今年中に聴いておきたい2021年の注目曲・アーティスト【Coming Freshers編】
最新・最先端の要注目アーティストをいちはやくピックアップし、YouTubeチャンネルの他、THE MAGAZINEでのプレイリスト「イツマデモフレッシュ」を含め、様々なアプローチでコンスタントに情報を発信し続けるComing Freshers。単なる数字や話題にとらわれることなくストイックに楽曲と向き合い、高感度なセンス、フラットかつ鋭いキュレーションで、アーティストやリスナーからも信頼を集めています。今回、そんなComing Freshersのメンバーが、今年中に聴いておきたい2021年の注目曲・アーティストを紹介。2021年も残すところあとわずか、今年の締めくくりに是非チェックしてみてください!
目次
■ DJ RyuNosuK(Thlive) セレクト
Masato Hayashi「大都会」
Masato Hayashi(ex. Pablo Blasta)の名義変更後の初EPとなる『DUMMY』より「大都会」を選ばせていただきました。
大都会で成功することの難しさをテーマにしたリリックに、自分自身とても救われました。
また『DUMMY』の制作に少し携わったり、自分のリリースした作品『FTL Mixtape vol.2 (mixed by Thlive) [DJMIX]』に収録させてもらったりと、とても縁のある楽曲です。
日本のHipHopが盛り上がりを見せる中、2021年も色々なタイプのリリースがありました。
今後も誰かの人生や考えを変える楽曲が増えることを願っています。
DJ RyuNosuK
https://www.instagram.com/djryunosuk_thlive/
■ HC セレクト
COZY ROOM「FUCK (feat. BLAISE)」
COZY ROOM ― 大阪を拠点に活動をする5MC、1DJのHipHopクルー。ジャンルにとらわれず、様々なジャンルをミックスしたビートを採用し、5人のMCが多様多種なラップをのせることで完成するCOZY ROOMにしかない楽曲が特徴。
この紹介にもあるようにCOZY ROOMの楽曲を聴くと、彼らは本当に様々なジャンルのビートを使っています。そして今回選ばせてもらった「FUCK」は、今年の4月にリリースされた楽曲なんですが、まずビートが”Phonkベース”、これには驚きました(Phonkとは、メンフィスのラップからインスピレーションを受け出来たサブジャンル)。
そして楽曲には、kiLLaからBLAISEが客演として参加。BLAISEのHookから曲が始まり、そこからCOZY ROOMのメンバーのマイクリレーが始まるのですが、先ほど紹介した通り、一人一人が本当に多種多様なフロウで歌うことにさらに驚かされました。
リスナー側としては聴いていて本当に飽きないですし、1曲で色んなジャンルのHipHopを聴けるのはなんだか得した気分になりますね(笑)。でも、これはすごく大事なことだと思います。よくあるのが、できるラップスタイルや知識が少ないと、曲をどれだけリリースしても同じ曲にしか聴こえない…… これはHipHopを聴いている人なら1度は感じたことがあるはずです。
ただCOZY ROOMはどの曲を聴いても様々なジャンルで歌えますし、曲を出す度に変化もあるので、そんな柔軟な感性を持ったMCが5人もいるということこそが、やはりCOZY ROOMの推しポイントではないかなと思います。
先日COZY ROOMのLIVEを観させていただいたのですが、LIVEもものすごく上手いですし、やはりファン層も幅広く、すごい人気があるなという印象でした。
あと素晴らしいなと感じたのは、音楽だけではなく、彼ら一人一人のファッション性の高さも光るものがあり、アーティストとしてのルックス面もものすごくイケてるクルーだと思います。
そんなCOZY ROOMは、2021年はグループ名義の楽曲のみでしたが、2022年からは精力的にソロ活動にも力を注いでいくそうです。彼らの活動の幅の広がりにはこれからも目が離せません。
Ume「Soul (feat.Daichi Yamamoto)」
Ume ― 京都出身のシンガーソングライター。4年前から活動を開始。R&B、Soul、Jazzをメインに手がけている。日々の生活や自然の中で感じる直感からインスピレーションを受け、表現をしている今注目のシンガー。
昨今、沢山の良いラッパーが増えたHipHopシーンと同様、R&Bのシーンでも沢山の素晴らしいシンガーが増えています。そんな中、今回紹介させていただく楽曲「Soul」を歌っているUmeは僕のイチオシのシンガーです。
まずUmeの楽曲を聴いていて驚かされたのは、本当に色々なジャンルの楽曲が多いこと。R&Bのみならず、SoulやJazz、Alternativeなど幅広く歌っています。今日本に、ここまで幅広くやっているシンガーはあまり多くはいないでしょう。
そんなシンガーとしての確かな歌唱力を持つ彼女の楽曲を聴いていて一番惹かれた部分が、全編英詞の叙情的な楽曲における圧倒的な表現力と声質。本当に彼女の表現力の素晴らしさと声質には引き込まれるものがあります。実際にUmeのLIVEも拝見したことがあるのですが、楽曲でならともかく、LIVEであそこまで表現できるシンガーは中々いないと思いましたし、本当に聴き入ってしまいました。
今回紹介させていただく楽曲「Soul」には、いま飛ぶ鳥を落とす勢いのラッパーDaichi Yamamotoが客演参加。ヴァース部分をDaichiYamamotoが、フック部分をUmeがそれぞれ担当。本当に全てがお洒落な楽曲で、個人的にはUmeのフックがイチオシポイントです。
来年はさらにUmeの活動が楽しみです。まだ楽曲を聴いたことがない方は、是非聴いてみてください。すぐにファンになってしまうと思いますよ!
