showmore インタビュー 洗練&上質なポップサウンドを生み出す確かなスキルとストイックなスタンス

2019.7.4


showmore ロングインタビュー | 洗練&上質なポップサウンドを生み出す確かなスキルとストイックなスタンス

そのハイクオリティかつ上質なサウンドで、音楽ファンはもちろんアーティストからの支持も高いshowmore。艶やかで個性的な歌声を持つ根津まなみと、緻密かつ熱量の高いクリエイティブワークを普遍的なサウンドに昇華させる井上惇志、二人のメンバーによるサウンドはリスナーを強く魅了している。また、観るものを一瞬でshowmoreの世界へひきこむライブパフォーマンスにも定評があり、イベントへ彼らの出演を求める声も増え続けている。そんな、アーティストをはじめ多方面からプロップスを得ているshowmoreのスタンスはどのように確立されたのか。彼らと親交の深いアーティストについてや、showmoreのはじまりのエピソードを含め、話をきいた。

 

「now (feat. SIRUP)」の制作経緯

——少し前の話になりますが、今年3月にリリースされた「now (feat. SIRUP)」について、リリースの経緯を教えてください。

井上:去年8月に「1mm」、10月に「dryice」をリリースした後に、次のリリースはどうしようかっていう話をしつつ年末のワンマンの準備をしてたんですけど、そのワンマンに誰をゲストに呼ぶか考えてたら、やっぱりSIRUPがいいよねってなって。SpincoasterのMusic Bar Sessionでのライブ撮影をきっかけに、定期的に僕も彼のライブサポートをしてまして。それで、ワンマンでカバーでも一緒にやろうかっていう話から、せっかくなら新しい曲を作ろうということになったんです。


「1mm」各配信ストア:https://linkco.re/C3tUnffQ

 

「dryice」各配信ストア:https://linkco.re/pHG471D9

 
showmore – circus (Music Bar Session)

 
根津:SIRUPもすごく忙しいんで、曲作りはタイトでしたね。その時、私がSNSにまつわる歌を書きたくて、最初に思いついた歌い出しを井上くんに渡してはいたんです。showmoreって、歌詞は100%私が担当、逆にアレンジは井上くんが全部手がけていて、メロディーは相談しながらっていう作曲スタイルなんですね。それで、そういうなんとなくの曲の欠片をベースに、深夜のライブハウスを借りてSIRUPと3人で作ったんです。本当にその場で出来上がったって感じで。

井上:そこでセッションしたものをボイスメモで録って、後日ワンマンのライブ用にアレンジして。それで、ワンマンでその曲を披露したらすごく評判が良かったんで、急遽リリースしようということになって。

根津:けっこう急な流れだったよね。リリースを前提とはしていなかったんですけど、思った以上に良い曲になったんで、これは出そうって。

——アレンジはライブ用から変わりましたか?

井上:大枠は変わってないんですけど、僕らライブは同期なしの生演奏でやってるので、ライブではいっぺんに出せる限られた音色の範囲でやったんです。で、音源にする際はやっぱりインパクトが欲しいっていうこともあって、フリューゲルホルンのゲストを呼んだり、2サビの後のフューチャーベースっぽいセクションのアレンジをShin Sakiuraくんにお願いしたり。細かい音色の精査も含めて、音源じゃないと出来ない肉付けにはこだわりました。この作業はどの曲を作るときにも大変で、毎回地獄なんですけど(笑)。

——サウンドのアプローチとして、テーマはありましたか?

井上:ダンサブルっていうのは前提にありつつ、トラックと生の要素をバランス良くミックスすることは意識しました。例えば、Tom Mischとか、打ち込みが全面に出てない感じだけど、すごくトラック的な処理をしてるような。そういうインディーR&Bの音像を参考にしながらも、showmoreらしい生っぽい要素も加味して。キックにトリガーを重ねてるけど基本的にドラムは生録りだし。打ち込みと生の絶妙なバランス感は目指しました。どっちにも寄らないように。

——「now」を最初に聴いたとき、showmoreがさらに次のステージに入ったなと感じました。ジャズのテイストも自然にポップに昇華されているというか。

井上:おー、それはめっちゃ嬉しい(笑)。苦労して作ったんで。

根津:それはもうSIRUPの力もかなり借りましたから(笑)。

——歌詞へのアプローチもSIRUPさんが入ることで、これまでと何か変わりましたか?

