【Who’s NXT】HANCE | ストリーミング時代の新しい兼業アーティストの形 海外からも支持される遅咲きシンガソングライター
HANCE
2020年9月、1stシングル「夜と嘘」でデビュー。成熟した大人の甘く切ない「ノスタルジー」。男性的なソウルフルボイスとセンシティヴなウィスパーボイス。相反する艶を兼ね備えた歌声、パーカッシブなアコースティックサウンド、叙情的な曲の世界観がMV公開後、国内のみならず海外各国で話題となり、デビュー曲「夜と嘘」は3ヶ月でYouTubeで100万再生を記録。
台湾のiTunes Store・R&Bソウルトップソングで6位。Apple Music R&B/ソウルトップミュージックビデオランキングで、モンゴルで2位、ボリビアで5位にチャートイン。2ndシングル「バレンシアの空」はキルギスタンのJ-POPチャートで1位、マカオ、アルメニアで4位。4thシングル「Rain」はボリビア、アルメニアのJ-POPチャートで2位、4位を記録。その他、カザフスタン、ウクライナ、香港なども続き、急速に海外リスナーを獲得している。
サウンドプロデュースは、元ピチカートファイブの野宮真貴のツアーサポート、中島美嘉、青木カレン等、レコーディング参加で活躍する石垣健太郎が担当。ソウル、フォーク、ラテン、ジャズなど、グローバルな質感をミニマルなアコースティックサウンドにブレンド。今後の活躍が注目されるシンガーソングライター。
2021年5月26日、待望のファーストアルバム『between the night』をリリース。
2021年、9月29日、7thシングル「left」をリリース。
Who’s NXT : A series of interviews with featured artists
——最初にHANCEさんが音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。
開業医でありながら、オーケストラの指揮者などをしていた祖父からクラシックギターを譲り受けたことがきっかけです。以降、教会の牧師さんからギターを学ぶようになり、高校生の頃から本格的に音楽活動を始めました。オリジナル曲を作り始めたのは、大学生の頃です。
——HANCEとして活動を開始したのはどういった経緯だったのでしょうか?
10代〜30代まで、バンドやソロなどさまざまな形で作ってきた曲を40代を迎えた区切りとしてきちんと作品にして世に出したいと考えたことがきっかけです。また、10〜20代の若いアーティストさんばかりがデビューする音楽業界において、同世代の大人の方に共感頂ける音楽を届けたいと思いました。
——現在の活動はどのような状況ですか?
活動拠点は東京ですが、デビューしてからまだ一度もライブを行っていませんので、主な活動の場は今のところインターネット上ということになるかもしれませんね。
——最新作をご紹介いただけますでしょうか。
9月29日に7thシングル「left」をリリースします。こちらの曲は、夏から秋に変わる季節の変わり目を意識した、「切なく喪失感のあるラブソング」になっていて、メロウでループ感漂う楽曲です。HANCEのMVはこれまで、「夜感」、「大人感」のようなものを意識して作ってきましたが、今回は、少し力を抜いた「普段のゆったりした自然体の感じ」を楽しんでいただけたらと思っています。
「left」各配信ストア : https://linkco.re/bedq6CZx
——デビュー以来コンスタントに作品を発表されていますが、中でもおすすめの楽曲はありますか?
リスナーの方の反応が圧倒的だったのは、デビュー曲「夜と嘘」です。YouTubeの視聴数はデビュー曲ながら、3ヶ月で100万再生を記録。日本だけでなく、東南アジア、中央アジア、東ヨーロッパ、南米、中東、アフリカなど、世界各国で反応が高まり、複数の国のチャートにランクインしました。むしろ、この曲に関しては海外の反応の方が圧倒的に多かった曲です。特にInstagramでたくさんの国のリスナーからメッセージが届きました。
「夜と嘘」各配信ストア : https://linkco.re/R5hmBMp2
——HANCEさんの楽曲は海外ではどのように受け入れられているのでしょうか?
