【コラム】たかやん「らぶびーむ!!」のポテンシャル、 メンヘラ・地雷系の代弁者が発信する“好きすぎる気持ち”
昨年12月のリリースから2月のバレンタインシーズンまで、TikTokを賑わしたいくつかの曲の中で特に注目したいのはたかやん「らぶびーむ!!」だ。
たかやんは、2011年からYouTuberとして活動を開始。現在はチャンネル登録者数が170万人以上おり、ラッパーとしてもSTUPID GUYSというユニットで堂村璃羽と活動する愛知県出身のシンガーソングライター。いわゆる“メンヘラ”、“地雷系”と呼ばれる層の代弁者として、高い共感を得るヒットソングを数多くリリースしている。“金髪ガチマッチョ”なたかやんがここまで女子の心を掴んだ楽曲を次々にリリースし人気を博していることは、令和のデジタル音楽シーンのなかでも興味深い事象の一つだろう。
「らぶびーむ!!」は、リリース後からTikTokのダンス動画をはじめメイク動画、商品紹介動画など様々なシーンにあわせて広く使われ、「彼氏が大好きすぎる曲」という曲のコンセプトがバレンタインシーズンと相まって今年の冬のヒットチャートにランクインしてきた(TikTokの「TikTok Japan ホット」では最高5位に)。
たかやんは、この数年間ほぼ月に1曲というハイペースで精力的に楽曲配信をしている。たかやんの楽曲がリリースされるとすぐに、リリックビデオ用のためさまざまな書体でテロップ動画の周辺素材をクリエイターが制作。たかやんのリスナーがSNSでその周辺素材を使うスピードは他の配信者に比べても非常に早く広い印象だ。コアなファンにより非常に活発な二次創作のネットワークが形成されているように感じる。
また、この「らぶびーむ!!」に限った話ではないが、SNSを通じて楽曲タイトルや歌詞をリスナーから募集するなどしてファンと一緒に楽曲制作を行うスタイルは、例えば歌い手やボカロPの界隈でもおなじみで、ファンエンゲージメントを強めるのに大きな役割を果たしている。たかやんも例外ではなく、そういった制作スタイルは彼のファン層を厚くすることにしっかり貢献しているだろう。
そのような双方向のコミュニケーション力、共感力が背景にあり、そこにたかやんならではの感性が加わることでクリエイティブ自体がある種の“未知のポテンシャル”を帯び、代表曲の「玩具」や「どうせ無くなるだけ」「勝たんしか症候群」 「手首からマンゴー」といった、特定の層へ異常なまでに深く刺さる楽曲、歌詞が生み出されてきたであろうことは想像に難くない。高い中毒性を持つそれらの曲は、たかやんの支持層を引き続き拡大させしっかり固めていくだろう。
TikTokにおいて楽曲のサイクルは非常に速いが、この「らぶびーむ!!」においてもキャッチーな歌詞や覚えやすい振り付けなど、これまでのヒット曲の全要素が集約されており、方向性は変わらないが、“好きすぎる気持ち”が歌われ、たかやんの楽曲の中ではどちらかというとポジティブな歌詞を持つこの「らぶびーむ!!」には、これまで10年もの長い間YouTubeやSNSで多くのファンに共感を得てきた『たかやん』という存在を、改めて広く老若男女に知らしめるポテンシャルが秘められているように感じる。同曲が引き続きTikTokをはじめSNSでどれだけ使用され、替え歌や歌ってみた系動画の二次創作を通してどこまで再生数を伸ばしていくのかが注目される。
たかやん「らぶびーむ!!」 https://linkco.re/SGfgbvsZ
(THE MAGAZINE 編集部)