DADA「High School Dropout」がバイラルチャートイン 日本のヒップホップシーンど真ん中を奪いに行く新たなスターに注目【Independent Goes Viral】
インディペンデントなアーティストでも大きなチャンスを手にすることができる時代になりました。日本のSNSで今一番話題の曲をランキングで発表するSpotify Japan「バイラルトップ 50」には、ニューカマーアーティストや、大きなプロモーションをしていないにも関わらずSNSを起点にチャートインするアーティストが続出。その後さらにスケールアップしていくといったケースも珍しくありません。このコラム「Independent Goes Viral」ではそんな未知の可能性を秘めたアーティストにいち早くフォーカスしていきます。
今回は、楽曲「High School Dropout」が話題沸騰、バイラルチャートも賑わしているラッパー・DADAを特集します。
Who is DADA?
DADAはNOKEY BOYZというクルーに所属し、福岡県を拠点に活動するラッパーです。高校生時代の2015年から楽曲制作を開始し、ライブコンテストでの優勝経験もあるなど、若いながらもキャリアを積み重ねています。
クルーでは今年1月にEPの『ROCKET』、昨年に過去の楽曲をセレクトした『NOKEYBOYZ THE BEST 2015~2019 PART1』をリリースしています。他にもSoundCloudや無料配布CDなど、さまざまな媒体で作品を発表してきています。
DADAはソロとしての1stアルバム『Yours』を8月6日にリリースしました。今回バイラルチャートインした「High School Dropout」はその中の一曲です。
「High School Dropout」について
『Yours』は、ダウナーな曲調で自身の内面を表現する楽曲が中心の作品ですが、その最後を締めくくる「High School Dropout」は、乗り越えてきたさまざまな痛みを強さに変えるような、エモーショナルかつ明るいチューンとなっています。シンセサイザーの浮遊感が特徴的なビートは、ボストンのプロデューサー・DARKBOYによるものです。
「弟2人にミルクあげた 小さな体でママ抱きしめた/お前の代わりに働いたし 聞いてくれよI’m real dear パパ」というラインに象徴される、母子家庭での苦労を乗り越えたうえで家族への愛を歌うリリックには多くの人の胸を打つインパクトがあります。 「愛見えないから体に描いた」と歌うhookも、痛みを越えたうえでの愛を自身のタトゥーと重ねて表現するパンチラインとなっています。
さらに、「俺のじゃないけどヒット飛ばした」というフレーズを一聴して「なんのことだろう?」と思った方がいるかもしれませんが、これも実弟(!!)・太郎忍者が2018年にリリースし、一躍ヒットした「PUSSY」のことを指しています。
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また、こういったインパクトの強いフレーズを入れながら聴きやすく楽曲を構成できる、優れたラップスキルを備えていることは言うまでもありません。
家族・仲間・恋人との日常やライブの風景を切り取ったミュージックビデオは、8月2日の公開から2ヶ月ほどで40万回再生を突破し、その勢いはさらに続きそうです。
バイラルの要因
「High School Dropout」は9月30日にバイラルチャートに5位で初登場し、そのまま上位を保っています。ここでは具体的にバイラル要因を考察していきます。
MVを手掛けたDex Filmzは、Jin Doggの「街風(feat. REAL-T)」、REAL-Tの「リアル業界」、GOBLIN LANDの「OSK NIGHT(feat. Cz Tiger)」など、多くの人気曲のMVを制作してきた映像プロダクションチームです。これらの楽曲がアップロードされたYouTubeチャンネルは登録者数5万人以上のプラットフォームになっており、「High School Dropout」のMVもそこから公開されています。Dex FilmzにMV制作を依頼し、そのチャンネルからキュレーションされたことは、多くの人の目に留まった要因でしょう。
また、DADA自身が「俺のこともっと広めてくれ」と動画を投稿するなど、TikTokにおいても注目を集める作品となっています。TikTok上の「High School Dropout」の動画投稿数そのものは250程度(10/07時点)ですが、多くのいいね数がついた投稿も多く、ヒットに一役買っていると言えそうです。
@imdadawhoareyou 俺のこともっと広めてくれ💫
「High School Dropout」は音楽配信サービスやYouTube・TikTokで共振的に広がった、まさにバイラルヒットと言うべき一作ですが、複雑な生まれ育ちをポジティブな音楽の力に変える、ヒップホップのど真ん中とも言える楽曲の秀逸さがあってこそ、多くの人の心を掴んだということは間違いありません。
これからの動きにも注目!
この1曲で一気に注目度を高めたDADAの動きはこれにとどまらず、10月2日には、自身の内面の表現に重点が置かれた『Yours』と対照的な、ドリルやハイパーポップといったサウンドでアグレッシブなラップを見せる2ndアルバム『Mine』を発表しました。
太郎忍者が客演した「Welcome to Nokey」のMVには、NOKEY BOYZのメンバーに加えて、同じく福岡で注目を集めるDeep Leafも出演しており、福岡のヒップホップシーンの熱さを感じられるものになっています。
DADAは若いながらもキャリアを積み重ねたうえで、『Yours』/『Mine』の両作で勝負をかけ、一躍新たなスターの立場に躍り出ようとしています。幅広いサウンドをこなすスキルとリリックの強さ、シーンを奪いにいくアティテュードを兼ね備えた、いま最注目のラッパーの1人と言って過言ではありません。今後の活動にも大いに期待したいところです。