2019.4.19
2011年にセルフタイトルの1stアルバム『ATOM ON SPHERE』をリリースしてから8年の時を経て、ついに待望の2ndアルバム『The Secret Life Of Mine』を4月16日に発表したATOM ON SPHERE。 KEN LLOYD (OBLIVION DUST / FAKE?) 、Shigeo (The SAMOS / ex.SBK) 、 ケイタイモ (WUJABINBIN / ikanimo / ex.BEAT CRUSADERS) 、桜井 誠 (Dragon Ash) という音楽シーンでは説明不要のキャリアを誇る4人のメンバー。「全部がしっくりきてる」とKEN LLOYDが語る通り、新作は新しい要素を帯びながら、よりバンドとして有機的な側面を強めた仕上がりとなっている。5月にはバンドとして初のワンマンツアーも開催されるなど、今後のさらなる活動にも注目が集まる中、現在のATOM ON SPHEREのリアルな姿を4人が語ってくれた。
目次
8年ぶりのリリース
——今回リリースも含め8年ぶりに活動がアクティブになったきっかけというのは?
ケイタイモ:ATOM(ATOM ON SPHERE)のリーダーはShigeoなんですけど、彼がやる気を出したっていうのが大きいですね。ライブは時々やっていて、制作も実は水面下で少しづつですけど進めてはいて。そうこうしているうちに、いつの間にか7〜8年経ってしまったという感じ。動きがゆっくりすぎて「どうなっていくんだろう」っていう雰囲気もあったんですけど、やっとShigeoがグッとやる気を出しまして。
Shigeo:オレのせいなの?(笑)。まぁ、2011年にリリースした1stアルバム『ATOM ON SPHERE』はメジャーから出したんですけど、その後は次の音源をリリースするにあたりパートナーを改めて探してたんだけど、最終的にはもう自分たちでやろうと。そういうこともあって時間がかかったし、あと、1stの時点で自分たちの表現したいことを意外とまとまったカタチにすることができたんですよね。だから、次の方向性をどうするか割と迷いながらやっていた部分もあったんで、時間がかかったかな。
——最近のラジオのインタビューでは、1stの頃はかなり頑張りすぎて、出し尽くしたということもおっしゃっていましたね。
Shigeo:すごいぶっちゃけると、ネタ切れな感じはあったかも。でも今回スタッフ含めて環境の変化もあったり、時間がかかった分、前回とはまた違う新しい要素を加えてカタチにできたんで、結果的には良かったかなと。
——約8年のあいだ、メンバー間のコミュニケーションはどういう状況でしたか?
Shigeo:それこそ1年間あまり会話もなかったような時期もありましたけどね。
KEN LLOYD:会話もないって(笑)。
Shigeo:タイミング的にね(笑)。それぞれ他でやってる音楽活動のペースもあるから、全員揃うのが難しい時期がどうしてもあるんで。
ケイタイモ:でもShigeoって締切がきっちり決まってる状況とか苦手だよね。
Shigeo:いや、俺は意外と締切ありきの人間だよ。今回こんなに時間がかかったのは締切がなかったから(笑)。
ケイタイモ:けっこうShigeoはフィーリングの人じゃん。だから、今回自由に進められて無理がなかった分、納得できるものができたよね。
Shigeo:今回分かったことは、俺を動かすのは “締切” と “金” なんだなと(笑)。
桜井:音楽がやりたいじゃないんだ(笑)。
Shigeo:まぁそれは冗談だけど、要は今回みんなのタイミングやモチベーション、その他色々な要素がハマったっていうことなんですよ。
KEN LLOYD:そうそう、別に意図してATOMをやりたくないっていう時期があったわけじゃないしね。
有機的なバンドサウンドに近づいた新作
——4月16日に2ndアルバム『The Secret Life Of Mine』をリリースされましたが、その前に先行して2月に「Secret Life Of Mine」、3月に「Doves」をリリースされましたね。
Shigeo:1stの時、MVらしいMVを作れていなかったっていう反省点があって、今回は自分たちの納得のいくMVを作りたいっていうのがまずあったんです。それで、リード曲を選びつつ、アップデートしたATOMを表現したMVも公開しようと。連続でリリースしたのは、最近ストリーミングを含めて世の中の流れをみても、毎月アップデートがあるような見せ方のほうが効果的だと思ったからですね。
——「Doves」のMVではクリエイティブユニットのsankakuが手がけられていますが、それはどういったきっかけで?
Shigeo:もともとSBKのVJをやってもらっていた吉川くんの紹介です。「Secret Life Of Mine」は吉川くんにやってもらって、「Doves」はsankakuに担当してもらいました。
ATOM ON SPHERE – Secret Life Of Mine-
ATOM ON SPHERE -Doves-
——この2本のMVに関して、みなさんから演出のインプット、リクエストはあったんですか?
