【Who’s NXT】Yatt「とにかく制作スピードを緩めない」ラッパー、そしてプロデューサーとしてマルチに才能を発揮する新鋭アーティスト
Yatt
ラップスタア2023では過去最多3,457人の応募から130人のエリアトライアルまで勝ち上がったラテン・レゲトンをバックボーンとした若干22歳の実力派ラッパー。トラックメイクからミックス、マスタリングまでを全て一人でこなし、プロデューサーとしてYata41名義で他のアーティストへのビート提供も行う。2022年にはDJ RYOW & SPACE DUST CLUBによる初のビートアルバム『THE BEAT TAPE』の客演作品『THE BEAT JACK』の客演アーティストに抜擢。同じく2022年にCHILL OUTとTune Core Japan主催のCCA 2022ミュージック部門ノミネート作品に選出されるなど、活動の幅を広げている。さらに、渋谷の新しいカルチャーを創出するプロジェクト「SHIBUYA SAKURA GARAGE」第0弾のコンペティションでは、優秀賞に選出されている。
Who’s NXT : A series of interviews with featured artists
——音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。
当時自分が中学1年生くらいの頃に、兄がMCバトルやUSのヒップホップを聞いていたので、そこから自分も聞くようになりました。当時は、Tupac、50 Cent、 Eminemを聴いてました。
——自ら音楽活動をやることになったきっかけは?
さっき述べたみたいに、兄から影響を受けたその後、日本語ラップシーンもチェックするようになりました。その時にSALUさんの「RAP GAME」にとてもインスパイアされて、特にリリックにある“俺にも出来そうな気がする”って所にまんま影響を受けて、自分も出来るんじゃないかと思って音楽エンジニアとしてキャリアをスタートしました。その1年ほど後にビートメイカーも始めて、そのまた1年ほど後にラッパーとして活動もスタートしました。
——現在、主に活動しているシーンや地域はどちらですか?
大阪です。
——直近でリリースされた作品をご紹介ください。
Yatt & Ice Cream Castle – 41 Care Pack Vo.1 (EP)
この作品は自身として2作品目のEPで、ヒップホップの中でも多岐に渡るジャンルで制作した6曲入りのEPです。Ice Cream Castleからビートを提供していただいて直ぐにEPを組もうってなるくらい自分の勢いと合致した曲ばかり提供して頂きました。
今回のEPでも普段から意識している “1人で何役もする” ということをテーマにしました。本当に全部Yattなのかって思わせられるくらい自分のジャンルへの振り幅には自信があります。
6曲目に、もしも明日死ぬとしたら何をしようという意味を込めた「Mosimo」という曲があるのですが、これはボーナストラックで、せっかくのまとまった作品なので自分でビートを使った作品を入れたいと思って作りました。こちらはミュージックビデオまで撮影し、かなりハイクオリティな作品に仕上げられたと思ってます。
——他にこれまででおすすめ、あるいは思い入れのある作品をあげるなら?
「NAKI MUSI」です。この曲は、母子家庭の自分の幼い頃からの環境を詰めた曲になっていて、リリックも自分に起こった事などを細かく書いてます。
例えば、
ソファに座る2人の子
終わりの見えない寒い夜
横の部屋から怒鳴り声
動けず泣いてるマジ怖い
の部分は、父親の怒鳴り声を聞いて泣いていた自分だったり、当時幼い兄と座っていた父の実家のソファなど、その頃の情景の思いを詰めています。
子供の前であんなに怒鳴り散らかす、父側の祖父や父を思い出して、
関係の無い子供達も巻き込まれる
大人のエゴ
ってラインも書きました。
この曲を作った時は USのトラップをすごく聴いていたので、USのサウンド感を出したいと思ってビートもこだわって制作したり、ボーカルのサウンド感も英語に近い言葉を探したりなど工夫して制作しました。こちらもミュージックビデオを公開してます。
——普段の音楽制作はどのような環境やプロセスで行っていますか?
基本的に実家のホームスタジオで制作しています。制作ペースは調子良い時で2日で1曲をビートからマスタリングまで完結する時もあれば、リリックを4、5周分くらい書き直してやっとバッチリはまるという時もあります。ちなみに、さっき紹介した2nd EPはめちゃくちゃ調子良くて、1週間かからないくらいで全て出来たと思います。
——まだYattさんの楽曲を聴いたことがないリスナーにご自身の特徴を伝えるなら?
