こっちのけんと × ゼロから打ち師始めます。対談 —— 独自のスタンスで活躍する令和のトップクリエイターの現在地
SNS、プラットフォームの活用方法
——お二組とも、そのようにこだわりをしっかり持って高いクオリティのものを生み出し続けていますが、せっかく作ったものもちゃんと発信しないといけないわけで、やはりそれぞれで様々なプラットフォームやツール、新しいサービスを上手に使いこなしている印象があります。
しじま : 例えばTikTokやYouTubeショートでは、スクロールしていてぱっと目に入った時の第一印象をいかにキャッチーにできるかは意識しています。サイリウムを持って一瞬で光らせるとか。それこそ0.3秒くらいが勝負かなと。
さぷりめんと : ショート系はキャッチーにしつつ、そこを入口にYouTubeでいわゆる僕たちの本気の部分、こだわったクオリティのものをきちんと見てもらえればっていう使い分けはできているかなと思います。
——ショート系ではオフショットやNGテイクの動画も発信するなど、ファンが親しみを感じる演出も積極的にされていますよね。けんとさんはいかがですか?
けんと : 僕もけっこうゼロ打ちさんと似ていて、ショート系はジャンクフード的というか、めっちゃ手軽なものをアップしていて。撮影や編集も凝らずに誰でも撮れそうなクオリティにして、YouTubeの方はそれこそ本気というかちゃんと手間暇かけて作ったものをあげるっていうイメージはありますね。漫才でいうつかみと本ネタみたいな感覚というか。
——ライブ配信も上手に活用されていますよね。
けんと : ライブ配信では、個人的にスパチャとかがめっちゃ苦手なタイプで、そういうのが来ると申し訳ないが勝っちゃうので、とにかくできるだけ全部コメント読みたいとは思っていて。とはいえ、全部は無理じゃないですか。なのでTikTokライブとYouTubeライブ両方立ち上げて、そもそも追いかけるのが無理な状況をあえて作って、自分の中で罪悪感があんまり大きくならないようにとかは工夫しています。ライブ配信って頭も体力もめっちゃ消費されるんですよね。英語のコメントもきたり。
しじま : その点ライブ配信は僕ら5人いるんでお互い補えてる感はあるんで、わりとラフにやってるかもしれない。
いかちゅん : あと、どっちかというと5人が話している様子を配信してるっていう意識だったりもしますね。
Clifford : 僕らは基本的にコンテンツがダンスなんで、喋ってるシーンが意外となかったりするから、ライブ配信はシンプルに自分たちが喋ってるところを出して、その人となりを見てもらうっていう場かもしれないです。
けんと : ライブ配信などを通してその人間性を知ってもらうことによって、それが作品に触れてもらった時に反映される、良い意味で色がつく気がしますね。家でだらしないお父さんの仕事場で頑張ってる姿がめちゃかっこよく見えるみたいな。
「TuneCore クリエイターズ」が二次創作文化にもたらすもの
——そんな中で、新しいサービスの利用も積極的ですよね。先日は「TuneCore クリエイターズ」を活用されて、けんとさんの楽曲を使用してゼロ打ちさんが動画の収益化に取り組むという動きがありました。ゼロ打ちさんは、これまではいわゆる楽曲を利用する側だったので、YouTubeでどれだけヲタ芸の再生数が伸びてもそこからの収益は得ることができなかったわけですが。
いかちゅん : そうなんです。(YouTubeでのヲタ芸の動画は)本当に私たちを知ってもらうためだけにやってるに近かったというか。
Clifford : なので、今回「TuneCore クリエイターズ」を経由して「はいよろこんで」を使わせていただいたんですけど、今までにない感覚でしたね。“人様の楽曲を使わせていただいて収益を得るだと!” みたいな。そんな夢のようなことが許されていいんだって(笑)。
いかちゅん : おこがましいというか、いいの?みたいな(笑)。
Clifford : 本当に画期的なシステムが生まれたんだなっていうのがやっぱり第一印象でした。
いかちゅん : これが広まって、曲を作った人とそれを表現する人両方が恩恵を受けて、お互い色んな人に知ってもらえる機会がさらに増えたら素敵だなと思いました。
——けんとさんは楽曲の使用を開放してみていかがですか?
けんと : 自分としてはもう万々歳ですね。自分の曲で踊ってくださってる人たちに対して申し訳なさというか、そういう気持ちがずっとあって。何かしら還元されてほしいなと思っていたので、このシステムは個人的にもめちゃくちゃ嬉しいです。自分はアカペラ畑で育ったんですけど、アカペラもある種二次創作な文化だったし、そういう人たちが楽曲をより自由に楽しめて、さらに分配を受けれるっていうのはすごい大事だなと思っていたので、それを合理的な仕組みを通じて提供する側になれているっていうのはめちゃくちゃ心地いいです。
いかちゅん : ただ今まで収益がないからこそ楽しめてる部分もあったので、収益をいただくとなるとアーティストさんや作品に対するさらなる責任も感じますね。
しじま : もともと自分たちは趣味からはじまって、いま少しずつお仕事をいただけるようになったのですが、その仕事としての比率が大きくなったときに果たしてちゃんと楽しめるのかって言われたらわからないけど、だからこそさらにちゃんと責任とリスペクトを持って作品に向き合っていきたいなと思います。
けんと : いずれにせよ、好きなことをやってそれが結果的にお金になる、二次創作系の人たちの懐があったかくなるっていうのは本当にめちゃくちゃいいシステムなので、個人的にはもっと広まったらいいなと思っています。
——アーティストとしても、新しいMVがUGCでどんどん作られていく面もありますよね。
けんと : そうですし、単純にみんなのクリエイティビティが乗った「はいよろこんで」の色んな作品を見るのがすごく面白くて。ヲタ芸もそうですし、吹奏楽やドラムだけ、ベースだけだったり。そういう作品を通じて、客観的に自分の作品を見れることも楽しいです。