根津:歌詞は本当にそのままSNSのことを書きたくて。ただ、一人で歌うとき、ああいうストレートな歌詞ってshowmoreっぽくないかなっていう意識もあって、あんまり書いてこなかったんですね。それが今回SIRUPが入ってくれることによって馴染んだというか。上手く表現できた気がします。

 

「now (feat. SIRUP)」各配信ストア:https://linkco.re/Z5tAhDY0

 

サウンドを支える多彩なアーティスト

——SIRUPさんはfeatですが、レコーディングに参加されているアーティストも多彩ですよね。

井上:ドラムは、ライブでもサポートしてくれてるタイヘイくんで、彼は大学のサークルの後輩なんです。でも僕よりミュージシャンのキャリアは長くて。もともと カラスは真っ白 っていうファンクポップバンドを北海道でやってて。その頃、僕は全然異なるシーンにいたんですけど、お互い上京してたまたま東京で再会して。今は、Shunské G & The Peas っていうバンドで一緒に活動してるんですけど、showmoreが2人編成になったタイミングからサポートしてもらってます。彼はすごくバランスの良いドラマーで、グルーヴィーなビートからジャズっぽい横広がりのノリまで叩けるんですよね。

 
カラスは真っ白”fake!fake!”/A crow is white”fake!fake!”(Official Music Video)【English Sub】

 
Shunské G & The Peas – Fly Higher (Official Music Video)

 
根津:ベースのたまちゃん(玉木正太郎)は、私がLUCKY TAPESのコーラスとかをやってるシンガーのUKOと仲がいいんですけど、たまちゃんがUKOのサポートをずっとやってて、そのつながりです。UKOのライブの時に、エグいベースだなと思って。タイヘイと合わせたらいい感じになりそうだなと。

 
UKO – ONE LOVE 【Official Music Video】

 
井上:たまちゃんはブラジル音楽にすごい詳しくて、打楽器のパンデイロも叩けるんですよ。「now」を初披露したワンマンライブでも打楽器的な要素とベースの要素の両方を担うかなり特殊なプレイをしていて、そのままレコーディングもお願いしたという感じです。音源では、前面には出てないんですけど実はすごく複雑な細かいこともやってもらってます。

——先ほどお話にも出たフリューゲルホルンは、山田丈造さんですね。

井上:彼も大学のサークルの後輩なんですけど、生粋のジャズメンなんですよ。もともと カラスは真っ白 のサポートもしていましたが、バンドやポップスのシーンというよりも、日本の王道ジャズやフリージャズのシーンの人なんですよね。実は彼が吹いているフリューゲルホルンって僕のものなんですよ。セルマーのいいやつで(笑)。サラリーマンの頃少し習ってたんですけど、忙しくて吹く暇がなくて。でも、眠らせとくのもったいないから山田くんに使っていいよって。そういう流れもあり、今回参加してくれました。フリューゲルホルンってトランペットに近い楽器なんですけど、トランペットより柔らかいっていうか。もう少し大人っぽい、アタックが弱い丸みがある音なので、showmoreのカラーにも合うかなと。

 
North Pandemic Groove”Aria”(Official Video)

 
——Shin Sakiuraさんとはどういったつながりなんですか?

井上:僕はもともとジャズ・ピアニストだったんですけど、そのフィールドを離れた後、stillichimiyaBigBenさんと山梨のイベントで共演したのをきっかけにラッパーのサポートをやるようになって。で、そこから繋がったPONYさんのサポートで八王子のクラブの深夜イベントに出演したことがあって、その時PAをしてたのがShinくんで。もう4〜5年前ですけど、その時はSNSでつながる程度で軽い挨拶をしただけだったんですよね。で、去年SIRUPのサポートメンバー同士として現場で再会して、お互い「あ、あの時の?」みたいな(笑)。「dryice」のレコーディング時にトラック的な要素を入れたいなと思いShinくんに制作を手伝ってもらって、とても良いものができたのでまたお願いしました。ちなみに「now」ではスペインのバルセロナからリモートで作業してくれました。


Shin Sakiura『Dream』各配信ストア:https://linkco.re/z8RSdnSx

 
根津:Shinくんもすごく忙しくて。日本にいる間は難しいけど、バルセロナに行ったあとでよかったら作業できるよって言ってくれて、向こうからデータ送ってくれてやりとりしました。

井上:スペインのWi-Fi遅えって(笑)。みんなスケジュールカツカツの中でも、やってくれてありがたかったです。

——レコーディングはどちらで?

