JAKENインタビュー 2ndアルバム『SEA SIDE LAND』で描いた新たな景色、そして地元・広島での活動にこだわる理由
成り上がりの先の景色を描く『SEA SIDE LAND』
――5月30日には2ndアルバム『SEA SIDE LAND』をリリースしましたね。ここまでの話からしても、やはり前作とは異なるビジョンを持って制作に臨んだのではないかと。
前作は『PUSHIN J』のタイトル通り自分を押し出していくというか。「JAKENを知ってくれ」「俺はこういうヤツなんだ」っていう色が濃いアルバムでした。今振り返ると、誰かを下げて自尊心を保つような、子どもだったなと思う部分も多くて。だから今作は、一年間の心情の変化も含めて、「アイツはこうでも俺はこうだから」という考え方が強い作品になりました。『SEA SIDE LAND』というタイトルを付けましたけれど、通して聴いた時に、俺の地元に招待されたような感覚になってほしいっていうコンセプトを第一として構成しました。
――オープニングトラック「INTRO」のリリックは赤裸々ですね。「口座は大量の金で満たしたのに心だけは全く満たされない」「JAKENの曲だけが今の俺の希望 って言ったあの少年が外す俺のフォロー」というフレーズはパンチがあって。
僕自身、けっこう食らいましたね。「OMAE」を出した頃から「路線変更だ」みたいなことを言われるようになって。昔からのファンは、僕が下から成り上がって這い上がっていく曲が好きだったんですよね。今も「成り上がるぞ」という気持ちはあるけど、この現状になった時点でそういう曲を歌う頻度は自然と減ってしまって。でもそこで気付けたのが、大切なのはお金じゃないってことだったので。それを一曲目で伝えたかったんです。
――かつてと同じことを歌い続けていたら、それはそれで嘘になってしまいますもんね。
うん、明らかに生活水準も上がりましたし。
――ビートはLion Meloさんがフルプロデュースしています。
Lion Melo君は、「Seaside Flow」を出す前くらいに「カッコいいね」ってDMをくれて。本当に見る目がある天才プロデューサーで、すごいなと。色んなヒット作を発掘してますからね。僕のラップに「ここはこうしたら良いんじゃない?」と言ってくれることもあるんですけど、基本的には僕の自主性を尊重してくれています。
――先ほどからたびたび話に上がっている「OMAE」も本作に収録されています。「Seaside Flow」に続く新たな代表曲ですが、どういった思いで制作されたのでしょうか?
マジで歌詞の通りです。1,000万円の車を買って100万円の時計を買って高層マンションに住む。その3つが少年時代からの夢だったんですよ。正直な話、そうすればモテると思ってましたし。でも、それを実際に手にした時に気付いたのは……「OMAE」っていうのは女性っていう意味もありますけど、僕の中では「成功」を示していて。本当に欲しいのはお金よりも、達成したい目標に向かうこと、やりたかったことを成し遂げることなんです。お金や時計やマンションはそれに付いてくるだけのもの。それを歌った曲になってます。
――「OMAE」、あるいは『SEA SIDE LAND』全体が、最初に掲げていた目標を達成した次に見える景色を描いているんですね。
夢や目標はこれから先も新しく生まれるでしょうけど、今の自分が歌えるリアルはそれだったと思います。
――「OMAE」にはお馴染み百足 & 韻マンのコンビが参加しています。
百足 & 韻マンはもう国民的スターですね。凄すぎるっす。絶対勝てないです。二人とも、音楽性がすごいですからね。「なんでこのフローがパッと出るんだ?」って、新曲が出るたびに驚いて、才能に嫉妬してます。勉強になりますね。
――それと、収録曲「LOVE MY HOOD」に参加しているYELLASOMAさんにはJAKENさんとの強い親和性を感じました。
YELLASOMAくんは、僕と同じく地方で地元をレペゼンして頑張ってて。シンパシーを感じましたし、カッコいいなと思って、僕がInstagramを通してオファーさせてもらいました。
――収録曲の中で、特に手応えを感じている楽曲やお気に入りのラインはありますか?
やっぱり「INTRO」は気に入ってます。「東京への引越し破り捨て地元で叶えるんだ俺の夢」っていうラインがあるんですけど、「OMAE」がヒットした時に東京への引っ越しを考えたんですよ。実際、今も東京に一つ家を持ってるんですけど、でも、拠点を移すのはやめたんです。初めてのワンマンを打つのは東京じゃないなって。地元でワンマンを成功させたい。なぜかというと、やっぱり地方で成功した大人ってどうしても都心に出ていくんですよ。となると、地方で夢を持った少年がいるとして、周りにどうすればいいかを聞いても「そんなのできないよ」っていう大人しか残ってない。だから、自分が地元に残って、「俺、東京に行かなくても、広島でもやれるんだ」っていう希望になりたい。
――より間近に、その背中で示したいと。
プロ野球チームやプロサッカーチームがある街とない街では競技人口が変わってくるのと同じで、若くして成功してるアーティストのアイコンとして広島に残りたい。俺のことを好きなヤツはもちろん、嫌いなヤツも「JAKENですらできるんだから俺でもできるでしょ」って感覚になったら良いですし。それが、俺が地方に残ってる理由かなと思います。
――ちなみに、JAKENさんの地元の廿日市市ってどんなところなんですか?
宮島に近くて、自然豊かで過ごしやすいですね。僕が今住んでるのは廿日市ではないんですけど、市街地でランニングすると気付かれてしまうので、地元に帰って走ってるんですよ。でも最近、地元の中学生とかにも気付かれるようになってきて……それは嬉しかったですね。こんな層も知ってくれてるのかと。
――そういった地元への熱い思いが歌詞に込められている一方で、下ネタ含むユーモアを欠かさないのがJAKENさんの魅力ですよね。
どの曲でも、8割本気で2割ふざける。ちょっとクスッと笑える内容を入れたいなって、シンプルに、僕自身がふざけてる性格なんですよ。だから、そういうことをしたくなるっていう病気です(笑)。ふざけたくなっちゃう。ラッパーじゃなかったら芸人になりたかったです。
――真面目すぎると照れちゃう、みたいな?
ありますね。
――歌詞はどうやって書いてるんですか?
ダブルミーニングになる言葉は思いついたらメモしてます。そういうユーモアはずっと頭の中で考えつつ、曲のトピックや伝えたいメッセージには「書くぞ!」っていう時に向き合うみたいな感じです。
――家で、一人で?
そうですね。
――それこそ、お酒を飲みながらとかではなく?
いや、本当に俺もう一滴も飲んでないんですよ。それも仕事が好きだからなんですよね、多分。それでしか生きがいを感じられないっていうか。俺、休みの日が嫌いなんですよ。一週間の中で日曜日が一番嫌いで。ココ・シャネルも本で言ってたんですけど、死ぬまで現役で、土日が一番嫌いだったって。それと似たような考えで、友達と遊ぶのは好きですけど、仕事をまったくしない日が嫌なんですよね。
――勝手に、パーティーもバリバリなのかと思ってました。
数少ない遊ぶ日は、みんながビックリするくらい遊びますけどね。お金も使いますし。