Bearded Legend「Stress (Prod. DJ cer0 a.k.a Frog Voice)」
DJ cer0 a.k.a Frog Voice ― 大阪出身、拠点の25歳のDJ、ビートメイカー。17歳にしてDJとしてのキャリアをスタート、大阪の主要クラブでのレギュラーイベントを始め、東京、名古屋、福岡の都市部など約10の都道府県にてGuest出演した経歴を持つ。また、FrogVoiceと言う名義でビートメイカーとしても活動しており、数々のアーティストにビートを提供している。
今回、DJ、ビートメイカーの彼もこの企画で1曲(1人)に選ばせていただきました。
現在、日本人のビートメイカーで海外のアーティストと楽曲制作を行っているビートメイカーはあまり多くはいないかと思いますが、今年はビッグニュースがありました。2021年1月全米ビルボード1位を獲得したLilDurkの「The Voice」がグラミー賞にノミネート。この楽曲を手掛けていたのが日本人プロデューサーTRILL DYNASTY。日本人プロデューサー、ビートメイカーも世界に通用することが改めて分かりました。
そんな中、DJ cer0 a.k.a Frog Voiceは、今年の8月に月間リスナーが20万人越えのNYの人気ラッパーBearded Legendにビートを提供し楽曲を制作。完成した楽曲が今回紹介している「Stress」になります。
Bearded Legendは、過去に日本の人気ラッパーTYOSiNを客演に迎えて楽曲をリリースしていることで知っている方も少なくないと思います。彼は日本人としても嬉しくなるほどのかなりの親日家で、SNSでは僕自身も彼とつながっているのですが、こまめにDMを送って来てくれたりと本当に好印象です。
そして、Bearded Legend × FrogVoiceのコラボ楽曲は、2ndシングルも既にリリースが決定しており、本当にこれからも彼らの動きには要注目です。
DJ cer0 a.k.a Frog Voiceは、海外に限らずに日本人アーティストにもビートを提供。そして今年の5月には、大阪のアメリカ村にスタジオをオープン。今は代表としてスタジオの運営もしています。
今年の「ラップスタア誕生」にて、EASTAとCYBER RUIの紹介映像や話に出ていたスタジオが、彼が運営している「LoudStudio」。是非とも、この記事を読んでくれたアーティストの方、良いビートメイカーを探しているのなら、彼を頼れば間違いないと思います。
僕自身、キュレーター以外にもセレクターとしても活動をしており、実は彼と2020年の春頃からコラボMIXを制作しています。彼のスキル、知識に絶対的な信頼を寄せているので、相方として一緒に活動しています。
ラッパーやシンガーよりも、ビートメイカーの方が世界に出やすいという面があるかもしれないので、そういった意味でも日本という枠にとらわれず、これからも世界で活動をしていってほしいです。
HC
https://www.instagram.com/hcgypsophila/
■ Cyne PL セレクト
Disry「Odyssey」
愛媛to沖縄 604、4TH COASTのアーティストDisryの最新EP『F’st Drip』に収録されているこの曲は、なんとAXL Beats(Pop Smokeへのビート提供で名前をあげたUKのプロデューサー)プロデュース。彼の大ネタ使いのDrillビートと、孤独の中でも先を目指すDisryのラップがバッチリとハマった好曲。EPを通して勢いだけではなく、大人のDrillをみせてくれたDisryの今後の楽曲も注目である。
LOUD SANTANA「G.O.A.T (feat. Jag hungry)」
「Asian Drill」を掲げ埼玉を拠点に活動するcrew “Jag Hungry”。そこに所属するMC、LOUD SANTANAのソロEP『EPISODE LOUD 2』からJag Hungryをfeatした実質Jag Hungryの楽曲。こちらもAXL Beatsのビート上を勢いよくマイクリレーで畳み掛ける。最近ではアルバムに1、2曲Drillの曲を収録するアーティストも少なくないが、彼らは2021年以降、Drillに振った作品をリリースし続けるAsian Drillアーティストであり、2022年の彼らの動き、日本のHipHopシーンでのDrillの立ち位置がどう変わっていくか目を離せない。
ちなみに、同EPからFuji Taitoをフューチャーした「OK Reloaded」のMVもYouTubeで公開されてるので未観の方はぜひ。
