ZINとSomが音で“醸しだした”ポジティブで豊穣な一夜 BLUE NOTE PLACE × TuneCore Japanイベント『BLUEW』レポート
3月20日、TuneCore Japanと東京・恵比寿のBLUE NOTE PLACEがコラボレーションしたライブイベント『BLUEW』が開催された。
2022年12月のオープン以来、国内外の気鋭ミュージシャンが奏でる音楽と上質な料理を楽しめるプレシャスな空間として新たな体験を創ってきたBLUE NOTE PLACE。『BLUEW』は、そんな特別なベニューへの出演機会をインディペンデントアーティストに提供するべく発足した。
記念すべき初回となる今回は、ゲストアーティストとしてZIN(Soulflex)が出演。さらに、BLUE NOTE PLACEとしても初の試みとなる出演アーティストオーディションによって、シンガーソングライター・Somが選出された。
会場がオープンし、ミュージックセレクター・DJをつとめるji2kiaによる選曲で聴覚と感性がほぐされていく。


Som
そして、Somのライブが「I am」からスタートする。エレクトリック・ピアノ、ベース、ドラムが順番に重なり、そこに歌声が滑り込んでいく。余計な装飾のない演奏だが、グルーヴは空間を丸ごと押し広げていくかのように豊かだ。
そのまま2曲目の「天体」へ。Somの顔つきからはやや緊張感が伺えたが、それは同時にこの場へのリスペクトの表明として機能していたように思う。ハスキーな歌声は生活の延長線上にあって穏やかだが、そこには繊細な感情の移ろいが確かに波打っていた。
とある夜の別れを歌う「Wind」、雨に濡れながらもしたたかに前を向く「Floating」。ライブは肌寒く小雨が降っていたこの日の夜と手を取り合いながら進んでいく。来場者たちは食事や酒を楽しみつつ、座ったままでも心地良さそうに身体を揺らしていた。
「しんどい中でも、自分を救いたいと思うことがあって。それは、先の自分に会いたいということだと思うんです」。そんなMCに導かれて披露されたのは、今年1月にリリースされた最新シングル「ミッドナイト」。おそらく、この日のセットリストで最もキーが高くエモーショナルな楽曲だろう。それでもSomの歌声はリスナーと同じ目線に立ち続けていて、自然に思いを重ね、胸に染み込ませることができる。
メンバー紹介を挟み、熱を増していくアンサンブルの中で幕を閉じたSomのステージ。彼女が等身大で奏でるひとりごとのような音楽は、内省的ながらその引力によってオーディエンスを惹き付け続けた。



















ZIN
30分の休憩(という名の、DJ ji2kiaが作り上げる柔らかな時間)を経て、ZINのステージが始まる。オープニングは「The Sign」。鍵盤のコードが波紋のように広がり、ふくよかさと硬性を併せ持つベースが鳴る中で、ZINは「水を得た魚のようにrun」という歌詞の通り、音の海の中をファルセットボイスで自由に泳ぐ。曲が終わると、拍手の中に思わず飛び出てしまったような歓声が入り混じった。
続いて、豊潤な中音域の歌声が映えるメロウなナンバー「Distortion」へ。さながらZINは、私たちを日常の喧騒からどこかへ連れ去ってくれる案内人だ。彼はその身でリズムを刻み、音と自らを馴染ませていく。
「僕にとって作曲はセラピーのようなもので、ネガティブな感情をきっかけに書くことが多い。でも、ありのままを曲にしてもいいのかなって気付きまして。そんなスランプの時に書いた曲を久々に歌おうと思います」。その言葉が、内心や葛藤を密かに吐露する「Midnight Run」を深く響かせる。かと思えば、「元気な曲、行きますかね!」と宣言した「相愛」では笑顔でコールアンドレスポンス。「ちょっと今日は寂しめ?」とこぼしていたものの、オーディエンスは徐々に応答。経験と自信に裏打ちされる巧みなライブ運びに、一人また一人と身を委ねていく。
ZINの音楽は普段とはちょっと違うご馳走のように甘美な魅力を放っているが、一方で彼は現実をまなざすことを決して諦めない。「世の中では戦争が起こってて、好きなことがまともにできない国がある。この場は奇跡だなと思います」「何ができるんだろうっていう無力さを感じる。だけど他人事ではない」。彼が語った言葉は、今をもがくアーティストとして、というよりも一人の音楽を愛する人間として、静かな共感を呼び覚ましていく。「音楽は、聞かなくたって生活はできるけど、人生を豊かにしてくれるもの。止めずにやっていきましょう」。
「BLUEW」を締め括ったのは「Buddies」。今日、この場所に集まった人々とだけとっておきの秘密をシェアすることで、愛と信頼が会場に充満していく。ZINは今、この時代をともに生きている一人一人の表情を確かめて、改めて希望を持って明日へと踏み出すように、ピースサインを掲げてステージを降りていった。
























photo by Eiji Miyaji
