GEEKBOY インタビュー 3週間にわたりバイラル1位のヒット「Don Julio (feat. Yella Flat Boys)」を生み出した新鋭DJ/プロデューサー

インタビュー
2023.8.11
GEEKBOY インタビュー 3週間にわたりバイラル1位のヒット「Don Julio (feat. Yella Flat Boys)」を生み出した新鋭DJ/プロデューサーのサムネイル画像
GEEKBOY

今年1月にリリースされたDJ/プロデューサーのGEEKBOYによる「Don Julio (feat. Yella Flat Boys)」が6月からTikTokをきっかけにバイラルヒット、SNSで話題の曲をランキングするSpotifyのバイラルチャートでは6月中旬に初登場でいきなり1位を獲得すると、その後約3週間にわたって首位をキープし続け話題となった。元々ダンサーでもあり、ヒップホップクルー・Cookie Plantにも所属し、さらにイベントも主催するなど多方面で活動するGEEKBOYに、そのバックグラウンドから今回の「Don Julio」のヒットまで話を聞いた。

取材・文:Jiro Honda

 
DJからはじまった音楽キャリア

——「Don Julio」のヒット、改めてすごいですね。8月に入っても引き続きSpotifyバイラルチャートに入り続けていますが、チャートデータを見ると6月28日に初登場1位になってから、7月18日までずっとトップになっていたという。

GEEKBOY : びっくりです、こんなことになるとは思ってなかったので。たくさん聴いていただいて本当にありがたいです。

——「Don Julio」のバズについて伺う前に、まずGEEKBOYさんの現在の活動状況を教えてください。肩書きとしてはDJとプロデューサーになりますか?

GEEKBOY : そうですね、DJとプロデューサーがメインで、他にデザイナーとしても活動しています。デザイナーとしては、所属しているクルーのCookie Plantや、そのメンバーのMaddy Soma、他にもYella Flat Boysとの僕のコラボ作、若手アーティストの作品のジャケ写をいくつか手がけたりしています。

——DJとして活動を開始した時期はいつですか?

GEEKBOY : 僕が95年生まれで今年28歳になるんですけど、6、7年前の21歳くらいの時ですね。

——最初からCookie Plantで音楽キャリアが始まったんでしょうか?

GEEKBOY : いえ、そうではなくて。Cookie Plantは元々ダンスクルーで、僕とディレクターの3LightはCookie Plantのダンスが好きで、友達というか、ファンというか、見に行ったりしてたんです。それで、だんだん仲良くなって、僕のやってるイベントにCookie Plantが出てくれることになって。それがCookie Plantとしてライブイベントへの初出演だったらしいんですけど、彼らバックDJがいなくて、じゃあちょっとGEEKBOYやってよみたいな感じになって、そういうのを重ねていくうちに、いつの間にか僕もメンバーになったっていう。

——GEEKBOYさんもダンサーだった?

GEEKBOY : そうですね、18歳からやってるんでDJよりダンスの方が先でした。

——最初に音楽に興味をもったのはどんな感じだったんですか?

GEEKBOY : 高校時代の部活が陸上部だったんですけど、部活の仲間にイケてるスケーターがいて、そいつからヒップホップ聴けよみたいな感じで(笑)。最初は正直しっくりこなかったんですけど、A$AP Rockyの「Peso」っていう曲を聴いた時に、“うわーこんな曲があるんだ、ヒップホップ超かっこいいじゃん”ってなって、そこからハマった感じです。それで自分でもディグるようになって。

——そこからDJをはじめた経緯というのは?

GEEKBOY : 大学生の時ってやっぱり金ないじゃないですか、携帯も通信料かかるし。で、授業中の暇つぶしに何かないかなって時に、オフラインで遊べるDJアプリを触るようになって。ある時、それを見てた大学の後輩から今度イベントやるんでDJやってくださいって頼まれて、DJはそこからですね。

——曲を作るよりもDJだった?

GEEKBOY : ですね、やっぱりDJの方が好きで。

——今の活動拠点というのは?

出身は神奈川なんですけど、今はほぼ東京です。

——GEEKBOYさんは今もご自身のイベントを定期的にやられてるそうですね。

GEEKBOY : Shibuya eggmanで「FRIBBLE」っていうイベントをやってます。eggmanは、メインはライブハウスとしての営業だと思いますけど、夜はダンスイベントを週5やるくらいダンスにフォーカスした箱でもあるんですよね。Cookie Plantも僕も元々ダンサーだし、ダンスのルーツがあるeggmanっていう箱で、ダンスはもちろんヒップホップを活性化させようっていう意味を込めてイベントをやっています。DJイベントとして定期的にはじめたのは3ヶ月前くらいで、それまでは不定期のライブイベントというカタチでした。ライブイベントの時は仲の良いラッパーを呼んで、例えばCandeeやDeechとかの川崎勢だったり、この間ラップスタアで優勝したShowyVICTOR擁するShowy、あと初回にはvividboooyにも出てもらったり、基本的には仲間内でやってました。

——ちなみにShowyもCookie Plantも、THE MAGAZINEとプレイリストを作ってるComing Freshersが9月にやる初イベントに出られますよね。

GEEKBOY : そうなんです、呼んでいただいて本当に嬉しいです。Coming Fresherさんは、前に僕とコラボ作をリリースしたラッパー・Dazzlynの曲「Shelly」を早くからプレイリスに入れてくれたり、昔から僕らの曲もピックアップしていただいて、いつも感謝しています。

——GEEKBOYさん名義のリリースとしては、そのDazzlynさんとのコラボEP『Same.』が一番最初ですか?

