YouTubeアートトラックを正しく理解する ― 「YouTubeに曲が無断でアップされてる!?」と驚く前に

2020.2.27

YouTubeアートトラックとは

YouTubeを見ていると、音楽作品のジャケット(カバーアート)が静止画像になっていて、曲がフルで流れる動画がアップされていることを見かけることがあると思います(チャンネル名が [アーティスト名 + トピック] となっているもの)。

↓こういうもの

一般のリスナーはどういった経緯でアップされているのか特に気にせず聴いているかもしれませんが、アーティストの中には「自分の曲が無断でアップされてる!?」と思い込んで驚く方もいるようです。また、アーティストのファンもそのアーティストへの思い入れが強いあまり、善意のYouTube警察になってしまうケースを見かけたりもします。

結論からいうと、あの動画は誰かが無許可で勝手にアップロードしたものではありません。YouTube、およびYouTube Musicのシステムの中で、YouTubeがYouTube Music用に自動生成したYouTubeのサウンドレコーディング “アートトラック”というものになります。

関連記事 : ストリーミング時代の音楽活動で知っておきたいこと

 

無料で聴けてもアーティストへ収益は還元されている

音楽を聴くにおいて、今は各種ストリーミングサービスがありますが、中には有料ユーザーにならなくても音楽を聴くことのできるサービスもあります。例えばSpotify。Spotifyは課金をしていないユーザーでも、広告が入ったり機能の制限はありますが、無料で音楽を聴くことかできます。またLINE MUSICも一曲ごとにつき月に一回であればフル再生ができる仕組みに先日リニューアルしたので、同じ曲を繰り返し聴くのでなければ、膨大な楽曲を無料で楽しむことができます。

これらのストリーミングサービスにおいて、トライアルで無料で聴ける状態の音源を勝手にアップロードされたものだと認識するリスナーはいませんよね。また、無料で聴くとアーティストへお金が戻らないイメージがあるかもしれませんが、SpotifyやLINE MUSICで無料ユーザーが聴いた分もアーティストサイドに対し収益は還元されていますので、ストリーミングサービスの無料会員のリスナーでも楽曲を再生すること(試聴は除き、30秒以上の再生で1再生カウント)はアーティストへの応援につながっているのです(なお、無料ユーザーと有料ユーザーの再生数に応じた還元額はそれぞれ違う枠組みで計算されるので、そこは当然、有料ユーザーによる再生の方がアーティストサイドへ還元される額は高くなるようになっています)。

実はYouTubeにおけるアートトラックも同じく、他のストリーミングサービスの無料トライアルで楽曲がフルで聴けることと似た仕組みになっているのです。

 

YouTube アートトラックはどのようにアップロードされるか

ここでアートトラックが具体的にどういう仕組みでアップされているかみてみましょう。アーティストサイドから考えてみます。今や個人でも様々なストリーミングサービスに配信できるデジタルディストリビューションサービスがありますが、そこにおいて、色々な配信先を選択することができます。その配信先としてYouTubeの音楽ストリーミングサービスYouTube Musicを配信先として選択し配信をすると、その楽曲はYouTubeで自動で生成されるアートトラックとなり、それがYouTubeにアップされることになります。

そして、アートトラックは、YouTube Musicの有料ユーザーが再生した場合は、Apple MusicやSpotifyなどと同様、再生回数に応じた収益がアーティストへ還元され、YouTube Musicの有料ユーザー以外(YouTubeでの再生も含む)がアートトラックを再生した際は再生された時にそのアートトラックについた広告に応じて収益が分配されるカタチになっています。YouTube Musicでストリーミング配信される楽曲が、YouTube Musicのお試しとしてYouTube上に存在していると考えれば分かりやすいかもしれませんね(YouTube Musicという独立したプラットフォームもありつつ、YouTubeでも再生できる状況が分かりにくくなっている原因なのかもしれません)。

例えば、昨年から口コミで話題が広がり続けているロックバンド”703号室”の楽曲「偽物勇者」のアートトラックは現在360万回以上再生されています。このように、再生が非常に伸びるアートトラックも多くあります。