オーストラリア(メルボルン)在住の日本人の方に教えていただきましたが、メルボルンでHANCEの曲は人気だそうです。例えば、カフェでHANCEの曲がかかっているそうで、そちらのカフェはイタリア系のオーナーさんのカフェだということですが、いわゆるJ-POPという認識を持たれないようで、HANCEが日本人だと言うと驚かれるそうです。メロディはノスタルジックな歌謡曲のような印象もありつつ、ラテン系のパーカッシブなギターやコードワークが混ざったりと、ボーダレスな曲の印象が特異なものとして受け入れられているのではないか?とおっしゃっていました。
——そのように海外にも受け入れられるHANCEさんの楽曲は、どのようなプロセスで制作されているのでしょうか?
HANCEはソロアーティストとして活動していますが、編曲は、プロデューサーの石垣健太郎さんと共同で行っています。流れとしては、まずHANCEがギターで作詞作曲を行い、石垣さんを交えて、コードを変えたり、曲の長さやキーを決めたり、細かい部分を詰めていきます。そして、アレンジの方向性をある程度決定した後、石垣さんの方で、でもトラックを作っていただき、ボーカルやコーラスをレコーディング。その後、さらにブラシュアップをして、曲が完成します。
——アーティストとしてHANCEさんの特徴を、ご自身ではどのように捉えていらっしゃいますか?
HANCEは、自身で本業の会社を経営しながら、二足の草鞋でアーティスト活動を行う、40代の遅咲きシンガソングライターです。レーベルや事務所に所属せず、DIYではありますが、一緒にやりたいと思ったクリエイター(サウンド制作、映像制作、ブランディング)、プロモーター、マネジメント会社に直接HANCE自ら声をかけていき、一つのチームを作っています。なので、HANCEはアーティスト兼、HANCEチームの総合プロデューサーというイメージです。
飲食店に例えると、メジャーアーティストさんは、全国展開をする大手レストランの目玉商品。そこに、多くの人員やコストをかけ、スケールメリットを生かした展開を、組織全体で動かしていきます。一方、HANCEは、例えるなら、10〜30代で、修行を積んで、40代で独立し、自身のお店を構えた飲食店オーナーです。コンセプトから、接客まで全て自身がプロデュースし、こだわりの食材や厳選した人材で、舌の肥えた「大人のお客様」をメインにサービスを提供していきます。
大手のようなスケールメリットは出せませんし、本業があるため、時間の制約などありますが、その分、お客様(ファンの方)との距離感を近くし、狭く深く、サービスを提供する事を目指しています。
——ストリーミング時代のインディペンデントアーティストとして、非常に興味深い活動アプローチですね。また、サウンドの特徴に関してはいかがでしょうか?
音楽のジャンルは「シネマティックミュージック」と呼んでいます。「映画のワンシーン」「映像のイメージ」を想起しながら作っています。サウンドも、ソウル、フォーク、ラテン、ジャズなど様々なテイストを盛り込んでいる為、ボーダレスなサウンドとなり、国外のファンも多いのが特徴かと思います。
——HANCEさんはどのようなアーティストに影響を受けましたか?
まず祖父ですね。アーティストではありませんが、母方の祖父から影響を受けました。開業医でありながら、レコード収集家であり、ピアノ、バイオリン、アコーディオン、ギターなど様々な楽器も嗜んでおり、オーケストラの指揮者までやっていました。HANCEの「兼業」スタイルは、確実に祖父の影響があったと思います。祖父は、何年も前に他界していますが、子供の頃、遊びに行くと、孫の日常を撮影した、8ミリテープをスクリーンで映し、クラシックの曲を合わせてかけるという、ミュージックビデオの「走り」のような事をしていました。「映像」と「音」をリンクさせるという、シネマティックミュージックのコンセプトは、この幼少期の体験からきています。
次に、島根県、松江市在住のシンガーソングライターの浜田真理子さん。直接お会いした事はありませんが、同郷アーティストという事もあり、そして松江に拠点を起きながらも、ローカライズされた活動の範疇を越えて、日本全国にコアなファンを持っていらっしゃるという点において、心から尊敬している方です。著名な女優さんやアーティストさんからもリスペクトを得ている点においても、偉大な方だと感じています。
そして、エリオットスミス。残念ながら他界してしまいましたが、ソロアーティストとして大きな影響を受けました。派手さはありませんが、圧倒的な世界観と、まさに映像が浮かんでくるような、センシティブで浮遊感のある楽曲の数々。一聴すればすぐに彼の曲とわかる「圧倒的な個性」に魅了されました。HANCEの楽曲は攻撃的な「動」の曲と、内省的な「静」の曲が混ざり合って作られていますが、「静」の方のタイプは彼の影響が大きいと思います。
——楽曲でいうとどんな曲に影響を受けましたか?