Shigeo:演奏シーンっていうのはオーダーしましたけど、あとはもうそれぞれお任せで作ってもらいました。
——「Secret Life Of Mine」は、ビート感が強く歪まないギターで、非常にキャッチーだなと感じました。やはり、そういった強いフックがある曲なので先行リリースに選ばれたのでしょうか?
ケイタイモ:どれを最初に出すかはすごく悩んだよね。
Shigeo:うん、最終的には多数決で「Secret Life Of Mine」になりました。どの曲をリードにもってくるかは、メンバー、スタッフ含めかなり意見がバラバラだったんですけど、個人的にはやっぱり「Secret Life Of Mine」にしたくて。これまでのATOMにはあまりなかったタイプの曲だし、だからこそリードにすることでATOMのフレッシュな要素を提示できるかなと。8年も経ってるんだからちょっとは新しい部分もみせないとっていう(笑)。
——「Secret Life Of Mine」を作る時に意識されたことは?
KEN LLOYD:「Secret Life Of Mine」では、今までATOMではやってなかったシンプルなインディーロック感をShigeoはプッシュしてたよね。
Shigeo:うん、そのとおり。シンプルなバンドサウンドは意識したかな。
KEN LLOYD:ATOMが始動したころって、バンド感はもちろんあるけど、いわゆるデジロック、デジタルな要素も強くて。それを受けた1stだったんだけど、その曲をライブでやっていくうちに、ライブと音源のサウンドのあいだで、ズレとまではいかないんだけどやっぱり違いがあるよねって。そういう感覚の中で、「Secret Life Of Mine」はライブを前提とした作りになっていると思います。一方で、次に先行としてリリースした「Doves」はデジタルなクラブサウンドが全面に出ているし。
Shigeo:シーケンスを自分が組んでるんですけど、1stはシーケンスで満足しちゃってる曲とかもあったんですよ。だから、いざそういう曲を実際ライブでやるとギターが入ってないからステージでやることないじゃんって。最初のころはそれでもよかったんですけど、ライブをこなすうちに、さすがにもうちょっと弾かせてよって(笑)。
——では、今回の2ndはより有機的なバンドサウンドに近づいたと。
Shigeo:そうそう。
「“初めて聴くのに、どこか懐かしい” って感じてもらえるかもしれない」
——KENさんはATOMを始動する時にShigeoさんがサウンドのイメージとしてあげたNew Orderがあまりお好きじゃないそうですね。
KEN LLOYD:そうNew Order嫌いなんですよ(笑)。
Shigeo:信じられないですよね、イギリス人なのにNew Order嫌いって(笑)。
——始まりにそういう趣味の相違があったとしても、現在はATOMオリジナルな楽曲がナチュラルに生まれる感じでしょうか?
KEN LLOYD:はい、全然ナチュラルですよ。Shigeoが作る音やギター、サクちゃんのドラム、ケイタくんのベース、全部がしっくりきてる。みんなでプロセスを共有して一緒に作ってるから。ただ出来上がってるものを渡されてそのままやるだけじゃなく、それぞれの意見も入ってるし。それぞれ曲の持っていきたい方向が違うこともあるけど、そこは話し合うし、歩み寄って。
Shigeo:うん、バランスとってね。お互い「いいよ、いいよ」って。
KEN LLOYD:それができる関係が作れてるから、全然問題ないですよ。
——作曲のクレジットとしてはATOMになってますけど、曲の基本的なアイディアはShigeoさんが持ってくるんでしょうか?
Shigeo:そうですね、シーケンスを組むのからバウンスまで。でも構成についてサクちゃんもアドバイスくれたりするし。
桜井:曲の種はShigeoくんかもしれないけど、その後はやっぱりみんなで作ってますね。
——今回ATOMの中で加えられた新しい要素というのは、改めて具体的にいうとどういったところになりますか?
Shigeo:それこそクリーントーンだけのギターのフレーズだったり、いかにもな4つ打ちをちょっとハズしてみたり、ブレイクビーツ刻んでる感じとかですかね。あとは、このあいだ残念ながらKeithが亡くなってしまいましたけど、The Prodigyのような90’sのレイブサウンドをあえてギターで表現してみたり。
——いきなりアクロバティックな新しさというより、これまでのキャリアを活かした上で、新たに解釈して組み合わせたような?
Shigeo:多分そうなのかな。そういう意味で言うと、“初めて聴くのに、どこか懐かしい” って感じてもらえるかもしれないですね。何かのキャッチコピーみたいだけど(笑)。若い人にとっては文字通り新鮮だと思いますけど。
「ATOMはHomeboy」
——前作は2011年だったのでストリーミングもまだ普及していない時代でしたが、今回ストリーミングで全世界にApple MusicやSpotifyなどを通じてリリースされていますが、リリースしてみてどう感じましたか?
