【コラム】センス際立つソングライター×2と躍動するリズムが起こす化学反応 ── ロックシーンに新風吹かせるフー・ドゥ・ユー・ラブの真髄

コラム・特集
2025.9.9
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現在、密かに注目しているバンドが一組いる。それが、フー・ドゥ・ユー・ラブだ。フー・ドゥ・ユー・ラブは、東京を拠点に活動する3人組ロックバンド。元キイチビール&ザ・ホーリーティッツの村上貴一(Vo/Ba)、本日休演の岩出拓十郎(Vo/Gt)、そしてピーズ等で活動の茂木左(Dr/Cho)というメンバーで構成されたバンドだ。キイチビール&ザ・ホーリーティッツ、本日休演、ピーズ、それぞれバンドとしての世界観の作り込みや、研ぎ澄まされたバンドアンサンブルが評価されるバンドであるが、フー・ドゥ・ユー・ラブでもその技術がいかんなく発揮されている。

そんな彼らの魅力を端的に言葉にするなら、「渋くてかっこいい」。

この言葉に尽きる、と思う。というのも、フー・ドゥ・ユー・ラブは、バンドとしては結成5年目の若手バンドではあるが、前述の通り三人とも経験豊富であり、スタイルや世界観が確立しているからだ。どの楽曲も最初のサウンドを聴くだけで「あ、フー・ドゥ・ユー・ラブの音楽だ」というのがビリビリ伝わるし、音のひとつひとつにルーツを感じさせる切れ味がある。「あの頃」のロックに造詣があって、リスペクトがあるからこそ生み出せる音を響かせる。

また、フー・ドゥ・ユー・ラブは村上貴一と岩出拓十郎の二人のソングライターがそれぞれ楽曲を手掛けている。2025年3月5日にリリースされた作品には「楽しい毎日」と「見えない星たち」という楽曲が収録されている。前者は村上貴一が、後者は岩出拓十郎が手掛けている。それぞれがボーカルを担当し、サウンド構成やメロディーのアプローチ、楽曲で際立たせるポイントもそれぞれ異なっている。この個性の違いも、フー・ドゥ・ユー・ラブの作品を堪能するうえでの醍醐味になるし、フー・ドゥ・ユー・ラブが唯一性のある世界観を構築するうえで重要なポイントになっている。

 
切なくてぐっとくる村上貴一のポップセンス

デビュー曲である「呼び合った!」は、村上貴一が手がけた楽曲だ。

この歌は、フー・ドゥ・ユー・ラブのコアとなる魅力に溢れている。

聴くだけでなんだか懐かしい気持ちになるような音像。バンドの構成としてはシンプルながら、ギターが繰り出す激しさと柔らかさが共存した音の世界が、刺激的かつ心地良い世界に誘ってくれる。さらにリズムアプローチも痛快で、淡白なビートメイクながらもリズム隊の躍動感が半端なくて、ベースとドラムがリズムの波をダイナミックに動かしながら展開させている。良い意味で、令和の音楽っぽくないというか。「あの時代のかっこいいバンドの音」が見え隠れしているというか。楽曲を色で表現するなら、「色」が鮮やかに見えすぎるようなモノクロ、とでも言ったところだろうか。

そんな洗練されたサウンドのうえに、インパクトのあるキャッチーなメロディーと、透明感のある村上貴一のボーカルが組み合わさる。そのため、「呼び合った!」は一聴しただけで歌の世界がダイレクトに頭に流れ込むような快楽がある。フレーズやメロディーをリフレインさせながら、激しさと柔和さを持ち合わせるギターが耳に届くので、ロックとしての気持ちよさがまっすぐに届く。キャッチーなのに、芸術的。村上貴一の、ひいてはフー・ドゥ・ユー・ラブの美学を堪能することになる。

「ケチい気持ち」や「二人の最期」なども村上貴一が手掛けているが、どの楽曲も村上貴一のソングライティングのセンスを痛感するとともに、どの楽曲にも通底した美学があることも実感する。

 
オーセンティックなギターロックを感じさせる、ゴリッとした風味の岩出拓十郎の世界

対して、岩出拓十郎の楽曲はゴツゴツしたギターが存在感を際立たせる楽曲が多い印象。岩出拓十郎作の代表曲のひとつである「ニセビートルズ」も、痛快なまでにギターの音色がインパクトを残す楽曲になっている。オーセンティックな70~80年代のギターロックのような渋み。その中に、シンプルなビートメイクにからっとしたロックサウンドがのっかり、広大かつ自由な音の世界を生み出すのだ。「ニセビートルズ」の終盤に差し込まれたギターソロの音の響きもたまらなくて、「あの時代」のロックバンドの音が好物の人からすると、よだれが止まらない音の響きを味わうことになることだろう。そのうえで、岩出拓十郎のボーカルは独特の柔らかさを持っており、「愛の旅」でも「春の涙」でもソリッドなサウンドに対して、ボーカルは優しく響くのが特徴だ。

このように、フー・ドゥ・ユー・ラブは二人のソングライターのセンスが際立ち、楽曲ごとに異なる個性を生み出している。それぞれだけでも圧倒的な個性を解き放っているのに、バンドとしての個性は1では終わらせず、お互いの個性を交錯させながら、化学反応を生み出すのもフー・ドゥ・ユー・ラブの魅力であろう。

楽曲軸ではそれぞれの個性が独立しているように語ったが、バンドアンサンブルに目を向けると、岩出拓十郎のゴリッと感と、村上貴一の柔らかさ、その他それぞれの個性やアイデアが巧みに取り入れられている。また、茂木左の屋台骨的なビートメイクもフー・ドゥ・ユー・ラブの音楽の「らしさ」を作り上げている。シンプルながらもここぞの場面で派手にリズムをディレクションする感じ。だからこそ、楽曲ごとの個性を感じる一方で、それぞれの作品を聴いていくと、全体的なトーンは統一されることがわかる。2023年にリリースされたアルバム『フー・ドゥ・ユー・ラブ』も、まとまりがあるように感じるのは、バンドとしての足並みが揃っているからであると言えそうだ。

絶対的な安心感のもとで、どの歌でもフー・ドゥ・ユー・ラブの音楽世界に耽溺できるわけだ。

なお、どの作品もマスタリングが素晴らしいことも、フー・ドゥ・ユー・ラブの魅力を語るうえで大切な要素だ。聴くだけで、タイムマシーンに乗るような、あの頃と今を接続するようなロックサウンドの世界を旅することができるのは、アンサンブルの見事さと収音の妥協のなさが生み出した結果だと言えよう。

こういう美学でもって音を作り込むバンドがあまりいないからこそ、フー・ドゥ・ユー・ラブのサウンドは、今の日本のロックシーンにおいては新風を吹かせる存在にもなっている。

 
まとめに替えて

フー・ドゥ・ユー・ラブは2021年夏に結成したため、2025年の今、バンドとしては5年目を迎えたことになる。三人のアンサンブルもより円熟した深みを際立たせている印象で、ライブも精力的に行っている模様。色がはっきりしているからこそ、好きな人はどこまでも好きなその音楽世界に、ぜひ一度誘われてほしい。

 

 
 
フー・ドゥ・ユー・ラブ
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この記事の執筆者
ロッキン・ライフの中の人
ロッキン・ライフという音楽ブログとイベントを運営している中の人です。