【イベントレポート】初の野外開催にKawaii音楽ラバー熱狂!『暴力的にカワイイ 2023』 | ageHa THE FESTIVAL 2023 day1
日本最大級のクラブブランド・ageHaによるフェスティバルプロジェクト『ageHa THE FESTIVAL 2023』が、10月7日から10月9日の3日間にわたり、東京・お台場の特設会場で開催。その1日目に、アニメ・ゲーム・ネットカルチャーを巻き込んだモンスターパーティー『暴力的にカワイイ』が野外イベントとして帰ってきた。
おなじみのアーティストたちに加え、4s4ki + KOTONOHOUSE、TAKU INOUE、BPM15Qと三者三様のゲストアクトが集結した『暴力的にカワイイ 2023』。本記事では、新木場ageHaでの最後の開催から2年ぶりにKawaii音楽ラバーたちを興奮の渦に巻き込んだ同イベントの模様を、メインステージのアクトを中心にレポートする。
2017年6月に渋谷LOUNGE NEO(現在は閉店)で150名規模のパーティーとして幕を開け、2018年からは系列店舗のclubasiaへ。さらに2020年と2021年にはコロナ禍ながら新木場ageHaでの開催を成し遂げるなど、天井知らずの勢いでその規模を拡大してきた『暴カワ』。
クラブカルチャーと萌え文化が交差するKawaii Bass Musicのリアルな発信地としてシーンに与えた影響は大きく、文字通り“暴力的”かつ“カワイイ”サウンドは、キズナアイをはじめとするVTuber楽曲や、バンダイナムコエンターテインメントによる音楽原作キャラクタープロジェクト『電音部』などにも波及。新木場ageHaでの開催時よりも大幅にキャパシティを拡大したにも関わらず本公演のチケットがわずか数日で完売したことからも、『暴カワ』の強い求心力と、リスナーからの熱狂にも近い期待が伝わることだろう。
会場となったお台場・青海R地区に到着すると、新木場ageHaのシンボルでもあった真っ赤な「オクタゴンスピーカー」のオブジェがお出迎え。メインステージとなるY STAGE、遮蔽物がなく青空を望むことができるZ STAGE、バーカウンター横に併設されたBAR STAGEと、3つのフロアが展開されていた。開放的な空間のそこかしこで重低音が鳴り響くその光景は、在りし日のageHaでの非日常的なパーティーを思い起こさせる。
強い日差しがコンクリートに照り付ける14時15分、Y STAGEにNeko Hacker feat.をとはが登場。2組がコラボした楽曲「だーいすきだよ」「夢幻泡影」や、『電音部』ハラジュクエリアのキャラクター・桜乃美々兎(CV:小坂井祐莉絵)に提供した「Do You Even DJ? (feat. Neko Hacker)」などをハイエナジーなパフォーマンスで披露する。エレクトロサウンドと流麗なギターソロが交錯する彼らならではのスタイルに、フロアも全力のコールアンドレスポンスとハンドクラップで応えた。
続くSnail’s Houseは、Kawaii Future Bassの象徴ともいえる名曲「Pixel Galaxy」をはじめ、キラキラと輝くシグネチャーなシンセの音色とハードなサウンドが入り乱れる選曲でフロアをロック。livetune「Tell Your World (Snail’s House Remix)」のメロディーを聴いた瞬間、「『暴カワ』が帰ってきた!」という強い実感を噛み締めたのは、筆者だけではないだろう。バトンを受けたYUC’eは、新曲「Nyandemic」や『暴カワ』には欠かせないアンセム「Future Candy」で、フロア前方に詰め寄せたリスナーを多幸感に包む。
涼しい風が吹き始めた15時40分ごろからは、今年8月に2ndアルバム『moeǝɯo』をリリースしたKOTONOHOUSE、2月にアルバム『BLOOD DEBUG』をリリースしたTORIENAが立て続けに登場。それぞれ最新楽曲を交えたセットで、現在のモードを提示してみせる。TORIENAのライブ終盤には、メタルコアバンド・Falling AsleepのVinny(Vo)、Hiroki(Gt)も登場。彼らの最新アルバム『HEAVEN’S WHERE OUR SOULS BELONG』に収録された「VANDALISM (feat. TORIENA)」が演奏されると、フロア後方にはメタルフェスさながらのモッシュピットも発生していた。
ここで、本日最初のゲストアクトであるニューエイジポップユニット・BPM15Qがステージイン。TeddyLoidのRemixによってよりフロアライクに鍛え上げられた代表曲「はくちゅーむ(TeddyLoid Remix)」や最新シングル「LaRiLaRu」などの楽曲をシームレスにパフォーマンスする。会場は、パーティーの歓喜とライブアイドル文化が混ざり合う狂騒空間に。今回の『暴カワ』では、彼女たちや1DJ + 1ギターという編成のNeko Hacker然り、シンプルなDJアクトにとどまらない様々な形態のアーティストが活躍したことも印象的だった。
いつの間にか陽も沈み、七色のレーザー照明も映え始めた17時25分からは、2組目のゲストアクト・Taku Inoueのプレイが『アイドルマスター スターリットシーズン』の楽曲「ダンス・ダンス・ダンス」からスタート。歓声・バウンス・合唱で出迎えるオーディエンスの熱気に、Taku Inoueは思わず「スゴいね!」と驚きの声を漏らす。一方、続いてステージに現れたYunomiは、彼が手がけた数々の楽曲のメロディーが浮かび上がっては消え、アンビエントな音色が通奏されるこの日のためのスペシャルなエディットで、徹底的にストイックなセットを展開してみせた。エレクトロ・ミュージックにおける“カワイイ”とは何か?を問う、神聖さすら感じさせる45分間。イラストレーター・きあとによるデジタルライブペインティングとともに、リスナーたちは固唾を飲んでその様子を見守った。
3組目のゲストアクトは、4s4ki + KOTONOHOUSE。4s4kiはステージを跳ね回り、初の『暴カワ』を楽しみ尽くしたようだ。ライブ後半には、BPM15Qの苺りなはむことrinahamuを迎え、「NEXUS feat. rinahamu」「ヒーロー feat. rinahamu」を歌唱。センチメンタルな2人の歌声には、秋の夜空がよく似合う。
ここからいよいよ『暴カワ』も終盤戦。会場にも疲れが見えてきたか……と思いきや、最初から最後までフロアをブチ上げ続けるPSYQUIの怒涛のプレイには、誰もが限界を超えて踊らずにはいられないようだ。オーディエンスが灯したライトの中で響く「ヒカリの方へ (feat. Such)」は、この日のハイライトの一つだったと言えるだろう。クロージングDJを務めたBatsuは、BUMP OF CHICKEN「天体観測」からPorter Robinson「Something Comforting」まで、ジャンルも世代も超えたアンセムの応酬で、まるで走馬灯のようなクライマックスを描く。ラストは「暴カワにとって一番大切な曲」という言葉とともに、Stereoman & Yunomi「シンデレラベイビー (feat. アンテナガール)」で長い一日を締め括った。
終演後には、『暴カワ』オーガナイザーであるclubasia店長・鈴木将がステージに。涙を浮かべながら来場者への感謝を語ったほか、「次は浜辺でやりたい」という嬉しい言葉も聞くことができた。
インターネットでワンバウンドし、渋谷・道玄坂に着地したカラフルでカオスな感性を、再び高い空に放ってみせた『暴カワ2023』。もはや一介のパーティーに収まらないこのムーブメントは、果たしてどこまで広がっていくのか。確かな満足感とともに、さらなる期待に胸が膨らむ一日となった。
(取材・文:サイトウマサヒロ)