The Changcuters インタビュー | インドネシアが誇るガレージバンドが語る東南アジアシーン

2015.10.1

 
最近、音楽市場において、アジア、特に東南アジアが盛り上がっていると、あちこちで耳にするようになりました。最近ではタイやシンガポールでツアーを行う日本人アーティストも増えてきています。アーティスト戦略を議論する中でも「東南アジアを攻めよう!」「これから伸びるアジア市場を狙おう」といった言葉が以前にも増して行き交うようになりました。ふとココで気になるのは「じゃあ実際に東南アジアで活躍している現地のアーティストって、どんな人たちなんだろう?」ということです。

そこで今回、インドネシアで大活躍中の5人組ガレージロックバンドThe Changcutersとお話する機会に恵まれました。2008年に Sony Music Indonesia からメジャーデビューして以来、インドネシアの雄として精力的に活動しており、今夏開催された「SUMMER SONIC 2015」への出演も記憶に新しい彼らに話をききました。

 

インドネシアは、情けない男の失恋ソングばかりだった!?

――インドネシアでThe Changcutersファンの人たちは、どんな人が多いんですか? 

若い人たちが多いですね。インドネシアの人たちにとっては、僕たちがやっている音楽ジャンル「ガレージバンド」自体があたらしいからだと思います。まず若くて音楽的関心の高い人たちが「この音楽なんだろう?」と興味を持ってくれる感覚があります。

――The Changcutersのやっている音楽が、インドネシアリスナーにとって新しいということですね。ちなみに男女だと、どちらが多いんですか? 

音楽的に興味をもってくれるのは男の子がほとんどですね。ただ嬉しいことに、僕たちのファッションやビジュアルからファンになってくれる女の子も多いです。

――モテる男たちなんですね(笑)。

ありがとうございます(笑)。ただそのブランディングは、あたらしいファンを増やすために非常に気を使っています。ガレージロックというジャンルを押し出すだけでなく、今までのインドネシアになかった音楽的観点を持ち込むようにしています。

たとえば、インドネシアにおける「ラブソング」は今まで「情けない男の失恋ソング」しかなかったんですよ。別れを切り出された男が「別れたくない!」と女の子に懇願している曲がほとんどだった。僕たちはそこに「なあ、もっと男子たちしっかりしようぜ!」という価値観を持ち込んだんです。

 

 
「大丈夫。おれたちモテるから!」「こんなイケてるおれたちが歌う音楽で、女の子はもう惚れちゃうよ!」って、強気な男の歌詞や世界観を意図的に作っているんです。そうしたら、男の子のファンが付いてきてくれるようになりましたね。

――「マン・ソング」ですね。 

そう!そのとおりです。

 

日本のコンテンツへの印象

――日本のコンテンツにはよく触れる機会がありますか? 

たとえばアニメに関しては、ドラゴンボールやドラえもん、鉄腕アトムやクレヨンしんちゃんなどがインドネシアでもテレビ放送していたので、みんなよく知っていますし、観てますね。ちょっと日本人からすると古いコンテンツかもしれないけど。

――日本のミュージシャンはどうですか?聴いたりしますか? 

もちろん!L’Arc-en-Cielは、すごく聴きます。HYDEやTHE YELLOW MONKEYのファンも多いですね。あとBO NINGENも人気です。

彼らの音楽に影響を受けている人も多いですよ。あとThe 5.6.7.8’sもよく聴きます。映画「キル・ビル」にも出演していた日本人バンドです。

――やはり海外で評価が高いバンドを皆さんご存知なんですね。

では逆に、インドネシアのミュージシャンを誰か知ってますか?

――すみません… あまり知らないです。 

そうですよね(笑)。なので、僕たちの役割として、インドネシアの音楽やミュージシャンたちを日本の皆さんに紹介できるような存在にならなければいけないと思っているんです。

――なるほど。実際にその役割も担う存在として出演した「SUMMER SONIC 2015」は、いかがでしたか? 

素晴らしかったです。想像以上に楽しかった。

――そもそも、どういった経緯での出演が決まったんですか? 

以前、2011年に代々木公園で行われた「インドネシア・フェスティバル」に出演したのですが、その当時知り合ったスタッフから今回縁を頂き「SUMMER SONIC 2015」に出演することが出来ました。

――代々木公園から、サマソニ!すごい躍進ですね。 

そうですね。本当にラッキーでした。あんまりにも大きな舞台ばかり与えてもらったので、今度は日本の小さなライブハウスを回って、地道にライブ活動もしていかなくちゃと思ってます(笑)。

 

「たとえ日本語を理解できなくとも、日本の音楽は素晴らしい」

日本の音楽って、日本語ですよね?それでもインドネシアや世界中に日本の音楽ファンがいる。たとえ日本語を理解していなくても、この音楽が良いと思う。それって素晴らしいことだと思うんです。

――そう思ってくれているのは嬉しいのですが、意外かもしれません。日本人として、日本の音楽が世界中に届いているような感覚はそんなにないです。むしろ、その超えるべきハードルとして、日本語という言語の壁があると思っています。むしろ日本語という言語にコンプレックスがあるから、英語詞を増やしているアーティストもいますよ。

それは僕たちにとっても意外です。政府がアーティストや日本の音楽シーンをサポートしていたりはしないのですか?

――個別のケースによってはあり得ますけど、今のところそんなに大々的というか、大きな支援体制が整っているわけではないですね。 

インドネシアもそこは一緒です。その環境も変えていかなければならない要素のひとつだと思う。たとえば、日本では「海賊版CD」売っていなんですか?

――え?売ってないですよ。 

それが本当にいいです。インドネシアだとほとんどが海賊版で、むしろ正規版CDが少ないぐらいです。

――それは大丈夫なんですか?

全く大丈夫じゃない(笑)。これは国をあげて、しっかりと海賊版コンテンツと戦わなきゃいけないんです。みんなが海賊版を出してしまうので、アーティストは生きていくためにライブばかりに依存してしまう。強行スケジュールでライブをし続けなけば、音楽活動を続けていくことが出来ない。制作の時間も限られてしまう。これは全く健全じゃないですよ。

だから、音楽に限らず日本に海賊版や偽ブランドがないことは本当に素晴らしいと思います。根本にロックンロールな精神をもっていても、みんな優しく、しっかりとオーガナイズされているのが日本人と日本のよいことだと思う。

 

「インドネシア発の世界で活躍するアーティストになりたい」

――最後に、今後の活動について伺わせて下さい。 

大きな目標としては、インドネシア発のミュージシャンとして、インドネシアと世界を繋ぐようなアーティストになりたいです。僕らの次の世代にも、大きく影響を残せるような、そんな存在になりたい。

近い目標としては、また日本に来てライブをすることです。日本人アーティストとコラボレーションしたり、日本各地のお客さんに僕たちのライブを見て欲しいなと思います。


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