将作 インタビュー 農民芸術的境地にたどり着いた元パンクスが鳴らすオーガニックなサウンド
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高円寺でパンクバンドをやっていたバンドマンが世界を旅し、新しい価値観に気付く。その後、制作した音楽をデジタルで配信して、旅の途中で出会った世界の友達にも届け、やがて宮沢賢治の言う『農民芸術』的創作活動を目指すようになる。今の時代だからこそ可能なちょっと素敵なこのストーリー、そんな世界を体現しているシンガーソングライター・将作さんにお話を伺いました。
ルーツはパンク
——今はシンガーソングライターとして活動されていますが、プロフィールを拝見すると14歳でパンクと出会ったと。そのきっかけは?
多分、ドリアン助川さんの深夜ラジオのOPで流れてたセックス・ピストルズの「アナーキー・イン・ザ・U.K.」がパンクとの出会いだったと思います。あと俺にとってもう一つパンクへの入り口は、詩人の三代目魚武濱田成夫さんですね。その頃はどっちかというとUKのパンクを聴いてました。俺の場合は友達もへんなやつばっかりでしたし、その時にだいぶ誤解したんでしょうね。でもその時の誤解が今になってみれば多分良かったんだろうなと思います。
——楽器もその頃始められたんですか?
その三代目魚武濱田成夫さんの本がたまたま学校に置いてあって、その中に「人生に必要なのは努力じゃねぇ、ギターだ!」っていう詩があって。俺埼玉の川口出身なんですけど、それを読んでもう次の日に近くのジャスコにギターを買いに行ったっすね。友達と、「行こうぜ!」つって、そんなノリで(笑)。
——ではやっぱりルーツはパンクなんですね。
そうですね。THE BLUE HEARTSとかそのあたりも。あと普通にJ-POPも聴いてました。
——バンドはどのようなきっかけで始めたんですか。
17歳の時にTHEE MICHELLE GUN ELEPHANTとかTHE BLUE HEARTSとかのコピーバンドをはじめて。その前からも自分で曲は作っていて、アコースティックギターで路上ライブしていました。それで、高二くらいから「野良犬」っていう4人組のパンクバンドを始めて、地元の小学校からの友達とかとやってました。
——どの辺りでライブしてたんですか?
新宿のヘッドパワーやURGA、高円寺GEARとかでよくやってました。俺はギターボーカルで。
——どういう音楽性だったんですか?
アナーキーとRANCIDを合体させたようなバンドでした。対バンはBAD ATTACKやFIREBIRDGASSとか、高円寺の界隈のバンドが多くてすげー楽しかったっすね。その頃はアンダーグラウンドの音楽シーンがやっぱりかっこいいなと思ってて、日本脳炎やブルースビンボーズ、JAGATARAとかその辺にハマってました。
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世界を旅して開いた新しい音楽の箱
——解散して、そこから一人での活動になったんですか?
そうですね。解散して一人でやってたんですけど、行き詰まっちゃったんですよね。なので旅をしようと思って、一人で一年間海外へ旅に出たんです。最初はアコギを持ってフィリピンに行って、学生に混じって三ヶ月間、現地の語学学校に通って。レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンやNOFXが好きなヤツとかもいて、歌も上手いし分かり会える友達もできて、そいつが俺と同じ入れ墨を胸に彫りに行ったりして。でも、そいつらが俺に真面目すぎだって怒るわけですよ。”Too much serious”だって。そうやって言われて俺の今までの価値観がひっくり返ったというか、音楽のもう一つの新しい箱が開いた気がします。
——フィリピンの次はどちらに行かれたんですか?
そのあとはタイに行って、店先の路上でブルースのセッションに混ざったりして、そういう音楽で遊ぶっていうのも身をもって感じたり。それから、ラオスとインド、ペルー、NY、最後にジャマイカに行って帰ってきました。
——帰ってきてから、またすぐ音楽活動始めたんですか?
一旦はバンドもやったんですけど、やっぱり一人でやろうと思って。友達のSTOCKMANっていうバンドにお願いしてアルバムを作ったりして。
——将作さんからはまっすぐな熱さを感じつつ、楽曲からはシンプルかつ繊細な印象を受けます。
メロディーはもう自分の中から自然に出てくるだけで、特に意識してるってことはないかもしれないです。あとは最近はDTMもやってて、これまではバンド一色だったんですけど、そういう新しい試みもしています。
——ストリーミングで配信しようと思ったきかっけは?