TOFU「Hyper Popill」
先日、惜しくも解散が発表されたGREEN ICE。そこに所属し、「ラップスタア誕生」での活躍でも話題となったTOFUが去年リリースしたアルバム『LAST TEENAGE LIFE』に収録されていた楽曲。タイトルの通りHyper Pop + Drill をテーマにした楽曲で、去年、2021注目アーティストに選ばせてもらったHomunculu$がプロデュース。TOFUのポップなリリックも光る。
最近、本場のNY DrillのシーンではドラムパターンがDrillであれば上ネタは何でもあり感が漂ってるが、絶妙なバランスでDrillでありながらHyper Popillを実現させているHomunculu$のビートセンスはさすがの一言。リアルタイムで聴いた時は日本のシーンに合ったDrillの進化系で新たなムーブメントなるかと思ったが、今の所あとに続く楽曲は確認できていないので、2022年にはこの楽曲を通った曲、影響を受けた曲がリリースされるのを期待している。
そして、Jin DoggとのジョイントEPなどで2021年も活躍を見せてくれたHomunculu$の2022年の飛躍を楽しみにしている。
Cyne PL
https://www.instagram.com/cyne_pl/
■ dezao セレクト
Black petrol「TABU」
京都・大阪を拠点に活動する7人組ヒップホップバンド・Black petrolが、12月1日にリリースした1stアルバム『MYTH』に先駆けてリリースした一曲。
楽器隊の確かな実力と懐の深さを感じさせるジャジーでグルーヴィーな演奏も素晴らしいが、この曲をより特別なものにしているのはやはり2MCのラップだろう。
凄みのある声で前のめりにリズムに乗るONISAWAと、ハイトーンボイスで滑らかにフロウするSOMAOTA、対照的なスタイルを持った2人が紡ぐのは、ある2人のアウトローの物語。
首が回らない日々に嫌気が差した1人の男が悪友に計画を持ちかけ、2人は町の銀行を襲うことになるのだが、それぞれの欲望が絡み合い歯車が狂っていく……
1970年代アメリカの犯罪映画を想起させるドライかつ粋なリリックからは、2MCの底知れないポテンシャルの一端が垣間見える。
心地良いグルーヴの上で紡がれるこの物語の顛末を、是非とも聴き届けてほしい。
dezao
https://twitter.com/dezao1996
■ hzm セレクト
Ryder, Freekoyaboiii & ¥OUNG ARM¥「Slime’s Anthem」
福島出身の3MC, Ryder, Freekoyaboiii & ¥OUNG ARM¥のEP『YSG』収録の一曲。同じく福島のプロデューサー/DJのKaworuMFの手掛ける王道シカゴ・ドリルのビートに、「次から次へとガ〜*ジャ 煙はまるで機関車」という直球なhookが聴いていて気持ちよく楽しい一曲。まさに「Anthem」になるポテンシャルがあるのでどんどんクラブでかかってほしい。
それぞれのラッパーは個人でも精力的に制作を行っている。今年ではRyderは先日にミックステープ「City of Ganton 2」をリリースしており、¥OUNG ARM¥はEP「Route 4」に加えて、ミックステープ「Green Diamond」を12/24にリリース予定。Freekoyaboiiiはミックステープ「Dope Pack Vol.1」をリリースしたほか、現在拠点を置く福岡の盟友Yvngboi PとのEP「F’s uppp 2」もUSのワルいラップのマナーを自然に取り入れたマストチェックな一作。いずれの作品にも携わるKaworuMFも福島を中心に東北のシーンを支える多作なプロデューサーとして注目されるべき存在だ。
KUYA MIGUEL & T.J.Rob「Ion Give a Shit (feat. Rait0)」
香川のMCのKUYA MIGUEL、徳島のプロデューサー/DJであるT.J.Robの共作アルバム『BLESS SEASON』に収録の一曲。客演に香川のRait0が参加している。早めのBPMにブリブリとベースラインが轟くベイエリア〜デトロイト系のサウンドはまだまだ日本のヒップホップには希少で、上ネタやドラムの打ち込みも合わせて若干19歳ながら卓越したT.J.Robのセンスが光る。もちろん上に乗るKUYA MIGUEL、Rait0のラップもバッチリ決まっている。
