Aiobahnインタビュー 人気ゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』の楽曲「INTERNET OVERDOSE」&「INTERNET YAMERO」で注目を浴びるプロデューサーのカオスな頭の中

インタビュー
2023.5.19
Aiobahnインタビュー 人気ゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』の楽曲「INTERNET OVERDOSE」&「INTERNET YAMERO」で注目を浴びるプロデューサーのカオスな頭の中のサムネイル画像

2022年1月に発売され、ネット配信者である”病み系”少女を育成するという刺激的な内容が大きな反響を呼んだADVゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』。トラックメイカー/プロデューサー・Aiobahnが手掛けた主題歌「INTERNET OVERDOSE」およびサウンドトラックも話題となった。2023年3月には、同作からの第2弾楽曲として「INTERNET YAMERO」をリリース。Spotifyの国内バイラルチャートにて4月20日付で1位を獲得するなど、現在日本で最もバズっている楽曲の一つとなっている。大きな飛躍を果たしたAiobahnに、制作の背景や今後の活動について聞いた。

 
取材:Shuntaro Oka
文 : サイトウマサヒロ
企画・構成:Jiro Honda
 
 
インターネット&特撮生まれ、EDM育ち

——最初に音楽に興味を持ったきっかけを教えてください。

Swedish House MafiaやAviciiなどの、海外のダンスミュージックがルーツです。それまでは音楽を聴くという行為自体に全然興味がなかったんですが、中学生の時に彼らの楽曲を聴いて衝撃を受けました。それから色々なアーティストを聴くようになり、自分でも音楽制作をするようになりました。

ただ、エレクトロなミュージシャンや、そういった音楽に理解のある人が周囲には全くいなくて。だから、音楽を始めた頃から現在までずっと一人というか。ただその代わりに僕は、音楽活動を始める以前の小学生の時から、外にはあまり出ずにずっとインターネットをやっていたので、ネット上の友達が多いんです。2018年以降Monstercat(カナダの人気EDMレーベル)からリリースができているのも、ネットで出会った知り合いが先にMonstercatからリリースしていたのがきっかけだったりします。

——サブカルシーンとの繋がりもAiobahnさんを語る上で欠かせないと思います。影響を受けたアニメやゲームはありますか?

好きな作品は多すぎて、語り切れないんですけど……ルーツとしては、実はアニメではなく特撮なんです。ウルトラマンとか、仮面ライダーとか。それと、音楽的にはVisual Arts/Keyをはじめとするギャルゲーの音楽に影響を受けています。

 
 
楽曲制作のポイントは「考えすぎない」

——楽曲を制作する上で、心がけているポイントなどはありますか?

最近は、ジャンル的な縛りや自分に課すルールは特になく、とにかく作るという感じなんですけど、強いて言うならば「考えすぎない」ですね。こだわりが増えれば増えるほど、前に進めなくなると思うので。考えすぎない、あまりこだわらない、という気持ちで制作しています。

——「こだわらない」という点に関しては、Aiobahnさんの楽曲には幅広いジャンルのサウンドが取り入れられているのが印象的です。どういったものからインスピレーションを得ているのでしょうか?

いつも同じジャンルや同じアーティストから影響を受けているわけではなく、タイミングによってマイブームが変わるんですよね。例えば、一番最近リリースした楽曲「宙でおやすみ」は、イギリスのアンダーグラウンドな音楽からインスピレーションを受けています。その時に「これいいな」と思っているものを自分のやり方で作り上げる。そういうイメージですね。音楽以外からきっかけを掴むこともなくはないです。今まで見たり触れたりした色々なものが頭の中に積もって、その結果アイデアが生まれることもあるかなと。

 
——制作はどういったタイミングで行いますか? 毎日の作業として行っているのでしょうか、それとも気分が乗った時に進めるのでしょうか?

締め切りのある仕事を除くと、メロディやコードが思いついたらできるだけその場でMIDIのトラックだけでも打ち込むようにしていて、そうすると結果的には毎日制作を行っていますね。ただ、やっぱりたまに作業が全く進められなくなることがあるので、そうなった時は作業からしばらく離れます。無理やり続けても結局何も出ないから、敢えて何もしない。例えばパソコンを一切見ないで、数時間続けて映画やアニメを観たり、数十分から1時間くらい家の周りをとにかく散歩したり。

——歌ものの楽曲を手掛ける際には、どのような流れで制作するのでしょうか?

まず、ボーカルをレコーディングできる範囲までは作らないといけない。僕は作詞をやっていないので、デモのトラックにメロディーを載せて、誰かに歌詞を書いてもらう。それを基にレコーディングしたボーカルのデータをいただいて、改めて最終的な仕上げをする、という流れが多いですね。

 
 
今までにない遊び心を詰め込んだ「INTERNET OVERDOSE」

——2022年1月に発売されたゲーム『NEEDY GIRL OVERDOSE』では、主題歌「INTERNET OVERDOSE」の作編曲、およびゲーム内の音楽を担当されました。企画・シナリオを担当したにゃるらさんからAiobahnさんへ依頼があったそうですが、本作に携わるきっかけは何だったんでしょうか?

すごいしょうもないきっかけなんですけど、単純に僕がにゃるらと知り合いだったってだけです(笑)。元々知り合ったのも、Twitterで彼のことを知って、「文章書くの上手い人だな」と思ってフォローして、たまたま相互フォロワーになったというだけで、ちゃんとしたストーリーがあるわけでもなく。一緒に仕事をしたのも、『NEEDY GIRL OVERDOSE』が初めてです。

——ゲームの発売に先駆けて2021年4月にリリースされた「INTERNET OVERDOSE」は、どのような経緯で制作されましたか?

