【フォトレポート】米アトランタに集結するヒップホップの祭典「A3C Festival 」に初潜入
毎年10月にアメリカ・ジョージア州・アトランタにて開催されている、”ヒップホップシーンのSXSW”とも称される「All Three Coasts」 (通称A3C、エースリーシー) 。
今年で15回目と節目を迎えた「2019 A3C Festival & Conference」では、音楽をはじめ、テクノロジー、映像、カルチャーの複合フェス&カンファレンスとして毎回30,000人以上の関係者・来場者が世界中からアトランタに集まります。最初はローカルなヒップホップショーケースイベントとして立ち上がったA3Cは、今や次世代のアーティスト、ミュージシャン、イノベーターにとって最も意義のあるカルチャーイベントのひとつに成長しました。
A3Cについてピックアップしている国内メディアはまだほぼ無いということで、今回写真をメインにその現地の様子をお届けします。
成田から直行便で約12時間のフライト、ハーツフィールド・ジャクソン・アトランタ空港からダウンタウンまでタクシーで約30分の旅程を経て、100周年オリンピック公園近くのマンションの1室をAirbnbで取材拠点に。
US南部というだけあって10月でも真夏のような暑さを想像していると、実際はあまり東京と変わらず昼間はTシャツでもちょうどいい感じの気候。拠点となるホテルへ到着後、早速準備をして街に繰り出すと、まず実感するのがやはり黒人比率の高さです。さすがブラックミュージックのメッカだけあって、アトランタのレジェンドを思い浮かべれば納得の光景。このローカルから、James Brown、Ray Charles、Jermaine Dupri、Kris Kross, TLC、Organized Noize, OutKast, Killer Mike, Gucci Mane, Kanye West, T.I, Ludacris、Lil Jon, Future, 21 Savage, 2 Chainz, Migosなどなど、世界を席巻するレジェンドアーティストが生まれたのは周知の通りです。
90年代、アメリカを代表する南部のアーティスト、OutKast や Ludacris がヒットを飛ばしていた “Dirty South” のイメージがあまりにも強すぎて勝手に土臭い感じ(いい意味での)の街をイメージしていたのですが、実際はそれとは真逆で、雰囲気はむしろ近代都市に変貌を遂げつつあるといった趣。それもそのはず、数年前からアトランタではアメリカ最大級の「So Fresh, So Clean」な再開発が進んでいるらしく、新しいビルや公園、遊歩道、高級住宅街、コンドミニアムが次々と作られている風景をあちこちで目にしました。
そんなイメージのギャップに戸惑いを覚えつつ、いよいよA3Cの会場へ。
先程も紹介したように、今年で15年目を迎えるA3C。もともとは、3つの異なるコースト(East Coast、South Coast、West Coast)をレペゼンするヒップホップアーティストをアトランタに集め、ライブショーケースをすることが目的でしたが、今や6日間に渡り500組のアーティスト、50個のショーケース、300組のスピーカー、150個のセッションが一同に会する一大イベントになりました。
アーティストのラインナップをみてもシーンの豪華メンバーが勢揃い。
今回のA3Cのメイン会場はダウンタウンにあるAmericasMartビルディング内のAtlanta Convention Centerにあり、本格的なコンベンションセンターを用意して開催されるのは今回が初とのこと。
A3Cと地元ブランドとのタイアップグッズの販売もされており、中にはアトランタで有名な”THE MAGIC CITY”とのコラボグッズも。
ブースでは、来場しているアーティストによる即興演奏やフリースタイルが自然発生的にそこかしこで行われていました。
SXSW同様、各企業や音楽テクノロジーサービスのブースも多数出展されています。
TuneCoreのブースも発見!
TuneCoreは出展だけでなく、特設会場を用意しアーティストとのミートアップイベントも開催していました。
カンファレンスでは、様々なトークセッションが行われ、例えばヒットした楽曲のアプローチやプロモーション事例、スケールするまでのプロセスなどに関して紹介、議論が交わされていました。
“Breaking Down The Beat”と題されたDJ QuikとJsut Blazeのセッションにも参加してみたのですが、各地のプロデューサーの卵などが多く参加しており、いきなりバンバンと質問が飛ぶアグレッシブな内容に。彼らも、「ヒップホップはヤングマンズゲームだから、オレたちがどうこう言うことはないし、彼ららしくやったらいいと思う」と、大物プロデューサーらしい発言もありながら、注目する新人のラッパーを一緒に登壇させて、曲を数曲いきなり披露させるなど、アーティストやクリエイターとの近い距離感を感じさせれくれました。
楽曲プロモーションの面に関しては、世界の音楽シーン最先端だからといって革新的な方法があるわけではなく、今の時代特に日本ともそこにタイムラグはなく、やはり実直なアプローチやシーンを引っ張るアーティストによるフックアップなど、我々が知り得ている情報とほぼ大差はないといった印象でした。ただやはりUSはラジオ大国だけあって、エアプレイの重要性を強く感じました。
また、「How Can We Fix The Criminal Justice System.」という、生まれながらの犯罪に近い環境からどうやったら距離を置くことができるかという、日本とはまた状況が違うA3Cならではのテーマのディスカッションも行われていました。
そしていよいよライブ会場へ。SXSWに比べるとイベントやライブのベニューが点在しているA3C、各所少し距離があるのでUBERを使って移動します。
ライブ会場のメイン Tabernacle は、その歴史ある雰囲気も最高で、ひっきりなしにヒップホップのアーティストが熱いライブを繰り広げていました。
SXSWほどの規模感ではありませんが、ヒップホップという一つのジャンルに特化した音楽産業見本市のフォーマットが年々整いつつあり、いずれは間違いなくアメリカを代表するヒップホップフェスのひとつになるでしょう。
最後に余談として、街を歩いているとファイブ・ポイントというエリアがあり、いかにも「この先はゲットーです!」という場所がやはり存在します。街の匂い、人、オーラで一発で気づくと思いますが、例にもれず普通に発砲事件が頻発しているので、この記事で興味をもっていただき、今後訪れてみようと思っている人はネットだけでなくローカルでの情報収集が特に大事な地域だということをお忘れなく!
Photo & report : Tacto
(Photo by courtesy of A3C)