Shigeo:ワールドワイドに聴いてもらえるし、KENは英語圏出身だから、そういうところも含めてチャンスはあるなって思ってます。日本だけに縛られる必要もないと思うし。昔では届かなかったところにも届けられるし、きっかけや入り口としてストリーミングはいいですよね。あともともと洋楽に完全に影響を受けてきたんで、今自分が世界へ届けられているっていうのは単純に嬉しいし、望んでいることです。
——特に関心のある地域はありますか?
KEN LLOYD:俺はアジアにすごい興味ありますね。自分が海外から来てるからっていうのもあるけど、現行のアジアのカルチャーは知らない世界だし、昔何回かライブをやった程度なので。
Shigeo:香港でGuns N’ Rosesとやってたよね?あのガンズとライブするなんてヤバいよ(笑)。
——みなさんそれぞれ別の音楽活動があると思いますが、ATOMの活動がアクティブになった今、他の活動とATOMではどんなマインドの違いがありますか?
Shigeo:ATOMはHomeboyだよね。
KEN LLOYD:リラックスしてやってますね。
Shigeo:他ではリラックスしてないみたいに聞こえるけど大丈夫?(笑)
KEN LLOYD:他はリラックスしてないもん(笑)。
Shigeo:言っちゃだめだよ、それ(笑)。
桜井:まぁ楽しくやってますよ。
ケイタイモ:ちょうどいい感じかもなぁ。こんなこと言っちゃうとあれですけど、いい意味で責任がないというか。音楽も仕事感が強くなると、やっぱりいろいろあるじゃないですか。このバンドに関しては、それぞれがこれまで培ってきたキャリアもスキルもあって、土台がしっかりしてるんで、リラックス感もありつつ、一度何か決まればちゃんと進んでいくんで。
KEN LLOYD:変な意味ではなく、Shigeoの性格上、彼とやるにはある程度リラックスしとく必要があるんですよ。Shigeoは気分が向いたらやるタイプなんで。それに合わせるにはこっちも柔軟なスタンスでいないといけなくて。会社と部活との違いっていうか。ATOMは部活っぽくて、会社と部活も関わってるときはそれぞれ100%やるけど、部活は集まれるやつがやるテンションでしょ。でも会社の場合はまずルールありきだから。Shigeoはルールを守るタイプじゃないんで(笑)。
Shigeo:法律は守るけど、ルール守らないのが俺のスタイルだから(笑)。つまり、「これはこういう作り方、やり方が当たり前」っていうのがあったとしても、俺のやり方としてそういう “当たり前” は関係ないことなんで。
KEN LLOYD:だから結果Shigeoが一緒にやりやすいタイプの人間が集まってるんですよ。彼にあわせられるメンバー。
Shigeo:おっしゃるとおり、性格いい人を集めてるから(笑)。
KEN LLOYD:でもね、ATOMがスタートしたとき個人的にはちょっと戸惑いはあったよ。
Shigeo:なんで俺が選ばれたんだろうって?
KEN LLOYD:いや、そうじゃなくて、「もうちょっとちゃんとやったほうがいいんじゃないの?」っていう。
ケイタイモ:うん、それはオレもあった。活動のプランニングみたいなものが全然見えなかったっていうか。でも、だんだんShigeoのやり方やペースが分かってきて、進む時はちゃんと進むし、杞憂だったなって。
KEN LLOYD:これがATOMのやり方なんだっていうね。
Shigeo:意外に俺がちゃんとしてたってこと?
ケイタイモ:そうそう、俺の思い過ごしだった(笑)。
Shigeo:サクちゃんは分かってたでしょ?こういう感じだって。
桜井:いや、俺も最初はもうちょっとちゃんとしてると思ってた(笑)。
KEN LLOYD:でも、こういうやり方も今の時代に逆にあってるのかもしれないし、もう正しいも間違いもないんですよ。ただ、みんなこれまでのキャリアからしても、メジャーだったりビジネスライクな環境での活動もあるから、それとはまた違うアプローチにとまどっただけで、結果的にカジュアルに楽しくやれていると思う。
Shigeo:ケイタくんは俺と一番付き合い長いから最初から分かってると思ってた(笑)。
桜井:そんなに長いの?
