphera、HumanHumanなど便利なものも多く提供されています。
とはいえ、Spotifyの「New Music Friday」や、Apple Musicの「New Music Daily」といった大きな規模のプレイリストにいきなり取り上げてもらうのはかなりハードルが高いのも事実です。はじめは、フォロワーが少なくても自分のジャンルに造詣の深いキュレーターが作っている良質なプレイリストに地道にピッチして取り上げてもらったり、小さなところから積み上げていく方法もありでしょう。いずれにせよ、自分の曲を取り上げてもらいたいプレイリストについて“知る、調べる”ということは大切です。
プレイリストの実情
プレイリストには人気の高い(フォロワー/Likeの多い)オフィシャルのものから、フォロワーはそこまで多くはないがアクテイブ率の高い良質なもの(フォロワーがそのプレイリストを使ってよく音楽を聴いている)、特定のトレンドやテーマに特化していて話題になりそうな曲や可能性のある新人を関係者がチェックしているもの(例えば「tuneTracks」のような)もあれば、フォロワーが多いように見えて実はフォロワーを買っている非アクティブなプレイリストもあり、その運営や実態も様々です。
もし、自分の曲がプレイリストにピックアップされたとして、そのプレイリストのバックグラウンド、作成者、更新頻度、曲数、メインジャンル、フォロワー推移、タイプ、選曲の傾向などは把握できていますか?Spotifyオフィシャルプレイリストにおいても、新しいリリースをピックアップするものもあれば、チャートプレイリストや他のプレイリストでのアクションが好調なものが入れられるプレイリスト、いわゆる“出世型プレイリスト”もあります。例えば「New Music Friday Japan」は“新譜型プレイリスト”と言えるでしょうし、前の週で注目の楽曲をキュレーションする「Next Up」は典型的な“出世型プレイリスト”となるでしょう。
プレイリストに取り上げられて嬉しく思うとともに、それがどんなプレイリストなのか、どうしてピックアップされたのかも知っておいたほうがいいでしょう。そこから得られた知見は、次の曲のプレイリスト入りの役に立つかもしれません。
自分の曲をプレイリストに取り上げてもらいたい、プレイリスト経由でリスナーに聴いてもらいたい、プレイリストを経由したプロモーションをさらに拡大させたい、その可能性を高めるためにアーティスト自身もプレイリストについてある程度は知っておくことが求められます。
インディペンデントアーティストの音楽活動のヒントに
この「プレイリストジャーニー」でプレイリストの情報を共有することが、少しでもインディペンデントアーティストみなさんの音楽活動のヒントとなれば幸いです。
これまで10,000曲以上をキュレーションし、Apple Musicオフィシャルキュレーターとしてもプレイリストを運用、そして日々数種類のアナリティクスツールを使って国内外の膨大なプレイリストデータに向き合い続けているプレイリストの専門家であるTHE MAGAZINEスタッフとともに、プレイリストを知る旅に出かけましょう!
人気のプレイリストランキング
プレイリストを具体的に紹介していく前に、今回はVol.0として国内外で人気のプレイリストを紹介します。
世界で最もフォロワーが多いSpotifyプレイリストはご存知ですか?
日本でもっともフォロワーが多いSpotifyプレイリストが世界でどれくらいの規模か知っていますか?
世界と日本におけるプレイリストの規模*を今回はご紹介します。
*フォロワー数は2021年5月21日時点のものですが、常に変動しています。
Spotify 人気プレイリスト TOP10(グローバル)
1位「Today’s Top Hits」
28,358,165 フォロワー
Spotifyで最も巨大なプレイリスト「Today’s Top Hits」は、2,800万人以上のフォロワーがいます。しかも、そのフォロワーは今も1ヶ月に数十万のペースで増え続けています。
2位「Top 50 – Global」
16,086,376 フォロワー
今、最も再生されている曲のランキングプレイリスト。「Top 50」は各国のものありますね。
3位「RapCaviar」
13,816,068 フォロワー
ジャンルに特化したプレイリストとして最もフォロワーが多いのは、ヒップホップのプレイリスト「RapCaviar」です。今の音楽シーンでいかにヒップホップがメインストリームであるかを象徴しています。
4位「¡Viva Latino!」
10,928,888 フォロワー
ラテンの音楽マーケットも巨大です。「¡Viva Latino!」も、先日10millionプレイリストの仲間入りをしました。
5位「Baila Reggaeton」
10,230,634 フォロワー
レゲトンのプレイリスト。こちらも1,000万フォロワーを超えています。
6位「Songs to Sing in the Car」
9,785,328 フォロワー
ドライブに合うプレイリストが6位。パーソナライズプレイリストです。このプレイリストももうすぐ1,000万フォロワーに届きそうです。
7位「All Out 00s」
9,343,189 フォロワー
2000年代のビッグヒット。こちらもパーソナライズプレイリスト。
8位「Rock Classics」
9,004,592 フォロワー
世代を越えたロックの名曲が並びます。
9位「All Out 80s」
8,531,250 フォロワー
1980年代のヒット曲の数々。パーソナライズプレイリスト。
10位「Beast Mode」
7,991,728 フォロワー
10位にはエクササイズ(筋トレ?)シーン向けのプレイリスト「Beast Mode」が入りました。パーソナライズプレイリストです。
世界で人気のSpotifyプレイリスト TOP10
- Today’s Top Hits
- Top 50 – Global
- RapCaviar
- ¡Viva Latino!
