柊人インタビュー 新EP『ありのまま』で描く“包み隠さない生き方”
高知生まれ、オーストラリアでの生活を経て、沖縄で開花。「好きなこと」を追い求め、音楽の旅を続ける柊人。9月10日には全6曲収録の待望の新EP『ありのまま』をリリースし、初のワンマンライブの開催も控えている(10月10日に東京、26日に大阪)。「ありのままっていうのは、音楽をやる上ですごく大切な部分」と語る柊人の現在地に迫る。
取材・文:Jiro Honda
新EP『ありのまま』に込めた想い
——「好きなこと」でその名が広まり、続いて「絶景」がヒット、そこからは破竹の勢いで各所で活躍されるようになった柊人さんですが、現時点でそのような変化についてどう感じていますか?
もういろいろ変わりすぎて、曲を聞いてくれてる人や周りのおかげなんですけど、実際のところそういうありがたい状況に相応しい自分になれているかというと、全然追いついてない、まだまだだと思っています。音楽で全く食えてない時からすると夢みたいな状況になっていて、本当にみなさんのおかげです。
——素晴らしいキャリアを日々築かれ続けていますが、いままで特に印象的だった出来事をあげるなら?
いっぱいありすぎて。毎回すごい経験をさせていただいているなと思ってるんですけど、CHICO(CHICO CARLITO)に呼んでもらってTHE FIRST TAKEに出させてもらった後くらいから、じいちゃんやばあちゃん、そして親も応援してくれるようになって。それまでずっと迷惑ばかりかけてきて、音楽なんてやってる場合じゃないっていうくらいむちゃくちゃしてきたんで、そういった変化は本当に嬉しく思っています。
——親孝行、家族孝行ができるようになったと。
そうですね、まだ全然足りないですけど。
——そういった変化の中、今回9月10日に新EP『ありのまま』をリリースされましたが、制作まではどういう流れだったんでしょうか?
本来はアルバムをずっと制作してたんですけど、ワンマンライブをやるということもあって、もともと進めてた曲も含めてこの数か月で一気に仕上げて、今回6曲でのリリースとなりました。
——作品のテーマはタイトル通り「ありのまま」?
そうですね。例えばこういうインタビューも、つい良いことを言おうとしちゃうんですけど、本当は自分らしく常にありのままでいれたらいいなと思ってまして。何も包み隠すことなくいれたら生きやすいと思いますし。そういうことをこのEPを通して感じてもらえたら。ありのままっていうのは、自分としてはアート、音楽をやる上ですごく大切な部分だと思いますし、そういうスタンスが個人的に好きだというのもあります。
——そういった意味でも非常に柊人さんらしい作品に仕上がっていますが、収録曲について順番に伺わせてください。1曲目の「Hustler」はLeofeelさんのプロデュース曲で、Red Bullの64 Barsで披露されていたものですよね。
リリック自体は2年くらいずっと書き溜めていた曲で、リリックにある「独学ハスラー」は、自分を拾ってくれたCHOUJIさんのスタジオがDGH STUDIOっていうんですけど、そのDGHが「D(独)G(学)H(ハスラー)」なんです。DGH STUDIOはCHOUJIさんの手作りのスタジオで、自分も作るときから手伝わせてもらって。スタジオができてから一発目のリリースも自分のリリースだったんで、「好きなこと」もそこがなかったら生まれてないですし、全てはDGH STUDIOから始まっています。プロデュースしていただいたLeofeelさんも、ビートメイカー、DJをしながらDGH STUDIOでエンジニアをしていて、自分の一番最初のリリースからビートをやっていただいている本当にお世話になっている先輩です。
——柊人さんのルーツ、はじめの一歩を描いた曲なんですね。リリックにも「好きなこと」のセルフサンプリングがあります。
いつかそういう曲が作れたらなって思っていたんで、自分でもこの曲が作れて、リリースできて嬉しいです。大切な一曲ですね。
——2曲目の「真っ直ぐ」はShin Andrewさんのダイナミックなビートと柊人さんのフロウの融合が非常に心地よい仕上がりです。