根津:千歳烏山の世田谷RECスタジオで、エンジニアは向 啓介さんです。向さんには、「circus」のミックスからお世話になってて。

井上:すごいエンジニアさんなんですよ。もともとバークリー卒のミュージシャンの方で。サックスプレイヤーでもあるし、トラックメイカーでもあって。アレンジのアイデアの部分も含め、録って混ぜてを何回も繰り返して、ちょっとずつ組み上げていくっていうのを一緒にやっていただいてます。素材をポンと渡して、「はい、ミックスしてください」っていうのじゃなくて、「今はこういう感じなんですけど、なんかこの辺足りないからこういうの入れてみよう」っていうのを地道に一緒にやるっていう。完全にチームな感じですね。

——さらに、「now」ではアートワークなどにおいても、また違うアプローチでshowmoreの洗練されたイメージが表現されていますね。

根津:デザインはずっと徳山くん(徳山史典)が手がけてくれてるんですけど、彼も私と同じ山梨出身のアーティストなんです。井上くんと出会うきっかけになった、山梨出身のサックスプレイヤーが主催している山梨のイベントがあって、そのイベントのクリエイティブのデザインをしてたのが徳山くんで。

井上:フライヤーや告知動画とか、彼が毎回作ってたんだよね。

根津:もう毎回めちゃくちゃかっこいいデザインで。それで、showmoreを結成した時、井上くんがデザインは徳山くんに頼みたいって。それから、結成当初のデモ盤のデザインからshowmoreのロゴやホームページを含め、ずっとやってもらってます。だから、本当になにもかもが色んなところでつながってるんですよね。

 

 
——確かに、showmoreはアーティストやクリエイターとのつながりが本当に多種多様ですよね。

根津:それぞれ、もともといたシーンが全く違いましたからね。私は10年間くらいピアノ弾き語りで、それこそアコースティック界隈にいたし。井上くんは、ジャズからのヒップホップだったり。

井上:あと基本的に二人とも現場主義というか。足を使ってきたんですよ。友達のライブも誘われてスケジュール空いてたらほぼ100%行くし、ライブも2つ3つは普通にはしごするし。気になるバンドがいたらそのまま当日券で入っちゃったりするし、かっこよかったら自分から声かけて。で、自分のライブやイベントに出演してもらったり。そういう感じでどんどんつながっていって。

根津:少しずつ積み重ねてきた感じだよね。例えば、田中光さんもたまたまライブ見る機会があって、それまで私ヒップホップは全然聴いたことなかったんですけど、そのライブがすごくてあまりの衝撃に思わず話しかけて、それから親交がはじまったりね。

 
田中光 × FKD / Sodium (MV Directed by 8ml)

 
井上:SIRUPも、僕が別でやっている Scarf & the SuspenderS がClub Asiaで定期的に企画をやっていた時にSoulflexをブッキングした回があったんですけど、フロントが彼だって特に認識せずに純粋にかっこいいなと思って。それからしばらくして、SIRUPのEPを聴いて、これヤバいって思ってたタイミングで、再度大阪でSoulflexと対バンすることがあって、その時はもうSIRUPがSoulflexにいるって知ってたんで話しかけて。SIRUPの曲のかっこいいところを僕から一方的にめっちゃ伝えるみたいな(笑)。音楽やってる同士通じる部分もあって、普通に飲みにも行って一気に仲良くなって。自然とライブサポートをするようにもなって。

 
Scarf & the SuspenderS – K.I.K.E (Music Bar Session)

 
Soulflex – All Good (Moving Jacket)

 

それぞれにとってのshowmoreの活動とは

——お二人それぞれshowmoreとは別の活動もありますが、根津さんはソロとhyphaですか?

