【コラム】ローライラック徹底解剖──なぜ今ローライラックに魅了されているか?
今、私が注目しているのがローライラックという3人組バンドだ。バンド名を初めて耳にする読者もいるだろう。2022年に活動を開始したこのバンドは、この3年で少しずつキャリアを積み重ね、今まさにその花を大きく咲かせようとしている渦中だ。この記事では、なぜ今そんなローライラックに筆者が魅了されているのかを話していきたい。
まず、ローライラックは2022年にVo./Gt.田代唯人を中心に結成されたバンドで、きらびやかなエレクトロ・サウンドを持ち味にして、インディーズシーンで少しずつ注目を集めている。「変幻自在のエレクトリックロック」というキーワードがこのバンドの紹介としてポピュラーな言い回しにはなっているが、“エレクトロ”は数ある魅力の一側面にすぎない。歌謡曲的な風味を帯びたメロディーライン、絶妙なバランスの意匠を施した透き通ったボーカル、ポストロックにも接続できるようなミステリアスな楽曲アプローチ、内面を丁寧に言葉にした文学的な歌詞など、様々な文脈のうえでローライラックの魅力が成り立っているからだ。
あえて先人のバンドの名前を借りると、エレクトロをベースにした意匠や、サウンドのジャンル性とキャッチーさとのバランスから、初期のサカナクションに近いものを覚えるリスナーも多いかもしれない。「夏風」や「東京」など、このバンドの代表曲の多くは、上記の文脈で語れるだろう。あるいは、不動の個性と洗練されたアウトプットを両立させるという意味では、相対性理論にも似たアーティスト性を感じるリスナーもいるかもしれない。フロントマンである田代唯人もそれらのアーティストの影響を公言しており、これまでのアウトプットにも、それらの要素が重なり合う部分が確かに感じられる。
一方、ベースの髙島匠美は影響されたバンドのひとつとして、SuchmosやCHICの名前も挙げており、楽曲としてみたときの心地よいグルーヴやソウルフルなプレイングは、それらバンドのエッセンスが色濃く反映されている。ドラムの葉月はfox capture planやtoeの影響も公言しており、統一されたビートメイクで展開することが多いローライラックの楽曲においても、時には大胆なリズムアプローチで楽曲にインパクトを与えている印象で、これらのバンドの影響が伺える。
幅広いローライラックの楽曲の魅力 – サウンド軸
ローライラックの楽曲ごとにその魅力をみていくと、バンドの代表曲である「夏風」や「東京」は、まずシンセサイザーのサウンドがインパクトが際立つ。楽曲の世界観を決定づけるような音使いをイントロの段階で積極的に導入するからこそ、どの楽曲も一聴するだけで頭に残るようなインパクトを与えることになる。その趣はどこか近未来的。ここではないどこかに誘うような面白さが楽曲の中に宿っている。一方、ビートを構築するベースサウンドはソウルフルで、楽曲のメリハリを力強く付けている印象。ドラムも淡々としながらも、細かな変化をフェーズごとにつけており、飽きさせない展開になっているのも注目のポイントである。
「輪廻転生」ではバンドのパワフルなサウンドを全面に出しながら、どこかアジアンテイストも感じさせる世界観を構築している。3人のアンサンブルと、シンセサイザーの組み合わせが巧みだからこそ成せる技。結果、どの楽曲もローライラックらしさをきちんと踏襲しながらも、幅広い世界観を構築していることがわかる。この辺りが「変幻自在のエレクトリックロック」たる所以であると言えよう。
幅広いローライラックの楽曲の魅力 – フレーズ軸
2025年3月にリリースされた『かたちあるもの』のアルバムに収録されているリード曲「夢遊病」は〈曖昧な関係でいい〉という繰り返されるフレーズにもあるように、内面を深く見つめるようなテーマ性で言葉を積み上げている。キャッチーなメロディーでありながら繊細なフレーズの組み合わせが印象的である。ポップでありながら楽曲としての奥行きも大切にしている点に、ローライラックの美学を感じさせてくれる。「claymore」もフレーズを区切って場面と感情をリンクさせながら歌の物語を掘り下げる流れが秀逸だ。ダンス・ロック的な跳ねるリズムと組み合わせながらも、哲学的なフレーズを惜しみなく展開しており、味わい深い作品性を担保していく。ローライラックはどの楽曲でも、詩的ながらも本質にえぐっていくような文学的なアプローチの歌詞を目にすることができて、この辺りもこのバンドの大きな魅力になっている。
まとめに替えて
2022年に活動をスタートしてからわずか3年、ローライラックはアルバムを経て成熟の域に達しつつある。多彩なサウンドと文学的な詞世界が交差する現在地から、彼らはさらにシーンを押し広げていくだろう。今後の躍進に期待したい。
ローライラック
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