otakustreetwear インタビュー 【ガチオタク × トレンド × スケート × トラップ × LAメタル】カルチャーが渋滞中 ― 謎に包まれたアイテムを街にだだ漏れさせる“otaku”アートクリエイター
このSNS時代にも関わらず、その服やアイテムの広まりは口コミがメインとなっており、一方でアップカミングなアーティストをオーガナイズした音楽イベントも不定期ながら開催するなど、謎に包まれた展開をしているotakustreetwear。
そのエキセントリックな動きはネット上からもあまり見えてこず、入ってくる情報も現在のところ、ほぼ人づてだ。その匿名性のためか、地下から密かに街に浸透するように熱狂的なファンが増殖中。otakustreetwearを手がける高倉さんは、非常に柔らかい雰囲気をまとったユースカルチャーボーイ。柔らかい口調で語りはじめた。
「もともと僕が高校の終わりの頃に仲良くなった、音楽と服がすごく好きな友達と一緒に服を作りたいねって言いはじめたのがきっかけで。それで、リメイクとかシルクスクリーンのTシャツとか作りはじめました。その友達は割とアグレッシブなテイストが好きだったんですけど、僕はもうちょいバカっぽい感じが好みで」
otakustreetwear、実は現在、高倉さんひとりで運営しているとのこと。
「その一緒にやってた友達はラッパーでもあって、やっぱり方向性が違うねって。二人でやるのは難しいなと思って、じゃあひとりで思いっきりふざけた服を作ろうとはじめたのが、otakustreetwearなんです」
現役の大学生でもあるという高倉さん。デザインも今の世代にしか表現できないテイストを持っている。
「今20歳です。otakustreetwearを始めたのは2017年の11月でした。かなりラフにやってる感じです」
そんなotakustreetwearのコンセプトは――
「ただ服を作るというよりも、やっぱり僕も音楽好きだし、服と音楽のリレーションシップを大事にしたものを作りたくて。音楽イベントの物販においてあるものを作るようなテンションで」
販売の方法もカジュアルだ。
「ノリでポップアップやったり、今はBASE使って売ってたり。なんというか、語弊があるかもしれないですけど、”適当さ”、”ラフさ”をコンセプトにしてて。だから、ちょっと前まではあえてメルカリでバカスカ売ってたり(笑)。さすがに今はやってないですけど」
otakustreetwearのInstagramアカウントを覗いてみると、そこには「thisisnotafashionbrand」の文字のみ。
「自分としては、今はファッションブランドをやってるつもりはないんです。なんか、最近ちょっとしたTシャツ作ってインフルエンサーに着させて、めっちゃ売ってる人とか多くないですか?まぁ否定はしないんですけど、やっぱ『それってどうなんだろ?』ぐらいには思ってます。それでセールスが上がってフォロワーが増えたとしても、それは自分自身の実力じゃなくてインフルエンサーの力だし。そういう”インスタグラマー”的な世界で『ブランド作りました!』ってドヤ顔されても、僕としては真摯に頑張ってブランドを設立している人に対してよろしくないんじゃないの?ってのがあって。だから、僕がやってるプリントTシャツはブランドとは呼びたくない。テンション的にも物販くらいが丁度いいっていうのもあって、『thisisnotafashionbrand』って言ってます」
“適当”や“ラフ”といった言葉の裏側には、本物に対するリスペクトや、高倉さんが本来持っている誠実さが見え隠れする。
「あとは、カルチャーとして音楽が好きだし、音楽と絡めたいから、バンドTシャツみたいなノリで服を作りたい。この感じ分かってもらえますかね(笑)。そういうノリが分かってくれる人に着てほしいと思ってて。普段こういうこと言わないんですけどね。なんかこれを真面目にSNSとかでグチグチ語ってたらダサいじゃないですか(笑)」
日ごろは極力、匿名性を大事にしてるとのこと(今回は特別に出演していただいた)。次に、otakustreetwearという名前の由来を尋ねると――
「僕はふざけた感じ、ラフさを大事にしたくて。それで外国人がタトゥーでアホな漢字を彫るテンションで『otaku』っていうワード良いなと思って」
その独特のセンス、一体どこで身についたのだろうか。
「これまで触れてきた音楽やカルチャー全部から影響を受けてると思います。例えばSupremeのファンだったときはルック全部覚えるくらい細かく見てました。スケボーはあんまりうまくないけどグラフィック含めてスケートカルチャーが好きだから、otakustreetwearでもサンプリングっぽく使ってみたり。音楽のルーツは、両親の影響で幼いころからLAメタルとかロック、ブルースを聴いてて。だからLAメタルやヘアメタルのノリで、ハーレーダビッドソンとかバンソンを着るのはめっちゃかっこいいと思うし。かと思えば今日の服はファーのデカいハットにパーカー、Levi’s 684のベルボトムでジャミロクワイ的な感じ。でも中のTシャツはヴィンテージのDEF LEPPARDっていう(笑)」
