【Who’s NXT】龍ヶ崎リン | HIPHOPの「歌ってみた」が話題、VTuberの音楽シーンを拡張するマルチアーティスト

2023.2.9

龍ヶ崎リン

龍ヶ崎リン
774inc.所属のVTuberグループ「シュガーリリック」のメンバーとして2020年3月にデビュー。HIPHOP、R&B、Black Music、CityPop中心の歌枠や、 「歌ってみた」動画やオリジナルラップを定期的に投稿しており、加えてゲーム配信や低音ボイスを生かしたASMR、ラジオ配信等、幅広い活動を展開している。

特にHIPHOPの「歌ってみた」は人気が高く、Creepy Nuts「のびしろ」の「歌ってみた」は2023年1⽉時点で、73万回再生を超えている。

また、VTuberとしては珍しくアパレルとの親和性も高く、 NERDY、Dr. Martens、X-girl、The Elder Statesman、PALACE、Acne等のストリートブランドを好んで嗜んでいる。

座右の銘は、 “Every life has a soundtrack”

 
 
Who’s NXT : A series of interviews with featured artists
 


——音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

幼少期、母の車内でいつも流れていた音楽から興味を持ち始めました。特にKREVAさんやDOUBLEさんなどのHIPHOPやブラックミュージック、R&BをJ-POPに落とし込んだ楽曲を幼い頃から耳にしていました。

 
——本格的に音楽活動をすることになった経緯というのは?

学生時代から歌うことは好きで、文化祭でバンドのボーカルを務めたり、友人とほぼ毎日カラオケに行って歌声を褒めてもらっていた、ただのちょっと歌える一般人だったんですが、ぼく自身の生活の傍には常に音楽があり、自分自身が音楽に支えられてきた部分があったので、聴く側のままじゃなくて人の心を動かせる歌う側になりたいという気持ちが沸々とこみ上げていました。そこから音楽を聴くだけではなく、好きだったJ-RAPのリリックを自ら書くようになり、ちょうどそのタイミングでVTuberの音楽シーンに興味を持ち、ここなら自分の音楽をたくさんの人に聴いてもらえる入口になるかもしれないと思い、この世界へ飛び込みました。

 
——現在主に活動しているシーンはどこですか?

YouTubeです。

 
——最新作について教えてください。

1st single「Twilight Stream」を2月5日にデジタルリリースしました。この楽曲は、約3年近くの活動を経てようやく実現した1つの夢でもあるので、ぼく自身だけではなく、応援してくれているファンのみなさま両者にとっても、非常に大きな意味を持つ楽曲になっていると思っています。夜の都会的な街並みを連想させる一方で、喧騒にまみれていない、爽やかで澄んだ空気感さえ感じられるような、浮遊感のあるチルサウンドに仕上がりました。ぼくのこれまでの過去とこれから紡いでいきたい未来を織り込んだ大切な1曲です。

龍ヶ崎リン「Twilight Stream」

Rin音、ぜったくん等との共同楽曲の制作や、SUPER★DRAGONや海外で人気のスマホゲームObey Me!へ楽曲提供の実績のある”OHTORA”に作詞&作曲、ジャニーズ、LDH、アイドル、アニメ主題歌等、幅広い楽曲提供の実績がある、”maeshima soshi”が作曲 & 編曲を担当。

https://linkco.re/ymp9q7qz

 
——これまでの活動でおすすめ、あるいは思い入れのある作品をあげるなら?