東京や沖縄、自分自身も含めて、いろんな場所へ勝負をしにいく人がいると思うんですけど、この曲はそういう人たちの支えになればという思いを込めた曲です。
リリックの元になったのは、ライブで奄美の徳之島に行ったときの経験。徳之島で闘牛大会をやっていて、ライブもその闘牛場でやらせていただきました。ライブの後、実際に闘牛を観戦したんですけど、闘牛って見たことあります?もうすごいんですよ、お腹刺されてその場で倒れちゃう牛もいたりして。こんなに命がけなんだ、やばいなって。それを子供たちが大声で応援していたり、色んなことがカルチャーショックでした。あと、わざわざ鶏を捌いて振る舞ってくれたり、島の人たちがすごくあたたかくて、沖縄もそうですけど改めて違う場所で“島のあたたかさ”をめっちゃ感じました。
——その話を伺うと、闘牛が突進していく“真っ直ぐ”な姿も曲からイメージできますね。
あ、その“真っ直ぐ”もありますね、いま気づきました(笑)。そうやって聴いていただける人にいろんな受け取り方をしてもらえるのも嬉しいです。
——続く「Feeling」ではYunoaさんが客演されています。
Yunoaさんには以前何回かお会いしたことがあって、自分の曲も聞いてくれてたらしくて。Yunoaさんの声と曲はめちゃくちゃかっこいいから、いつか絶対一緒に曲をやりたいと思ってました。それで、Daishiさんのビートでこの曲を作るときに、これはYunoaさんだなと思って今回お声がけしました。
——Daishiさんのビートも上質なR&Bで、そこに乗るお二人の歌唱のコントラストが見事ですね。日本語詞と英語詞のバランスも絶妙です。
日本語と英語の書き分けについては特に意識していないんですけど、英語の方が気持ちよく決まったりすることもありますし、同じ意味でも絶妙に違ったりするんで、自然というか感覚でやっています。
昔ブーンバップの2MCで音楽活動をしてた時ラップだけを担当していたんですけど、その時は英語で全部書いてて。英語でバーって書いて、ここは伝わりづらいなっていうところは日本語に変えたり。あと突然日本語が入ることで耳に残るかなって工夫したり。
——今も最初は全部英語で書くんですか?
全部ではないんですけど、基本そっちの方が早かったりするんで使い分けています。
——次のGacha Medzさんプロデュースの「通り雨」は、一聴すると海外のアーティストかとも思う仕上がりになっていますね。
CHOUJIさんがジャマイカのGachaさんのところに行って一緒に曲を制作しているのを見てて、出来上がる曲もすごく良いし、自分もいつかGachaさんと曲を作れたらなってずっと思ってました。それで今回ありがたいことにご一緒させていただけました。「通り雨」のGachaさんのトラックはドラムの感じとかもめちゃくちゃかっこよくて。今回どのビートも本当に素晴らしいんですけど、音色というか、個人的に音楽を聴く時、「通り雨」みたいな感じのをけっこう聴くことが多いんで、この曲が一番書きやすかったかもしれないです。自転車で沖縄をずっと旅しながら作りました。
——リリックもタイトル通りしっとりとしたイメージ?
この曲のリリックに関しては、めちゃくちゃ落ちてる時に書いたものですね。自分の場合、基本的に気分が明るいポジティブな時よりかは、そうじゃない時に書くことが多いかもしれません。
——5曲目の「信じてる (feat. 笠原瑠斗) [Remix]」は、Remixではない方が先行のシングルになっていましたね。
実は瑠斗君が参加してくれたこのRemixも、通常バージョンと同時に制作を進めていたんです。それで先行シングルっていうわけじゃなかったんですけど、出来上がった時にこれはもう早く出したいと思うくらいの仕上がりだったんで、5月にリリースして。
——3HouseさんやYo-Seaさん、そしてIOさんなど多くのアーティストに楽曲提供するGooDeeさんのビートで、こちらも沁みわたるような極上のR&Bに仕上がっています。
GooDee君も瑠斗君も、音楽はもちろん人柄もめちゃくちゃ好きな二人なんで、一緒に曲が作れて嬉しいです。Remixでは、瑠斗君と歌い分けてもいるんですけど、一緒に歌うところもあったり、フェイクだとかちょっと聞こえる声とかもすごい絶妙で、聴いててきっと気持ちいいと思います。
——瑠斗さんとはどういうつながりで?
