【このリリースがすごい!】DC『AKB SIGILS』| スラミングデスとPhonk、異形合成獣のアポテオーシス

コラム・特集
2026.2.26
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音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、DCのアルバム『AKB SIGILS』をご紹介。


2020年代後半はミクスチャーロックがシーンを席巻するかもしれない。コロナ禍から幕を開けたこのディケイドで、Age Factoryと結成したバンド・AFJBでも活躍するJUBEE、Limp Bizkitのカバー動画が国内外でバズったEMNWらがDragon Ashや山嵐といった先達とコネクト。ラッパーのTYOSiNはバンドセットでステージに立ち、ハードコアバンド・ReVERSE BOYZは昨年5月にリリースされたアルバム『NEONINJAZLiFE』で同世代のラッパー3人をフィーチャーした。

国外では今年に入りKnocked LooseとDanzel Curryがコラボ曲「Hive Mind」を発表。その圧倒的な完成度がクロスオーバーブームに火を点けることは想像に難くない。Y2Kトレンドに付随するニューメタルへの憧憬だけでは説明しきれない現象の背景には、この時代特有の空気感があるように思う。場所と再現性の価値が薄弱化し、ジャンル分けがコミュニティの通行証よりも自己表現の素材としての意味を強めたポストコロナ&サブスクネイティブの現代。そこでは、イルでクールなものを同時に過剰摂取したいという欲望を止めるものはもはやない。

そんな破壊的衝動の発露としての新世代ミクスチャーを象徴するのが、「JAPANESE REAL HIPHOP」を標榜するDCだ。2023年に東京で結成された彼らは、バラクラバで素顔を隠した見るからに危なっかしいビジュアルとその想像すらも凌駕する極悪なサウンドで、各地のライブハウスやクラブを蹂躙している。90年代メンフィス・ラップの不穏さにフォーカスしたPhonkと、苛烈なブラストビートと血肉を引きずるようなビートダウンによって音を叩き潰すスラミングデスメタル。枝葉の先にあるサブジャンル同士を共通するダークな空気感によって絡み合わせるのが彼らのスタイルだ。

1stアルバム『DMC』から一年足らずで放たれた今回のニューアルバム『AKB SIGILS』では、そのクロスオーバーがさらに加速。YENTOWNのJNKMNを筆頭に、多様なラッパーやビートメイカーらが集結した。結果、HIPHOP的要素をインタールードやフィルインとして用いるだけに止まらない、不可分な融合が実現している。

「DIE JOB DEATH CAR」でJNKMNは悲鳴のようなピッキングハーモニクスを背にしながらラップし、「Dr.MITSUYA」ではDJ itakoのビートがバンドのグルーヴを先導する。そうしてストリートのサグさとクリーチャーやダンジョンの不気味さを同時に襲来させることで、最大化された恐怖と戦慄を味わわせているのだ。それは折衷というより、全てをフル出力で衝突させた成れの果て(極致、アポテオーシス)の、グロテスクでそれでいてフレッシュな肉塊をそのまま提示されているような感覚に近い。本作のそういった暴力性は、ジャンルに帰属するのではなくジャンルを選択することで過剰さを加速させるこの時代に歓迎されるに違いないし、それでいて彼らが安全圏に留まることはないだろうと確信させてくれる。

DCは本作のリリースパーティとなるイベント『DES ACCEL』を6月5日に東京・渋谷clubasiaにて開催。また、今月末には同じくHIPHOPを取り入れたスラミングデスメタルバンドであるアメリカ・オクラホマ出身PeelingFleshの来日ツアーに帯同する。ビートとバンド演奏を交錯させた唯一無二のスタイルは、モッシュピットでのスリルとともに体感してこそ真価を発揮するだろう。

 


DC『AKB SIGILS』

DC『AKB SIGILS』各サブスク

 
 

この記事の執筆者
サイトウマサヒロ
1995年生まれ、フリーのライター。インタビュー、ライブレポート、コラムなど書きます。