根津:そうですね。hyphaは最近そんなにアクティブではないんですけど、やってます。高木正勝さんが好きすぎて、高木さんみたいな音楽性で(笑)。

——ソロなどの場合、showmoreの時とマインドが違ったりしますか?

根津:私の場合は、もう全然違いますね。聴いてはっきり分かるぐらいだと思います。なんていうか、私の中で表現することの時系列が違うんですよね。hyphaで表現したいことは過去で、ソロは未来と過去だったり。で、showmoreは完全に現在なんです。個人的な音楽活動としては、showmoreが一番新しいんですけど、やっと自分の現在を表現できる場ができた感じで。私はミュージシャンとしては、スタジオミュージシャン系ではなく、完全にシンガーソングライターや自己表現系なので、時系列を横断した器用な表現ができなかったりするんで、showmoreでは現在という時系列を意識してやってます。

——井上さんは?

井上:showmoreは二人だし、しかも根津さんがそういう自分をはっきり持ってる純粋なアーティストなので、僕はshowmoreの時はプレイヤーやアーティストでもありつつ、プロデューサーっぽい多角的な視点を意識しています。showmoreの音楽をいかに広げるかを常に考えて。

showmoreのはじまりとも関係するんですけど、根津さんの歌を最初に聴いた時、本当にすごく良いと思ったし、これが売れてない世の中はマジで狂ってるって思ったんです。でも、同時に売れない理由にも気付いて。その時の根津さんの音楽は、過去と未来についての、しかもごくパーソナルな表現だから、時代やお客さんと接続されてないなと感じたんです。じゃあ、僕がその接続要素を担っていこうと。だから僕はプレイヤー、アレンジャー、プロデューサー、その他も含めshowmoreの活動全般について考えています。逆に、Scarf & the SuspenderS や Shunské G & The Peas をやるときは100%プレイヤーとして楽しんでます(笑)。showmoreは単純に楽器を弾いてて楽しいとか、そういう次元を越えて、自分の生きざまじゃないですけど、ライフワークとして表現している活動だと思います。

 

活動の計画性とサスティナビリティ

——アーティストとしてスケールすることに関してはどのように考えていますか?

根津:もっと大きくなりたい気持ちはもちろんあって。単純に広く知ってほしいというのは常にあります。

井上:根津さんに一緒にやろうって誘った時、最初「近い内に、このままじゃ音楽続けられなくなるよ」って言ったんです。ライフステージが進んでいくうちに、結婚や子供ができたり、収入と折り合いがつかなくなったり、自分の満足のできる表現ができなくなったり、音楽からドロップアウトするケースはいろいろあると思うんですけど、音楽だけである程度の収入が得られたり、身内だけじゃないレベルで多くの人に届けられているっていうやりがいが満たされるように持っていけたら、自分の気持ちいい形を保ちつつ音楽続けられるんじゃないのって。メイクマネーしたいっていう野心というより、自分たちにとっていい環境で音楽できるようしようって。だから、もっと多くの人に届けられるようにやっていこうと。

根津:「このままだと絶対音楽続けられなくなるから、俺とやろう」って誘われて。何年か後までには絶対ここまで行くから信じてくれって。今後の年間プランを提示されて(笑)。

井上:普通に会社だと、短期、中期、長期で目標立てるじゃないですか。だから別に音楽活動でもあったっていいよなって思って。こういう音楽が流行ってます、これくらいの規模でやるとこれくらいお金が回ります、ベンチマークとしてこういうアーティストがいます、ここまで行くにはどうしたらいいか、これぐらいのリリースペースでやります、それでどれぐらい聴いてもらえたら、これぐらいのキャパでワンマンできますって。

根津:井上くんは本当に私と正反対で、私が全く考えていなかったことを示してくれて。それがすごく現実的だったし、なによりもプレイヤーとしてとても尊敬していたので、そこまで熱心に言ってくれるならやってみようかなって。

