【コラム】cephalo ― 霧雨の記憶と疾走するメロディ、2020年代のシーンを照らす新星

コラム・特集
2025.12.19
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2020年代の日本のインディー・ロックシーンは、多様なジャンルの融合が加速し続けている。その中で、結成わずか2年で注目を集めるバンドがいる。それが、cephaloだ。2023年に東京で結成された4人組、Vo/Gtのfuki、Gtのオオマエ、Baのオオタキ、Drのウチダからなり、シューゲイザー、ドリームポップ、オルタナティブ、ローファイの要素を自由にブレンドしたサウンドで、聴く者の心に静かな波紋を広げている。fukiの透き通ったボーカルと詩的な歌詞が、日常の儚さと内省を優しく包み込む。BandcampやSpotify、Apple Musicなどのストリーミングサービスでも静かに広がりを見せている。そこで、cephaloはなぜ着実にシーンで頭角を表しているのか、その魅力を紐解いてみたい。

 
 
サウンドの話

cephaloの音楽は、独自の柔らかさと鋭さを持っている。cephaloが志向する音楽ジャンルとして、もともとそういう性質があるのは前提だが、それを踏まえてもcephaloの音楽には、ニュートラルかつ切れ味の鋭い強度がある。

デビューEP『Wind Surfing School』は、バンドの原型を提示する作品だった。リードトラックである「夜窓」は、ローファイなギターのレイヤーが色濃く残響していき、fukiのクリーンなボーカルと優しく溶け合う。まるでMy Bloody Valentineのノイズを、現代のインディー・ポップに溶かしたような聴き心地。雨の日に聴きたくなるようなクールさがあるし、サウンドの激しさの中に宿る幻想的なアンサンブルは、エーテリアルな世界観を作り上げていく。

2024年12月18日にデジタルリリースされた1stフルアルバム『Fluorite code』で、cephaloの音楽世界は一気に拡張された。「時化空」は歪んだギターのサウンドメイクが印象的で、シューゲイザー好きの心に刺さる、緩急のある美しさを研ぎ澄ました。淡々とリズムキープしていたベースとドラムが、ギターの躍動と呼応するように、中盤で爆発力を増していく表現も見事で、聴き手に儚い余韻を残すことになる。

アルバムの中盤を飾る「ルート225」はメロディーの洗練さも際立った疾走感溢れるナンバー。インディー・ロックとしてのエッセンスを散りばめながらも、高揚感のあるビートメイクでキャッチーさを伴わせているのが印象的。「MOON CHILD」のようにドリーム・ポップにぐっと引き寄せた歌もあれば、「midori」のように多幸感のある音使いで聴き手をぐっと世界に引き寄せる歌もある。アルバム全体を通して、今のcephaloの美学を堪能できる作品であるといえよう。

幻想的で緩急のあるサウンドがcephaloの持ち味ではあるが、cephaloの音楽は非現実で非日常的な色合いが強いのかというと、必ずしもそうではない。というのも、日常の断片を切り取ったような歌詞・フレーズが散見されて、その中に浮遊感のあるサウンドが溶け合うからこそ、独自の世界観が作り上げられている。そのため、内面で波紋のように歌世界の感動が響く心地があるのだ。

 
 
歌詞の世界

cephaloの歌詞は、抽象的なイメージをモチーフにして想像力を喚起させるものが多い。2025年11月7日リリース『gloaming point』のリード曲である「ヴァイパーロード」もまた、そういうイメージに包まれた歌だ。絵としてイメージできる歌詞の描写が続くが、その言葉は直接的に何かのテーマを指しているというよりは、様々なイマジナリーの中で融合させる深みと余白がある。「夕刊倶楽部」という楽曲もタイトルはトリッキーだし、「CC活性化」や「溶けた!」というフレーズの使い方など、独自のアプローチが目立っていて面白い。詩的であることが前提のうえで、フックのあるアプローチが散見できるのもcephaloの面白さのひとつだ。

 
 
未来への予感

シューゲイザーやドリームポップの派生という意味では、きのこ帝国だったり、羊文学のようなロックバンドがツボの人には間違いなく刺さるだろうし、繊細かつ大胆な美しいバンドアンサンブルが好物というリスナーは絶対的に注目してほしいバンドである。

そのうえで、もしかすると、cephaloの音楽は、決して派手ではないのかもしれない。でも、一度聴けば自分の景色の見え方や、内省的な感性が少し変わるようなエネルギーを持ち合わせている。街の中で、ふいに美しい景色をみたとき、思わず足を立ち止めてしまうような。忙殺した日々の中で、思わず出会った感動のピースのような。幻想的な光を放ちながら、cephaloはインディー・ロックシーンの中で、静かなトキメキを作っている。

 



cephalo『Fluorite code』

1stアルバム『Fluorite code』

 



cephalo『gloaming point』

2nd EP『gloaming point』

 


※cephalo 初ワンマンライブ開催

cephalo “gloaming point” 単独公演+ Film Screening
日程: 2026年2月21(土)
会場・東京・渋谷WWW
チケット https://t.livepocket.jp/e/cephalo0221
 

 
 
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この記事の執筆者
ロッキン・ライフの中の人
ロッキン・ライフという音楽ブログとイベントを運営している中の人です。