【このリリースがすごい!】the seasons 17 hours『その日の天使』| 不思議な魅力で惹きつけられる、その理由とは

コラム・特集
2026.3.24
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音楽ファンは要チェック、注目のリリースをレビューする特集企画『このリリースがすごい!』。今回は、the seasons 17 hours『その日の天使』を紹介。


最初に聴いたとき、少し粗さが目立つ音楽だと感じた。でも、聴けば聴くほどに引き込まれる世界がそこにあった。バンドの音楽は、そもそも演奏技術を競うためのものではない。そのことを踏まえたうえでも、the seasons 17 hoursの音楽は、そうした尺度では測れない求心力があったのだ。ソリッドなギターロックが描き出すざらざらとした音像。それが耳に入ってきたとき、自分の脳内の景色を塗り替えてしまうような迫力。これは実際に作品を聴くことで感じてもらえる感覚だと思う。

the seasons 17 hoursの『その日の天使』は2026年2月18日にリリースされた作品だ。全5曲、約24分というコンパクトな構成で、通勤時間に頭からお尻まで聴き切れてしまうくらいのボリューム感だ。

収録曲は「いらない」「鏡」「オール・アバウト・シーズンズ」「天使」「リンカーネーション」の5曲。一曲ずつ感想を書いていきたい。

1曲目の「いらない」は、センチメンタルなギターのアルペジオをバックに、冒頭からボーカルがインして始まる楽曲だ。序盤の展開はギターロックとして王道的で、サビのメロディーを歌い切ると、ベースとドラムが合流して、サウンドを盛り上げる流れに。Aメロ→Bメロまでの流れ自体もオーセンティックだ。ただ、Bメロ終わりからが少し面白い。すぐにはサビに入らず、いったんギターが主導してサウンドを聴かせてから、冒頭と同じ構成のメロディーをリフレインさせるのだ。こうした少しひねった構成が効いている。王道的とみせかけながらも、構成の中で新しいアクセントを入れるというアレンジ。だからこそ、懐かしさを感じるギターロックの中にもどことない新鮮さを感じるし、味のあるボーカルと詩的でナイーブな歌詞が温度感をもって耳に届くのだ。

2曲目の「鏡」は逆にしっかりとイントロを聴かせる構成。変化球というよりはわりとまっすぐなリフと展開。どっしりとしたアンサンブルの中で、パワーコードを強く鳴らす。サウンドはシンプルだからこそ、メロディーの美しさが際立つ歌でもある。感情と呼応するようにエネルギッシュにメロディーを紡ぐボーカルが、切実な感情をダイレクトに歌いあげる。この流れにぐっとくる。

3曲目の「オール・アバウト・シーズンズ」は前2曲よりも少しBPMが落とされた楽曲になっており、中盤まではミディアム調で展開される。しかし、楽曲の後半ではBPMをがらっと変えて、ギターロック特有の疾走感を生み出す。このビートの変化が、季節の移ろいを一気に駆け抜けていくような感覚を生んでいて、良い。また、「変わってしまった屋根の形」とか「変な色のジュース」など、他の歌ではあまりみない部分の景色を取り上げている点も面白く、聴けば聴くほどに気に入る作品となる。

そして4曲目にして表題曲「天使」は、8分を超える長尺になっている。

この歌に、the seasons 17 hoursの今の美学を詰め込んでいるといってもいいのかもしれない。シンプルな中にも鮮やかに濃淡をつけていくサウンドのうねり。アルペジオとコード弾きの組み合わせ方や、歪ませる部分とクリーンな部分の切り分け方など、サウンドのひとつひとつに展開を作ることで、言葉以上の味わい深さを歌の中で作り上げていく。ボーカルの強弱も明確で、歌のドラマ性とシンクロさせていく表現力が素晴らしい。確かに「上手い」と絶賛するタイプの音楽ではないのかもしれない。けれど、味わい深く、どんどん惹かれていくの真髄がここに極まっているような印象を受ける。あと、8分だからこそ淡々としているパートと情熱的になるパートのコントラストが、聴いていてシンプルに楽しい。

 
5曲目の「リンカーネーション」はアコースティックにアレンジされたしっとりとした楽曲だ。すべての楽曲の中でもっとも詩的で、短編詩集のようなじんわりとした余韻が、歌の中を静かに駆け巡る。「〜のような」という歌詞が登場するんだけど、その比喩の使い方が巧みだし、「足枷」や「目尻」などのワードのチョイスも絶妙なので良い。

バンド全体の音像は、オルタナティブなエッセンスを基調としており、懐かしさと新しさを同時に感じる。そのバランス感が絶妙だ。言葉で書くとシンプルになるけど、その大胆かつ繊細な音楽体験は「聴いてこそ」なので、ぜひそんなthe seasons 17 hoursの世界を、じんわりと堪能してほしい。

 


the seasons 17 hours『その日の天使』

the seasons 17 hours『その日の天使』各サブスク

 
 

この記事の執筆者
ロッキン・ライフの中の人
ロッキン・ライフという音楽ブログとイベントを運営している中の人です。