【このリリースがすごい!】ゲスバンド『STANDING OVATION』| 12年ぶりのフルアルバムで提示する至高の“踊れるロック”
音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、ゲスバンドの12年ぶりにリリースされた、全8曲収録のフルアルバム『STANDING OVATION』をご紹介。
ゲスバンドは橋本かずよし(Vo)を中心に活動する日本のインディーロックバンドだ。『STANDING OVATION』はそんなゲスバンドのこだわりとユーモアが詰まりまくっている。8曲というコンパクトな作品ながら、とにかく濃厚。多種多様な音使いにより、どの楽曲も異なる味わいを楽しめる。結果、一曲単位としても作品としても聴き応えのあるアルバムとなっているのだ。
一曲ずつみていこう。アルバムの1曲目に収録されているのは、ニューウェイビー調のビート・ロックで幕を開ける「たまんねぇ」。2分50秒の短尺な楽曲ながらメリハリのある展開で盛り上がるナンバーだ。勢いのある自由自在なリズムアプローチで、断続的な高揚感を作り上げる。バンドのコーラスを加えることで、パワフルに響かせるサビのメロディーラインも印象的だ。
続く「LOVE まともじゃない」は歪んだギターでメロディーを奏でるイントロのリフが印象的なナンバー。「まともじゃない」というフレーズをリフレインすることで、皮肉っぽく描かれた歌の世界にぐいぐい引き込まれる。楽曲中盤ではテクニカルかつエッジの効いたギターソロを聴かせる流れがあったり、不意なタイミングで転調して展開をがらっと変えるなど、刺激に満ちた作り方がされているのも今作の特徴だ。
3曲目の「ララバイ、タマちゃん (feat. 岡 愛子)」は、最初の2曲に対してゆったりとしたリズムで展開される。二人の歌声が交じることで、歌の世界が幻想的なものになり、浮遊感のある音楽体験を味わうことができる。
次の「ALIVE ALIVE」もミドルテンポの楽曲ではあるが、こちらはよりバンドサウンドにガレージ感が漂っているため、ゴリゴリとしたエネルギッシュさが宿っている。
アルバム後半の幕開けを飾る「ピストンベイビー」はボーカルの脱力具合が注目ポイント。ナチュラルな色合いを強めたラップのような歌唱だったり、「語り」を歌の中に取り込むことで、それまでの楽曲とは違うメロディー展開を作り出している。
「Vertical Suicide」はアルバムの中のリードトラックのような立ち位置の楽曲で、とにかくサビのメロディーのインパクトが強い。スリリングなビートの中に高速的なメロディーが展開されるため、一度耳にするだけで脳内に残るようなキャッチーさを作り出す。ギターのリフやリズム隊のアプローチもフックが強く、裏打ちのビートが作り出すワクワク感もこの楽曲の魅力の要になっている。
「THE GOLDEN AGE」「BEST KID (Naked)」もゲスバンドのサウンドの多様性を際立たせる。バンド以外の音を積極的に使用することで、異国感のあるサウンドの世界を作り上げていく。情報が過多であり混沌とした空気感もある一方で、踊れるロックとしての高揚感は通底しており、本能的に身体を動かしたくなるような仕掛けが随所に感じられるのも特徴だ。
<踊れる音楽が好き><でも、サウンドにはこだわりが欲しい><なんなら、独自路線のユーモアを磨いている作品が好物>。そんなワガママな音楽リスナーもニンマリするような充実度が『STANDING OVATION』にはある。だからこそ、2026年のインディーズロック必聴作品のひとつとして挙げておきたい。
