「SKRYUは宙を舞い“スター”になった」満員熱狂の幕張メッセ SKRYU OneMan Live 2025「START」ライブレポート
9月21日、SKRYUが千葉・幕張メッセ国際展示場4-5ホールにてワンマンライブ『START』を開催した。
リリースとライブ活動を絶え間なく重ねステージを拡張させ続けてきたSKRYUが辿り着いた、ソロHIPHOPアーティストとしては異例となる幕張メッセでのワンマンライブ。『ツタロックフェス2025』『SONICMANIA 2025』など同会場にてフェス出演での前哨戦をこなし準備は万端。当日は国際展示場5ホールにフォトスポットや寄せ書きボード、グッズ販売、限定コラボフードのキッチンカーが用意され、お祭りさながらのムードがファンの期待を膨らませていく。
開演時間を迎えると、ステージ上のスクリーンにこれまでの軌跡を追った映像が放映される。そして時は巡り、ライブ前日のリハーサル。疲れ果てたSKRYUは、スタジオでそのまま寝落ちしてしまう。いびきが鳴り響く中で映像が終了すると、会場後方に置かれた大きな段ボールを突き破って、光輝くシルバーのジャケットに身を包んだSKRYUが登場。「おはようございアース」の囁きとともにヒット曲「How Many Boogie」からライブをスタートさせる。フロアを掻き分ける姿に浴びせられる歓声は、もはや冒頭からハイライト級だ。


「Stardom」ではコールアンドレスポンスをバッチリ完成させ、「Golden Time」では堂々と花道を歩く。SKRYUが手にした栄光を凝縮したような冒頭の構成で掴みは抜群である。独特のワードセンスが光るフレックスチューン「Bom Bon」では紙幣の紙吹雪が舞い上がった。
「スターとしてのスタートをみんなで切りたいと思って、『START』というタイトルを付けました」という最初のMCの後は、「MUNASAWAGI」「Magic Potion」「Like Water For Chocolate」「Queen Size Bed」と、その言葉通りポップスターとしての垢抜けを感じさせるスタイリッシュなナンバーを連打。かつてないほどに広い舞台を左右目一杯に練り歩いて、オーディエンス一人一人に手を振り目を合わせる。

夢や野望を象徴していたはずの「スター」という言葉は今や、等身大の肩書きとしてその身体を飾っていた。ラップとメロディ、おちゃらけとロマンスの境界線を溶かすサマーチューン「Summer Breeze」で巻き起こったシンガロングに、SKRYUは大きなハートサインを送る。
とはいえ、ポップな楽曲が続いてどこか物足りない思いを抱えていた人もいたかもしれない。「中途半端な熱量で終わらせたくないって人、どのくらいいますか!?」と煽ると、ダンサブルな「Heated」で灼熱ゾーンへ。スパンコールが煌めくシャツを脱ぎ捨てておなじみのタンクトップ姿になると、「極上のうんちしちゃう」とシャウトするSKRYU。オシャレなだけではいられないところが彼の憎めないところだ。スターとして走り抜ける覚悟を煽情的なメロディで綴る「タンクトップ・ランナウェイ」、エイ・カニ・ジョーズ・ウニと海洋生物にまつわるワードでコールアンドレスポンスを楽しんだ「Haaaan!!」。ボルテージの上昇は止まるところを知らない。

これまで数々のステージを共にしてきた相棒のバックDJ、chakaとのコンビネーションはこの日も絶好調。特別セットが用意された「居酒屋」では彼の合いの手が酩酊度合いを高め、「ハイブランド」ではブースを飛び出して一際巨大なタオルを振り回すことで会場をリードする。泥酔時のSNS利用に注意喚起する「No More Tweet」では、曲中にSKRYUがリアルタイムでXでのポストを作成・投稿するという演出が驚きと笑いを誘った。

ライブ中盤には、新曲「Monstar」のサプライズ披露も。勇壮なコーラスとダイナミックなサウンドがより大きなステージへとSKRYUを導く予感に満ちた一曲だ。初見とは思えないオーディエンスの歌声が、幕張の屋根を破らんばかりに轟く。一方、七色のレーザー光線がホールを貫いた「Laser」ではDrillやUK Garageの要素も織り交ぜたビートを巧みに乗りこなすマイクさばきを見せるなど、コミュニケーションとスキルの応酬でステージと客席の距離感を自在に操った。

