大比良瑞希 | 日常に溶けこむ凛とした美しいサウンドを奏でるマルチSSW

2015.12.8


大比良瑞希

バンド解散後、2015年から活動を行なっている東京出身のシンガーソングライター/トラックメイカー大比良瑞希。今年は1st EP 『LIP NOISE』をリリースし、フジロックにも出演を果たしている等、精力的に活動を行なっている。


 
——大比良さんは2015年からソロとして活動を開始されましたが、バンドが解散してからソロでやろうと思ったきっかけというのは?

昨年まで活動していた「ヘウレーカ」というバンドが解散になって、いったん一人で活動しようかなと思ったのがきっかけです。音楽はずっと続けようと思っていたので、ちょうど1年前の今ごろはひとりでアレンジまで出来るようにトラックメイキングに集中したり、エレキギター弾き語りの路上ライブもしてみたり、YouTubeに毎週映像をあげてみたり、色々模索しながらソロになっていった感じです。

——トラックメイクからアレンジまで、ご自身でやられているんですよね。

「ヘウレーカ」での活動時も、バンドメンバーに聴いてもらうための簡単なデモ音源はDTMで作っていましたが、それはアレンジというよりも曲の土台作りでした。でも、一人になってからはバンドサウンド関係なく自由に作り始めるようになって、アレンジとして曲の色づけを自分で全部おこなうのが楽しくなってきたんです。そして2014年の終わりぐらいから、今プロデューサーやチェリストとして一緒に制作してもらっている伊藤修平さんにデモ音源を聴いてもらうようになり、私のトラックを気に入ってくれたのがトラック作りの自信につながりました。

——すべて音楽づくりをご自分でこなすことに関して、目標としているアーティストはいらっしゃいますか?

トラック作りに関して一番影響を受けたのは、Roos Jonkerだと思います。初めて聴いたとき、楽器におけるマルチな才能と、独特なタイム感、ずば抜けたセンスとアカデミックな持ち味のバランスに、打ち抜かれた感触を覚えています。一人でこんな作品がつくれるすごさにだいぶ触発されました。上品かつパワーのしぶとい音と歌声にも憧れますね。

 
あとはBjörkの曲作りにも影響を受けてて、この辺りは、バンド解散後ひとりの時にトラックを完全コピーしたり。歌い方も近づけてみたりして。それはすごく楽しかったです。

——次に楽曲について詳しくお伺いしたいのですが、「Sunday Monday」の歌詞が印象に残りました。たとえば「掴めない水とソーダの間」、「すり抜けて 慣れない」というフレーズなど。大比良さんならではの表現だと思うのですが、歌詞はどのように書かれていますか

昔、学校で『銀河鉄道の夜』をひもとく授業があったんですけど、先生がすごく面白く読み解いていて、意外とこういうところからも影響を受けていると思います。あと、忘れたくないことを書いておくノートがあって、その時限りの自分の感情とか、映画や雑誌や本、Tシャツの文字や、広告などから良いなと思った言葉は書きとめています。

——『銀河鉄道の夜』のエピソードというのは具体的には?

あまり具体的に覚えているわけではないんですけど、歌詞で自分がどういうことを歌いたいかが、『銀河鉄道の夜』を読み解きながらハッと重なる部分があったんですよね。みんなきっと一度は読んだことがあると思うので、私が説明するのもおこがましいのですが。冒頭で、先生から「そのぼんやりと白いものが本当は何か」という問いがあって、眠りから覚めたばかりのジョバンニがそれに答えられないシーンがあるんです。その答えは“天の川”なんだけど、実はそれだけではなくて、生きる上での根源的なとりとめも無い問いと結びついていたりするっていう話があって、如何にも講義っぽいんだけど、歌詞を書くときもその感覚だなと思って。

『銀河鉄道の夜』は、言葉にしきれない「そのぼんやりと白いもの」をずっと追い求めている話で、追いかける過程の全ての言葉や街のあり方が比喩になって、私たちにイマジネーションをかきたててくれるんですよね。現在『銀河鉄道の夜』を思い出して歌詞を書くということは無いですが、きっとルーツとして潜在的に宿っている一つだと思います。

——なるほど。歌詞と同様、サウンドもゆったりとしていて日常に溶けこんでいくような雰囲気がありますよね。曲に関しては、どのようにして生まれるのでしょう?

基本的に、コードやリフからですね。イントロのアレンジを作るのが好きなので、まず良いイントロの世界観が見えると安心してどんどん進みます。それと同時に、弾き語りだけで良い曲になることも意識しながら作っています。

 
——そういった音楽のバックグラウンドとなる、大比良さんが好む音楽の変遷というのは?

中学生の頃はGreen Dayのギターを教えてもらったり。高校生の時は、お店のBGMプレイリストを作る事もきっかけになって、オーガニックサウンドやジャズやブラックミュージックに広がっていきました。好きなミュージシャンはたくさんいますが、私が一番憧れるミュージシャンにFeistがいて、ギターや歌に関しては特にFeistのDNAも多いと思います。色々な音楽を好きになっても、常に帰る場所というか原点になっています。

 
——大比良さんのルーツになった音楽として映画のサントラ曲をあげているのを見かけたことがあったのですが、映画もお好きですか?また映画以外にも、カルチャーでご自身の音楽に影響を与えているものがあったら教えてください。

小学生の頃からドラマのサウンドトラックが好きで、よくサントラだけでも聴いていました。映画のサントラはそこから新しい音楽や聴き方を知ることもあり、日頃の楽しみの一つです。夜中にはよくとしまえんの映画館にいます(笑)。最近は舞台を見に行く機会も増えて、舞台の演出は毎回驚きがあり、そういうところから影響をうけることもあるかもしれないです。

