TikTok発で大流行中の琳子「中華料理屋の酢豚が食べたい」― 日常の齟齬から生まれる“等身大”ラブソングの魅力【コラム】

コラム・特集
2025.8.12
TikTok発で大流行中の琳子「中華料理屋の酢豚が食べたい」― 日常の齟齬から生まれる“等身大”ラブソングの魅力【コラム】のサムネイル画像

今夏、注目度を急速に高めているシンガーソングライター琳子。2024年にTikTokをきっかけに一躍知名度を拡大、「中華料理屋の酢豚が食べたい」はそうした中で生まれた1曲。2024年11月に配信リリースされた同曲は、SNSで話題の楽曲をランキングするSpotifyのバイラルチャートに2025年7月20日に7位に初登場(Spotify Chartsより)。その後最高位3位まで上昇するなど、若い世代を中心に今年の夏を彩る楽曲として支持を集めている。

一度目にしただけで記憶に残るインパクト大のタイトルとともに、リリース前から前もってSNSに公開された強烈にキャッチーなサビが再生を伸ばしてきた。

他に漏れず、琳子の音楽の魅力の一つであるどこか“肩肘張らない”雰囲気をたたえる「中華料理屋の酢豚が食べたい」。誰もが一度は経験する「日常の小さな食い違い」。サビで繰り返される<中華料理屋の酢豚が食べたい/君が頼むのはいつも天津飯>というラインで、食べ物の趣味の不一致を通して、恋人同士の価値観やタイミングのズレを鮮やかに描いている。

白眉なのは、琳子はこのズレを否定的には捉えず、むしろ「不完全さ」ですら等身大の人間らしさとして肯定的に描写している点。単純な“幸せ一色”のラブソングではなく、微妙なすれ違いをリアルに描くアプローチで、多くのZ世代や若いリスナーの共感を呼び起こしているのではないだろうか。

本作に流れる感情のニュアンスの豊かさも見逃せない。例えば<譲れないもの同士ぶつかり合えるのが / 二人の醍醐味なんじゃないの?> <この先もずっと君といたい / ままならない恋なのは重々承知>など、単純な恋の高揚や失望で片付けられない“間”をきめ細かく言葉にしている部分にも非凡なセンスが感じられる。

食の好みの相違という人によっては些細な出来事から、価値観や人生観のズレまで、人間関係の“綻び”を的確にすくい取る。琳子は特別に悲劇的な物語にはしないが、だからこそどこかじんわりと滲み出す苦味や温もりが、リスナーの日常にリアリティを持って刺さる。そして、そんな世界観が、思わず口ずさみたくなる非常にキャッチーなメロディ、サウンドとともに展開されていく。

個性的な観察眼とセンス。そして過剰な感傷や説明に依存しない“余白”。総じてバランスがとれているこの“過不足のなさ”が、リスナーの集中力を散らさず、楽曲の強度を引き立てる役割を担っていると言えるだろう。「中華料理屋の酢豚が食べたい」で琳子は“食”という超日常なモチーフにおける“メニューの選択”という小さな出来事を通し、社会全体のリアリティとパーソナルな恋愛感情を巧みに接続している。

 

琳子「中華料理屋の酢豚が食べたい」各サブスク

@rin_ko_36 中華料理屋の酢豚が食べたい 振り付けかんがえた 踊ってみてね〜 #オリジナル曲 #おすすめ #琳子 #中華料理屋の酢豚が食べたい ♬ 中華料理屋の酢豚が食べたい (Sped Up Ver.) – 琳子

 

@rin_ko_36 中華料理屋の酢豚が食べたかった時に作った曲#おすすめ #シンガーソングライター #琳子 #中華料理屋の酢豚が食べたい #fyp ♬ オリジナル楽曲 – 琳子