「このあいだは、ラルクのライブ観に行って、hydeさんの衣装めっちゃかっこいいなと思ったし。ラルクはヴィジュアル系とは言えないけど、ヴィジュアル系も全然クールだと思うし聴きます。かと思えば、ちょっと前まではY/PROJECTやXander Zhou、Deladaとかを追ってたり。もうごちゃまぜですよね、こういう“意味分かんない感”を大切にしようかなと」
「大学に入って、本気でビン底メガネみたいなオタクがうようよいる【ビートルズ訳詞研究会】っていうサークルに入ったんですけど、そこの人たちが僕には超クールに見えて、そっから音楽のディグに加速がかかって。それと同時にさっきのラッパーの友達からのヒップホップ、トラップのカルチャーの影響も受けて、そこに両親からのメタルやロック、ブルースっていう自分が持ってたのが合わさって、一気に混ざっちゃって。だからこういう風になっちゃったのかな」
多様なインプットの中で、自ら音楽の現場でDJをすることもあるという。
「最近はそのラッパーの友達も頑張ってるし、トラップ系やってる友達も増えて、僕もバックDJやらせてもらったり。仲がいいのは、Salvador ManiやSid the Lynch、LEX、Only U、womとかその辺かな。楽器は、小6からエレキギターやってて弾けるんですけど、自分で曲作ってみたら『マジで超ダサい』って諦めました(笑)。服はできるけど、作曲のセンスはマジでないです」
交友関係からは、今の10代後半をメインとした独特のシーンの台頭を感じずにはいられない。そういった新しい世代に支持される服のデザインにおけるこだわりとは。
「なんらかのコンテキスト、流れを汲んで作るようにはしてます。例えば、今着てるパーカーはネットにあるフリー素材の犬の画像使ってるんですけど、この画像の犬が昔飼ってた犬にめっちゃ似てて。だから、犬にマジでラブを伝えたくてこの画像を使ってたり(笑)。」
「それで、中国のフラッグマークは、こうやって『フリー素材使って服売っちゃうよ』っていうパロディの意味でつけたのかな。それか、ゴーシャのパクりかぐらいの。品質とか形とかにこだわって服を作るのは土俵が違う。それこそバンドTシャツのノリで作ってるんで。いまんとこ量産メーカーのTシャツでいいじゃんって」
高倉さん自身が考える「otaku」感とは――
「やっぱ僕の中でもいわゆる『ガチオタク』を思い浮かべますね。今でいうナードとかギークじゃなくて。目指してるのは、本当に『ガチオタク』の要素なんで『otaku』のイメージはそれでいいんじゃないかと。いつも新作出すたびに買ってくれる友達も、見るからにオタクで。つい最近ノース・フェイスを知ったみたいな人なんですけど(笑)、着てると何かいい感じなんですよね」
入り組んだコンセプトの上に成り立っているotakustreetwearだけあって、あまり着てほしくない層もいるようだ。
「ちょっと前に、”バンド知らない人がそのバンドTシャツ着てる問題”あったじゃないですか。METALLICAとかNIRVANAっていうブランドがあると思ってる人たち。ファッションパンクっていうか、インスタグラマーとか、なんかそういうテンションの人に着られたくないなとは思ってて。昔から浅はかな人とはなんか仲良くなれないんですよね(笑)。服でも、例えば流行のBALENCIAGAとかGUCCIとかちゃんと着れてる人ってあんまいないんじゃないかなと思うし。ブランドへのリスペクト込めて買ってるっていうよりも、”映え”とか”着てる感”、そういう表象的な部分しか見てない人が大半な気がするし」
そんな高倉さんが、いま気になるアーティスト/クリエイターを訊くと、OKAMOTO’Sのオカモトレイジとの答えが。
「ミーハーかもしれないけど、やっぱりすごいなと思います。着てる服みただけで、もう『この人ヤバい』っていうのが分かるし。しかも彼もごちゃ混ぜで、ああいう感じなのに歯にグリルズ入れてたりとか、やっぱかっこいいですよね」
これからのotakustreetwearの動きに関しては――
「引き続き『otaku』マインドでやっていきます。いずれはプリント系じゃない服もやれればと思うし。ゴールとか明確なビジョンは特にないんですけど、音楽ともっと絡めた展開は引き続きやりたいですね。BOOTCAMPっていう音楽イベントもありますし、今後はもっと増えていきます。あと、これはちょっとプライベートなことなんですけど、大学でしょうもないDisカマしてくるヤツらが多々いるんで、それに対するアゲインストっていう意味でも頑張っていきます(笑)」
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