Littyインタビュー 「Pull Up」のヒットで話題の注目ラッパー 「『私でもここまでいけたよ』って希望を届けたい」

インタビュー
2025.5.15
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2024年9月にリリースした1stシングル「Pull Up」がいきなりMV再生回数200万回を突破し、その独自のスタイルで注目度を高めているラッパー・Litty。彼女がラッパーになるまでの道のりは、すなわち何者かに憧れる誰もが持つ「あり得たかもしれない自分」への挑戦そのものであり、故にその言葉は共感を集め、そのストーリーに夢を重ねずにはいられない。世間知らずだったという青春時代やアメリカ留学、会社員生活を経て現在は音楽漬けの日々を送る彼女。全楽曲をプロデュースし二人三脚で制作を行なっているプロデューサーのLion Meloも交えて、現在に至るまでのバックグラウンドとアーティストとしての進化、そして彼女だからこそ追い求められるビジョンについて語ってもらった。

 
取材・文 : サイトウマサヒロ
 
 
ボストン生まれ東京の女子校育ちから、ラッパーの道へ

──Littyさんはアメリカで過ごしていた経験もあるそうですね。出身はどのあたり?

Litty:生まれはボストンだったんですけど、すぐに日本に戻ってきて東京で育ちました。で、アメリカの大学に入学して4年間を過ごし、また東京に戻って就職して、それから一年も経たずに会社を辞めて今はフルタイムのアーティストです。

──学生時代はどんなキャラクターでした?

Litty:小学校から高校までずっと女子校だったので、クローズド・ソサエティの箱入り娘って感じでした(笑)。世間知らずでしたし。中学ではテニス部に入ってて、結構アクティブな方ではあったかな。ただ三日坊主で、途中でヘタれちゃうタイプだったんで、高校ではテニス部もやめて、勉強も上手くいかず。

──当時から、人前に立つことやステージに上がることに興味はあったんですか?

Litty:何かを企画して、みんなに披露するのが大好きだったんですよ。小学生の時に「少女時代のモノマネをやろう!」って呼びかけて、友達と「江戸時代」っていうグループを作って(笑)。私がダンスの立ち位置を組んで友達の家にFAXで送ったり、家にみんなを泊まらせて合宿を開いたり。文化祭で踊って大成功しました。

──それからアメリカへの留学を決心したきっかけは?

Litty:父がアメリカの大学院にいたという経験もあって、昔から「いつかは海外の学校行きなさい」と全面に留学を推奨してくれて、生まれもアメリカだし、アメリカのカルチャーが好きなのもあって、留学を決めて、受験しました。向こうでは死ぬほど勉強を頑張って、成績優秀者として表彰もされました。ビジネス学部でマーケティングとかコーポレートファイナンス、フィンテックなどのトピックを学びました。Pythonだけですけど、副専攻でプログラミングもかじったり。

──留学生活の中で起きた自分の中の変化ってありました?

Litty:「できるわけない」って思ったらそこでおしまいなんだっていうことが、アメリカで身に染みてわかりました。それこそプログラミングなんて父親の助言がなかったら絶対やろうと思わなかったけど、チャレンジしてみたら意外とできるし。やってみなきゃわからないことがたくさんあって、勉強になりました。

あとは自分の意見を主張することの大切さ。日本には同調圧力があって、周りと一緒になるように気を遣わないといけないですけど、アメリカでは「違う」と思ったら絶対にそれを伝えないと、「声を上げなかったあなたの責任でしょ」ってなるから。それまでは人に流されやすいタイプだったけど、自分の意見を言えるようになりましたね。

──アメリカで獲得した価値観があったからこそ、ラッパーになるという道を選べたのかもしれませんね。

Litty:まさにそうですね。我を強く持つこと、周りの意見に惑わされずに自分を突き詰めることの大切さは、リリックにも反映されてるのかな。

──音楽遍歴についても知りたいのですが、幼い頃はどのように音楽と触れ合っていましたか?