時々でてくる生活に身近なリリックや、変幻自在のフロー、多岐に渡る音楽性に自信があります。それからラテン系の音楽にすごく影響を受けているので、日本語のサウンド感もかなり新鮮な発音があったりとかも特徴になると思います。
——Yattさんが影響を受けたアーティストを教えてください。
Rauw Alejandro
彼はプエルトリコ出身で今ではラテン界隈を超えて世界で活躍しているアーティストですが、2019年くらいの時に自分がラテンのアーティストをディグっていると、YouTubeのオススメに出てきた「Mi llamada (Remix)」って曲にくらってから彼にハマりました。今はポップ系になっていってるのですが、当時は Rnb Trapよりな感じでフローも新鮮で凄く刺激を受けました。具体的な刺激は、やっぱりラテンアーティストってなんか自分らと違う音のノリ方があるような気がして、上手く言葉に説明できないんですけど聴いててめちゃくちゃ気持ちいいんですよね。その音のノリ方とかは凄い勉強しました。
Chris Brown
彼の音楽性はまさに自分が目指す所で、小節全てがハイクオリティな仕上がりで聞いてて飽きないし、最後まで聴いてみたい、どんな展開があるんだろうって思わせてくれる音楽をしているので、そんな音楽を自分も作りたいっていつも刺激を受けてます。前回のアルバム『Breezy』、特にその中の「Hmhmm」って曲のリズムの取り方、フローはとても参考になりました。
Lit Killah
このリットキラーって人は、自分的にラテン界のChris Brownって言ってもいいくらい変幻自在な音楽性をしてて、彼もまたどんなジャンルでも頭一つ抜けてます。特にスペイン語って所もあるのか、Chris Brownよりも気持ちのいいフローや、ノリ方があって、彼の前回のアルバム『SnipeZ』のクオリティは自分のゴールだなと感じました。彼らを見てると日本と違うなと感じるのは、もちろん市場の規模もそうなんですけど、前線にいる人の音楽の柔軟性が圧倒的に違うなと感じるんで自分はもっと彼らのような柔軟なスキルで勝負していきたいですね。
——楽曲でいうと、どういった曲に影響を受けましたか?
Rauw Alejandro – Mi Llamada (Remix)
この曲は7分もあって、総勢7人による楽曲なのですが、1回聞き出すと今でもしっかりと全員のバースを聞きたくなるくらい最後まで聞いてしまうし、それは各々アーティストの小節毎のフローの切り返しや、そもそも自分がスペイン語ボーカルのサウンド感がとても好みだからだと思います。
Tiago PZK – Muy Mal
最近のラテンシーンの中でフレッシュな曲のひとつで、ビートもEDMトラップに少し近い感じなのにビートに負けないくらい多彩なフローコントロールをしてて、参考にしています。
Cali Y El Dandee – Tequila Sunrise (ft. Rauw Alejandro)
彼らはかなり昔から有名なラテンアーティストで、こちらのレゲトンもリリースされた2019年の当初からずっと聞いていて、レゲトンへのリズムの取り方など参考になるので今でも好んで聞いてます。
——音楽活動をする上で、なにか特に意識していることはありますか?
とにかく制作スピードを緩めないことです。今は月に1回作品を出すことを心がけています。それから常に新しい何かを作れるように野心を持って制作しています。
——現在の音楽シーンについてなにか感じることはありますか?
自分が前線にいけばもっと音楽性の平均値を上げれて、日本のヒップホップシーンや音楽シーンのレベルが上げれる自信があるとは思ってます。日本だから良いモノや、自分の好みもあるかもしれないし、モノのタイミングとかもあるとは思いますが、まだまだ今の流行ってる日本のヒップホップシーンのレベルは海外には劣るかなと思います。
——今後の活動の予定、展望を教えてください。
大きいフェスや、ライブ、ツアーなど、ステージに立つ機会を毎週末やれるように動いてく予定です。
——では最後に一言お願いします。
アルバム制作中で、リリースが止まることはないと思うので、今後の自分のキャリアから目を離さないで欲しいです!