WONK インタビュー | 日本のR&Bシーンを牽引する世界水準バンド

2016.10.11

HIATUS KAIYOTEをはじめとして、世界で巻き起こるフューチャーソウル旋風。ついに日本にも、その波を牽引するバンドが現れました。彼らの名は「WONK」。ジャズやソウル、ヒップホップの要素をクロスオーバーに取り入れ、独自の音楽を生み出している、話題沸騰中のエクスペリメンタル・ソウルバンドです。業界関係者からも「世界水準のサウンド」と大絶賛を受ける彼らは、一体どんな音楽を聴いてきて、今後どのような活動を予定しているのでしょう。そして現代の音楽業界に対してどのような考えを抱いているのでしょうか。過去、現在、未来の視点からたっぷりとお話を伺いました。

WONK ― Kento NAGATSUKA(Vo)、Ayatake EZAKI(Key)、Kan INOUE(Ba)Hikaru ARATA(Dr)

 

エクスペリメンタル・ソウル=自由度があってカッコいい音楽

——まず初めに結成経緯についてお聞きしたいのですが、皆さんはどのように知り合ったのでしょうか?

ARATA:僕が最初、みんなを集めたんですけど、それぞれが別のコミュニティーで演奏していて、僕がいいなって思った人をバンドに誘って集まってもらった感じですね。

——知り合った場所というのは、、、?

ARATA:例えばキーボードのAyatake(EZAKI)とは大学のサークルが一緒で、ベースのKanさん(INOUE)とも別のサークルが一緒で。ボーカルのKento(NAGATSUKA)さんに関しては、学校外のバンドで知り合ったんですよ。

INOUE:僕とボーカルの長塚は、たまたま高校時代からずっとバンドをやっていて。ARATAの誘いで集まったら、偶然知り合いがいたみたいな(笑)

——サークル同士の繋がりが多かったようですが、皆さんが音楽的スキルを身につけたのは、サークルでの自主練が基本だったりするのでしょうか?

メンバー全員:基本的にはそうですね。

INOUE:みんな幼い頃から何かしら楽器はやっていたよね。そしてAyatakeはクラシックの音大に通ってた。

——ボーカルのNAGATSUKAさんはずっとボーカルをやられているんですか?
 

NAGATSUKA:そうですね。

——ジャズベースの音楽をやるバンドでハンドボーカルというのは珍しいように感じるのですが、メンバーとのグルーヴを合わせる上で気をつけていることはありますか?

NAGATSUKA:そういうのはあまり意識していなくて。メンバーの中でドラムのARATAがグルーヴに対して凄くストイックなんですけど。ARATAがつくるグルーヴに対して、「俺ならこうするよ」っていう、回答みたいなものをメンバーそれぞれが返していく感じですね。

——ジャムセッションをしているような感じなんですね!

NAGATSUKA:そうですね。音源を作る時は、ちゃんと組み上げているけど、ライブになると、時々で全然違う音楽が生まれてるんですよね。

——自身を「エクスペリメンタル・ソウルバンド」と呼称していますが、そこにはどんな思いが込められているのでしょうか? 初めて名前を拝見した時にはRobert Glasper Experimentを連想したんですが、、、

INOUE:エクスペリメンタル・ソウルって、自称してはいるんですけど、特にその意味にはこだわっていなくて(笑) まぁ元々エクスペリメンタルって実験的っていう意味なので。「そこからいい感じの音楽=自由度があってカッコいい音楽」っていう、それくらいですね。

ARATA:まぁたしかに自由度は高いよね(笑)

INOUE:確かにRobert Glasperって、「Robert Glasper Experiment」だから気持ちは分かりますけどね(笑) 逆にそのイメージを払拭したいね、なんて話もしているんですよね。

EZAKI:でも最近は「フューチャーソウル」っていう言葉が出てきて、あぁ、そっちか!」って思いましたね(笑)

様々な音楽ジャンルに影響を受けた幼少期

——WONKのみなさんの音楽には、フューチャーソウルの流行りに迎合しようとする意図はあるのでしょうか?

INOUE:特に迎合しているわけではないけど、多分いまフューチャーソウル系の楽曲を演奏している人たちが、幼少期に聴いていた曲って、僕らとも似ているんじゃないかと思うんですよね。みんながみんな外国の音楽にアクセスできるようになったのが僕らの世代、90年代生まれからだと思うから。音楽を聴くためのテクノロジーが整っていて、ソウルも聴けるし、民族音楽も聴けるし、電子音楽も聴ける。だからその世代がつくる音楽が似通って、かつ同時期に出てくるっていうのはそこまで不思議なことではない気がします。

EZAKI:いわゆる「YouTube世代」ですよね。

——皆さんが、自由度が高くてカッコいい音楽をつくる上で影響を受けたアーティストってどんな方なんでしょうか?

