【このリリースがすごい!】夕張工業団地『縹色の夏』| パワー系インストロックバンドが初リリースで描く青く激しい物語

コラム・特集
2026.1.16
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いま注目すべき最新リリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は夕張工業団地『縹色の夏』をご紹介。


結成から一年にも満たない新生バンドの初リリースが、タイムラインを賑わせている。2026年の先陣を切ったニューカマー、夕張工業団地によるEP『縹色の夏』は、1月14日にリリースされるや否やiTunes Storeのインストゥルメンタルトップアルバムチャートにて国内1位を獲得。早耳リスナーたちは今まさに熱狂中だ。

「パワー系インストロックバンド」を標榜する5人組の彼らは、2025年5月31日に東京にて結成。直後、メンバーのハッチ(Gt)がXにて断片的に公開した「終わらない夏」のギタープレイスルー動画が1000件以上のいいねを獲得するなど、初ライブや音源リリースを前に注目株へと躍り出た。その後は『マスフェス』こと『BAHAMAS FEST 2025』へのOA出演などを含むライブ活動、SoundCloudでの音源公開によってじわじわと注目度を高め、いよいよ待望の本作リリースに至ったわけである。

その音楽性には、彼らが公言する通り00年代以降の残響系ロックからの影響が色濃い。te’、mudy on the 昨晩らに代表される轟音のインストロックを陽の当たる場所へと引き摺り出すような、屈折しながらも眩しさを放つアンサンブル。今作のオープニングを飾る1分強のキラーチューン「後悔」を聴けばすぐに、暑苦しくも爽やかな夏の日々へとトリップできる。その激しく歪んだギターサウンドは、kurayamisakaの台頭やthe cabsの再結成に象徴される近年の国内オルタナの復権とも共振している。

楽曲展開は決して複雑ではなく、象徴的ないくつかのテーマを行き来する流れがほとんどだ。しかし、その一つ一つのリフの精度(「行旅死亡人」のタイトでスピーディーなブリッジミュートからは、彼らが「パワー系」を自称する所以が感じられる)、そしてハーモニーやリズムの発展方法が優れていて、反復に確かなドラマを持たせている。さらに、「団地が緑に沈むとき」ではtoeを彷彿とさせるポストロック〜マスロック領域にも触手を伸ばしていて、繊細な表現力も示しているから末恐ろしい。

また、その非凡なセンスは、デザイナーの戈址によるアートワークからも感じ取れるはずだ。架空の文庫本(おそらくジュブナイルミステリー小説)のカバーをモチーフにしたデザインは、アニメタッチのイラストや映画の名シーンの引用とは異なる手法でサブカルチャー文脈とバンドを接続させる。裏表紙のあらすじからその内容と結末を想像するように、夕張工業団地が生み出す音景色はリスナーに自由な物語の可能性を与えている。


夕張工業団地『縹色の夏』

夕張工業団地『縹色の夏』各サブスク

 
 

この記事の執筆者
サイトウマサヒロ
1995年生まれ、フリーのライター。インタビュー、ライブレポート、コラムなど書きます。

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