インディペンデントで世界に配信できるって、それこそフィリピンで出会った友達にも聴いてもらえるし、やっぱすごいなと思って。自分で好きなようにできるし。ある意味でパンクなサービスじゃないですか。そういう感じが自分に合ってるっすね。これから色んなことが個人でも発信できていく中で、俺もあったかいものが作れればいいなと思ってます。
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「コジコジ」みたいなパンクさ
——1stアルバム『Time』のコンセプトというのは?
あれはバンドを解散してからの足跡みたいな内容の作品で。人生っていうのは時間だと思ってるんで、バンドを解散してから過ごしてきた時間=人生を曲にしたのをまとめました。
——歌詞はどういうところからインスピレーションを得たりしますか?伝えたいメッセージなどは?
ジョー・ストラマー、ボブ・マーリー、ジョン・レノン、ボブ・ディラン、音楽以外だと、チェ・ゲバラや坂本龍馬が大好きで、そういう人に影響を受けたメッセージ性はあるかもしれないです。パンクってエネルギーの爆発を出しやすいじゃないですか。俺は喜怒哀楽が激しすぎて、周りも僕の扱いに困ってたんですけど、音楽で爆発的に表現できることで落ち着いたし、自分自身も周りも救われたんでしょうね。
——パンクの初期衝動というのは今でも続いている?
パンクバンドでやってきたものといまの音楽は違うので、初期衝動はもうないと思いますけど、パンクが持つエナジーっていうのはこれから生きていく上でも指針にはなっています。
——弾き語りだけどマインドとしてはパンクだと。
「コジコジ」ってあるじゃないですか。ああいうパンクさが最近はしっくりきますね。叫ぶ訳でもなくパンクなこと優しく言うすごさというか。これまでバンドでは叫んでたし攻撃的な面を持って生きてきたんですけど、最近になってコジコジ的なパンクさに寄ってきました。
——次の作品は現在制作中ですか?
ぼちぼちですね。配信だと気楽に出せますし。完全弾き語りの素朴な音楽と、DTMで作っていく音楽の両方のアプローチで作ってます。
——ジャンルにこだわりはありますか?
フリースタイルも全然やりますし、大事なのはエネルギーをどう表現するかってことだけだと思うんで、歌さえあればジャンルは特に気にしていません。
農業と音楽
——また海外に行って色んな音楽体験をしようと思ったりしますか?
これからは、音楽もやりつつ農業をはじめようと思って。最近、人間が生きるって何かなと、世界を旅してる時もずっと考えていたんですが。結果的に単純に野菜を作ろうと思いました。「生きていく=食物を作る」って、宮沢賢治が「職業芸術家は一度亡びねばならぬ」と言ってたのがやっと分かってきた気がして。例えばサーフィンと音楽ってくっつくじゃないですか。それと同じで、土と音楽はくっつくべきだと思うんです。
あと、虫が好きっていうのもありますね。俺自身が主観で生きてて、自分のこと客観視できないんですけど、虫を見てると、虫の輪には入れないんで、客観視できるじゃないですか。それを眺めてると人間と変わらなかったりして、なんなら俺に似てるなって思う事もあって。少し変わった視点かもしれないですけど。カマキリもすごいんですよ!バイクに乗ろうと思ったら、ハンドルのとこにカマキリがいて。こんなにでかい人間の俺にファイティングポーズとって向かってこようとするし。
——やっぱりアーティストならではの視点をお持ちなんだと思います。
いや、わからないですけど。うーん、スズムシってめっちゃ綺麗に鳴くじゃないですか。アコギの音もめっちゃ綺麗じゃないですか。そういうのが最近は好きで、そういう感じです(笑)。なんか俺でもこの世界で生きていけるかなって思うんですよね。
——きっと将作さんが作る音楽に救われてる人もいると思いますよ。
もしそういう人がいたら、「よお!」ってフランクな感じで、親しみを持って声をかけてもらいたいな。
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