「Real My House -Dance Remix-」がプレイされると、昨年夏の日比谷野音ワンマンに続いてなんとSKRYUの両親がステージに。さらに、ABEMA『木梨レコード』で共演した木梨憲武が突如現れると、大歓声が先輩スターを迎え入れる。同い年である木梨とSKRYU父は、番組内でも共通の話題だったカラオケの十八番「ガッチャマンの歌」をデュエット。その間に衣装替えを済ませたSKRYUが再度登場すると、木梨の「用意、アクション!」という合図から「クランクアップ」へ。木梨、父、SKRYUの三人が熱いハグを交わす。こんな常識外れの親孝行は、間違いなくSKRYUにしか成し得ないだろう。「悔いひとつない我が人生」のリリックにもいつも以上に熱がこもる。
「一度は夢を諦めてスーツに袖を通して、生きるのは辛いなって思いながら会社に通ったこともあるんだけど、今はみんなのおかげで音の中に生きてます。本当にありがとう」。改めて届けられたまっすぐな言葉に、惜しみない拍手が送られる。「俺を光らせてくれるみんなに今、聴かせたい曲がある」とアカペラで歌い出したのは「Country Road」。飾り気のない歌声が胸を打つ。その目には涙が浮かんでいたが、それは決して弱さではなく、むしろ覚悟や決意の強さ故に流れたものだった。ファルセットの歌声が美しい「Mizore Fiction」ではサビで一面の銀世界を思わせる照明が広がり、幻想的な景色を作り上げていく。

クライマックスの予感が漂ってきたところで、この日唯一の客演ゲストとして出演がアナウンスされていたラッパー・fuugaについてMC。キャリアの出発点となった愛媛・松山の大街道サイファーで出会い、彼のボロボロのワゴンRで各地を駆け巡った日々、そして距離が生まれてしまったfuugaから「俺は音楽がないと生きていけんわ」と電話があったエピソードを振り返って、「いつかデカいステージでfuugaと歌いたいって思いがあった」と力強く語る。披露されたのはもちろん最新フルアルバム『START』を締めくくる表題曲「START (feat. fuuga)」。SKRYUとfuugaは向かい合って、かつての景色を決して忘れず脳裏に刻み込むように、一言一言を噛み締めてラップする。感極まった二人の抱擁は、実に感動的なシーンだった。

本編ラストは「Mountain View」。スマホのライトをかざすように客席に呼びかけると、約一万人の思いが輝く星空に変わる。山頂からの絶景を背に、SKRYUは満足げな表情でステージを後にした。

アンコールではパーティーチューン「Celebrate」からライブを再開。まだまだ遊び足りないオーディエンスは「セックスオンザビーチよりも?」の問いかけに「ハブ酒!」とエネルギー満点で返答する。8月にリリースされたばかりの『START』の収録曲が既にライブアンセムとして化していて、リスナーたちからの支持の熱さを改めて実感させられた。そんな満員のフロアとの記念撮影を終えたSKRYUは、「こんな最高のお客さんに囲まれて、もったいぶる必要ないと思ってる。『いつかなりたい』『なれるはずだ』とかじゃなくて、今日をもって俺は超スーパースターになりました!」と高らかに宣言し、「超Super Star」へ。歓声とハンドクラップが、上半身裸の主役を祝福する。

ここまで来たら後は余力を振り絞るのみ。「Mr.Scandalous」で、会場は再び激しくバウンス。2バース目の途中でパンツ一丁になってしまったSKRYUは、なんとそのままワイヤーに吊られて空中へ! 呆気に取られる我々を見下ろし「全員見えるぞ!」とシャウトしシュールなポーズを決める姿は、終演後まもなくSNSで拡散され数万件のいいね! を獲得していたことをここに記しておく。



正真正銘の締めくくりとなったのは「頃合いのいい頃に」。もはや完全にマイクを手放し、ラップの大合唱の中で記念すべきステージの幕は下ろされたのだった。
この日発表された通り、SKRYUは来年3月に全国5都市7公演のZeppツアー『SKRYU 絶(Zepp)Tour 2026』を開催。過去の軌跡も、仲間からの期待も、時に押し寄せる重圧も、すべてを背負い歩む覚悟を決めたこの日はあくまで「START」。宙を舞い文字通り“スター”となったSKRYU、スターとしての道のりはまだまだ始まったばかりだ。
SKRYU OneMan Live 2025「START」 @ 幕張メッセ セットリスト
M1 How Many Boogie
M2 Stardom
M3 Golden Time
M4 Bom Bon
M5 MUNASAWAGI
M6 Magic Potion
M7 Like Water For Chocolate
M8 Ice Cream
M9 Queen Size Bed
M10 Summer Breeze
M11 Heated
M12 タンクトップ・ランナウェイ
M13 Haaaan!!
M14 居酒屋
M15 No More Tweet
M16 Midnight Marauders
M17 ハイブランド
M18 Monstar
M19 Balloon
M20 Laser
M21 Real My House -Dance Remix-
〜ガッチャマンの歌〜(木梨憲武、お父さん)
M22 クランクアップ
M23 GOKAICHO
M24 Screw Driver
M25 Country Road
M26 Mizore Fiction
M27 START feat. fuuga
M28 Mountain View
M29 (EN1) Celebrate
M30 (EN2) 超Super Star
M31 (EN3) Mr.Scandalous
END BGM 頃合いのいい頃に
SKRYU 絶(Zepp)Tour 2026

https://eplus.jp/skryu2026tour/