RRR – 龍ヶ崎リン prod.ESKRY

デビュー日に投稿し、自身で初めて作詞を手掛けた楽曲。今までHIPHOPを聴いてこなかった人にも分かりやすいリリックとフロウ、でもかますところはかます、の一心で制作したのを今でも覚えています。

 
VIRTUAL CYPHER feat.コーサカ、龍ヶ崎リン、神咲嶽

VTuberを知るきっかけの1つでもあったMonsterZMateのコーサカ、友人の神咲嶽と3人で行ったマイクリレー楽曲。それぞれが担当したverseの個性的なフロウとリリック、三者三様のMCに注目して聴いていただきたいです。

 
Nemesis feat.NICO,龍ヶ崎リン&朧家ブランコ prod.Itsuki Miyamura

トラックメイカーであるItsuki Miyamura制作のbeatで、Vsinger NICO、朧家ブランコと3人で行ったマイクリレー楽曲。doopなbeat上で、3人それぞれらしさを感じるのに不思議と一体感のあるラップを楽しめる1曲だと思います。

 
就寝御礼 – PSYQUI / coverd by 龍ヶ崎リン

就寝御礼の制作者ご本人であるPSYQUIさんにVocalEdit、Mix、Instの再制作までしていただき、カバーさせていただいた楽曲。自分の人生なのにそれを客観的に見ているような、無機質だけど秘めたる情熱さえも感じられるかなと思います。

 
エイリアンズ – キリンジ(Piano Arrange) / coverd by 龍ヶ崎リン

大好きな名曲「エイリアンズ」をVTuberとしても活動されているイトイさん奏でる素敵なピアノ演奏でカバーさせていただいた楽曲。涙を浮かべながらも笑っているような、寂しげな2人きりの独特な世界観を堪能できる楽曲だと思います。

 
のびしろ – Creepy Nuts / coverd by 龍ヶ崎リン

昨年6月に行ったソロライブでもカバーさせていただいた、思い入れのある楽曲。

 
RENE BIRTHDAY NIGHT 3D LIVE

有難いことにたくさんの方に聴いていただけて光栄なことに加え、ぼくにとってもエネルギーをもらえる大切なカバー楽曲の1つです。

 
——音楽制作はどのような環境やプロセスで行っていますか?

作詞する際は、まずテーマを決め、それに沿った感情や想いをなぐり書きしてからリリックとして整えながらフロウを考えます。頭の中に思い浮かんだ「この感情って簡潔な日本語にするとなんなんだろう」と思うことも多いので辞書もよく引きます(笑)。普段ボーカルレコーディングは自宅で行っているのですが、1st single「Twilight Stream」は作詞・作曲を担当してくださったOHTORAさんにディレクションしていただきながらのスタジオレコーディングでした。いつもとは違う環境下で行うレコーディングでしたが、楽曲を作ってくださった方だからこその歌い方のニュアンス等のアドバイスを直接受け取ることができる素晴らしい環境で収録出来ました。緊張はしたものの、とても有意義な時間でした。今後の経験値にもなったと思います。

 
——まだ龍ヶ崎さんの楽曲を聴いたことがないリスナーに、アーティストとしての特徴を伝えるとしたらどんなところになりますか?

ぼくのVTuber活動の特有のものになる気がするんですが、一緒に日常を過ごしているからこそ、歌を通して与えられる感情があると思っています。シンガーとして楽曲そのものの魅力や曲単体で楽しんでもらえるのはもちろんですが、龍ヶ崎リンのパーソナルな部分を知っていただけると、より一層ぼくの音楽で伝わる想いや感動があると思います。

 
——龍ヶ崎さんはどんなアーティストに影響を受けましたか?

iri
女性シンガーの中で最もリスペクトしています。HIPHOP的かつ詩的ながらもメッセージ性の強いリリックと、なによりスモーキーな声が魅力的で、ソウルフルな歌声にかなり影響を受けました。

SIRUP
抜群の歌唱力とグルーヴ感、R&B・ソウル・HIPHOPなどをベースに様々な音楽ジャンルを取り入れたセンス溢れる楽曲、枠組みに囚われない自由な音楽が本当に魅力的です。特にライブを見ると心から音楽を楽しんでいるのが伝わるんですが、そのマインドがぼくの音楽に対する向き合い方にかなり影響してるなと思います。

Vaundy
楽曲ごとにジャンルや歌声を使い分けながら、色んな表情を魅せてくれると思っています。気だるく甘い歌声が魅力的で、Vaundyさんが生み出す音楽には常にアンテナを張っています。

 
——楽曲でいうとどういう曲に影響を受けましたか?