したがって、個人でも音楽を配信できるディストリビューションサービスを使って音楽配信していて、自分の音楽がアートトラックとしてYouTubeに配信されていることに気付いてびっくりしたとしても、それは配信先にYouTube Musicを選択しているからであり、そして、そこからも上記のように収益が期待できる仕組みになっていることを理解しておきましょう(なお、その際にアップロードのYouTubeアカウントチャンネル名が、[アーティスト名 + トピック]として掲載されますが、そのトピック[チャンネル]については、また後日解説する予定ですので今回は割愛します)。ちなみにYouTube Musicの有料、無料のユーザーへのアートトラックの出し分けについては、各ディストリビューションサービス毎に仕様が異なるようです。

 

YouTube Musicとは?
YouTubeが運営する世界最大級の動画配信サービス『YouTube』および 音楽ストリーミング配信サービス『YouTube Music』の総称です。 あたなの楽曲は、YouTube版のサウンドレコーディング “アートトラック” が自動的に生成され、『YouTube Music』が展開されている地域にて配信されます。「YouTube Music」では、アートトラックとともにYouTube上の音楽コンテンツや公式ミュージックビデオなどが、さまざまな端末(PC、スマートフォン、タブレット等)で利用が可能で、有料会員であれば、広告が表示されず、アプリ上でオフライン再生やバックグラウンド再生、画面ロック中の再生も可能となっております。「YouTube Music」を通じてあなたの楽曲をより多くのユーザーにストリーミング配信することが可能です。― TuneCore Japan会員向けストア詳細より

 

YouTubeのアートトラック概要欄の例

Provided to YouTube by (ここにアーティストサイドが利用しているディストリビューター等の名称)

(曲名) ·(アーティスト名)

(リリース名)

(権利まわりの表記)

(リリース日)

(作詞・作曲者等のクレジット)

Auto-generated by YouTube.


YouTubeアートトラックを正しく理解する ― 「YouTubeに曲が無断でアップされてる!?」と驚く前に
TuneCore JapanからYouTube Musicに配信した場合のアートトラックの例

 

アートトラックとコンテンツID

さらに、もう一歩踏み込むと、YouTubeのアートトラックに関してコンテンツIDがあたっていないことを疑問とされているコメントをSNSで見かけることもありますが、先ほども述べたようにYouTubeのアートトラックは、ユーザーがアップロードした動画とは異なり、YouTube MusicのためにYouTubeから自動生成されたものであるので、コンテンツIDとは直接の関係はないということを覚えておきましょう(このコンテンツIDについても、リスナー及びアーティストの方に分かりやすいようにまた別の機会に解説します)。

 

アートトラックについてまとめると

ここまでをまとめると……

・YouTubeのアートトラックはYouTube Musicにおける配信形態であり、無許可でアップロードされたものではない。

・無料ユーザーが再生しても広告が付くことによって収益がアーティストへ還元されるよう設計されている。イメージとしては、SpotifyやLINE MUSICで無料ユーザーでも曲が聴けるようになっている仕組みと類似するものである。

・YouTubeアートトラックは、コンテンツIDとは直接の関係はない。

となります。

ちなみに、アートトラックについて調べてみるとGoogleのヘルプページで詳細が説明されていますが、そこでDDEXという言葉がでてくると思います。そのDDEXを検索しても、専門用語が並び非常に理解が難しいことも、こういった誤解や誤った認識が広まっている一因かもしれません。要は、個人でディストリビューションサービスを使ってYouTube Musicに配信した際、YouTubeからの要件であるDDEXをそのディストリビューターがYouTubeの規格に沿って整えて納品しているということになります。

音楽の配信をする前に、それぞれの配信サービスがどういった設計でリスナーに音楽を届けているか、そういったことも意識して楽曲のリリースをすることで、また新たなアイデアで活動の幅を広げることができるかもしれません。

この記事の執筆者

THE MAGAZINE

ストリーミング時代の中でうまれる新たな情報やアイデア、インサイト、ナレッジを、ミュージシャン/音楽アーティストおよびそのファンへ発信し、国内シーンの活性化と海外へのチャレンジをサポートするメディア ― Powered by TuneCore Japan

https://www.tunecore.co.jp/