- Baila Reggaeton
- Songs to Sing in the Car
- All Out 00s
- Rock Classics
- All Out 80s
- Beast Mode
Spotify 人気プレイリスト TOP10(日本)
1位「Top 50 – Japan」
692,163 フォロワー
Spotifyで日本アーティストの一番人気のプレイリストはチャート「Top 50 – Japan」。再生数ランキングのプレイリストです。フォロワーは69万人と世界最大の「Today’s Top Hits」に比べると約40分の1となります。
2位「Tokyo Super Hits!」
462,379 フォロワー
チャート系以外で、Spotifyで日本アーティストの一番人気のプレイリストは、新しい話題曲がバランス良くキュレーションされ、現行/最新の日本の音楽シーンを知ることができる「Tokyo Super Hits!」。
3位「Anime Now」
346,297 フォロワー
アニメシーンの話題曲をまとめたプレイリスト「Anime Now」が3位。アニメというテーマから、海外のフォロワーも多そうですね。
4位「Road Trip To Tokyo」
330,616 フォロワー
「東京への旅のお供に」というコンセプトのインスト曲メインのプレイリスト。パーソナライズプレイリストです。
5位「Tokyo Rising」
278,522 フォロワー
才能ある日本のアーティストを海外へ発信するプレイリスト。日本のリスナーも多そうです。
6位「Hot Hits Japan」
227,895 フォロワー
海外のヒット曲もミックスされているヒット曲プレイリスト。海外曲も多いですが、邦楽の占有率は半数以上を占めているので、ランキング対象にしています。
7位「Spotify Japan 急上昇チャート」
205,322 フォロワー
チャートアクション良好な楽曲の動向が可視化されたチャート。
8位「Big in Japan」
181,440 フォロワー
日本のロックアーティストのプレイリストですが、ロケールからも海外向けのコンセプトで制作されている感があります。
9位「J-Rock Now」
149,162 フォロワー
日本のロックシーンで最新かつ話題の曲をまとめたプレイリスト。
10位「元気Booster」
106,938 フォロワー
メンタルやシーンに合わせた典型的なパーソナライズプレイリストといえるでしょう。
参考 「New Music Wednesday」
99,676 フォロワー
デジタル時代になって金曜リリースのグローバルマナーが国内でも少しづつ定着してきていますが、日本独自の慣習である“水曜新譜リリース”に応じたプレイリスト。なお、Spotifyオフィシャルプレイリストで「New Music Friday」は国ごとに世界各地で展開されていますが、「New Music Wednesday」が存在するのは日本だけのようです。
日本で人気のSpotifyプレイリスト TOP10
- Top 50 – Japan
- Tokyo Super Hits!
- Anime Now
- Road Trip To Tokyo
- Tokyo Rising
- Hot Hits Japan
- Spotify Japan 急上昇チャート
- Big in Japan
- J-Rock Now
- 元気Booster
Spotifyで日本においては「Anime」や「Tokyo」といった要素のプレイリストが上位にあること、そして新しいロックの曲を取り入れたプレイリストの存在感があることが、グローバルで人気のプレイリストと比較すると特徴として浮かび上がってきます。
Apple Music 人気プレイリスト (日本)
続いてApple Musicの人気のプレイリストを見てみましょう。Apple MusicにおいてはプレイリストのフォロワーやLike数を把握することはできませんが、Apple Musicには、「見つける」 → 「ランキング」 のところにプレイリストのランキングがあります。そこから、邦楽曲の占有率が高い上位ランクのプレイリストを10個チェックしてみます(「はじめての〜」系は除きます)。
「邦楽ヒッツ・トゥデイ」
説明文の通り、今どんなアーティストや曲が話題かを知ることができる日本のApple Musicを代表するプレイリスト。
「J-Pop Now」
J-Popジャンルのトレンドをキャッチアップすることができます。
「カラオケヒッツ」
新旧のカラオケ人気曲がまとめられています。
「平成ヒッツ」
平成の音楽シーンを彩った楽曲が並びます。
「テレビで聴いたあの曲」
テレビで耳にする気になる曲をまとめてチェックできますね。
「ヒップホップ ジャパン」
世界のトレンドとも連動するように国内でも改めて存在感が増しているヒップホップにおいて、最新の日本語ラップの楽曲をチェックできるプレイリスト。
「#ヤンスタ」
世代にフォーカスしたプレイリスト。特に「#ヤンスタ」はZ世代のリスナーに人気の楽曲、アーティストが並びます。
「ピュア・ロマンス:邦楽」
J-Popの中から新旧幅広くセレクトされたラブソングのプレイリスト。
「ハッピー・ソング」
ムードプレイリスト。「ハッピー・ソング」は文字通り、ハッピーな雰囲気、ポジティブなムードの楽曲がまとめられています。
「ブレイキング:J-Pop」
J-Popのニューカマー、話題の新人をここでキャッチアップできます。
Apple Musicでは、「はじめての〜」がタイトルになっているアーティストエッセンシャルプレイリストがかなり人気ですが、それ以外で邦楽のものだと上記のようなプレイリストが存在感を示しています。バランスの良いプレイリストが並ぶ中、「ヒップホップ ジャパン」が人気を得ていることから国内の音楽リスナーに改めてヒップホップが浸透していることが感じられます。
次回からはいよいよ日本でリスナーの多いプレイリストを各回で詳細に分析していきます。
※参考 : Chartmeric、Spotify、Apple Music
※各数値は2021年5月21日時点のもの
※Spotify日本ランキングにおいては更新されつづけているアクティブなプレイリスト(アーカイブ系、アーティストプレイリスト系は除外)で、国内アーティスト/ジャンルの占有率が高いものをカウント