RKID’z「向日葵」が話題 TikTokで注目集まる、バイラルチャートも急上昇 “愛した分だけ思い出が強くなる” ― 悲痛な出来事を受け止め優れたセンスで楽曲/歌詞に昇華

2023.11.8

RKID'z

大阪府堺市出身のラッパー・RKID’zの楽曲「向日葵」がチャートを賑わせている。10月13日にMVが公開、10月15日に配信シングルリリースされ、10月23日にリリースされたアルバム『HIMAWARI』のクロージング・トラックとなった同楽曲。10月30日には、SNSで話題の楽曲をランキングするSpotify国内バイラルチャートに5位で初登場。11月5日付けで、2位まで順位を上げている。

 

画像 : Spotify Chartsより

 
亡き友人に捧げた「向日葵」

かつてはR-KIDの名義を用い、サイファーやMCバトルへの出場を含む幅広い活動を展開してきたRKID’z。2019年2月には初の主催イベントを開催するなど、地元に根差し着実にその存在感を増し続けてきた。2021年2月には1st EP『EPHEMERAL』をリリース。TikTokで数多くのカップルたちに使用された収録曲「MILKEY HOUSE」は、R-KID時代における代表曲の一つと言えるだろう。

@yuiii___09

この曲マジですき〜‼️@r_kid_0122 さんの歌!

♬ MILKEY HOUSE – R-KID

 
そんな彼がさらにその名を広めることとなった今回のバイラルヒット曲「向日葵」は、不慮の交通事故によって亡くなった友人に向けて書かれたというメロウなミドルナンバーだ。と言っても、その言葉は悲哀や悔いばかりに満ちたものではない。身内ネタに近いローカルなエピソードを「流した涙の分だけ心に残る / 俺達だけのあの日のMemory」というラインで回収するRKID’zの姿からは、突然降り注いだ不幸とまっすぐに向き合い、確かに心に残る彼の生きた証と共に前に進もうという、希望に満ちた決意を感じ取ることができる。

 
TikTokヒットを実現させた普遍性

「向日葵」が注目を浴びるきっかけとなったのは、TikTokでの拡散に他ならない。現在、6000件以上の動画が同楽曲を使用している。その多くは、「別に会いたいわけじゃないけどさ / “愛した分だけ思い出が強くなる”」というフック部分から始まる、恋人同士の仲睦まじい映像を収めた内容。ABEMAの恋愛リアリティ番組『今日、好きになりました』にてカップル成立を果たした“やまあい”こと須藤大和と細川愛沙のラブラブ動画も約5000件のいいねを獲得するなど話題を呼んでいる。

@yama_828

今日のごはんはおれのリクエストでお雑煮でした👶🏻おいしかったでちゅ#やまあい #年下彼女 #彼女がかわいすぎる #やまあいの日常

♬ 向日葵 – RKID’z

 
RKID’zは自身のTikTok動画にて「実はラブソングじゃないんです」と語っており、このような形でのヒットは予想外だったのかもしれない。しかしこの受容は、友人の死というパーソナルで悲痛な出来事を普遍的で前向きなポップソングに昇華する、RKID’zの優れた表現力の裏付けとは考えられないだろうか。

@r_kid_0122

ラブソングじゃないよ。 天国に行った友人に書いた楽曲。 椎葉の命日10/23日 RKID’z 1st full album リリースします。 タイトルは向日葵🌻 椎葉が「陸お前早よ有名なって自慢させてくれや!売れやなしばくからな!」その言葉で音楽を続けてここまできました。遂にやで!! 椎葉、お待たせ。天国でいっぱい聞いてな!自慢できるくらいに俺はこっちで頑張るよ🔥🔥#愛した分だけ思い出が強くなる#RKIDz

♬ 向日葵 – RKID’z

 
彼のアーティストとしての確かな実力は、アルバム『HIMAWARI』でも存分に発揮されている。同作は、熱く闘志を燃やすハードな「Masamitsu Kutsuwa」「ROS」から、「向日葵」にも通じるエモーショナルな「タバコ」「IF」など、多彩な楽曲を収録。Instagramにて綴られた「どれだけtiktokに頼ろうが俺の土台はあくまでhiphop」という頼もしい言葉の通り、RKID’zのラッパーとしての地肩の強さが感じられる一作だ。今回のヒットをきっかけに、さらなる飛躍を果たすポテンシャルを十分に秘めているに違いない。

(文・サイトウマサヒロ)

 

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