【このリリースがすごい!】君が四角くなる前に『きらめきとして現れるであろうあらゆる小さなセカイのためのプロレゴメナ』| 孤独なセカイと思いを繋ぐ四畳半楽曲制作プロジェクト

コラム・特集
2026.2.10
【このリリースがすごい!】君が四角くなる前に『きらめきとして現れるであろうあらゆる小さなセカイのためのプロレゴメナ』| 孤独なセカイと思いを繋ぐ四畳半楽曲制作プロジェクトのサムネイル画像

音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。

今回は君が四角くなる前に『きらめきとして現れるであろうあらゆる小さなセカイのためのプロレゴメナ』をご紹介。


いつの間にか、「ロックを奏でること」は「バンドを結成すること」というロマンと一体化してきた。しかし、それらをいったん切り離し、解体した先にこそ立ち上がる純粋な詩情や物語があるのかもしれない。そんな新しい可能性を静かに提示するアルバムだ。

2025年8月に始動した“セカイ系四畳半楽曲制作プロジェクト”、君が四角くなる前に。主宰者の中村瑞季を中心に、コンポーザーの秋本ユク(muk)、田中喉笛(the bercedes menz)、nerdneko、イラストレーターのamazing dog、デザイナー兼エンジニアの這う、ドラマーの水族萌々架、そしてボーカリストのだてぃがという8人が集うこのプロジェクトは、運命共同体というほど大袈裟ではないけれど、同じ作画で、同じストーリーラインの上にまたがりながら、それぞれの持つ小さなセカイを緩やかにコネクトさせている。

シングル2作の発表を経て、フェーズ0からフェーズ1への移行宣言とともにリリースされた本作『きらめきとして現れるであろうあらゆる小さなセカイのためのプロレゴメナ』は、中村曰く「インターネットに蔓延る“冷笑”や諦観、ニヒリズムへの反抗の序章(プロレゴメナ)」。前ボーカリスト・A.M.とだてぃがが前後半のトラックを歌い分け、M7「Dazzling city carries the life of others」ではみにあまる雅(sidenerds)がゲストボーカルとして参加した。

シーンの精鋭たちが持ち寄った楽曲群は、それぞれの本隊で掻き鳴らされるそれよりも角が取れていて繊細だ。オルタナティブロックを軸にしながら多岐にわたるサウンドが、時にJ-POP然とした人懐っこい表情を見せるメロディによって可溶性を高めていく。その色彩を美しく混ぜ合わせているのが作詞を担う中村の筆で、「君」や「あなた」を想い続けているのにどこまでも孤独なまま漂うフレーズたちが、3人のコンポーザー、3人のボーカリストを確かに結びつけている。

A.M.が別れの手紙を送り、バトンを受け取っただてぃがが駆け抜ける「ラブレター・フロム・A.M.」から「あらゆる小さなセカイのためのプロレゴメナ」へと至る流れは、タイトルロゴとオープニングアニメーションが脳裏に浮かぶかのように滑らかかつドラマチック。儚かさから力強さへと、キャラクターの異なる二人の歌い手を接続するストーリーテリングの巧みさが際立つ。

今後、コレクティブ的な流動性と連帯を保ちながらオルタナティブなロック楽団の像を描き出していくであろう彼らが、いかにして「四角くなること」を拒絶し続けるのか。そのプロセスにも注目していきたい。3月25日には宇宙ネコ子(ふたりセット)、cephaloを招いたリリースパーティも開催予定。現実に顕現したこのプロジェクトが、どのような景色を紡ぐのかも楽しみだ。


君が四角くなる前に『きらめきとして現れるであろうあらゆる小さなセカイのためのプロレゴメナ』

君が四角くなる前に『きらめきとして現れるであろうあらゆる小さなセカイのためのプロレゴメナ』各サブスク

君が四角くなる前に『きらめきとして現れるであろうあらゆる小さなセカイのためのプロレゴメナ』歌詞

 
 

この記事の執筆者
サイトウマサヒロ
1995年生まれ、フリーのライター。インタビュー、ライブレポート、コラムなど書きます。