【このリリースがすごい!】mukeikaku『weatherforecast』| 予報通りに進まない日常のためのスリーピースバンド
音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、mukeikakuのEP『weatherforecast』をご紹介。
あっけなく外れてしまった未来予想を、神様からの裏切りだと感じる日もあれば、サプライズプレゼントとして楽しめる日もあるだろう。だからその、良くも悪くもままならない生活をまるっと受け止めてくれる音楽を探し続けていた。そして、渋谷発のスリーピースバンド・mukeikakuの最新作『weatherforecast』に出会った。
2023年に結成、大型フェスへの出場オーディションでも存在感を放ち、動画サイトで海外リスナーからのリアクションも得るなど着実にステップアップを続ける彼女たち。今年1月31日にはうだがわ(Dr)の加入を発表し新体制となった。日常の波立ちをつぶさに拾い上げメロディと言葉に反射させる創作プロセス(※1)はこれまで同様。だが、ボヤけた視界の中から徐々に一日の輪郭が立ち上がってくるようなオープニングのインスト曲「朝」を聴けば、その被写界深度の調整がより精緻になっていることがわかる。その流れのまま続く「wednesday」は、余白を埋めるドラムスのニュアンスコントロールが楽曲のストーリーを牽引していて、バンドの表現力が次なる段階に進んだことを印象付けている。
コンセプトEPと呼んでも差し支えないだろう。「当たらない天気予報/新宿は今日も曇りで」(「wednesday」)というフレーズから幕を開ける本作は、どの楽曲でも予期せぬ別れや喪失感に向き合っている。しかし、mana(Gt,Vo)と涼(Ba)、二人のソングライティングは対照的だ。「ザ・邦ロック」なバンドたちに憧れを抱いてきた(※2)manaは、涙を拭いキャッチーなメロディの推進力を借りて「ホップをしてジャンプをして/それくらい気楽でいれたら」(「ホップ」)と朗らかに綴る。一方、涼(Ba)の楽曲はエモやインディーロックの繊細な音に心情を重ねて(※2)、「周り回って やっと見つけたよ/誰も知らない 深く柔らかい記憶」(「hologram」)と内省に沈んでいく。
そのどちらかが本筋でどちらかがオルタナティブという主従関係に陥らないバランス感覚が絶妙だ。むしろ二人にとってオルタナティブとは外部への目線ではなく自身の中にこそ立ち上がる態度で、mana作の全英詞パワーポップ「missing」、涼によるバンドサウンド+デジタルビートのインディートロニカ「hologram」と、それぞれの実験を持ち寄ることでバンドの表現領域を広げている。
ライブでの再現性を意識して削ぎ落とされたアレンジメント、細身なアンサンブルを補強する豊かなコーラスワークも噛み合っていて、スリーピースバンドというフォーマットの魅力が凝縮された一作だ。異なる方向へと進むmanaと涼を、うだがわが下辺で繋ぎ止める。その三角形の強固さを前にすると、笑い飛ばすことも泣き腫らすことも間違いじゃないと自然に思えてくる。
※1 参照:INTERVIEW mukeikaku|IMALAB
※2 参照:SpotLight #15「mukeikaku」インタビュー | 軽音楽振興愛好会(ARF)note

mukeikaku『weatherforecas』各サブスク