【コラム】独自ユーモア + キャッチー + スリリングなアンサンブルが混ぜ込まれたチセツナガラの真髄

コラム・特集
2025.10.22
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2025年、明確にシーンの中での存在感を強めているバンドがいる。チセツナガラだ。チセツナガラは、大阪を拠点に活動する4人組ロックバンド。Vo.小唄ぺこ、Gt.磨見隆磨、Ba.かさだまゆ、そしてDr.なおとというメンバーで構成されている。2019年に結成された彼らはライブハウスで精力的に活動していたバンドだったが、ここ数年SNSで話題を集めることも増えており、その認知度はどんどん上がっている。人気の秘密は、バンドのキャラクターとしてのキャッチーさと、確かな演奏技術があるところ。メンバーの脱退なども経て、現在4人体制で活動するチセツナガラは、「愛とキャッチーを武器に毒づくラブリーチャーミー」というキャッチコピーを掲げ、バンドとしてさらなる進化を遂げている。この記事では、そんなチセツナガラの魅力を言葉にしていきたい。

 
 
独自路線の突き抜けとダンサブルなポップセンス

チセツナガラはどの作品も独特の中毒性を解き放っている。バンドの代表曲である「週刊少年アイラブユー」はイントロから展開されるギターフレーズやドラムとベースがタッグを組んだリズミカルなビートメイクで、高揚感のある音楽体験を作り出している。そのうえで、ジャケットは少年漫画風のタイトルにしており、随所でバンドとしての遊び心に触れることができる。歌詞も独特で、少年漫画という枠組みで言葉を組み立ててはいるが、特定の文脈における“恋愛”へのシニカルな批評にもみえるような言葉選びが面白い。このように、独自の目線やユーモアを大事にしつつ、バンドとしての演奏力の高さから繰り出される中毒的なスリリングさが魅力であることがわかる。

 
初期の代表曲である「野良猫のストラット」でも、そういうエッセンスはキレキレで展開されている。一聴するだけで頭に残るメロディーやリズムのインパクト。磨見隆磨が繰り出す踊るようにうねるギターのカッティングだけで、ワクワクは最高潮。ダンサブルなビートメイクで、ライブで身体を動かしながらアッパーな音楽体験ができる。かさだまゆのグルーヴィーなベースラインと、なおとのパンチ力のあるドラムアプローチの共存が、シャープながらもダイナミックな音の体験に興奮を宿す。「BO3」でも高速BPMの中で、細くメリハリをつける展開を作っており、全楽器隊が鋭いサウンドを解き放っている。カラフルでイロモノのような空気感もあるけれど、まっすぐにバンドとしての技術で魅了するあたりに、チセツナガラの凄さが際立つ。

 
 
個性的なワードチョイス

先程の項目でも述べたが、チセツナガラの楽曲は使用するワードに個性的なものが多い印象。例えば、「金曜ロードショー」という楽曲がバンドの代表曲としてあるのだが、「金曜ロードショー」をタイトルにしているのが、そもそも面白い。「ドラマ」とか「映画」みたいなタイトルにするのがわりとベタだと思うが、<金曜ロードショー>という具体名を取り出し、そこを軸にして歌の世界を作り上げることで、この歌独自のリアリティーが生まれている。「夕暮心中」という楽曲も面白い。<夕暮れ>をテーマにして歌うだけなら世の中にたくさんあるわけだけど、ふいに<首ちょんぱ>というフレーズを入れ込み、夕暮れの景色に<心中>のテーマも組み合わせることで、かなり独自性の強い歌の世界を作り上げている。また、「トロイメライ」ではリズミカルで高速テンポの中で、<インビテーション君>や<頭ン中からバグっちゃってます>など、他の音楽作品ではあまり聴かないフレーズを織り込むことで、言葉の中でもインパクトのある音楽体験を与える。

 
 
小唄ぺこのエッジのあるボーカル表現

洗練されたサウンドとインパクトのあるキャッチーなメロディーに確かな生命力を宿しているのは、小唄ぺこの独特な高音ボーカルが組み合わさるからこそ。最新曲である「そうしてあなたは去っていくのね」でも、その魅力は健在だ。伸びやかで切れ味があって、そのうえで感情に訴えかけるような小唄ぺこの歌声。激しいサウンドと、赤裸々でインパクトのあるワードチョイスを行うチセツナガラの作品において、小唄ぺこのパンチ力のある歌声と組み合わさったときの爆発力が半端ないのだ。また、「SCARLET」でも、リフレインするメロディーの中でどんどん歌の世界に引きずり込まれていくのは、小唄ぺこが生み出す感情の色彩が見事だから。基本的に力強さがあるんだけど、必要に応じて繊細に力を調整しているような感覚があるのだ。

 

チセツナガラ「そうしてあなたは去っていくのね」

最新シングル「そうしてあなたは去っていくのね」

 

 
 
まとめにかえて

ここ数年で話題になることも増えたチセツナガラも、バンドとしては7年目を迎えている。確かにライブハウスで切磋琢磨したバンドということもあって、演奏力もパフォーマンスも熟達しつつある凄みがあるため、作品を聴いて「気になった」というリスナーは、ぜひ今すぐライブも体験してほしい、そんなバンドだ。何気に、関西バンドだからこその現場で体感できる「喋りの切れ味」も魅力のひとつだったりする。2024年11月にはメンバーの脱退という変化も経たが、その勢いは衰えることなく、むしろ進化と深化を際立たせている印象。ポップなセンスとブラックユーモア的な切り口とスリリングなアンサンブルを持ち合わせたこのバンドは、間違いなく唯一無二の存在感を際立たせている。ここからさらに、「ラブリーチャーミーな毒」が、より大きなスケールで世の中に反応を引き起こすことが予感される。

 


チセツナガラ
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この記事の執筆者
ロッキン・ライフの中の人
ロッキン・ライフという音楽ブログとイベントを運営している中の人です。