ボーカル入りの曲を作りましょうという話になって。ただ、具体的にどういう曲を作ってほしいという要望はなかったんです。というか、そういったものがまとめられる前に、僕がアイデアを出して作っちゃった。それが特にリテイクもなくOKになったのでレコーディングした、という感じです。ユーロビート風のシンセやガバキックは今まで楽曲に取り入れたことがなかったんですけれど、『NEEDY GIRL OVERDOSE』ならこういうのが合うかもしれないと思ってチャレンジしてみました。「頭文字D」のサウンドトラックや、イタリアのプロデューサー、デイブ・ロジャースが作曲したV6「TAKE ME HIGHER」(「ウルトラマンティガ」オープニングテーマ)のサウンドを自分なりに再現してみようというコンセプトで制作しています。好きだけど普段だと絶対に作れないものを自由に作ることができたので、良い機会でした。

——KOTOKOさんをボーカルで起用するのは、Aiobahnさんからのリクエストだったのでしょうか?

にゃるらと相談して決めました。00年代から活躍しているギャルゲー歌手やアニソンシンガーから選びたいという流れになって、僕も彼もKOTOKOさんの楽曲は聴いていたし、I’veも大好きなので、KOTOKOさん以外にないんじゃないかと思って、依頼させていただきました。
 

 

「INTERNET OVERDOSE」

「INTERNET OVERDOSE」

 
 
「INTERNET YAMERO」はAiobahnの頭の中!?

——2023年3月には、『NEEDY GIRL OVERDOSE』からの第2弾楽曲として、「INTERNET YAMERO」がリリースされました。

スケジュールの都合で楽曲を後に出すことになったんですけれど、元々は『NEEDY GIRL OVERDOSE』Switch版が発売されるタイミングに合わせてリリースする予定で制作していました。「INTERNET OVERDOSE」とは違って、今回はにゃるらからこういう音を取り入れたいという要望がありまして。YMO「ライディーン」とか、70年代後半~80年代の楽曲がいくつか。それを踏まえつつも、自分なりに様々なサウンドを取り入れたので、結構カオスに仕上がりましたね。

——確かに、個人的には「INTERNET OVERDOSE」よりも「INTERNET YAMERO」の方が混沌としていて面白いなと思っています。

まあ、僕もそう思いますね(笑)。「INTERNET OVERDOSE」は僕の好きな90年代のサウンドを再現するというのが一つの目標でもあったんですが、「INTERNET YAMERO」はそういう目標を定めずに、完全に意識の流れで作った曲なのでよりカオスになったんだと思います。

——Aiobahnさんの頭の中がそのまま音になったような楽曲なんですね。

そうなりますね。
 

 

INTERNET YAMERO

「INTERNET YAMERO」

 
 
現実味がないほどの大ヒット

——MV再生回数は、「INTERNET OVERDOSE」が1,300万回以上、「INTERNET YAMERO」が1,100万回以上(2023年5月現在)にのぼります。こういった大きな結果が出たことについては、率直にどう感じていますか?

「INTERNET OVERDOSE」は、ゲームが発売される前は10万~20万再生くらいだったんです。その後、ゲームがヒットしたことで楽曲の再生数も増えたので、納得感がありました。ただ、「INTERNET YAMERO」は最初から反響が全く違っていて、まだリリースされて1〜2か月ですが、とにかくすごく伸びていて……あまり現実味がないですね。それに、「INTERNET OVERDOSE」も「INTERNET YAMERO」もTikTokでよく使われているんですが、僕自身TikTokはやってないし、制作時も意識していなかった。完全に自分の作りたかったものを作っただけなのに、意図していなかった範囲の人にまで響いているのは、面白いし不思議な心地です。

——『NEEDY GIRL OVERDOSE』という作品をきっかけに、ファンが増えた実感はありますか。

めちゃくちゃあります。特にYouTubeの登録者数はすごく増えました。まだ全然時間がかかると思ってたのにいきなり10万人を超えましたし、とても嬉しく感じています。

——「INTERNET YAMERO」は、Spotifyの国内バイラルチャートでも1位を獲得しました(2023年4月20日付)。今、最も注目されているプロデューサー/トラックメイカーの一人だと言っても過言ではないかと思いますが、どう感じていますか?

それについても、やっぱり現実味がないですね。Spotifyのバイラルチャートのことは昔から知っていて、50位くらいに入ることはたまにあったんですけれど、ここまで伸びるとは全く予想していなかった。1位になっているのを見て、「ええ!?」となりました。驚き以外なかったですね。

 
 
依頼された楽曲も楽しんで制作

——今後の活動についてはどのような展望がありますか?

これまでは50%はEDM、50%はサブカルという割合で活動してきたんですけれど、今はサブカルの方に集中して活動していきたいと思っています。それと、他人に依頼されて作る楽曲は自主的に制作する音楽と全然違うもので、自分一人では作れなかったものを作れたり、新しいことに挑戦できたりするので、これからも色々な仕事を楽しんでいきたいです。

——今後コラボしてみたいアーティストはいらっしゃいますか?

やくしまるえつこさんとコラボしてみたいです。楽曲は全部聴いていて、一番刺さったのは「放課後ディストラクション」。自分がやっている音楽と完全に一致はしてないけれど、雰囲気としては少なからず通ずるものがあると思うので、もしそういったチャンスがあれば何か作れたら嬉しいです。

 

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