——もうすぐ2015年が終わりますが、今年1年をふりかえってみていかがでしょうか。フジロックにご出演されたり、他にもご自身にとって多くの活動の機会があった年だったかと思いますが。

出会いの1年でしたね。素敵な方達とたくさん知り合うことができました。それも、『LIP NOISE』という私のソロ1作目のEPと、「Sunday Monday」のMVのおかげで、これがきっかけとなって出会いが出会いを生んで、今回のイベントにも出させて頂けるんだなと実感しています。そういう意味で、2015年は本当に、大比良瑞希のソロ第1幕としてすごく有意義でした。

あのフジロックにソロ僅か半年で出演させて頂けたことも、tofubeatsさんはじめコーラスでたくさんの作品やライブに参加させて頂いたことも、ずっと昨年までもがいていたことが毎月叶っていくような1年でした。これが、はじめは伊藤修平さんと二人のノンレーベルで出来たことも、良かったです。そんな環境の変化も通して、私って今年ようやく音楽始めたんだなと思ってしまうくらい、今までの何十倍も濃い音楽自体との向き合い方をした気がします。



(FUJI ROCK FESTIVAL 2015 にて)

(FUJI ROCK FESTIVAL 2015 にて)
 

 
——伊藤修平さんとの出会いが大比良さんの音楽活動に少なからず影響を与えていると思うのですが、チェリストとして活動されている伊藤さんが大比良さんの楽曲をプロデュースするのはどういう経緯だったんですか?

伊藤修平さんとの出会いは、共通の師匠みたいな方がいまして、知り合ったのは3年前ぐらいです。当時その方に、「二人でライブをやったらどうだ?」とメールを頂いて、伊藤さんのチェロと私のアコギ/エレキ弾き語りの初ライブをさせてもらえる事になりました。

私はそれまでチェロという楽器自体近くで見たことも無かったですし、松任谷由実さんはじめ、多くの名だたるミュージシャンの演奏に参加されている方だったので、初回リハーサルは不安だったのですが、 音を出す前に「イメージこんな感じで行ったら絶対格好いい」と言いながら、最初にCat Powerの映像やDiane Birchの音源等をかけてくれて、盛り上がったのを覚えています。その時のライブはとても好評で、自分の過去のライブの中でも、なんというか幻のライブのひとつです。

思えばその日からプロデュースしてくださっていたんだなと思いますが、本格的に一緒に制作するようになったのは、それから1年後に発売した私の1st EP『LIP NOISE』の制作からです。最近では、メロディ、歌詞、アレンジ、奏法、全てにおいてもっと良くなるように、私が作った最初の音源に対して二人で意見交換しながら作り上げています。そんな制作やリハーサルの過程で、耳は今年ずいぶん鍛えられたと思うし、ミュージシャンとしての姿勢や覚悟も変わりました。今や厳しい時もありますが、伊藤マジックはなかなかすごいもので、それはこれからの活動で十分みせていけると思います。

 
——現在進行中の新しいアルバムのレコーディングはいかがですか?

前作『LIP NOISE』に比べて、もっと早い段階で伊藤さんに制作で入ってもらい、様々な意見交換をしながら二人三脚で全曲進めています。伊藤さんは私が作っていった音に対して、私以上にもっと遠くまで世界を観てくれるので、より景色が広がっていく感覚がありますね。また伊藤さんのアカデミックな支えが増すことで、作品をみなさんに安心して届けられるのも大事だなと思っています。まだ言えないですが、このアルバムで新しい試みも目論んでいるので、楽しみにしていただけたら幸いです。そして時代を問わず長く聴いてもらえる作品にしたいです。

——それは楽しみですね。また、現在リリースされているEPはデジタル配信もされていますが、配信をしてみていかがですか?

3年ほど前に恵比寿ガーデンホールで開催されていた音楽イベントに行った時にTuneCoreを知って。そして利用してみたのですが、特に配信などの作業も自分で行うインディペンデントなアーティストにとっては、予想以上に簡単だし、素早くできるんで便利だ思いました。。売り上げ結果がすぐにわかるのも、制作のモチベーションにもつながりますね。『LIP NOISE』を配信登録した直後にTuneCore Japanの方から音源を聴いた連絡をいただいたんですけど、日々たくさんの登録があるはずなのに、音楽の可能性を真剣に考えている人がいるんだって感動しました。

——ありがとうございます。今度のイベントでは、Kai Takahashiさんとも共演されますが、もともとお知り合いということで、おふたりが知り合ったきっかけは?

Kaiくんが「Sunday Monday」のMVを見て曲を気に入ってくれたようで、最初Twitterで連絡をもらいました。私もLUCKY TAPESは知っていて、ラジオや雑誌でも紹介してくれたので、とても嬉しかったです。話しているうちに意外な共通点もあって、もはや今年出会った気がしないくらいです(笑)。Kaiくんをはじめ、LUCKY TAPESのみんなや、同世代のミュージシャンの知り合いが増えるのは刺激的だし嬉しいですね。リハーサルに一緒に参加させてもらうのも新鮮で、たまにバンドが羨ましくなったりもします。

——最後にひとことあれば。

長いインタビュー、最後まで読んでくださってありがとうございます。16日のライブはずっと共演したかったミュージシャンの皆様なので、私自身今からとても楽しみです。私もこの日限りの良いライブをして、皆様に素敵な夜を過ごしてもらえたらと思います。また、とっておきの新曲も持っていくつもりですので、是非お楽しみに!


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この記事の執筆者

TuneCore Japan Official Ambassador

TuneCore Japan 公認 学生アンバサダー

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