KREVA – 音色

J-RAPに興味を持つきっかけになった曲。「音楽」と「女性」を「音色」と比喩表現し、憂鬱さと高揚感が入り混じった不思議な感覚になる楽曲ですね。

 
キリンジ – エイリアンズ

こんなにもいい意味で自分勝手な解釈をさせる世界観を持った曲があるのかと衝撃を受けました。

 
Creepy Nuts – のびしろ

大人といっても完璧な存在ではなく、弱点や潜在能力の余白があることを受け入れ、自分らしく柔軟な生き方でいいと思わせてくれる楽曲、ぼくの人生のバイブルです。

 
STUTS – 夜を使いはたして feat.PUNPEE

クラブサウンド好きの名曲じゃないでしょうか。メロウな朝方にぴったりな繊細なR&Bを感じるビートにRAPが絡む化学反応が好きです。

 
EVISBEATS – ゆれる feat.田我流

日本のHIPHOPシーンにのめりこんだ際に何度も聴きました。今現在も頻繁に聴くぼくの中でのクラシックです。何気ない人生のワンシーンに対する心の揺れに気付くように生きると「今日は残りの人生の始めの1ページ」というフレーズが心に響きます。

 
星野源 – PopVirus

音楽の本質を気付かせてくれる曲だと思います。「始まりは炎や 棒きれではなく 音楽だった」のフレーズが、VTuberを始めた理由が音楽だった自分と重なります。R&B、ブラックミュージック、ソウルミュージックを昇華した楽曲を生み出しているシンガーとしてリスペクトしています。

 
小沢健二 – 今夜はブギーバック feat.スチャダラパー

昨年の今夜はブギーバック29周年を記念してカバーさせていただいたこともあり、思い入れのある1曲です。どの時代の空気にもマッチする曲といえばこの曲だと思います。

 
Nujabes – Luv(sic) feat.Shing02

この曲がジャズヒップホップを好きになったきっかけでした。トラックもShingo02さんによるRapもどこか悲しさを感じさせる1曲で、初めて聴いたときの頭に鈍く走るような衝撃を今でも覚えています。

 
竹内まりや – プラスティック・ラブ

シティポップが好きになったきっかけになった楽曲です。個人的に80年代の日本のシティポップやファンクの中で1番好きで、ぼくが以前参加させていただいた『SPOTLIGHT vol.2』というコンピレーション・アルバム内でもカバーさせていただいた曲です。時代の波に埋もれない名曲だと思います。

 
——音楽活動にあたって、なにか特に意識していることはありますか?

向上心を持ち続けることと、自分が行う全ての活動は龍ヶ崎リンというアーティストを作り上げるということです。音楽だけじゃなくてマルチアーティストとして生きていたいので、音楽以外での挑戦も絶えずしていくことですかね。活動において行うことは全てぼくの音楽に還元されると思っているので、ファンのみなさまに色んな角度から龍ヶ崎リンの音楽を見てほしいです。

 
——現在の音楽を取り巻く状況に関して、なにか感じることはありますか?

VTuberの音楽シーンの多様性は日々広がってきていると感じています。“VTuberの音楽”という枠組みを越え、徐々に”そのアーティストが持つ音楽そのもの”が受け入れられる時代になってきたのかなと。今後も今までの常識にとらわれない、多様性のある音楽表現が出来るVTuberが生まれていくと思うので、自分自身もその内の1人として、VTuberの音楽シーンを盛り上げていきたいと思っています。

 
——最後に今後の活動の予定や展望を教えてください。

2023年はシンガーとしてのキャリアを積み上げていくために、現在進行形で様々なことを準備中です。今回の1st singleリリースはやっとスタートラインに立てたなという感覚があって、これから自分にしか表現出来ない音楽をどんどん展開していく予定です。唯一無二のシンガーとして色んな方に認知していただけるように、内面的な成長や経験値を増やして、その過程全てが胸張って見せれるアーカイブになるよう頑張ります。

 

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