Ykiki Beat インタビュー |「僕たちにとって最も重要なのは、まわりにたくさん趣味の合うバンドやDJ、友人がいること」
東京を拠点に活動するロックバンド・Ykiki Beat。国内のみならず海外からの評価も高く、Good Night Keaton(Miami Horror)や, Olugbenga(Metronomy)来日公演への出演、オーストラリアの人気バンドLast Dinosaursとの共演など、精力的な活動は東京インディシーンをこえて注目を集めている。そんなYkiki Beatに話をきいた。
──今回はYkiki Beatさんに音楽活動についてを聞いていきたいと思います。“平均年齢が21歳”と比較的若いバンドだと思うのですが、今まではどのように活動をされてきたのでしょうか?
初めまして。私たちはYkiki Beat(ワイキキビート)と言うバンドです。本来ワイキキはWAIKIKIなのですが、スペリングをややもじってYKIKIにしています。2年程前に結成して以来、活動場所は東京の都市部を中心に活動をしています。現在メンバーは全員20代前半ですので、比較的若いバンドかもしれません。
これまで多くのライブをさせて頂く機会がありましたが、沢山の海外アーティストの音楽を参考にしながらバンドを続けてきただけあり、英バンドのSummer Campや豪バンドのLast Dinosaursと共演できた事はこれまでの活動の中でも特に印象に残っています。他にも、代々木上原にあるセレクトショップの企画イベントで国内ハードコアバンドBREAKfASTやCubismo GraficoのChabeと共演できたことも僕たちにとっては大きな出来事でした。ですが、僕たちにとって最も重要なのは、周りに多くの趣味の合うバンドやDJ、友人達がいることだと思います。そのおかげで音楽後進国と言われる日本にいても、十分切磋琢磨しながら音楽を制作していく事が出来ています。
まだあまり一般に認知はされていないと思いますが、僕らの他にもBatman WinksやGloomyといった、海外の音楽に影響を受け、向こうの土壌に置いても違和感の無いテイストを目指しているバンドが多くいます。彼らとは非常に距離が近く、日常的にもよく会う事が多いので、それが自然とD.I.Yなシーンを形成しています。この環境は、僕たちが充実した活動出来ている大きな理由の一つです。と言うのも、このバンドを組むまでの数年間は、メンバーそれぞれ別のバンドなどで活動していたのですが、日本のライブハウスで一般に行われているブッキングイベントくらいにしか出演の機会は無く、そしてその殆どはあまりに魅力の無いものでした。アーティストに課せられるノルマや機材費を払う負担でバンド活動に余裕は生まれず、しかるべきシーンも存在していなかったので、当時はいくらライブをしてもほとんど実のある活動になりませんでした。
その分、今ある環境には大変満足しています。今は周りに多くのイベンターの方がいらっしゃり、彼らを中心に多くのイベントがひらかれています。ヴェニューとバンドのあいだにイベンターが仲介することで、殆どの場合バンド側は一切お金を払わず出演できます。代わりに、イベンターが告知をし、人を集めるという形です。もちろん当日客足がのびないこともありますが、そう言う場合にはバンドにノルマを課す、というやり方では無くてイベンターが自腹を切ってまかなっています。これも、本当に音楽を好きな人たちのつながりがあるからこそだと思うので、イベンターの方々や彼らのイベントを信頼して集まるお客さんの存在はこの界隈のアーティストにとって本当に重要な助けとなっています。
東京にもこうした海外仕様のパーティが存在していたおかげで、僕たちの活動は根をおろす事が出来ています。普段日常的に開催されているイベントは基本的にそこまで大きなパーティではありませんが、こうした演奏の機会が与えられている事は間違いなく活動のモチベーションとなっています。
——機材や楽器などは何を使用しているのでしょうか?
機材というほど大げさな物は、僕たちにはあまりありません。どのバンドにも一人いるような機材オタクみたいな存在は、僕たちの中にはいないので(笑)。特に鍵盤を担当している野末は、練習も本番もギタリストの嘉本に借りたシンセをただ使っているだけですし、僕を含めギタリストの足下には3mを超えるエフェクターの羅列のような豪華さはありません。僕自身、安物のマルチエフェクターをかれこれ5年以上使い込んでいます。機材という項目に関して言いたいのは、機材にこだわるがあまり肝心の音楽がおろそかになっているバンドにはなりたく無いという意思があるからです。言い訳じゃないですよ(笑)。
——なるほど(笑)。
勿論、機材が良いものがあるにこした事はありませんが、欲しい音、出したい音があって初めてその為のツールとなると考えていますので、バンドのスタンスとしてはまず良い曲を作る事、その一点に集中しています。ただ、あえて言うなら、Ykiki Beatで一番重要な役割を果たしているのはLOGICだと思います。これはMacに初期搭載されている音楽制作ソフトGaragebandの上位版にあたる物です。バンド内で初めに利用していたのは嘉本だったのですが、直感的に作業の出来るインターフェースや、The Killersを初め、Lily AllenやFoster The Peopleといったアーティストも制作に用いていたことから、このソフトを信頼して僕や野末もLogicを導入しました。やはり同じソフトを使っていて便利なのは、プロジェクトデータを共有する事が出来る事です。気軽にアイディアを交換できる事で、制作にはおおいに役立っています。
——機材が整っていない状況でもやれる!!ってことですね。では、そんな中実際に楽曲を作っていく際はどのように製作されているのですか?