INOUE:メンバーそれぞれが違う音楽から影響を受けていますね。

——そうなんですね! ではメンバーそれぞれからお話をお聞きしてもいいですか?

ARATA:僕に関しては、ヒップホップがメインですね。ドラムの練習したのは基本的にジャズからなんですけど。ジャズ聴いて、プレイヤーごとのフレーズを真似したりしていました。今もそうやってスキルを磨いています。

——EZAKIさんは、、?

EZAKI:僕以外にも鍵盤弾きってクラシック出身の人が多いと思うんですけど、クラシックを聴きつつ、中学生くらいからジャズにどハマりして。もうずっとジャズばかり聴くっていう日々を送りましたね。

——中学生からって、ジャズに目覚めるのが早いですね(笑)

EZAKI:ビル・エヴァンスに出会って、全てが変わりました。それまでに結構クラシックのピアノに関してはちゃんとやっていて、ジュニアオーケストラにピアニストとして参加もしていたんですけど、だんだん近現代の楽曲になるにつれて解釈が難しいなと思い始めて。

——解釈ですか

EZAKI:で、ちょうどそんな時にジャズと出会ったんですよ。近現代のクラシックの楽曲も、ジャズの視点から解釈すると分かりやすいなって思って。歴史的には逆なんですけどね。それ以来、中学からずっとジャズを掘っていって。

——EZAKIさんの周りに、そうやって音楽を聴いている方っていらっしゃいましたか?

EZAKI:そんなにはいなかったですね。そして、まわりが邦楽のバンドにハマる時期には「いやいや、Electric Miles Bandでしょ!」なんて言っていましたね。完全に中2病ですね。それからというもの、以降はECM系のジャズを中心に聴いていて。僕はヒップホップとかは全然聴いてこなかったんですけど、大学に入って、それこそサークルでARATAと会ってから、「これかっこいいから聴いてみて!」ってオススメのヒップホップを教えてもらって。ジャズと共通項あるなって思うような曲は結構聴くようになりましたね。

——INOUEさんはどうでしょうか?

INOUE:僕は、たぶんメンバーの中で趣味は横に広いですね。小さい頃からジャンルを問わず幅広く聞いていたので、日本の音楽でもTin Pan Alleyと布施明とかのフォークも好きですし、洋楽だとヒップホップからジャズまで。もちろんポップスも大好きで。こだわりがないというと変ですけど、ただカッコいい音楽を聴いていたっていう感じですね。とりわけこのバンドで演奏している雰囲気のものだと、ネオソウルとかヒップホップの影響ってすごくあって。とは言っても、それこそ他の人が邦楽のロックを聴いている時期にElectric Milesを聴いているっていうことはなかったですね(笑)僕が高校の頃はみんなが好きだって言えば、それも聴きつつ、後ろではElectric Milesを聴くっていう、そういう感じですね(笑)

——NAGATSUKAさんはどのような音楽から影響を受けましたか?

NAGATSUKA:僕はずっと幼少期からバイオリンをやっていて。でも別に上手くはないんですけど。中学三年くらいまでやっていて。ずっとバイオリンの曲とか聞いてきたので、ポップスとか全然聞いてなくて。で、高校入ってバンド活動を始めて、KANちゃん(INOUE)と出会ったりして、その時にロックバンドっていうか、洋楽のバンドをやって。その後にメタルの方へ行ったんですけど(笑)

——メタルですか!

NAGATSUKA:そうなんです。僕少しドラムもかじっていて。だからツーバスでドカドカいわせるようなのがすごく好きで。高校の頃はそんな感じだったんですけど、大学に入って、Donny Hathawayあたりのソウルミュージックに出会って、すごいなって思って。で、「歌やれば?」って言われて、ジャズバンドを始めて、今に至るって感じですね 。

“最近だとやっぱり同世代のミュージシャンがいい感じだよね”

 

——作曲をされる際はどなたかが中心になってやっているのですか?

