個人VTuber しぐれうい が異例の大ヒット バイラル首位の「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」はZ世代から“インターネット老人会”まで射抜く令和最新型電波ソング

2023.9.29

“インターネット老人会”にもリーチする電波サウンド

TikTokを通じて若年層リスナーの心を掴んだ「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」だが、もう一つのターゲットが存在することも見逃せない。それはサービス開始からまもないころのニコニコ動画や、それ以前のネット文化に親しみ深いリスナー。あるいは、“インターネット老人会”と表現するのが手っ取り早いだろうか。

そもそも本楽曲を制作したのは、2010年前後にニコニコ動画に浸かっていたインターネットユーザーならば知らないものはいないであろう東方Projectのアレンジ楽曲「魔理沙は大変なものを盗んでいきました」「チルノのパーフェクトさんすう教室」を手がけ、現在も数多くのVTuber楽曲を世に送り出している音楽制作チーム・IOSYSに所属するまろん(作詞)とD.watt(作曲・編曲)。一度聴くと耳から離れないメロディーと電子音、存在感抜群の合いの手を耳にして、クレジットを見ずともピンときたリスナーは少なくないだろう。

その楽曲に呼応するように、MVにも“弾幕”や固定された赤字のコメント、さらには4:3のアスペクト比といったニコニコ動画のマナーが持ち込まれており、SNS上では「あのころのニコ動を思い出す」といった反応も散見される。

ノスタルジックなインターネットの空気感を振り撒きバズった楽曲といえば、今年3月にリリースされたAiobahn feat. KOTOKO「INTERNET YAMERO」が記憶に新しい。ADVゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』から生まれた同楽曲は、強烈な中毒性を放つガバキックにネットミームやスラングを巧みに噛み合わせ、Spotify国内バイラルチャート首位に上り詰めた。

 
両楽曲は、どちらもネット文化への愛着を明け透けに楽曲に反映しているという共通点がある。その一方で、テキストベースのコミュニケーションがインターネットを動かしていた2ちゃんねる全盛時代から、現在に続く動画中心カルチャーが萌芽を見せたニコニコ動画黎明期へと、懐古の対象が移行しているようにも感じられないだろうか。だとすれば、「粛聖!! ロリ神レクイエム☆」は、「INTERNET YAMERO」による“古き良きインターネット”リバイバルの潮流をとらえつつ、その可能性をさらに拡張させる一曲ともいえるだろう。

しぐれういの今後の活躍はもちろんのこと、ネットミームやニコニコ動画のカルチャーといったオタク文脈を組み込んださらなるヒット曲の誕生にも期待したい。

(文・サイトウマサヒロ)

 

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