先ほどの機材の項目でも述べたのですが、作曲ではLogicを使っています。Ykiki Beatの出発点となった「London Echoes」という曲があるのですが、これは嘉本が温めていたアイディアを僕が受け取って、ループを広げ、歌やギターを足して完成させた物でした。Timothy Work(現在はCinema Citizen)という僕のソロ名義で制作、公開した作品だったのですが、国内・海外から想像以上の反響があった為、その後結成したYkiki Beatでも初期の重要なセットの一つとしてよく演奏していました。基本的には僕が作曲を手がけていますが、今でもこのアイディア交換による作曲方法はよく用いています。
例えば、昨年末にBandcampを通じて公開したデモ音源をコンパイルしたEPがあるのですが、その曲の中の「America」や「Younger Life」といった楽曲は「London Echoes」と同じく、嘉本が持って来た10~30秒のフレーズを僕が広げて出来たものです。
「Hollywood!」では、さりげない場所でさりげないリズムを加地が足してくれていますが、Ykiki Beatの作曲は基本的に僕と嘉本が中心となって進めています。しかし以前個人的に制作したトラックを野末が持って来て聞かせてくれたことなどもあったので、今後はさらに野末が加わって制作を進めていく形になるかもしれません。とても良い感覚を持っているのですが、実際に制作するかどうかは彼の気分次第なので、アルバムに彼の曲が入るかどうかはこうご期待ということで(笑)。
音のこだわりという意味では、メロディラインに重点をおいて曲を考えています。ミックスを学ぶ事を通じて、音そのものの作り方という点に関しても意識はしていますが、何より、曲がダメでは他何やってもダメなので、まずは伴奏と歌だけで通用する筋を通す作業に多くの時間をかけています。そして、個人的な話で言えば、僕は小学生の時にドラムを始めた事で、リズムやビートについてもかなり気を配っています。曲を聴く際、ビートが耳にささる感覚というのはメロディ同様とても重要なウェイトを占めていると思いますので。リズムといってもドラムの事だけを言っているのでは無く、ギターやベースのフレーズからメロディを抜いたときのリズムや、それぞれの楽器の組み合わせで生まれる全体のビートなど、耳が心地いいポイントを探りながら作っています。
——耳が心地いいポイントを探りつつ楽曲を制作されている、感覚的なところでしょうか。そんな耳をお持ちのみなさんが、影響を受けたアーティストを教えてほしいです。
影響を受けたバンドをあげるとしたら、これはそれぞれのメンバー個人個人に直接聞いた方がいいかもしれません(笑)。勿論海外のインディロックと呼ばれる音楽に対してある程度の共通した嗜好があるのは間違いありませんが、実際はそれぞれがかなり異なった好みを持っています。
僕個人で言えば、KeshaやJason Deruloのような海外のポップスや、沖縄民謡、イルカの様な国内の昔の歌謡曲も好んで聴きますが、野末はヒップホップや80’s音楽に造詣が深いです。嘉本はとても耳が早く、海外のかなり小さなレーベルなどの新譜なども知らない間にチェックしていますね。関口だけバックグラウンドがかなり異なっていて、日本のロックにかなり土台を置いて彼のドラムキャリアをスタートさせたと思うのですが、今ではCapital CitiesやPassion Pitといったシンセポップも好んで聞いています。加地はずっとThe Smithsを聴いています。こうした違いがありながらも、バンドとして参考にしているのはFoster The PeopleやSky Ferreiraなど、共通のアーティストがいます。
意識としては、創造的意欲の高いインディペンデントな音楽と、大衆的なインパクトを持つポピュラーミュージックの中間点というところでしょうか。ありふれたパターンを使い回すポップスの考え方にも同意できませんが、インディインディ言い過ぎているインディキッズにもあまり共感できません。
ですが同時に、ポップスの力強さとインディロックの知的なアプローチ、どちらにも魅力を感じています。自分たちがどこに属するのかという点に関しては難しい問題ではありますが、先ほども述べた通り、筋の通った歌を作る事にとにかく集中して、自分たちなりに洗練された音楽を作る事に挑戦しています。その為、基本的に旋律の風合いに魅力のある音楽からはなんでも影響を受ける様にしている、と言えるかもしれません。
——TuneCore Japanから配信されていますが、最初に知ったキッカケは何だったのでしょうか?
知り合いのアーティストのすすめで知りました。今回は自主でリリースした「Forever」という楽曲のデジタル配信の為に利用させて頂いたのですが、初めはiTunesでの取り扱いは何処かの流通会社を通じて販売しようと思っていましたので、とても助かりました。それこそインディペンデントなアーティストが簡単な手続きで世界中に自らの楽曲を発信できるこのシステムは、日本でも今後非常に注目されるのでは無いでしょうか。
単価も安く、初回手続き時のみの支払いで済むというのは予算の少ないD.I.Y.なアーティスト達にとっては重要なポイントだと思いますね。一回の手続きでiTunesやAmazonといった身近なサイトでまとめて販売できるのも大きな強みですが、まだ日本では解禁されていないSpotifyでの公開も、海外の人々にアプローチするにはかなり効果的な手段だと思います。
——最後に、Ykiki Beatとして、今後どのようにアーティストとしての活動していこうとお考えですか?
バンドとしてはまだWeb上でのデモ音源とシングルを公開したのみですので、差し当たりの目標としてはアルバムを制作し、発表する事です。長い目で見るなら、海外のレーベルを通じて作品をリリースし、憧れて来た多くのフェスに出演できたら最高ですね。ともかく、納得の行くアルバムを制作する事。それが大きな目標です。
Ykiki Beat
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