INOUE:曲ごととか、出しているアルバムによっても違うんですけど、今作に限れば、半分以上はドラムのARATAがヒップホップのトラックを原型でつくってきて、みんなでコードを付けたりアレンジしたりしました。残り半分くらいは他のメンバーがそれぞれ持ち寄った曲ですね。

——みなさんが個々に受けている音楽的影響に違いがある場合、作曲において意見が食い違うことはあったりするんですか?

メンバー全員:いや、ないですね。

ARATA:誰が作ったものでも、基本的にメンバーがいい感じに受け取って、解釈してくれるので。もちろん「これは無くね」って場合もあるけど。

EZAKI:食い違って、その後でいい方向に持っていくというか。

——歌詞はどなたが担当されているのでしょうか?

NAGATSUKA:歌詞は僕が書いています。

——英語詩が多いと思うのですが、なにか理由があるのでしょうか

NAGATSUKA:単に海外の音楽の真似をしたいわけではなくて、自分たちがやっている音楽をもっと世界の人に幅広く聞いて欲しいと思っていて。あと僕らのやっている音楽にはやっぱり日本語よりも英語のほうがハマるっていうのはありますね。

——今までお話を伺って、皆さんの音楽的ルーツの基本が海外にあるということがすごく伝わってきたのですが、日本の音楽で影響を受けたものとかってありますか?

INOUE:僕は無数にあるんですけど(笑)でも、その趣味はまったくWONKには出していないし、話してもないですね。

EZAKI:というか日本のアーティストの話になることってまず無いよね。

メンバー全員:無いね。

INOUE:でも最近僕らの同世代ではやっぱアツい奴らがいるなっていうのはすごいあって。

ARATA:常田大希とyahyelは間違いないね。


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メンバー全員:そうだね。最近だとやっぱり同世代がいい感じだよね。

——9月14日に発売された1stアルバム「Sphere」でも同世代のアーティストと共演されていますよね! そういった方々とはどのように知り合ったのでしょうか?

EZAKI:ドラマーの石若駿は僕の大学の同級生だったんですよ。あと安藤康平さんもジャズのシーンで活躍されている方で。

ARATA:ライブでも一緒に演奏したことあるしね。ラッパーはほぼ全員僕の知り合いで。みんな別の音楽コミュニティーで活動していたりして、人づてで知り合った感じですね。

——ライブでの共演でも同世代の方が多いと思うのですが、同世代同士でリスペクトしていたりするのでしょうか?

INOUE:別に特別意識をしているわけではなくて、年齢関係なく、いいミュージシャンとは一緒にやりたいと思っていて。でもやっぱり同世代にいいミュージシャンは多いと思います。とりわけ今回のアルバムのコンセプトに見合ったアーティストっていうのは同世代が多かったかなと思いますね。

“このバンド、実は究極のDIYバンドで(笑)”

——今までは基本ライブをメインに活動されていたんですか?

EZAKI:いや、制作ですね。かなりの時間をかけていますね。

——では今作は満を持して、という感じなんですね!

INOUE:そうだね。満を持したよね(笑)

——9月9日のNEW SWEETIE Vol4を見に行かせていただいて。かなりCDの音源と違った印象を受けました。

NAGATSUKA:そうですね(笑)

——ライブを意識してCDを作られたりすることはありますか?

INOUE:それは全くしていないですね。

EZAKI:CDはCDでちゃんと聴けるっていうのが大事かなと思っていて、逆にライブでは生楽器をしっかり演奏できるっていう機会をちゃんと活かしたいと思っています。ジャズのスタイルで生楽器で演奏することの強みって、やっぱり会話しているように演奏ができることだと思うんですよね。音源をそのまま再現するようなライブも多いけど、僕らの場合は、それだけで会場は沸かせられないなって思う。そこはみんな、ジャズというインプロヴィゼーション重視の音楽を一度通ってきているから共通して感じていることだと思います。
 

——今回のアルバムは楽曲以外に、ミックスにも賞賛の声が上がっていますが、どなたが担当されているんですか?

INOUE:僕が担当しています。そういったお声をいただけているのは本当にありがたいです。

EZAKI:このバンド、実は究極のDIYバンドで。ほとんどのことを全部自分たちでやってるんですよね(笑)デザインやウェブ制作は僕が担当して。レコーディングからミキシング、マスタリングまで、音周りはKANさん(INOUE)が担当していて。

——そうなんですね! そのような技術というのはどのように身につけられたのですか?

INOUE:自力でというか、僕が普段そういう関係の仕事をしていて。なんでそこを活かして感じですね。

——ミックスの際に、他のアーティストのバランスを参考にされたりすることはあるんですか?