US西海岸のサウンドを強く意識してまとめられたアルバムは、ペン&ピクセル風のジャケットに反応するその筋のラップ好きの期待を裏切らないハイレベルな一作。その筋の方でなくともぜひチェックしてほしい。
RIA「Confusion」
RIAは東京を拠点に活動する19歳のラッパー/シンガー。タレントやモデルとしての活動と並行して作詞作曲を続け、soundcloudなどに作品を発表してきた彼女は6月に1st EP『2021』をリリースした。
EPの1曲目となる「Confusion」は、エレクトロ系のビートのもと、アグレッシブなラップを見せつける1曲。そのビジュアルやアルバムのジャケットなどからポップな雰囲気の楽曲を予想などしているとガツンと殴られるようなインパクトのある楽曲になっている。自身では、混沌とした状況のもと、「ネガティブで消えそうになる感覚と、苛立ちが募る感覚を、この楽曲の静と動で表現」したと楽曲について語っている(https://spincoaster.com/news/ria-release-1st-ep-2021)。
ハードな「Confusion」からポップな楽曲、メロウな楽曲まで幅広くこなす能力を見せたEPは、タイトル通り東京の”2021″を感じられる作品に仕上がっている。
本曲のMVを手掛けたKenchanやEPに客演したDuke of Harajukuなどが所属するtokyovitaminとも関係が深く、11月に発表されたコンピレーション『Vitamin Yellow』にも「Nite Mode(feat. RIA & MANON)」で参加している。今後の各方面での活動やコラボレーションに期待できるアーティストとしてぜひチェックを。
hzm
https://twitter.com/hazz_0901
■ Coming Freshersの中の人 セレクト
Disry「BFO -Break Fuckin’ Out- (feat. MuKuRo)」
11月にリリースされさたミニアルバム『F’st DRIP』から「BFO -Break Fuckin’ Out- (feat. MuKuRo)」を選ばせていただきました。ストレートなリリックが多く、どこをとっても全てがパンチラインの一曲だと思います。
その中でも特に
『エモい,ユルイ,チルい
より引き締まるFat
コテコテ,ゴリゴリ,DefDefがイイ』
このリリックには痺れました。
今の日本語ラップシーンに対して色々なことを思う方もいると思いますが、そんなヘッズの気持ちを代弁する一曲になったのではないでしょうか。
『F’st DRIP』に関しては、ストレートなHipHopがカッコいいミニアルバムだと感じました。個人的には新たな“日本語ラップ教科書 ”のような作品だと思います。
また、ライブが兎に角カッコイイDisryさんなので、まだDisryさんのライブを見たことがない方は是非ライブを見ていただきたいです。
illrain『Brainwash Weapon』
山口県出身の若手ビートメーカーillrainの3rdアルバム『Brainwash Weapon』を選ばせていただきました。一曲に絞ることができず、アルバムとして紹介をさせていただきます。
23歳という若さで、全国から27名のアーティストを客演に招いたことは本当にすごいことだと思います。illrainにリスペクトです!彼のビートだったからこそ出来たことだと思います、27名のアーティスト全員が今の日本語ラップシーンには欠かせない、豪華メンツだと思います。
日本のホラー映画からインスパイアを受けて制作された、ホラーコアトラップアルバムになっていて、Coming FreshersのYouTubeチャンネルからもアルバムの中から一曲Music Videoがでているので、よかったらチェックしてください。2022年もillrainの活動から目が離せません!
全てのアーティストと全ての作品
2021年も多くの作品に触れさせていただきました。Coming Freshersのメンバーも曲を絞ることにとても悩んだと思います。毎週毎週、沢山の作品がリリースされ、今年は約700曲をプレイリストに選ばせていただきました。楽曲を送ってくださった、アーティストの皆様も本当にありがとうございました。
2022年も“イツマデモフレッシュ”な作品が沢山リリースされると思うと、今から楽しみです。
来年もComing Freshersをよろしくお願いいたします!
Coming Freshers
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