アンと私 インタビュー「あとは僕たちに任せてもらえれば大丈夫」自称・裏アカでしか呟かれないバンド、満を持してオーバーグラウンドへ

2024.1.12

「Tinder」のバイラルヒット、バンドに芽生えた自我

——2023年は初の東名阪ツアーや体制変更などを経験し、バンドにとって激動の一年になったかと思います。

良い一年でしたね。手に取るように規模感が大きく変わることはなかったけど、ちょっとずつ前に進んでいる感覚がありました。

——6月24日に配信された楽曲「Tinder」は、Spotify国内バイラルチャートで2ヶ月間にわたりランクインするなどSNSを中心に大きな話題を呼びました。制作時から、他の楽曲とは異なる手応えがあったのでしょうか?

いや、全然なかったです。むしろその前にリリースしたシングル2曲(「一生忘れられない恋をした」「二番目」)に手応えがあったんですけど、思うようにいかず。で、8月リリースのEP『FALL DOWN』に力を入れていて、「Tinder」はそれまでのつなぎとして出した感覚だったので、全然ヒットするとは思ってませんでした。SNSでの反応とかはあまり見ないようにしてたんですけど、話題になり始めた時はとにかく「来た来た来た!」って感じで。

 
——「Tinder」をきっかけにリスナーも増えたことかと思います。承認欲求が活動の出発点にあったとのことですが、バンドを続けるモチベーションはスケールアップとともに変化しましたか?

というよりは、最初に抱いていた感情の規模がどんどん大きくなっていってる感覚ですね。「これだけの人に見られたい」と思ってたイメージが、どんどん膨らんでいってる。

——続くEP『FALL DOWN』は確かに会心の出来だと感じました。メロディはよりキャッチーで精度を高めつつ、アレンジでは前のめりな曲もあればセンチメンタルな一面も見せていて、演奏が二口さんの言葉に寄り添っている印象です。

アレンジ面に関してはもうメンバーに任せてるので。ありがとうございますっていう感じですね。

アンと私『FALL DOWN』

アンと私『FALL DOWN』

 
——普段の楽曲制作はどのような流れで行っているのでしょう?

弾き語りで作ったものを持っていって、「ここはこうしたい」というポイントだけを伝えてあとはメンバーに任せることが多いですね。最近はメンバーにも「自分がアンと私だ」という自我が芽生えてきて、それぞれ相乗効果があらわれるようになってきたかなと思います。

——歌詞に関しては嘘をつかないという信条があると先ほどお話しいただきましたが、何かインスピレーションの源になるものはありますか?

ロックの畑で既に使われてる言い回しで勝負するのって、けっこうしんどくて。上には上がいすぎて、一段ずつ階段を上っていく作業が果てしないと思ってしまう。だからこそ、他とは違う方向を選んでますね。「俺はダメだ」って言葉が既にあふれかえってるなら、「いや、俺はカッコいいぜ」って言う。それこそ、HIPHOPではそうやってイキがるのが普通だけど、ロックではナヨナヨした姿を歌うのが普通だったり、それぞれ常識が違うので。そういう点では、ロック以外の音楽から刺激を受けることが多いですね。

——二口さんの楽曲に対して、メンバーからのリアクションはいかがですか?

良いときと悪いときがめっちゃわかりやすい。良いときは「めっちゃいいじゃん!」、悪いときは「ああ、いいじゃん……」(笑)。ハッキリとダメとは言われないけど、顔に出るんですぐわかりますね。だから良いリアクションが得られるまで作り直します。

 

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