INOUE:そうですね。全体の出音感はメジャーシーンに負けたくないなっていうのはあって(笑)。インディーズって音でインディーズ感が出てしまうことってあると思うんですけど、とりわけ日本だとその傾向が顕著だなと思っていて。だからそうならないためにも、海外の音源を参考にすることはよくありますね。けど今回のアルバムに関して言えば、明確にリファレンスにしたっていうアーティストはいないかな。

——過去の経験や聞いてきた音楽から導き出されているんですね。

INOUE:そうですね。あとはメンバーの意見も参考にしたりして。

EZAKI:ARATAは日本のシーンのドラムの音が嫌いだっていうしね(笑)

ARATA:大っ嫌いなんですよ(笑) 日本のスネアはポスポスしちゃってるんだよね(笑)

EZAKI:本当に許せないらしくて(笑)。だから細かいところではリファレンスあるかもね。「このアーティストみたいな音じゃなきゃダメなんだよ」っていう感じで。

——アルバムのデザインのクレジットにEZAKIさんの名前があったんですが、、、

EZAKI:今回のジャケットのアートワーク自体はLAのChadっていうアーティストが描いてくれていて。一応僕もKANさん(INOUE)と同じく仕事でもデザイン系のことをやっていたりするので、グラフィックデザインだったりウェブだったりは僕が担当しています。

——そうなんですね! 音楽以外に、そういった美術の分野にも昔から関心があったのですか?

EZAKI:そうですね。あとは映像もかじってたりとか。映像もウェブもグラフィックデザインも中学高校の頃から並行してやっていました。
日本全国津々浦々回るよりも、先に海外に行こうって思っています

——アーティスティックなアートワークや歌詞を英語で書き上げている、という点で全体の雰囲気を海外に寄せているのは、意図されているのでしょうか?

EZAKI:完全に意図しています。「日本人にしかできない音楽」が「日本でしか受け入れられない音楽」とイコールになってはダメだなと思っていて。歌詞はさておき、音楽の本質とさほど関係ない部分はインターナショナルに受け入れられるものを意識しています。

——実際に海外を見据えた活動は予定されていますか?

EZAKI:そうですね。来年、ツアーでヨーロッパに行こうっていう話はあって。日本全国津々浦々回るよりも、先に海外に行こうって思っています。

——ヨーロッパを選ばれた決め手は何かあるのでしょうか?

INOUE:いろいろなつながりで向こうに知り合いがいるんですよね。

EZAKI:それに、それこそTuneCoreのサービスだと、どこの国の人がどれだけ聞いてくれてるのかっていうデータが分かるようになってるじゃないですか。あれを見ても、アメリカに次いでイギリス、フランスが多いんですよね。メッセージを頂くこともあって。

——リスナーとして、音楽の現場がR&B不遇の時代を終えて、再びクラブやライブハウスに戻ってきているような印象を受けるのですが、実際にプレーしていて、そういった変化を感じたりすることはありますか?

INOUE:そうですね。それこそWONKがレギュラーで出演させてもらってるNEW SWEETIEとかは、日本も捨てたもんじゃないなって思うくらい、毎回めちゃめちゃいいアーティストが出てて。そういう意味で言えば、現場でいいミュージシャンがいると感じることは多いかもしれませんね。

——将来目指しているゴールや目標にしているアーティストはいらっしゃいますか?

ARATA:目標とかは特にないですけど、もっといろいろな人に自分たちの音楽を聴いてもらいたいっていうのはあります。あともっと海外のアーティストと一緒に作品制作したいと思っていて。ミュージシャンだったりラッパーだったり。

EZAKI:長く活動していきたいなっていうのもありますね。よく年齢不詳とか言われるんですけど、あえて「若さ」をみせていないところがあって。っていうのも若いからいいよねっていう見られ方をされたくなくて。若さとは関係ないところで評価されて、長く続けられるバンドになりたいですね。SNSを通じて「30超えてると思ってた」とかよく言われるんですけど、まだみんな20代なんで(笑)

海外音楽市場への進出は、偶然ではなく必然。

——昨今、音楽業界の衰退が騒がれていますが、そうした日本の現在の音楽シーンについて、実際にいま活動されているアーティストとして何か思うことはありますか?