——ミュージシャンとして優れつつ、音楽の広め方の部分まで分かってる、視野が広い人に出会えたと。

根津:そういう人が周りにそれまでもいなかったし、そもそもそういう事が必要なんだということを私自身が全然わかっていなかったので。

井上:難しいんですけど、人によっては、そういうことも考えないといけない時代ですし、逆に考えればなんとかなる時代でもあるんですよ。今って、一個人がめちゃくちゃ抜きん出てなくても、色々なものをあわせて総合力で戦えばけっこうシーンに食い込めると思うんです。僕はプレイヤーとして超一流でもないし、プロデューサーや作曲家、アレンジャーとしてもまだまだだけど、それぞれ個ではなく、組み合わせることによって己の武器を作って戦うという方法をとっていて。多分ですけど、CDバブルの時代にこの戦い方をしても食い込めなかったと思うんですけど、今は色々考えればできるんですよね。

——たしかに、今は選択肢もツールも沢山ありますよね。

井上:僕もミーハーなところがないと言ったら嘘になるし、メジャーから声がかかって、たくさんの予算と色んなタイアップがついて、ロケバスで移動してデカい会場でやるみたいなことに憧れなかったわけじゃないですけど、なんか今は自分のやり方で楽しくやれてますね。

根津:私も音楽活動に関して、showmoreにおいては前ほど絶望感はないというか。むしろ希望の方が多い気がします。

 

再認識した楽曲が持つチカラ

——ある程度キャリアを重ねられて、やはり様々なことを経験されてきた?

井上:活動していく中で、レーベルやマネジメントとか声をかけてもらうこともあって、色々検討したんですけど、やっぱり外部に関わる人が増えれば増えるほど、自分たちとは違う感覚だったりダサいなと思うことも増えるなって実感して。過度に自分たちをデコレーションしたり、斜に構える必要はないと思うんですけど、もう価値観の合わない人とはやりたくないなと思って。実際、色んなことも経験したんで、ここまで来たらもう自分たちでやれるとこまでやってやろうじゃんって。別に関わりを拒絶してる訳じゃないけど、へつらったり阿ったりするのはやめようと。

——しっくりくるパートナーが現れるまでは、当分は今のスタンスで?

根津:そうですね、拘りじゃないですけど、この人とならやりたいねってそれぞれが思える人が現れるまでは。

井上:いい時代だと思います。リリース含め、やろうと思えば自分たちでできてしまうので。自分たちで配信すれば、収益は自分たちにダイレクトに入ってくるし、それを原資にして次の作品にも取り組めるわけで。そういうサイクルを回していって、自分たちの表現を止めないっていうのはすごい重要だなって感じます。

——多くのアーティストの悩みでもある、「自分たちでリリースはできるんだけど、プロモーションをどうするか」という部分についてはどのように考えていますか?

根津:正直プロモーションに関しては、ちょっと限界を感じてる部分もありますね。

井上:やっぱり自分たちでもできる部分と、そうじゃない部分があるんで。特にラジオや大規模なフェス、イベントに対しては、少し手伝ってくれる人がいたら多分刺せるものもあると思うし。例えば、「circus」はYouTubeで260万近く(2019年6月10日時点)再生されてて嬉しくもあるんですけど、そこからの広がりの施策みたいのはできてないんで、ちょっともったいないなとも思ってます。

 
showmore “circus” (Official Music Video)

 
ただ、そういうプロモーションの限界も感じつつ、まずはいい曲を作って届けることの大事さを再認識してます。というのも、今でこそ色々なプレイリストにもピックアップしてもらえてとてもありがたいんですけど、「circus」の時はプレイリストに入れてくださいっていうプロモーションも全然しなくて、全くプレイリストにも入ってなくて。でも、それにも関わらずひたすらYouTubeでもストリーミングでも再生が伸び続けてるんです。だから、良い曲書いたら曲のチカラで、力技でなんか色んなとここじ開けられるんだなとも感じました(笑)。

根津:二人でやってるんで、反応をダイレクトに感じれるんですよね。ファンやリスナーの力をもの凄く感じてて。それは単純に音楽を広めてもらえることだったり。本当に個人ベースで協力してくれる方はたくさんいらっしゃって、自分たちでやってるからこそのつながりや強みを活かしながらやれてるかなとは思いつつ。

——多くの人に聴いてもらうために、サウンドのアプローチとしては時代性を考慮しましたか?

