【ライブレポート】全29曲2時間!総勢13名のゲストと届けた初ワンマンで見えたSKRYUの多面的な魅力

2023.8.17

WAZGOGGとFuma no KTRとの楽曲「How Many Boogie」のバイラルヒットや、2部構成アルバム『Transform -Charcoal side-』『Transform -Diamond side-』のリリースなど、今年怒涛の勢いで躍進を続けているラッパー・SKRYU。8月11日には、満を持して初のワンマンライブ「-Transform- in TOKYO」を東京・代官山UNITにて開催した。本記事では、総勢13名のゲストが登場し、全29曲・約2時間に及んだ同公演の模様をレポートする。



発売開始後1時間でチケットが完売となった本公演。会場には、この日販売された「爆咲酒乱店」ロゴ入りのTシャツやタオルを身に付けたオーディエンスも散見され、改めてライブへの期待の高さが窺えた。

オープニングDJ・TOSHIKI HAYASHI(%C)がたっぷり会場を温めた後、故郷の母親からの留守番電話をフィーチャーした「Intro -A Phone Message-」に続き、「Tsukami」からSKRYUのライブが開始。今夜の主役の登場とともに一斉に会場中の手が挙がり、まさに掴みはバッチリのロケットスタートを切ってみせる。続く本日最初のMCにて、セットリストが全29曲にのぼることが告げられると、フロアからは思わず驚きの声が漏れた。







時折マイクをスタンドに戻しコミカルなダンスも披露するなど、ペース配分おかまいなしと言わんばかりに全身で音楽を楽しむSKRYU。7曲目の「缶 Make All」では、この日1人目のゲスト・Rude-αがステージイン。「情熱ぬるくなる前にOpen a beer」のリリックの通り、ステージ上で缶ビールを勢いよく開け、祝祭ムードに花を添えた。「TOKYO ZOO」では、テークエムとIKEが卓越したスキルを遺憾なくマイクにぶつけ、半ば狂乱するかのようなバウンスが会場を揺らす。

フロアフレンドリーなキラーチューンを連発したライブ前半のハイライトとなったのは、やはりFuma no KTRとの「How Many Boogie」だ。音源同様、寝起きドッキリ風に「おはようございまーす」とSKRYUが囁いた瞬間から、オーディエンスは沸騰。500人全員ラッパー状態と化した大合唱から、TikTokを通じて中毒者を大量発生させたこの楽曲のパワーを改めて実感させられる。

「Haaaan!!」では息ピッタリのコールアンドレスポンスを決め、ファンキーな「超 Super Star」の熱気をそのままに、「俺にとっての超Super Star」と鎮座DOPENESSを呼び込み「Golden Time」に流れ込むなど、巧みなライブ運びで最高潮の盛り上がりをキープしたまま、セットリストは折り返し。SKRYUがキャリアをスタートさせた地である愛媛・松山の先輩MC・Disryを招いた「Mic Memories」からは、一転してメロウな雰囲気に。一言一句を噛み締めるような2人のラップに、誰もがじっくりと聴き入る。CHICO CARLITOとともに客演参加したT-STONEの楽曲「SUDACHI – Remix」では、それぞれのフッドから巣立った3人のマイクリレーが涙を誘った。

その後もHI-D、GIPPER、太心、Lu-LAR、SUB-Kと、本公演では総勢13名のゲストが登場。その誰もがSKRYUの晴れ舞台を心から祝し、熱いハグを交わしていく。MCで「僕の周りにいてくれるのは優しい人ばかり」と語ったSKRYU。しかし、信頼できる仲間との固い絆を築き上げているのは、他でもない彼の「愛され力」に違いない。それは、ゲスト陣、バックDJを務めたDJ chaka、そして満員のオーディエンスと親密なコミュニケーションを図りながらライブを楽しむこの日のパフォーマンスからも見て取ることができた。





TOSHIKI HAYASHI(%C)とのコラボ楽曲「Mizore Fiction」から、ライブはいよいよクライマックス。ステージに降り注ぐ一筋のスポットライトが、仲間たちに囲まれた先ほどまでの姿とは対照的な、孤独な1人のアーティストの肖像を浮かび上がらせる。スターダムを駆け上がる決意を赤裸々に誓う「Grand Prix」がほのかな余韻を残し、ライブ本編は幕を閉じた。

すぐさま湧き上がったアンコールに応え再登場したSKRYUは、ライブ後半に自身の思いを詰め込んだこと、一人一人の目を見ながら歌うことで最後までライブをやり切れたことを伝え、改めてファンへの感謝を述べる。「次は金曜の21時に会いましょう」という言葉に導かれ披露された「Music Stage On」ではミラーボールが輝き、会場全体をダンスフロアに変えてみせた。ちなみに、”金曜21時の音楽番組”については、ステージ裏でCHICO CARLITOから「全然出れるよ!」と力強く背中を押されたそうだ。



そして、アンコールのラストに選ばれたのは、初めてのワンマンライブで最後に歌うと決めていた曲だという「Moutain View」。その途中、「この曲を書いたとき、確かに見たかった景色がここだ!」と万感の思いを口にする。「俺やっぱrapしてて良かった」のラインには、この日一番の感情が込められていた。フロアに深々と礼をするSKRYUに惜しみない拍手が送られ、記念すべき初ワンマンライブは締めくくられた。

ユーモラスかつシリアス、ファンキーでありながらハード、酩酊しつつ時に素面。2部構成の最新作「Tranceform -Diamond side-」「Traceform -Charcoal side-」にパッケージされた多面的な魅力を、見事ショーに昇華させたSKRYU。それは、地方銀行員からラッパーに転身し、MCバトルで注目を浴びながら制作とも向き合ってきた彼だからこそ説得力を帯びる表現なのかもしれない。そう遠くない未来、彼がさらに大きなステージに立つことを確信させる、あっという間の2時間だった。

























 
(文:サイトウマサヒロ)