宮本菜津子(MASS OF THE FERMENTING DREGS) インタビュー |「ずっと大切にしてきているのは、とにかく自分の気持ちに従うこと」
メンバーチェンジや約3年の活動停止期間を経て、2018年7月4日に8年振りとなる4枚目のアルバム『No New World』をリリースするMASS OF THE FERMENTING DREGS。その本格的な活動再開を待ち望んだ2000年代邦楽ロックリスナーも多くいたことでしょう。今回はそんなMASS OF THE FERMENTING DREGSのフロントマンであり、ソロ活動や音楽以外の分野でも活躍する宮本菜津子さんにお話をうかがいました。
先人の影響は、自分自身の強度が増す
——改めてで恐縮なのですが、お名前と今までの活動について教えてください。
宮本菜津子です。MASS OF THE FERMENTING DREGSというロックバンドでVo&Baをやっていて、宮本菜津子でソロとしても弾き語りやグッズ制作、映像作りなどいろいろな創作活動をしています。MASS OF THE FERMENTING DREGSは、地元の神戸で2002年に結成しました。当初はガールズバンドでしたが、いま現在はメンズ2人とわたしの3人編成で、世界目指してやってます。
——ロックバンドを始められたきっかけがhideさんだったおうかがいしたことがあるのですが、その他に影響を受けたアーティストはいらっしゃいますか?
これまで出会ってきたかっこいい人たちには、もれなく影響を受けていると思います。共演したミュージシャンや役者さん、共に作品づくりをした作家さんなど。また、hideさんに出会って以降、10代の多感なころによく聴いていたのは、MARILYN MANSON、Nine Inch Nails、KOЯN、The Smashing Pumpkins、Foo Fighters、NIRVANA、OBLIVION DUST、HOLE、Cocco、椎名林檎 などでしたね。
——多岐に渡りますね。そういった影響はどのような形で作品に投影されていると感じますか?
鼓舞されるといいますか、そのかっこいい方々の姿勢にどえらい刺激を受けることがほとんどなので、作品そのものへの影響というよりは、自分自身の強度が増すというか、身が引き締まるといったようなかんじです。
ソロでは「怖い!」と思うことをあえてやった
——MASS OF THE FERMENTING DREGSの活動停止時に前向きなコメントをなさっていたことが印象的でしたが、実際に活動停止中はどのように過ごされていましたか?
MASS OF THE FERMENTING DREGSとしてではなく、「宮本菜津子個人として何が出来るんだろう?」と、色んなことにチャレンジしていました。まずは、できるだけ多く、すばやく、たったひとりで曲を書ききることを目標にしていた記憶がありますね。その後は、アコギを持ったり、エレキギターを持ったり、マイクだけ持って楽器は人に任せてみたり。。とにかく、やったことのないこと「怖い!」と思うことを敢えて率先してやっていました。
——様々なことに挑戦、開拓していく姿、とても素敵に感じます。お一人で曲を書くときはどのように曲作りを行っているのでしょうか?
アコギを弾きながら歌を作るというのがほとんどです。たまにピアノで作ることもありますが、世に出せたのはほんの数曲で。まだ手元にある曲も、ゆくゆくは世に出したいなと思っています。
大切にしてきていることは、「とにかく自分の気持ちに従うこと!」
——宮本さんの新曲を聴けるのが改めて楽しみです。3年という活動停止期間を経た中で、変わってきたことと、ずっと変えずに大切にしていることは何ですか?
活動停止前といま現在をくらべて、明らかに変わったなと思うのは「大方のことは受け入れられるようになってきた」という点かなと思います。「みんな違って、みんないい」というか。とはいえ、相変わらず胸糞悪いことはありますし、人並みにムカつく日々ではあります(笑)。そして、ずっと大切にしてきていることは、「とにかく自分の気持ちに従うこと!」。これは、バンドとしても、いち人間としてもですね。
——バンドとは違って、ソロだからこそ可能なことはありますか?
完全に自分のペースで物作りができることですね。結果、ものすごくパーソナルな物の描き方ができますし、それがうまくいったときは、バンドとはまた違った感動があるなと思います。
——特にパーソナルな描き方が上手くいったなと思う楽曲は例えば?
ソロアルバムの『なまみ』は、全曲でそれができたと思います。どれも思いいれがあるため、選ぶのが難しいところなのですが「EIM -everyday is monday-」や「Re:たんたんたん」は、バンドではたどり着けなかった曲なんじゃないかなと思います。また、NUMBER GIRLやQomolangma Tomatoの楽曲をカバーさせていただいたことも、ソロならではの表現方法だなと思います。
——10年以上も音楽シーンで活躍されてきて、変化等は感じますか?