Elliott Smith – Between the Bars
HANCEの1stアルバム『between the night』はこちらの楽曲のタイトルからヒントを得ました(笑)。エリオットの曲は「暗い」印象の曲も多いですが、シンプルで素直で美しいメロディーが大好きです。
Tom Waits – Martha
海外を旅する時、宿泊するホテルなどで必ずかける曲です。シンプルなピアノとシンプルなメロディー。そして、ドラマチックに響くストリングスの音。この曲を聴くと、その土地の様々なシーンや匂い。会話、情景が、浮かんできます。まさにシネマティックミュージックの真骨頂のような曲です。
Aimee Mann / Humpty Dumpty
映像を思い浮かべる時、少しファンタジックで、まるで童話の世界に入り込んだような。そんな楽曲も大好きなのですが、エイミーマンのこちらの楽曲はまさに、「大人の寓話」のようなイメージが湧いてくる楽曲です。低音でありながら、優しいボーカルと、少しけだるさのある美しいメロディーの調和が心地よいです。
——音楽活動にあたって、何か特に意識していることはありますか?
謙虚な気持ちを忘れないこと。色々なタイミングやご縁が重なって、自身の活動が出来ていること、サポートして下さっている方がいることに感謝の気持ちを忘れない事だと思います。
そして何より、作品に対して「正直」であるということ。その結果、HANCEの曲を聴いて下さっている方が、気分が高揚したり、心が落ち着いたり。そういう風になってもらえれば、それで十分幸せです。
——今の音楽を取り巻く状況に関して、何か感じることはありますか?
他のインタビューでも言っていることですが、10代〜20代の若い方しかデビューしない、出来ない音楽業界の現状に少なからず疑問を持っています。他の業界。例えばファッション業界なら、若い人向けの雑誌だけでなく、大人の方向けの、雑誌やライフスタイルの提案、新作の提案など当たり前にあります。飲食店でも、若い人向けのお店もあれば、大人の方向けのお店も出ています。僕はいわば、10代〜30代を下積みとして、40代でようやく自分の店をオープンした、飲食店オーナーのようなものだと思っていますが、飲食店ではそういう事例は当たり前の事なのに、何故、音楽業界ではそういう人がほとんどいないんだろう?と不思議に思っていました。僕は40代でデビューしましたが、大人になった今だからこそ、表現できることがたくさんあると思っていますし、ミュージシャンとしても過去の自分と比べて、今、一番良い作品を作れているという感覚があります。
また、僕のように本業を持ちながら、ミュージシャンとして活動する兼業アーティストももっと、当たり前になるといいなと。本業があった方が、生活も安定しますし、気持ちにゆとりが生まれる分、音楽に対する向き合い方も、ピュアになれると感じます。SNS等で個人の発信力が強まった今、若い方にとっても、そういう世の中になっていた方が、将来に夢を抱けるのではないでしょうか。
——今回はありがとうございました。最後に今後の活動の予定や展望をお願いします。
これまでと同様に、コンスタントに音源や映像をリリースしていくのはもちろんですが、ファンの方とのコミュニケーションの場をもっと広げていきたいと考えています。オンラインとオフラインでの活動をうまく融合させていけたらいいですね。コロナの様子を見ながら、一番良い形を探っていきたいと思います。
2020年にデビューして、およそ1年が経過しました。たくさんの方の応援やサポートがあって、夢を叶えていただき、本当に心から感謝しています。特にファンの方に対して、感謝の言葉もありません。とても励みになっています。メジャーアーティストさんのような活動ペースや、大きな景色を見せる事は出来ないかもしれませんが、その分、お一人お一人に対して丁寧にコミュニケーションを取っていきたいと思いますので、今後も応援よろしくお願いします。
また、ミュージシャンの方で、僕のような活動スタンスに共感していただける方がいらっしゃったら嬉しく思います。コロナで、大変な世の中になりましたが、「音楽の持つ力」を信じて、これからも頑張っていきたいと思います。
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