Litty:小学生の時から父親の影響でずっと洋楽を聴かされてて、USのトップ50チャートを暇さえあれば流してました。向こうのヒットチャートにはHIPHOPも多いじゃないですか。特に、Young Money 「BedRock (feat.Lloyd)」がめちゃくちゃ流行ったり、Nicki MinajやDrakeの曲もチャートインしまくってて。その時期からHIPHOPが一番好きだなと思うようになりました。Big SeanやGunna、Lil Baby、Logic、最近だとNettspendや2hollisも大好きです。

で、しばらくはUSのHIPHOPをずっと聴いてたんですけれど、大学時代に日本人の友達に日本語ラップを聴かされたんです。ずっと舐達麻さんを流していて、それまで日本語ラップはほとんど聴いてこなかったから、良い意味で衝撃的で…… やっぱり、母国語のラップだとダイレクトに心に入ってくるなと。そこからどハマりして、BAD HOPさんやLEXさん、Awichさんやコアなラッパーまで、幅広く聴くようになりました。特にBAD HOPさんとLEXさんは、『BAD HOP WORLD』や『Lift Off』と『LOGIC』を毎日狂ったように聴いて全曲歌えるようになるくらい大好きで。

──USのHIPHOPを聴いている時は、そこまでリリックを重視してなかった?

Litty:最初は全然分からずに聴いてました。高校時代からサマースクールで留学したりしてて、英語も日常会話くらいはできてたんですけれど、ダブルミーニングとか細かいポイントに気付けるようになったのはアメリカの大学に行ってからでした。でも、やっぱり日本語が母国語なので、日本語ラップの方が刺さるなって。

──自分でラップをやってみようと思ったのもその頃ですか?

Litty:はい。それまでは音楽経験なんて全然なかったんですけど、日本語ラップを聴いてるうちに「私も日本語と英語のミックスだったらラップできそうだな」と思って。フリービートをダウンロードして、オーディオインターフェースの存在も知らなかったので、マイクを直接PCに繋げて録音して(笑)。いま聴いたら恥ずかしいような曲なんですけど、友達に聴かせたら反応も良かったんですよ。

その後、東京に戻ってから、共通の知り合いをきっかけにLion Meloさんと出会って。作った曲を聴かせてみたら、「ギャルっぽくないところがすごく新しくて面白いから、やってみようよ」って言ってもらえたんです。

Lion Melo:女性アーティストはハイトーンで歌う方が多いし、綺麗に歌えることがステータスとされがちだけど、Littyさんはローボイスで、声質的に他のアーティストと被りにくいんですよね。それに見た目もリリックの幅も、他とは違った雰囲気があって。ラッパーぽくなさが面白い。「この子をプロデュースしたら確実に行ける」っていう確信がありました。

──Lion Meloさんとの出会いが、キャリアを本格化させるきっかけだったんですね。

Litty:本当に、出会った日からマインドが変わりましたね。彼が曲を作っているところを初めて横で見た時の衝撃は今でも忘れられないし、その才能と努力の結晶を目の当たりにして、「こんな強い人がいるなら、私絶対勝ち確じゃん!」みたいな、根拠のない自信が芽生えました。この機会は絶対に逃せないって。Lion Meloさんに言われた通りに機材を揃えて、私の声に合うようなボーカルのプリセットも組んでもらったんですけど、こんなにクオリティが変わるんだって驚きました。Lion Meloさんは私の師匠ですね。頭が上がらないです。

それで、去年の5月に初めて作ったのが「No Tears」。その次に作ったのが「Pull Up」なんです。酔っ払った状態で、適当に口ずさんで完成したのが「Pull Up」だったんですけど(笑)、Lion Meloさんが「これは起爆剤になるぞ」って言ってくださって。その辺りから、仕事も手につかないくらい曲作りに夢中になっていって、その楽しさが徐々にラッパーとしての決意に変わっていきました。思い切って友達をかき集めて「Pull Up」のMVを撮影したり、自分でも「何やってるんだろう」って思いつつ、衝動に駆られちゃって。

──そうして撮影された「Pull Up」のMVは、今や再生回数200万回に届く勢い(※取材時)で大ヒットしています。バズってることを実感したタイミングはありましたか?

Litty:リリースして一週間後くらいに、急にワーっと伸びて。コメントも最初は追えていたんですけど途中から追えなくなったし、インスタのフォロワーも一気に伸びたんですよ。「え!?」って感じで。有名な方からもフォローしてもらえたりして、実感が湧きました。

──ちなみに、いまはどんなアーティストと繋がりがあるんですか?

Litty:近しい人だと、ManakaちゃんとJAKENくん。あとはKvi Babaくんとidomくんとも最近仲良くなりました。でもまだ全然アーティストの友達がいないんで、もっとコミュニティを広げていきたいですね。


Litty Just A Girl

「Pull Up」「No Tears」も収録のEP『Just A Girl』

 

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この記事の執筆者
サイトウマサヒロ
1995年生まれ、フリーのライター。インタビュー、ライブレポート、コラムなど書きます。