昔、沖縄のバーで飲んでる時、唾奇さんはじめ色んなアーティストに瑠斗君の曲を絶対聞いた方がいいよって教えてもらって。その頃はまだ知り合いじゃなかったんですけど、その後何かのタイミングで会ってそこからですね。
GooDee君もけっこう前から知り合いで、いつも急なお願いをしても笑顔でいいよっていってくれて、本当に感謝してます。めちゃくちゃいい人ですね、最高です。
——そして最後の曲がGeGさんとの「紡ぐ」。こちらは、あたたかくて優しくて、良い意味で間口の広いJ-POPのような雰囲気もありますね。
今回、EPの本RECは大阪のGeGさんのスタジオでやったんですけど、GeGさんとの「紡ぐ」は2年くらい前にビートをもらった時から絶対やばい曲になるなと。GeGさんもずっと待ってくれて、何回か通って色んな話を共有しながらやっとできた曲です。EPのタイトルを「紡ぐ」にしようかなって思ったくらい思い入れがある曲です。
今年、自分のばあちゃんが入院したりあんまり体調がよくなくて、今はだいぶ回復したんですけど、GeGさんも近い人が似たような状況があったりしたみたいで、二人でそういう話をしたりして、いつかはみんないなくなるけど、だからこそ歌で音楽で紡いでいこうって。そういう思いがフックに込められています。
「紡ぐ」はミュージックビデオも出す予定で、実際にばあちゃんのところに行って撮影したりもしたんで、公開されたらぜひ見ていただきたいです。
——柊人さんの曲については、救われたとか元気がもらえたとか、そういう声が例えばYouTubeのコメント欄にも非常に多く寄せられています。今回の6曲も多くの人の心に届くことは間違いないと思いますが、そのようにご自身の曲が多くの人にポジティブな影響を与えていることに関してどう感じていますか?
身に余るというか、良い意味で本当にとんでもないことだなって思いますね。自分が自分自身のために好きでやってることが、こんなに誰かの為になってるなんて、めちゃくちゃありがたいです。とても辛い環境の中頑張ってる人たちがたくさんいて、自分は全然まだまだだなって思わされたり、逆にいつもみんなに元気、パワーをもらっています。もっともっと作らないとって気持ちになります。
——リスナーと素敵なキャッチボールになっているんですね。感謝という部分では、EPのクレジットのスペシャルサンクスには、CHOUJIさん、MASH-Iさん、GINJIさん、CHICO CARLITOさんのお名前がありました。
そうですね、名前をあげはじめたらキリがないくらい感謝している人はたくさんいるんですけど、常に曲のことを考えてて今回その中でも一番影響が大きかったのがやっぱりCHOUJIさんとCHICOで。作り方はもちろん、側にいなくても2人の存在はいつもあるというか。MASH-IさんとGINJIさんもリリックの部分でアドバイスしていただいたり、いつもお世話になっているお二人です。
ワンマンでは「恩返しの気持ちで最高なパフォーマンスを届ける」
——そしてついに初のワンマンライブが10月10日に東京、26日に大阪で開催となります。ライブを間近に控えて、今の率直な気持ちを教えてください。
自分としてのワンマンは初めてということでけっこう緊張はしているんですけど、やっぱりめちゃくちゃ楽しみですね。今回のテーマでEPのタイトルでもある「ありのまま」の気持ち、恩返しの気持ちで最高なパフォーマンスを届けたいと思っています。
——ライブはバンドセットでさらに韓国からChanny Dさんも参加されるんですよね。
はい、Channy Dはビートメイクもやってるめちゃくちゃかっこいいピアニストで。以前、Olive Oilさんの福岡のイベントで一緒になったことがあって、その時に彼のピアノソロのライブを見て、もうめちゃくちゃ食らって。そのままセッションしたり、「好きなこと」を一緒にやって、その時からいつかタイミングあったら誘わせてほしいってずっと言ってて。なので今回それが実現してめちゃくちゃ嬉しいですし、Oliveさんにも大変感謝しています。
なので、今回Channy Dを含めバンドメンバーのみんなも最高の人たちなんで、その演奏、セッションも含めて楽しんでもらいたいです。
——バンドメンバーのみなさんを改めてご紹介いただけますか?