いまも昔も、わたし自身が感じることは大して変わらないなと思います。ただ、単純に「これが世代の違いか」と、価値観の相違を感じる場面は多々ありますし、なんにせよわたしは「自分がこれだと思えることをやってくよ!」といったあんばいですね。
——宮本さんが自分のスタイルを信じ貫き続けることができる理由は、どこにあるのでしょうか?
やはり、15歳の頃にhideという人から受けた衝撃とドキドキが自分の柱として存在していることだと思います。音楽という概念をこえて、自分をすくいあげてくれるような感覚というか。その感触がいまでもわたしを助けてくれているように思います。
ストリーミングを愛用
——ご自身が音源を配信するにあたっても聴くにおいてもストリーミングサービスを愛用なさっているとのことですが、ストリーミングで出会ったアーティストで印象的な方はいらっしゃいましたか?
ここ最近だと、小袋成彬さんの『分離派の夏』がとても印象的でした。はじめは何とも言えぬ感触をおぼえたのですが、気が付いたら引きずりこまれていて。いまじゃほぼ毎日聴いています。また、Spotify Radioの自動選曲で出会ったアーティストでいうとBig Thief、曲でいうとConnie Constanceの「Let Go」という曲がとても印象的でした。
——ストリーミングを利用しはじめてから、音楽の聴き方は変わりましたか?
とても変わりました。移動中はもちろん、料理をするときやパソコン仕事をするときなど、そのときの気分で「あの曲聴きたいな!」、「いまの気分にハマる曲ないかな~」と、手軽にスマホやPCからパッと再生ができて、以前より生活の中に音楽がある時間が増えたように思います。
新作に込めた想い
——今回リリースされる4thアルバム『No New World』について、制作をはじめたのいつ頃からでしょうか?
バンド再始動後、自然とカタチになっていったものから録音を行い、結果それがアルバムになったということもあるんで、そう思うと、制作は再始動した日からはじまっていたのかなと思います。また、録音に関してはライブでの演奏をかさねて、曲への理解を深めてから記録したいという理由から、2017年と4月と8月、11月と3回に分けておこないました。
——集中した制作活動というよりはライブをこなす中で制作を行っていたんですね。曲をお聴きして『No New World』というタイトルの一方で、MASS OF THE FERMENTING DREGSが描く新しい世界も垣間見たような気がしたのですが、アルバムのコンセプトというのは?
毎回そうなのですが、これといったコンセプトはなくて。ただ、わたしがそのとき感じている世界の空気や雰囲気が音楽になっていることはたしかだと思います。ちなみに、タイトルチューン「No New World」はもともとタイトルもなく、収録する予定もなかった曲なんです。他の曲の録音が進むにつれて、「このままではありものを寄せ集めただけになってしまうな、もっといま現在の空気をアルバムに吹き込まなければ!」という気持ちになり、ソロでやろうかと思っていたあの曲を2人に聴いてもらって。そこから2人にもアイデアをもらい、結果ギター以外は打ち込みというマスドレにとっては新しい形での曲作りをすることができたし、またアルバムのキーとなる曲にもなりました。
——先行リリースのツアーもひかえていますが、それに対し意識していることは?
新作を待ち続けてくれたみなさんには、完成した作品をいちはやく届けたいと思い企画した2本です。また、わたしたちはライブを観ていただいてやっと説明がつくバンドだと思っているので、ふだんライブハウスに行かないという人も、一度試しに遊びに来てみてほしいなと思います。きっと、体験したことのない気持ちの高揚を味わえるはずなので。わたしたちはいつでもお待ちしています。何とぞ、よろしくお願いいたします。
——最後に、これからの活動についての展望をお願いします。
地元神戸で、暮らしとともに育てていけるような、定期的にやれる自主企画をやりたいなと考えています。バンドとしてではなく、個人として。
あとは、まずは、この4thアルバム「No New World」を世に送り出して、それをどれだけの人に届けられるかだなと思っています。このアルバムがどれだけの人に響くのか、はたまた微塵も響かないのか、そういった空気や反応はわたしにとって大きな気付きになるなと確信しているので。配信によって、世界中いろんな国の方たちの耳にも届くことを願っています。きっと、世界中、愛でてくれる人たちはたくさんいるはず。これを機に、音楽としても、 MASS OF THE FERMENTING DREGSという存在そのものとしても、宮本菜津子個人としても、どんどん開けていきたいですね。
MASS OF THE FERMENTING DREGS
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