GEEKBOY : そうですね、あれが初めてのリリースになります。まだ2つしかリリースしてないんですけど、純粋に自分一人名義の作品でいうと、バズった「Don Julio」が最初になります。

 
 
「Don Julio」のヒット 〜 “絶対バズると思って作った曲だった”

——「Don Julio」は冒頭にもお話しした通りすごい広がりをみせていますが、どういったきっかけや経緯でできた曲なんでしょうか?

GEEKBOY : もっと大きなスケールで音楽活動をするには、DJだけじゃなくて、プロデューサーとしての動きも必要だなって思ってプロデュースもするようになったんですけど、『Same.』を作ってる時に、すでに「Don Julio」のビートには出会っていたんです。“このビートめちゃくちゃいい、絶対バズるぞ”って。で、このビートに合うラッパーを考えてる時に、Yella Flat Boysがいいかもと思って。Yella Flat Boysの初代のバックDJが大学の後輩で、彼らとは前からつながっていたんで、声をかけてみたら快くOKしてくれました。彼らもこだわりは強いらしいんですけど、あのビートはフィットしたみたいでサクサク進みました。

——リリックはYella Flat Boysが書いている?

GEEKBOY : そうですね、リリックは基本的に彼らが書いて、僕からも少しディレクションしつつ。

——具体的にはどういったディレクションをされましたか?

GEEKBOY : 方向性としては、Yella Flat Boysらしくもあり、僕っぽくもある感じというか。初めてミーティングした後に僕がDJをやるタイミングあって、そこにYella Flat Boysのみんなも遊びに来てくれたんですけど、そこでお互いテキーラをめちゃめちゃ飲んで(笑)。そういうノリを共有して、僕の人となりも知ってもらって、そこからイメージしてもらった感じです。けっこう無理難題だったかもしれないですけど(笑)。

——楽曲タイトルはGEEKBOYさんがつけた?

GEEKBOY : はい、あがってきたリリックを見て、もうストレートに「Don Julio」にしようと決めました。

——リリースは今年の1月20日ですが、約半年たってからバズりましたよね。急なバズでしたが、どう感じましたか?

GEEKBOY : 最初、急にインスタのフォロワーがめっちゃ増えて、なんでだろうと思ってたんです。TikTokの曲紹介動画から火がついたと思うんですけど、その時TikTokをまったく見てなくて。だから、なんでこんなに伸びてんだろうって色々調べても分かんなくて、ちょっとTikTokも見てみようって調べたら“ここか!”って(笑)。さっき言ったように絶対バズると思って作った曲だったんで、やっと評価されたっていう気持ちでしたね。GEEKBOYっていう名前がやっと認知されはじめた気がします。

——周りのアーティストの反応はいかがですか?

GEEKBOY : それこそCookie Plantのみんなはめっちゃおめでとうみたいな感じで、SANO(Cookie Plantのメンバー)なんかは自分で振り付け作ってくれたり。もちろん、Yella Flat Boysのみんなもめちゃめちゃ喜んでますね。さっき話したCandeeやDeech、Showyとかもめっちゃバズってますねって言ってくれたり。

——かなり長く1位をキープしていましたよね。

GEEKBOY : びっくりしました。正直、そうは言ってもそんなに続かないかなと思ってたんですけど、約3週間もトップになったんで、マジでありがたいなっていう。

——TikTokからバズる曲でもその長さはけっこう珍しいと思います。

GEEKBOY : そうなんですか、めっちゃ嬉しいです(笑)。

——「Don Julio」はMVの雰囲気、世界観もバッチリですよね。コンセプトとかテーマというのは?

