こっちのけんと × ゼロから打ち師始めます。対談 —— 独自のスタンスで活躍する令和のトップクリエイターの現在地
コンテンツ作りのこだわり
——お二組どちらともに、共感性や人に寄り添う感じ、人を笑顔や元気にしたりと、非常に温かみのある要素を感じるのですが、そういった中で、曲やパフォーマンス、クリエイティブを生み出す際のこだわりを教えてください。
けんと : 僕の場合、自分が客観的にその曲を聴いてちゃんと感情的になれるか、涙を流せるかは最終的な判断ではすごく大事にしています。「死ぬな!」を作ったときも、家で完成した曲をイヤホンで爆音で聴いたら、めっちゃ楽しくなってきて笑ってるし涙も出てくるし、その自分の姿を鏡で見るっていう、あんまり覚えてないんですけど多分1時間くらいそんな感じになって(笑)。でも、こういうのこそ大事にしていった方がいいんだろうなって思って。
あと、これに関しては一緒に作曲してくださるGRPさんには本当にいつも助けていただいていますけど、内容がちょっと暗いというか重めだったら、メロディーはできるだけ軽くするっていうバランスはけっこう意識してます。僕の場合、どうあがいても歌詞が暗くなっちゃうので、メロディーでそこの色やテンションを補完するイメージというか。キャッチーさやユーモアも含めてその辺は続けていきたいと思ってます。
Clifford : 僕らは光を使うのですが、人間の光というものに対する第一印象って“綺麗”だと思うんで、とにかく綺麗で分かりやすくっていうところにはすごく重きを置いています。なおかつ、見たことのある動きを入れようっていうのは最近意識しています。例えば、今一番再生されている「Bling-Bang-Bang-Born」も、腕を左右に振る動きっていうのはこの曲を知っていればみんな知ってるものなので、絶対振りに入れようと。「はいよろこんで」もしかりで、サビの手を左右に振る動きもちゃんと入れたり。あとは、全体でどこに山を作るかですね。ゼロ打ちの動画は大体1分半なんですけど、その中でいかに飽きさせないように構成するかはめっちゃ工夫しています。
——先ほどの「はいよろこんで」の感想にもありましたが、見たことがある=懐かしい感じ、けれども新しいという文脈を考えると、お互いに共通するところがありますよね。ちなみに、逆にこういう行動は控えるようにしている、みたいなことはそれぞれ何かありますか?
けんと : 鬱すぎる時の発信はできるだけ控えるとかですかね。鬱だとしても、できるだけちょっと不安定なピエロくらいの状態ではいたくて。弱みは見せるけど弱点は見せないみたいな。なんか名言みたいですけど(笑)。この辺弱いよって言いつつ、そのピンポイントは言わないみたいなことは意識してるかもしれません。
いかちゅん : ゼロ打ちの場合は、控えてることとかは特に意識してないかな……
けんと : 意見が違ってもケンカしないようにしてるとかは?
いかちゅん : 5人いたら各々の自分の正解があるわけで、そこで折り合いがつかないこともあったりするから、そういう時は一旦お互いの意見を尊重しつつ、多数決で決めたりはあります。
しじま : みんなで意見を出しあっていい塩梅のところを探りつつ、ダメだったら一番最適解な人に寄り添って、もしそれでもほんとにできなかったら一回やめますし、あまり無理はしないようにしています。
けんと : 踊る曲はどうやって決めてるんですか?
いかちゅん : だいたい私かClifford、あとはプロデューサーが音楽のトレンドを追ってるんで、“これどう?”って提案するんですけど、たとえ曲に対する思い入れに温度差があったとしても、ゼロ打ちのパフォーマンスとして綺麗にできるのであればOKっていう感じですね。
けんと : アカペラとめっちゃ似てるかもしれない。誰かが提案した曲に対して、普段めっちゃ聴いてるわけじゃなくても、チームとしてたしかに似合うなってなれば歌おうってなるし。
いかちゅん : 曲に対してのリスペクトは前提としてもちろんありつつ、似合うがどうかを意識してやることが多いですね。
さぷりめんと : 以前、YouTubeのチャンネル登録者数100万人突破記念でメンバーそれぞれでソロ動画を撮ったんですけど、それがもうほんとうに5人全くかぶらなくて、曲調もやってることも全員違ったんです。なので、チームとしてまとまるにおいては、全員が個々を意識するんじゃなくて、みんなちゃんとゼロ打ちを意識してるっていうのはあるのかなと思います。
しじま : 光って軌道がほんのちょっとズレただけでもダメなんですよね。ダンスだけだったらニュアンスも各々の個性だとは思うんですけど、光の場合はそういうわけにいかないので、毎回動きのニュアンスまできっちり揃うようにめっちゃ練習します。
いかちゅん : ゼロ打ちの撮影スタッフも1フレームのズレもないように、撮ったらその場で1フレームずつ確認しますし、そうやっていくうちに私たちも鍛えられました。
シト : 「はいよろこんで」の撮影時の振り付けでひとつ印象的だったのが、サビの動きのところでダンサーさんは手の甲を上に向けているからサイリウムを持っていてもそうしようとCliffordが言ってくれて。そうした方が動きもたしかにピシッと決まったんで、そういう細かいところも作品としてのクオリティに影響していると思います。