【コラム】VELTPUNCH 新作「17歳と嘘つき」 結成28年を経てなお証明し続ける飽くなき創造性

コラム・特集
2025.5.29
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皮肉、自嘲、退屈、妄想、コンプレックス、欲情、憧憬。垂れ流す感情を曲にし続け、かき鳴らす爆音を誇りとしてきたオルタナティブ・ロックバンドVELTPUNCHが5月14日にデジタルリリースした2曲入りシングル「17歳と嘘つき」を聴いて、膝から崩れ落ちる思いがした。なぜなら、期待が失望を生み、失望が期待を渇望するという出口のない堂々巡りのロックミュージックの渦中に、結成から28年を経てもなおVELTPUNCHは未だ完全に居ることを知ったからである。

2022年に発表した結成25周年記念シングル「蛙の唄 / Merry Go Round Girl」以来、約2年半ぶりの新曲である「嘘つき」と「17歳」は、当然のように今作にも初夏の爽やかさの描写など皆無で、なんだかほっとする感覚すら覚えるのは筆者だけではないはずだ。けれどそんな“らしさ”に加えて、VELTPUNCHとして変わらずあり続けるために、常に新しい創造性と高い批評性を擁する新曲を発表し続けてきたという現実を教えるのがこの2曲でもある。オルタナティブ・ロック、シューゲイザー、エモといったルーツを中心とした音楽表現に対する深い愛情ゆえに、自らの音楽にも高いレベルを課しそれを維持してきたVELTPUNCHのスピリットを証明し更新した。

「嘘つき」は、グランジ〜ガレージのバンドサウンドに歌謡的で立ったメロディが融合する鮮烈且つフィジカルな楽曲。長沼秀典と荒川慎一郎によるツインギター、ナカジマアイコと浅間直紀によるリズムは、喉元にナイフを突きつけられているようにソリッドな切れ味でロックの凶暴性に溢れている。歌詞には終始、鬱憤が溜まりまくっており長沼らしさ全開。また、曲の中盤から加わるどこかシュールなハンドクラップと掛け声も肝で、ミュージックビデオでは無表情に手を叩くメンバーの姿が際立っているが、ライブの演奏時にはライブハウスに集結した人々の熱量や執念が巨大なとぐろになって立ち昇るというような、VELTPUNCHにしか作り出せない唯一無二の空間が広がる光景が今から目に浮かぶ。それらに加えて、導火線に火がついたような終盤の爆発的なバンドサウンドなど、多彩な展開、幾つもの見せ場を総合的にはストレートなロックナンバーとして3分ちょっとの尺にまとめ上げる曲作りの手腕には改めて唸った。

 
「17歳」は、「嘘つき」と対極にあるようなミドルテンポの曲調で90年代のシューゲイザー的なアプローチのメランコリックな曲。歌詞では、タイトルの通り思春期特有の不安定さが惜しげもなく綴られており、その繊細さを肯定するように曲が非常に美しく、浮遊と退廃を併せ持つ音像は鳥肌もの。マイブラの来日が発表されたタイミングにもばっちりハマったな、と思ったほど魅惑的な1曲だ。また、VELTPUNCHのアイデンティティの一つである長沼とナカジマのツインボーカルを堪能できるという点でも必聴作と言える。このツインボーカルは彼らの長年の代名詞であり続けながら、未だにこれほど透明感があって儚いハーモニーとユニゾンが聴けるというのは改めて稀有なバンドだ。彼らのアイデンティティやバイオグラフィーが昇華された曲としても感慨深い「17歳」。さらに、ノスタルジーに加え、<曖昧な言葉でいいよ>という一節などは間違いなく今の彼らならではの目線によると思う。だがラストでは、「最低!」という言葉を放ってクラッシュさせるのがいかにも長沼の世界観で、「こんな音楽、二度と聴かなくてもいい!!」(「Your corolla」) と歌ったVELTPUNCHらしさも大変健在である。

 
こういった心に渦巻くアンビヴァレンスな感覚を切り捨てない表現に誠実さを感じる。「17歳と嘘つき」という、ひとつのシングル作品としてもそう。たとえば2曲どちらの歌詞にも使われている「曖昧」という言葉は、「嘘つき」では「逃げ」として、「17歳」では「猶予」といった意味合いを持っており、表裏一体にある、人間のどうしようもなさと人間のいとおしさを表現してきたVELTPUNCHのシングル作品らしいと感じた。

今回のニューシングルの出来ばえから、2020年にリリースされた『Suicide King』以来となるニューアルバムへの期待も高まるところだが、その前に6月28日(土)に東京・新代田FEVER、7月20日(日)に東京・下北沢SHELTERにて「17歳と嘘つき」のリリースを記念したワンマンライブが開催される。今作のミュージックビデオがアップされたYouTubeやSNSのコメント欄からもわかるように、「ずっと活動を続けてくれてる事に感謝」「本当にずっとかっこいいバンド」という声を寄せる根強いファンを中心としながら、様々な世代や国籍のリスナーからも新たに支持を受けているのが今現在のVELTPUNCH。そのコアを現場で体感するべきだ。


VELTPUNCH『17歳と嘘つき』

VELTPUNCH「17歳と嘘つき」各サブスク

 

VELTPUNCH「17歳と嘘つき」リリース記念ワンマンライブ
 
◾️6月28日(土) at 新代田FEVER
OPEN/17:30 START/18:00
 
◾️7月20日(日) at 下北沢SHELTER
OPEN/12:00 START/12:30
 
前売 : 4,000円 (D別)
プレイガイド:イープラス https://eplus.jp/sf/word/0000032011

 
 
VELTPUNCH
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この記事の執筆者
堺 涼子
連絡は「sakairyoko8@gmail.com」まで