GEEKBOY : やっぱり大人っぽいビートだと思うんで、それにあうロケーション、スタジオを見つけて、Yella Flat BoysのマネージャーおよびディレクターでもあるRio Tashiroに撮ってもらいました。彼はDazzlynとのEP収録曲「Boom」のMVや、他にYella Flat BoysのMVもほとんど手がけていて。僕はMVを作る上で、クオリティとスキルはもちろんですけど、自分とセンスが合うことが一番大事だと思ってるんで、そういう意味で彼は素晴らしくて。場所だけ僕が決めて、あとはお任せでやってもらったら、見事に楽曲の雰囲気にばっちりハマった仕上がりにしてくれました。

MV制作オフショット

 
——ルックも曲とすごくあってますよね。

GEEKBOY : Yella Flat Boysはポロラルフローレンが好きらしくて、それでポロで働いてるスタッフさんにスタイリストとして入ってもらって、セットアップスーツで雰囲気バチバチに決めてくれて。彼らの横のつながりに助けられた部分もめちゃありました。

Viliy Yam(Yella Flat Boys)
LAW(Yella Flat Boys)
Aju(Yella Flat Boys)

 
——サウンド、リリック、映像、衣装、ロケーション、全ての整合性が間違いない仕上がりですよね。

GEEKBOY : なので、TikTokでこの曲を知る人が多いと思うんですけど、TikTokでの曲紹介がジャケのアートワークだったりして、MVがあることを知らない人もいると思うんで、このMVはもっと多くの人に見てほしいですね。曲をいいなと思った人には、きっと気に入ってもらえるクオリティのMVに仕上がってると思うんで。

 
 
DJ、そしてプロデューサーとしての今後

——今回バズった要素は改めてなんだと思いますか?

GEEKBOY : やっぱり単純に曲がかっこいいからだと思います。さっき言ったみたいにビートもそうだし、Yella Flat Boysのラップもそう。シンプルに曲が良いから。必然って言ったら言い過ぎかもしれないですけど、それくらいの気持ちで作ったんで。半年経ってようやくみんな気づいたか、やっと発掘されたかみたいな。

——いろんな仕掛けをしたところで、曲自体が良くないと説得力がないですよね。長続きしないですし。

GEEKBOY : Yella Flat Boysもイケてる人はちゃんと知ってるクルーだし、だからこそナチュラルにバズるっていうのが分かりやすかったですよね。今回はいろんな人に機会を与えてもらっていて、すごく感謝しています。

——ちなみに、今プロデュースとDJの割合はどれくらいですか?

GEEKBOY : 今はDJが9でプロデュースが1くらいですね。プロデューサーとして今年中の制作も何曲か予定はしているんですけど、やっぱりDJの活動が好きだし、そっちをメインにしたいなっていう気持ちの方が強いですね、いまのところ。

——DJ活動におけるこだわりって何かあったりしますか?

GEEKBOY : DJでは幅広いジャンルをかけるように心がけています。もちろん盛り上がる曲を流すのもDJの仕事だと思うんですけど、新しい曲の紹介っていうのもDJの役割でもあると思うんで。聴かず嫌いせずに色んなジャンルの音楽を聴いて、そういうインプットをしながら曲を流すようにしています。

 
——DJでリスペクトしている方はいらっしゃいますか?

GEEKBOY : 国内だとDJ Shintaroさんには影響を受けています。直接の面識はないんですけど、めちゃくちゃかっこいいなと思ってて。DJプレイをYouTubeで見てインスパイアされたり。あと、海外だとPreditahやBRLLNT、Alison Wonderlandとか、それぞれプロデューサーもやってる人たちで。PreditahのBoiler Roomでのプレイはすごく好きだし、そうやっていろんなDJの形を吸収しています。SoundCloudにはミックスを上げてて、UKガラージにフォーカスしたミックスや僕のイベント「FRIBBLE」に出てくれたラッパーのミックスとかがあるんで、もしよかったら聴いてもらえたらと思います。

GEEKBOY · FRIBBLE MIX

 
——そうすると今後もDJとプロデューサーの割合は同じ感じで活動される予定でしょうか?

GEEKBOY : やっぱり現場が好きなんで、DJがメインになるとは思いつつ、プロデューサーとしてまだキャリアは浅いんですけど、「Don Julio」がバズったことで自信にもなったし、多くの人に聴いてもらう感覚も味わったことで、プロデューサー活動ももうちょっと頑張ろうかなっていう気持ちは芽生え始めています。「Don Julio」のPart2を作ろうっていう話もあったりしますし。EPの収録曲「Träumerei」のビートを作ってくれた岡山のShin Andrewっていうビートメイカーともまた何か作れたらなと考えています。

——今後のさらなる活躍を期待しています。最後にメッセージをお願いします。

GEEKBOY : Shibuya eggmanで毎月第3水曜日にDJイベント「FRIBBLE」をやってるので、ぜひ遊びに来てほしいです。あと、今回の「Don Julio」をきっかけに知ってくれた人は、僕やYella Flat Boysはもちろん、Cookie Plant、そしてMaddy Soma、SANO、Liu Atsumuのそれぞれのメンバーとか、仲間たちの他の曲もすごくかっこいいんで、これを機に聴いてもらえたら嬉しいです。




GEEKBOY「Don Julio (feat. Yella Flat Boys)」

「Don Julio (feat. Yella Flat Boys)」

 


Dazzlyn & GEEKBOY「Same.」

Dazzlyn & GEEKBOY「Same.」

 
 

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