Shigeo:だって俺が最初にライブハウスでライブした時、ケイタくんは対バンのバンドにいたもんね。CLUB251で、お互い初めて下北でのライブで。
ケイタイモ:そうそう。あと川本真琴のバックで当て振りやった思い出もある(笑)。
——先日ライブにお伺いしましたが、ライブのステージでもこういったリラックスした雰囲気ですよね。
桜井:あれはいいのか悪いのか(笑)。
Shigeo:でも最初のうちはあんな感じじゃなくて、全然しゃべらないでカッコつけてましたからね(笑)。
桜井:本当はおしゃべりなのに。
——そういう自然体な部分もサウンドに反映されていると思いますか?
Shigeo:みんなそれぞれのバンドだと出せないキャラクター、個性がこのバンドでは出てるから面白いと思いますね。
ケイタイモ:俺なんか全然違うからね。
Shigeo:サクちゃんも同じドラムだけど、ちょっとキャラクター違うと思うし、KENもこのバンドだと違うキャラが出てるよね。
バンドとしてのリアルもさらけ出しながら
——現在のサウンドや活動において、最近何か他から影響を受けていることはありますか?
KEN LLOYD:俺は他のアーティスト、もっと言うと他の人に全く興味がないんですよ(笑)。だから音楽でもパッと流れてきて普通にカッコいいなと思うものもありますけど、じゃあそのサウンドを研究しようとは思わないですね。もう20年やってきて、自分独自のスタイルがあるし、ATOMでいっても他のバンドは真似できないと思うし。色んなやり方があっていいとは思いつつ、売れたバンドの曲が自分の制作の視野に入ってくることはないですね。
Shigeo:影響というか最近感じたことでいうと、METALLICAのドキュメンタリー映画で「Some Kind Of Monster」と「Through The Never 」ってあるじゃないですか。あれは要するに、外から見てるバンドのあり方と中の実情は全く違うんだよっていうことを、あのMETALLICAでさえそうなんだということが、赤裸々に表現されていて。そういう、バンドが音楽をやっている感覚のリアルさをファンにも考えてもらえるようなコンテンツの届け方ってやっぱり面白いなと思って。俺も今日このインタビューで色々しゃべってますけど、こういう風にさらけ出すことによって、もっと興味を持ってくれる人がいるかもしれないし。
KEN LLOYD:それはその通りで、日本ってけっこうアーティスト、特にトップレベルになるとけっこう自分を隠しがちですよね。そこの美意識が日本はすごく高いと思う。それが魅力の場合もあるだろうけど、そのせいで全部が同じ感じになってしまってもいる。
Shigeo:「リアルじゃないな、つまんないな」って思う瞬間があるんですよ。みんなカッコつけなきゃいけないってわけじゃないし、色んなスタイルがあっていいと思うんですよね。アーティストもファンも人間だし。ちょっと掘ってみて、アーティストのリアルな面白さを楽しむっていうのもファンにとっては嬉しいだろうし。
——ケイタイモさんは漫画、桜井さんは料理という側面もありますが、そういったことが音楽に何かインスピレーションを与えていますか?
ケイタイモ:んー、ないかな(笑)。漫画の題を曲名にしたり、そういうリンクはありますけど、漫画の創作が音楽活動に影響を与えることは個人的にはないですね。
桜井:音楽と料理は、考え方としては割と似てる感じがします。料理でレシピを考えることや調理の作業ってレコーディングに近いし。作った料理を実際に食べてもらってリアクションを得るときは、音楽ライブな感覚もあって。ただ、料理は一食で食べることのできる量が限られてるけど、音楽はいくら聴いても身体的な限度はないんで、音楽のほうが試行錯誤の余地がありますよね。まぁ実際、料理が音楽に影響を与えてるかっていったら俺もないかも(笑)。
——今後はしばらくアクティブに活動されていくんでしょうか?
ケイタイモ:個人的には、Shigeoがまだノリノリのうちに次の創作活動入りたいですね。
KEN LLOYD:ケイタくんと同じで、Shigeoがノッてる間にATOMを動かしときたい。
Shigeo:2ndの評判が良かったらね。
桜井:Shigeoくん次第っていう。
Shigeo:そういうのやめてよ(笑)。今後って言ったって、今の時代ぶっちゃけ明日さえどうなるか分からないじゃない。死ぬかもしれないし。明日死ぬんだったら、じゃあ俺はステージで死にたい(笑)。
一同:(笑)
ATOM ON SPHERE
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KEN LLOYD
Shigeo
ケイタイモ
桜井 誠
Information
「THE SECRET LIVE OF MINE TOUR」
ATOM ON SPHERE初の東名阪ワンマンツアー
2019.5.10(Fri) at Live House Pangea (大阪)
OPEN 19:00 / START 19:30
2019.5.12(Sun) at CLUB UPSET (名古屋)
OPEN 17:30 / START 18:00
2019.5.31(Fri) at clubasia(東京)
OPEN 19:00 / START 19:30