NAGATSUKA:俺らはまだ活動して、そこまで日が経っているわけではないから、もちろんデータだけ見ればそう思わないことはないけど、活動の中で実感するっていうことはまだないですね。

EZAKI:間違いなく、98年の最盛期と比べれば市場規模も半分になっているし、そういった意味では衰退しているかもしれないですね。一方でライブエンタテインメント事業は伸びてますよね。それに、音楽へのアクセスが簡単になっているので、人々が音楽と接している時間は増えているんじゃないかなと思います。よ産業構造が複雑になってマネタイズの仕方は難しくなったけど、他の分野、他の国とのコラボレーションの可能性は、最盛期よりもずっと開けてきていると思います。個人単位でできることも増えて、大きなレーベルに頼ることなく、海外を向いて活動できる環境は整っているんじゃないかな。

INOUE:市場規模は小さくなっているかもしれないけど、リスナーやファンが減っている、という気はしないですね。潜在的に音楽を聴いてる人は減っていないのかなと思っていて。だから作り手が、音楽をどうお金に結びつけるのかっていう部分が重要だと思っていて。よく僕らの間で話に出るのは「音楽だけやっていても仕方ないよね」ってことで、著作権ビジネスにも限界がきてるよなと。音楽単体を売ることも重要なんですけど、それに付随するイメージの売り方を考えることも大切で。たとえば海外だったらヒップホップってファッションとのコラボレーションでイメージを付随させて売るっていうことがよく行われていて。まぁヘッドホンのBeatsだってそうですけど、そういうやり方は全然悪いことじゃないなって思っていて。突き詰めれば、アイドルグループがCDに握手券を封入している商法だって、ヒップホップ的なあり方なのかなと思うんですよね。なんでその辺を上手にマネタイズする施策を考えられるかっていうことが今一番重要かなと思っています。

EZAKI:日本に限って言えば、人口はこれから減っていく見方が強いし、ほぼ確実に市場規模は縮小していくわけで。ただ、ちょっと南の方を見てみれば、インドネシアとかシンガポールとか、これから文化的にも台頭してくるであろう国があるわけで。最近東南アジアに行ってきたんですけど、大々的にジャズフェスが開催されていたり、ジャズのレコードを取り扱うショップが多々あったりと、ジャズやブラックミュージックのカルチャーが流行ってきているように感じて。そういう、これから伸びてくるような市場にはチャンスがたくさんありそうだなと思っています。

——音楽業界や自身の音楽性についてすごく分析されているな、という印象を受けます!

ARATA:そもそも、誰も音楽だけで食っていこうとは思っていないしね。

INOUE:だからいいもの作って、それを聞いてくれる人が増えればいいなっていうところを僕らは取っ掛かりにしたいなと思っていて。もちろんCDが売れれば嬉しいですけど、それよりもまず僕らの音楽を聴いていただいて。それをきっかけに、アパレルに進出するなど他のチャネルを増やせればって感じですね。

EZAKI:最終的には音に限らず、ある価値観を提示するグループにならなきゃいけないなっていうのはありますね。

——最後にTuneCore Japanのサービスを使ってみての感想は何かありますか?

EZAKI:データ分析の結果をちゃんと開示してくれるのはすごくありがたいと思っています。それに、配信の利用料が払いきりなのもすごく良心的だなと思います。それにSpotifyさんとも一緒に事業展開されているようなので、これからが楽しみですね。

——ちなみにTuneCoreを知られたきっかけとは?

EZAKI:これからの音楽業界どうなっていくんだろう、と思って、昔とあるメジャーのレーベルでインターンをしていて。そのレーベルは独自の音楽配信サービスを展開していたんですけど、そのサービスがあまりに酷くって。 ユーザビリティも悪かったし、そもそも音質が酷かった。 しかもその頃にはSpotifyとかも出てきてたし、元Yahoo!Musicのイアン・ロジャースがBeats Music(現Apple Music)を手がけたりしていて、海外ではおもしろい動きがあるなって思っていたんです。そもそも20年くらい前にはすでにNapstarのようなサービスが登場していて、音楽ビジネスはこのままじゃ立ち行かなくなるって予見されてましたけどね。インターンを通して、大きな会社でも、いつまでもただCDを売ればいいと思ってる人が多いんだな、と思っていた矢先に、TuneCore Japanって会社を見つけて。世界の流れを読んでいるサービスに感動したのを覚えています。だからそれ以来、バンドで音を流す機会があれば絶対使おうと思っていたんですよね。

——ありがとうございました。今後も世界を視野に入れた活動に期待しています


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この記事の執筆者

Shin Takahashi