井上:こういうサウンドが求められてるな、時代が合ってきたなっていうのは自分の中で感じてました。「circus」はもともとリード曲でもなんでもなくて、レーベルからも特に興味を持ってもらえなくて。だけど、この曲は絶対ハマるって感じたから、その理想的なビデオも作ろうって二人ですんなり決まって。

根津:すべてが噛み合って、今の結果になったと思うんです。あれですごい希望が持てたというか、ちゃんと聴いてもらえるんだって言う。

——世界で見ても、例えば中国でもジャジーヒップホップのような音楽は、とても支持されていますよね。

井上:そういう流れは把握しつつ、普遍的に心にひっかかるような、根津さんが持ってる時代に左右されない歌詞や言葉の強さ、メロディは壊さないように工夫してますね。

 

自らリリースできることの強み

——リリースに関して、自分たちで楽曲を配信されてみていかがですか?

井上:話が早いですよね、どれだけ再生されてるかも自分で見れるし。数字にそのまま出るんで、自分たちの音楽が言い訳なくどう評価されてるんだろうっていう側面もあって。でも、だからこそ、その評価を素直に受け取れるというか。本当に曲が重要なんだなって感じます。

あとは自分達の出したいタイミングで出せるっていうのは大きいですね。音楽業界の大人の事情だったり、ある意味アーティストがないがしろにされる場面を死ぬほど見てきたんですけど、そういうとこに対しても、「もう自分たちで出すんで」っていう状況を作れてるのは大きな切り札になってると思います。

——そういうアプローチで普通にストリーミングチャートに入るリリースがもはや沢山ありますからね。海外からの反応はいかがですか?

根津:ありがたいことに、アメリカをはじめ、台湾や韓国からもちょっとずつ良いリアクションを頂いていたり。まだ少ないですけど。

井上:海外でやりたいっていうのは普通にありますけど、いったんshowmoreはドメスティック志向ですかね。みんな海外を視野に入れてっていうのは言いますけど、根津さんの表現する歌謡的な歌詞やメロディの部分も大きいんで、まずは国内でたくさん聴いてもらって。

根津:そうですね。私は日本語っていうのを土台に、そこを大事にしているので。

——お二人はそれぞれ日本はもとより、山梨だったり、北海道だったり、ご自身のフッド、地元を大事にされているなと感じます。

井上:すごいHIP HOPな感じ(笑)。

根津:郷土愛は異常に強いかもしれないですね(笑)。

井上:無名な頃からフックアップしてくれた方もいますし、応援しててよかったって思っていただけるようになりたいですよね。応援してくれてる人にお返ししたいというか。

 

アーティストとしての矜持

——今の時代にアップデートされたアーティストマインドをshowmoreはお持ちだと思うのですが、活動を見ていて共感できるアーティストはいますか?

根津:格好いいものを作ってて、活動や音楽への向き合い方という点で尊敬できるのはSIRUPかな。

井上:SIRUPは一番かっこいいなって思う。あと、King Gnuも、Srv.Vinci時代にお客さん二人しかいないような時に対バンしてたんですけど、やっぱいい意味で尖ってて。「俺らかっけえことやってるし、周りがみんな馬鹿なだけですぐ気づくから」みたいな感じで(笑)。そしたら、あっという間に今みたいになって、本当に胸のすく感じっていうか。

——この頃は、音楽に限らず、承認欲求がコントロールできないあまりに道徳的な一線を越えてしまうクリエイターもいたりしますが、お二人は音楽への真摯なスタンスを感じます。

井上:やっぱりアーティストとしても矜持ってあるじゃないですか。例えば、オマージュやサンプリングとパクリは全然違いますしね。オマージュってリスペクト、愛の塊だし。

アーティストっていう意味では、とにかく、純100%アーティストな根津さんのこの才能を広めたいんです。根津さんが音楽で馬鹿みたいに有名になってくれたらもうそれで幸せかな(笑)。

 


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