東京と大阪で少しだけ違っていて、敬称略でみんな申し訳ないんですけど、東京は、サックスにKing TJ、キーボードに太田卓真とChanny D、ベースがYabu、ドラムにJin Takemuraです。大阪が、太田卓真に代わってキーボードとコーラスにtakumadrops。あとは東京と同じメンバーです。
あと、まだ名前は言えないですが客演もありますし、いつもバックDJをやってくれてるNAPPY BWOYがオープンから本編までDJプレイしてくれます。
——最高の初ワンマンになりそうですね。今回のEPのリリース、そしてワンマンを経て柊人さんの活動スケールはいよいよ大きくなっていきそうですが、年末、そして来年にかけてチャレンジしていきたいことはありますか?
今年で言えば、アジアの方にもバンドセットのライブでチャレンジするっていう話があったり、来年はフルアルバムを作って、沖縄で恩返しのワンマンライブをしたいですね。CHOUJIさんにいつも「毎年アルバム出すって言ってない?」って言われるんですけど(笑)、来年こそは実現したいです。
——では最後に、柊人さんのファン、リスナーのみなさんにメッセージをお願いします。
まずは、いつも自分の曲を聴いてくれて本当にありがとうございます。みなさんがいなかったら自分もいないと思うんで、その感謝は一日も忘れたことがないです。
あと、SNSで本当にきつい状況の人たちからメッセージをもらったりとかもするんですけど、そういう時に返せる言葉が中々見つからない。でも、綺麗事なしできっと元気が出るパフォーマンスをいつもやってるんで、もし可能ならライブを見に来てもらいたいですし、曲も頑張って作って届け続けていきたいです。
柊人 EP「ありのまま」
2025年9月10日(水)配信リリース
配信URL : https://linkco.re/T3Q6uDfR
■収録曲
1.Hustler (Prod. Leofeel)
2.真っ直ぐ(Prod. Shin Andrew)
3.Feeling feat. Yunoa (Prod. Daishi)
4.通り雨 (Prod. Gacha Medz)
5.信じてる Remix feat. 笠原瑠斗 (Prod. GooDee)
6.紡ぐ (Prod. GeG)
■クレジット
Recording by DGH studio, Ryosuke Maekawa(prime sound studio form), G.B’s Studio
Mixed by Noriaki Watanabe, Ryosuke Maekawa(prime sound studio form), Gacha Medz
Mastered by Masato Morisaki at ARTISANS MASTERING (TinyVoice,Production)
Photo by Ryusei Sabi
Artwork by 山下人夢 / Tom Yamashita, TN DESIGN WORKS
Special Thanx to CHOUJI, MASH-I,GINJI, CHICO CARLITO
柊人「ありのまま」- 1st ONEMAN LIVE With Special Band Set -(柊人バンド✖️Channy D From Korea)
■東京公演
日程:2025年10月10日(金)
会場:WWW X(東京都渋谷区宇田川町13-17 ライズビル2F)
OPEN 18:00 / START 19:00
チケット:前売 ¥5,000 / 当日 ¥6,000
■大阪公演
日程:2025年10月26日(日)
会場:Yogibo META VALLEY(大阪市浪速区難波中2丁目11-1)
OPEN 17:00 / START 18:00
チケット:前売 ¥5,000 / 当日 ¥6,000チケット販売URL:https://eplus.jp/shuto/

